1,036 / 1,557
第14章 初めての休日
かなめの歌
しおりを挟む
「いっぱい買っちゃった」
誠はおもちゃ屋で買った袋を下げて寮の自分の部屋の扉を開けた。
「あれ?空調は止めたつもりだけど……」
ひんやりとした空気に違和感を感じながら部屋の戸を開けると、誠はそこに人影を見つけた。
「よう!」
おかっぱ頭に黒のタンクトップ。そして左脇には愛銃『スプリングフィールドXDM40』。それは西園寺かなめ中尉だった。
「なんだ、西園寺さんが来てたんですか……」
誠は安どのため息をつきながら手提げ袋を部屋の片隅に置いた。
「なんだ、いい部屋じゃねえか。島田が寮長をやってるって聞いてたからもっと壁に落書きでもしてあるような部屋を想像してたのに」
「なんでそんなゲットーみたいなイメージなんですか?島田先輩は何者なんですか?」
「そりゃあヤンキー」
ベッドに腰かけて真顔でそう答えるかなめを見ながら誠は呆れたように立ち尽くす。
「あのー……それ、ギターですか?」
誠はかなめの足元にあるギターケースを見てそう言った。
「なんだよ。アタシが銃以外を持ってるのが不服か?」
「そんなことは無いですけど……」
かなめは誠に絡みながらギターケースを開けた。年季の入ったアコースティックギターがかなめの手の中に納まる。
「なんだかぴったりですね」
「褒めてもなんもでねえぞ」
そう言ってかなめは笑いながらギターを軽く撫でる。
「好きなんですか?」
「嫌いで弾く馬鹿はいねえだろ?それよりいつまで立ってるつもりだよ。そこに座れよ」
ベッドに腰かけたかなめは部屋の中央で立ち続けている誠にそう言った。仕方なく、誠はその場に腰かけた。
「西園寺さん」
「アタシは自由人なの。ギターを弾きたいときに弾いて歌いたいときに歌う。それだけ」
そう言うとかなめはギターをかき鳴らし始めた。
「聞いとけ。アタシの歌」
かなめはゆっくりとした曲を弾き始めた。
『……アイツのことを……思いながら……』
彼女のかすれたような歌声にマッチした悲しげな旋律だった。
かなめが歌うのは道ならぬ恋に悩みつつ前を向いて生きていく女性の歌だった。
『西園寺さんが好きなのは……フォーク?』
誠はサビに行くにしたがって盛り上がっていくかなめのギターと歌声を聞きながらそんなことを考えていた。
かなめの絶唱が終わると、ギターの音が止み静寂が訪れた。
「西園寺さん……」
誠は笑顔で気持ちよく余韻に浸っているかなめの顔を見つめた。
「アタシは歌いたいから歌った。まあ、オメエには残って欲しいんだ。うちにな」
そう言いながらかなめはギターをケースにしまう。
「え?もう帰るんですか?」
「アタシは自由人なの。好きに生きてるの。オメエがどうこうできることはねえよ」
そう言って笑いながらかなめは立ち上がった。
「あの、寮の入り口まで送ります」
「いいよ。オメエも昨日は一日走って疲れてんだろ?しばらくは姐御の基礎体力トレーニングが続くから……そいじゃ!」
軽く笑ったかなめはそのまま誠の部屋を出て行った。
「西園寺さん……」
誠はなんだか優しい気分に包まれながらかなめの座っていたベッドの縁に腰を掛けてぼんやりと部屋を眺めていた。
誠はおもちゃ屋で買った袋を下げて寮の自分の部屋の扉を開けた。
「あれ?空調は止めたつもりだけど……」
ひんやりとした空気に違和感を感じながら部屋の戸を開けると、誠はそこに人影を見つけた。
「よう!」
おかっぱ頭に黒のタンクトップ。そして左脇には愛銃『スプリングフィールドXDM40』。それは西園寺かなめ中尉だった。
「なんだ、西園寺さんが来てたんですか……」
誠は安どのため息をつきながら手提げ袋を部屋の片隅に置いた。
「なんだ、いい部屋じゃねえか。島田が寮長をやってるって聞いてたからもっと壁に落書きでもしてあるような部屋を想像してたのに」
「なんでそんなゲットーみたいなイメージなんですか?島田先輩は何者なんですか?」
「そりゃあヤンキー」
ベッドに腰かけて真顔でそう答えるかなめを見ながら誠は呆れたように立ち尽くす。
「あのー……それ、ギターですか?」
誠はかなめの足元にあるギターケースを見てそう言った。
「なんだよ。アタシが銃以外を持ってるのが不服か?」
「そんなことは無いですけど……」
かなめは誠に絡みながらギターケースを開けた。年季の入ったアコースティックギターがかなめの手の中に納まる。
「なんだかぴったりですね」
「褒めてもなんもでねえぞ」
そう言ってかなめは笑いながらギターを軽く撫でる。
「好きなんですか?」
「嫌いで弾く馬鹿はいねえだろ?それよりいつまで立ってるつもりだよ。そこに座れよ」
ベッドに腰かけたかなめは部屋の中央で立ち続けている誠にそう言った。仕方なく、誠はその場に腰かけた。
「西園寺さん」
「アタシは自由人なの。ギターを弾きたいときに弾いて歌いたいときに歌う。それだけ」
そう言うとかなめはギターをかき鳴らし始めた。
「聞いとけ。アタシの歌」
かなめはゆっくりとした曲を弾き始めた。
『……アイツのことを……思いながら……』
彼女のかすれたような歌声にマッチした悲しげな旋律だった。
かなめが歌うのは道ならぬ恋に悩みつつ前を向いて生きていく女性の歌だった。
『西園寺さんが好きなのは……フォーク?』
誠はサビに行くにしたがって盛り上がっていくかなめのギターと歌声を聞きながらそんなことを考えていた。
かなめの絶唱が終わると、ギターの音が止み静寂が訪れた。
「西園寺さん……」
誠は笑顔で気持ちよく余韻に浸っているかなめの顔を見つめた。
「アタシは歌いたいから歌った。まあ、オメエには残って欲しいんだ。うちにな」
そう言いながらかなめはギターをケースにしまう。
「え?もう帰るんですか?」
「アタシは自由人なの。好きに生きてるの。オメエがどうこうできることはねえよ」
そう言って笑いながらかなめは立ち上がった。
「あの、寮の入り口まで送ります」
「いいよ。オメエも昨日は一日走って疲れてんだろ?しばらくは姐御の基礎体力トレーニングが続くから……そいじゃ!」
軽く笑ったかなめはそのまま誠の部屋を出て行った。
「西園寺さん……」
誠はなんだか優しい気分に包まれながらかなめの座っていたベッドの縁に腰を掛けてぼんやりと部屋を眺めていた。
10
あなたにおすすめの小説
れすとあ ─モンキーガール、風になる─
海凪ととかる
キャラ文芸
中学女子の100㍍走の記録保持者で、天才スプリンターとして将来を嘱望されていた大倉香奈 《おおくらかな》はスポーツ特待生として陸上強豪校への進学が決まっていたが、競技中の怪我で引退を余儀なくされ、燃え尽き状態で日々を過ごしていた。
香奈のクラスメイトで同じ中学出身である宮本佑樹《みやもとゆうき》は母子家庭で、パン屋に勤める姉の紗羅《さら》、不登校である小学生の妹の咲良《さくら》と一緒に暮らしている。ミニバイク『モンキー』を姉共々愛しており、整備を一手に引き受け、高校にもモンキーでバイク通学している。
ある日、登校直前までモンキーを整備していた佑樹は、学校の玄関で電車通学している香奈と会い、オイルで汚れた手を見られ、バイクの整備ができることを明かす。その時は特にバイクに関心はなかった香奈だったが、その日の放課後、偶然に紗羅の勤めるパン屋に寄り、そこにあった沙羅のモンキーに一目惚れしたことで、モンキーに乗るために二輪免許を取ることにする。
すでに廃番となっている旧車のモンキーをどうやって手に入れたらいいか佑樹に相談した香奈に、佑樹は自宅にある壊れた廃車のモンキーを自分の手で再生《レストア》してみることを提案する。自分の目でそのモンキーを目にした香奈は、自分の足で走れなくなった自分自身と乗り手に見捨てられたモンキーの境遇を重ね、再び一緒に走れるようにモンキーのレストアに着手していく。
これは、自分の足で前へ進めなくなって俯いていた少女が新たな足を得て再び顔を上げて前へ踏み出すまでの"再生"の物語。
これは、乗り手から見捨てられて朽ちつつあった旧車のバイクが新たな乗り手によってレストアされて再び走り出す"再生"の物語。
※この物語の本文にはAIは使用していません。表紙イラストおよび作中挿絵はAI生成です。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
軸─覇者
そふ。
ファンタジー
就職か、進学かー
ありふれた現実の岐路に立つ青年は、ふとした瞬間、滅び去った王国の跡地に立っていた。
そこを支配するのは、数億年の歴史と、星々が刻んだ理。
草原を渡る風、崩れた城壁、そして「まだ語られていない物語」の声。
かっての文明を知る者たち、秘められた叡智、そして人々を
脅かす影。
それらすべてが折り重なり、ひとつの空席を呼び覚ます。
問いはひとつーー
なぜ、ここに立つのか?
何を背負うべきなのか?
この世界は何を望んでいるのか?
ーこれは、まだ誰も知らぬ異世界創世記。
すべてはこご"ゲアの地"で
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる