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第五章 もとをただせば
第25話 レースドキュメントなんてどうでしょうか?
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「それで隊長。映画と言ってもいろいろありますが、どのような方針で作ればよろしいのでしょうか?」
いつもの趣味に暴走するアメリアとは思えないまっとうなその言葉に嵯峨は頭を掻きながら紙の束を取り出した。
「まあ……内容は……去年と同じでこっちで決めてくれって。ただ去年みたいにつまらない作品にはするなとは強く言われた。見ていて楽しくなる。観客を楽しませることを前提とした作品にしてほしいと言うのが市の方針らしいんだ。でも、こっちは素人だよ、プロの映像作家じゃないのに難しいこと言ってくれるじゃないの。何が面白いのを作れってんだ。そんなのだったら市の予算でどこかの劇団にでも頼めばやってくれるのに。まったくうちに頼めばなんでもタダでやってくれると思って舐めてるんだろうな」
嵯峨はそう言って会議室の一同を見渡した。それぞれに腹に一物抱えた人物達を前にして誠はこの会議が波乱に満ちたものになることを予想した。
「とりあえず、島田。お前さんから頼むわ。お前さんの部下の技術部が一番人数が多いんだ。出番も多くなるはず。新型の搬入もそのことを言い訳にして伸ばしてくれるように俺も協力するから。その言い訳を使うからには優先権は当然お前さんにある。遠慮しないで好きなテーマを言ってみな。自由に好きなのを言っていい。お前さんにはその権利がある。まあ、うちの女性陣がそれを許すかどうかまでは俺も保証は出来ないがね」
嵯峨は明らかにやる気の無さそうな島田に話題を振った。
「映画ねえ……去年はドキュメンタリーみたいなもんでしたからねえ……今年もそれでいきますか……話は変わりますけど、皆さん、レースに出ません?野良レースじゃなくて、ワークスとかが本格的に参戦してくるクラスのレース場でやる奴」
突然島田はひらめいたと言うような顔をしてそう言った。
「レースだ?しかもワークスが出てくるようなレベル?アタシはレギュレーションに引っかかるから御免だね。要するに島田が目立ちたいだけなんだろ?かえでとリンにレースクイーンでも頼んで好きにやってろ。こいつ等際どいハイレグで観客を釘付けにできるって言いだすぞ、きっと。それを撮って流せば映画の観客も喜ぶ。一石二鳥じゃねえか」
明らかに不満そうなのはかなめである。かなめもバイク乗りだが、サイボーグなのでレギュレーションでレースには出られない。自分がのけ者にされることがすぐに分かる島田の企画には当然乗る訳が無かった。
「そうですよ。レース。だって、うちの技術力と資金力なら下手なワークスチームより早いマシンを作れますよ。バイクは俺が乗るとして、四輪部門でリンさんとカウラさん、そしてパーラさんも出られるじゃないですか。伝説の名車『ハチロク』と『スカイラインGTR』、そして俺の自信作の『ランサーエボリューション』がレースに出るなんて絵になるじゃないですか!」
島田は完全に自分の言うことに乗り始めていた。誠は詳しいことは知らなかったが、リンの『ハチロク』とカウラの『スカイラインGTR』、パーラの『ランサーエボリューション』は20世紀の日本ではレース界で知らないものは居ない名車として名をとどろかせたと言う。確かに企画としては面白いと、ただのヤンキーだと思っていた先輩の島田がまともなことを言う状況に誠は感動を覚えていた。
「あのーいーか、島田。ちょっと確認したいと言うか質問しておきたいところが有るんだ」
そこで手を挙げたのがランだった。レースとは無縁な上にいつも自分が起こす窃盗事件の際に世話になっている頭の上がらない相手であるランの突然の発言に島田は戸惑っていた。
「確かにオメー等の技術力がすげーのは知ってる。アタシもアタシの愛機である『紅(こう)兎(と)弱×54』の整備で世話になってるのも事実だ。オメー等の技術力ならレースで活躍できるのは間違いねー。ワークスだろーがメーカーがエンジンを提供している公式チームだろうがガチでやりあえる技術力が有るのは認めてやる」
ランはまず島田の技術を褒めて持ち上げることから始めた。誠は当然、落ちを付ける前触れなんだろうと不機嫌そうなランの表情を見て察した。
「でしょ?良いアイディアでしょ?でも、さすがにメーカーがエンジン出して来る相手にはちょっとうちじゃあ勝てませんよ。まあそんなこと言ったら隣の工場の人間から怒られるかもしれませんがね。でも隣の工場が作ってるのはシュツルム・パンツァーのエンジンでガソリンエンジンじゃない。やっぱり餅は餅屋で分相応ってのが有るんですよ」
自分のアイディアを自分が一番尊敬している上官のランに褒めてもらって島田は得意満面だった。
「でもだ。その『資金力』ってのが問題なんだ。オメー等、あれの金、どーやって稼いだか思い出せ。アレはまともな金か?奇麗な金か?人に誇れる金か?違うだろ?」
『あ……』
ランの言葉で全員が金の出どころについて思い出した。
島田は技術部の技術を総集結してフルスクラッチの車を作ることを技術鍛錬の課程として行っていた。
その中で、一台、地球の大富豪が目を付けてしまった車が有った。
『ランボルギーニ・ミウラ』
これを島田は遼州圏駐在の米軍経由で地球に密輸することで多額の資金を手にすることに成功した。そして、そのことがランにバレてその金は没収され、隊の福利厚生費の予備費に編入された。今回の映画作成もその予備費をあてにしてのものだった。
「レース映画か?そんなもんを公開したら、どこからそんな金が出てきたかって話になって密輸の事実を自白するようなもんだな……島田。地球への禁輸物資の密輸は重罪だ。一遍本当に刑務所の中に入って見ろよ。少年鑑別所とは違う世界が味わえるかもよ」
冷やかすようにかなめがそう言った。
その視線の先には自分の企画を予想通り潰しに来たかなめに敗北したことにうなだれる島田の姿が有った。
いつもの趣味に暴走するアメリアとは思えないまっとうなその言葉に嵯峨は頭を掻きながら紙の束を取り出した。
「まあ……内容は……去年と同じでこっちで決めてくれって。ただ去年みたいにつまらない作品にはするなとは強く言われた。見ていて楽しくなる。観客を楽しませることを前提とした作品にしてほしいと言うのが市の方針らしいんだ。でも、こっちは素人だよ、プロの映像作家じゃないのに難しいこと言ってくれるじゃないの。何が面白いのを作れってんだ。そんなのだったら市の予算でどこかの劇団にでも頼めばやってくれるのに。まったくうちに頼めばなんでもタダでやってくれると思って舐めてるんだろうな」
嵯峨はそう言って会議室の一同を見渡した。それぞれに腹に一物抱えた人物達を前にして誠はこの会議が波乱に満ちたものになることを予想した。
「とりあえず、島田。お前さんから頼むわ。お前さんの部下の技術部が一番人数が多いんだ。出番も多くなるはず。新型の搬入もそのことを言い訳にして伸ばしてくれるように俺も協力するから。その言い訳を使うからには優先権は当然お前さんにある。遠慮しないで好きなテーマを言ってみな。自由に好きなのを言っていい。お前さんにはその権利がある。まあ、うちの女性陣がそれを許すかどうかまでは俺も保証は出来ないがね」
嵯峨は明らかにやる気の無さそうな島田に話題を振った。
「映画ねえ……去年はドキュメンタリーみたいなもんでしたからねえ……今年もそれでいきますか……話は変わりますけど、皆さん、レースに出ません?野良レースじゃなくて、ワークスとかが本格的に参戦してくるクラスのレース場でやる奴」
突然島田はひらめいたと言うような顔をしてそう言った。
「レースだ?しかもワークスが出てくるようなレベル?アタシはレギュレーションに引っかかるから御免だね。要するに島田が目立ちたいだけなんだろ?かえでとリンにレースクイーンでも頼んで好きにやってろ。こいつ等際どいハイレグで観客を釘付けにできるって言いだすぞ、きっと。それを撮って流せば映画の観客も喜ぶ。一石二鳥じゃねえか」
明らかに不満そうなのはかなめである。かなめもバイク乗りだが、サイボーグなのでレギュレーションでレースには出られない。自分がのけ者にされることがすぐに分かる島田の企画には当然乗る訳が無かった。
「そうですよ。レース。だって、うちの技術力と資金力なら下手なワークスチームより早いマシンを作れますよ。バイクは俺が乗るとして、四輪部門でリンさんとカウラさん、そしてパーラさんも出られるじゃないですか。伝説の名車『ハチロク』と『スカイラインGTR』、そして俺の自信作の『ランサーエボリューション』がレースに出るなんて絵になるじゃないですか!」
島田は完全に自分の言うことに乗り始めていた。誠は詳しいことは知らなかったが、リンの『ハチロク』とカウラの『スカイラインGTR』、パーラの『ランサーエボリューション』は20世紀の日本ではレース界で知らないものは居ない名車として名をとどろかせたと言う。確かに企画としては面白いと、ただのヤンキーだと思っていた先輩の島田がまともなことを言う状況に誠は感動を覚えていた。
「あのーいーか、島田。ちょっと確認したいと言うか質問しておきたいところが有るんだ」
そこで手を挙げたのがランだった。レースとは無縁な上にいつも自分が起こす窃盗事件の際に世話になっている頭の上がらない相手であるランの突然の発言に島田は戸惑っていた。
「確かにオメー等の技術力がすげーのは知ってる。アタシもアタシの愛機である『紅(こう)兎(と)弱×54』の整備で世話になってるのも事実だ。オメー等の技術力ならレースで活躍できるのは間違いねー。ワークスだろーがメーカーがエンジンを提供している公式チームだろうがガチでやりあえる技術力が有るのは認めてやる」
ランはまず島田の技術を褒めて持ち上げることから始めた。誠は当然、落ちを付ける前触れなんだろうと不機嫌そうなランの表情を見て察した。
「でしょ?良いアイディアでしょ?でも、さすがにメーカーがエンジン出して来る相手にはちょっとうちじゃあ勝てませんよ。まあそんなこと言ったら隣の工場の人間から怒られるかもしれませんがね。でも隣の工場が作ってるのはシュツルム・パンツァーのエンジンでガソリンエンジンじゃない。やっぱり餅は餅屋で分相応ってのが有るんですよ」
自分のアイディアを自分が一番尊敬している上官のランに褒めてもらって島田は得意満面だった。
「でもだ。その『資金力』ってのが問題なんだ。オメー等、あれの金、どーやって稼いだか思い出せ。アレはまともな金か?奇麗な金か?人に誇れる金か?違うだろ?」
『あ……』
ランの言葉で全員が金の出どころについて思い出した。
島田は技術部の技術を総集結してフルスクラッチの車を作ることを技術鍛錬の課程として行っていた。
その中で、一台、地球の大富豪が目を付けてしまった車が有った。
『ランボルギーニ・ミウラ』
これを島田は遼州圏駐在の米軍経由で地球に密輸することで多額の資金を手にすることに成功した。そして、そのことがランにバレてその金は没収され、隊の福利厚生費の予備費に編入された。今回の映画作成もその予備費をあてにしてのものだった。
「レース映画か?そんなもんを公開したら、どこからそんな金が出てきたかって話になって密輸の事実を自白するようなもんだな……島田。地球への禁輸物資の密輸は重罪だ。一遍本当に刑務所の中に入って見ろよ。少年鑑別所とは違う世界が味わえるかもよ」
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