1,218 / 1,557
第13章 新たな世代
殿上貴族
しおりを挟む
響き渡る笙の音が殿上会の始まりを告げる。
『鏡の間』と呼ばれる殿上会の開かれる間に続くいくつもの広間には集まった貴族たちが上座に向けて首を垂れていた。
そんな間を四人の人影が上座へと向かう。
先頭を歩くのは十二単を身にまとった殿上貴族。彼女の名は九条響子だった。年は28歳。静々と歩くその雰囲気は左大臣と言うこの場にいる最高位の貴族であることを示して見せた。
それに続くのは武者装束の貴人、田安麗子。落ち着き払った九条響子とは違って、こちらはどこか間の抜けた表情で響子と同い年で右大臣と言うには少し貫録が無い浮ついた表情を浮かべていた。
続く武者装束のかえでと公家装束の嵯峨惟基。こちらはと言えば場慣れしたほど良い緊張感をはらみながらそのまま鏡の間へと向かう廊下を歩いていた。
殿上貴族達はその様子をかたずをのんで見守りながら四人が鏡の間に入るのを見守っていた。
空位の最上位の太政大臣の席をはさんで左に響子、右に麗子が座り、その下座にかえでと嵯峨が控える。
「内府殿……」
響子は嵯峨を呼ぶと静かに空いた太政大臣の席に目をやる。
「左府殿、かなめは……」
「そうですね、ですがいつまでも太政官が不在では……」
響子の冷たい声に嵯峨は首を横に振った。
「全く、かなめさんと来たら……殿上会は甲武の礎ですのに……」
不服そうにつぶやく麗子だが、その感情的な口調に響子とかえでが責めるような視線を投げかけた。麗子はそれに気づくとすぐに手にした尺で口元を隠す。
「本日は殿上会……良き日良き方を選びてなしたる日。甲武百官の首たる余の為衆人こぞって来は目出度き限りなり……」
儀式ばった響子の一声に殿上貴族達は図ったように拝礼をする。
「左府殿。まずは大納言楓子就着について……」
静かに嵯峨はそう言うとかえでに目配せする。かえではそのまま静かに響子の前に進み出て首を垂れた。
「藤原朝臣三位大納言楓子。就着の議、ご苦労である」
響子はそう言って扇子を目の前にかざした。
「教悦至極に存じまする」
かえではそう言って再び拝礼した。
「内府殿……かなめちゃ……じゃなかった、要子不在にてさぶらうが、藤原朝臣一位響子、太政大臣推挙の議……」
麗子がそう言った瞬間、続きの間にざわめきが起こった。
響子が太政大臣に着けば甲武貴族第一位はこの場にいないかなめから響子に移ることになる。
響子は甲武の貴族主義者からは事実上の首領として扱われる存在だった。その響子が太政大臣に君臨すれば議会を制するかなめの父西園寺義基との衝突は避けられない。
殿上貴族達の戸惑いと恐怖を含んだざわめきを聞きながら響子は静かに首を横に振った。
「新田朝臣二位右大臣麗子殿……内府殿から左様な議は上申されておりませぬ……」
響子はそう言うと呆けたような表情の麗子に笑みを返した。
「では、太政大臣による御采配は……」
「太政大臣は空位なれど、前太政大臣は下座に控えておられる……御差配は宰相の一任でよろしかろうと」
響子はそう言って目の前に控える嵯峨に目をやった。
「左府殿の御裁可……見事にございまする……では、次なる議を宰相より奏上させていただきまする」
嵯峨のそんな一言が発せられると、鏡の間の御簾が上がり、かなめの父、宰相西園寺義基が静かに現れた。
四人の前に椅子と机が用意され、西園寺義基は手にした書類を机に広げた。
「では、宰相として大臣閣下に御裁可を頂き等ございまする、まず第一に……」
西園寺義基はそう言って一礼すると議会を通過した法案の報告を始めた。緊張した雰囲気の中、嵯峨は安どの表情を浮かべて兄の奏上に耳を傾けていた。
『鏡の間』と呼ばれる殿上会の開かれる間に続くいくつもの広間には集まった貴族たちが上座に向けて首を垂れていた。
そんな間を四人の人影が上座へと向かう。
先頭を歩くのは十二単を身にまとった殿上貴族。彼女の名は九条響子だった。年は28歳。静々と歩くその雰囲気は左大臣と言うこの場にいる最高位の貴族であることを示して見せた。
それに続くのは武者装束の貴人、田安麗子。落ち着き払った九条響子とは違って、こちらはどこか間の抜けた表情で響子と同い年で右大臣と言うには少し貫録が無い浮ついた表情を浮かべていた。
続く武者装束のかえでと公家装束の嵯峨惟基。こちらはと言えば場慣れしたほど良い緊張感をはらみながらそのまま鏡の間へと向かう廊下を歩いていた。
殿上貴族達はその様子をかたずをのんで見守りながら四人が鏡の間に入るのを見守っていた。
空位の最上位の太政大臣の席をはさんで左に響子、右に麗子が座り、その下座にかえでと嵯峨が控える。
「内府殿……」
響子は嵯峨を呼ぶと静かに空いた太政大臣の席に目をやる。
「左府殿、かなめは……」
「そうですね、ですがいつまでも太政官が不在では……」
響子の冷たい声に嵯峨は首を横に振った。
「全く、かなめさんと来たら……殿上会は甲武の礎ですのに……」
不服そうにつぶやく麗子だが、その感情的な口調に響子とかえでが責めるような視線を投げかけた。麗子はそれに気づくとすぐに手にした尺で口元を隠す。
「本日は殿上会……良き日良き方を選びてなしたる日。甲武百官の首たる余の為衆人こぞって来は目出度き限りなり……」
儀式ばった響子の一声に殿上貴族達は図ったように拝礼をする。
「左府殿。まずは大納言楓子就着について……」
静かに嵯峨はそう言うとかえでに目配せする。かえではそのまま静かに響子の前に進み出て首を垂れた。
「藤原朝臣三位大納言楓子。就着の議、ご苦労である」
響子はそう言って扇子を目の前にかざした。
「教悦至極に存じまする」
かえではそう言って再び拝礼した。
「内府殿……かなめちゃ……じゃなかった、要子不在にてさぶらうが、藤原朝臣一位響子、太政大臣推挙の議……」
麗子がそう言った瞬間、続きの間にざわめきが起こった。
響子が太政大臣に着けば甲武貴族第一位はこの場にいないかなめから響子に移ることになる。
響子は甲武の貴族主義者からは事実上の首領として扱われる存在だった。その響子が太政大臣に君臨すれば議会を制するかなめの父西園寺義基との衝突は避けられない。
殿上貴族達の戸惑いと恐怖を含んだざわめきを聞きながら響子は静かに首を横に振った。
「新田朝臣二位右大臣麗子殿……内府殿から左様な議は上申されておりませぬ……」
響子はそう言うと呆けたような表情の麗子に笑みを返した。
「では、太政大臣による御采配は……」
「太政大臣は空位なれど、前太政大臣は下座に控えておられる……御差配は宰相の一任でよろしかろうと」
響子はそう言って目の前に控える嵯峨に目をやった。
「左府殿の御裁可……見事にございまする……では、次なる議を宰相より奏上させていただきまする」
嵯峨のそんな一言が発せられると、鏡の間の御簾が上がり、かなめの父、宰相西園寺義基が静かに現れた。
四人の前に椅子と机が用意され、西園寺義基は手にした書類を机に広げた。
「では、宰相として大臣閣下に御裁可を頂き等ございまする、まず第一に……」
西園寺義基はそう言って一礼すると議会を通過した法案の報告を始めた。緊張した雰囲気の中、嵯峨は安どの表情を浮かべて兄の奏上に耳を傾けていた。
10
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
軸─覇者
そふ。
ファンタジー
就職か、進学かー
ありふれた現実の岐路に立つ青年は、ふとした瞬間、滅び去った王国の跡地に立っていた。
そこを支配するのは、数億年の歴史と、星々が刻んだ理。
草原を渡る風、崩れた城壁、そして「まだ語られていない物語」の声。
かっての文明を知る者たち、秘められた叡智、そして人々を
脅かす影。
それらすべてが折り重なり、ひとつの空席を呼び覚ます。
問いはひとつーー
なぜ、ここに立つのか?
何を背負うべきなのか?
この世界は何を望んでいるのか?
ーこれは、まだ誰も知らぬ異世界創世記。
すべてはこご"ゲアの地"で
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる