レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

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第26章 会戦

連射

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 コックピット内部の全方位モニターに映し出される宇宙空間。先の大戦で破棄され、胡州から東和に引き渡されたコロニーの残骸があたりを覆う。

『随分と視界が効かないもんだな』 

 続けて出撃してきたかなめの声に誠は静かにレーダー画面に目を移した。

 標的の砲台はP24宙域で停止し、その周りに強い重力波を発生させていた。エネルギー充填と反動を抑えるための重力アンカーの影響だとすぐにわかった。

『予定通りにことは進んでいるな。あとはクバルカ中佐の読みでは……』 

 カウラの言葉に合わせるように砲台から機動兵器らしき機影が出撃したことをレーダーが捉える。

「迎撃は第四小隊ですよね」 

『吉田少佐のコピーがシャムに気づかないことを祈るばかりだな』 

 砲台から出撃した機影は、まっすぐ砲台に突入しているロナルド率いる第四小隊に襲いかかるように見えた。一方、砲台の破壊を目標としたシャムの機影は大回りしてコロニーの後端の影を移動し砲台を目指していた。

「こんなに簡単に行くんですかね」 

『なんだ?初弾くらいは簡単に受け止められると踏んでの余裕か?』 

 冷やかすようなかなめの言葉に誠はとりあえず法術管制システムを起動させた。周囲の空間がまるで手に取るように頭の中で把握される。

『まだだ。インパルスキャノンのエネルギー充填にはまだ時間がかかる。ただ心づもりだけはしておくことだ』 

 カウラはそう呟くと誠の機体の後ろに付けた。それに対抗するようにかなめも機体を誠の機体の後方に移動させる。

「お二人ともそれじゃあ僕が吹き飛んだら……」

『おい、吹き飛ばされるつもりか?オメエさんが吹き飛んだら遼北、西モスレムでの核戦争が起こるんだ。吹き飛ばされてもらっちゃ困るんだよ』 

 画像のないかなめの言葉に誠は静かにうなづいた。

『西園寺。ちゃんとアタシが後ろで支えるからな。神前……吹き飛ばされてもいいぞ』

「クバルカ中佐。それを言わないでくださいよ」 

『ああ、そうだった中佐との二段構えだった。神前、吹き飛ばされてもいいぞ』 

 かなめの残酷な一言に誠は苦笑いを浮かべた。

『こちらデルタ・ワン。まもなく敵影を捉える……それにしても本当にデブリが濃いな……』

 ロナルドからの通信で状況はすべて嵯峨やラン、そしてオリジナルの吉田の予想した展開へと進んでいるように感じられて誠は安堵しながら遥か視界の彼方の砲台に思いを馳せた。

『ランちゃんこちらも順調。あと二つ大きめのデブリをパスしたら一気に距離を詰めるよ』 

 砲台破壊目的のシャムの方も順調に進んでいるのが通信でわかる。すべては上手く進んでいた。うまくいきすぎるくらいに。
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