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第八章 不毛なる戦いの記録
第44話 大詰めを迎える展開
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「まあ、今となってみればそうだとは思うんですが……でもこのままじゃ……」
うなだれる誠の肩に大野は手をやった。
「まあ安心しろ。俺もオメエの魔法少女コスは見たくねえからな。こっちの選挙対策委員長は班長だぜ。それにうちの情報将校も味方にいるんだ。絶対に勝ってみせる!それに東和の軍と警察だけが投票権を持ってるって誰が決めた?そっちがルールを変えるんならこっちもそれに合わせてルールを変える……まあ見てろ。勝利はいつも栄光の整備班に輝く物なんだよ」
大野はそう力強く言った。誠は明らかに問題の根本が摩り替えられつつある現状に気づいて頭を抱えた。
「とっとと着替えないとクバルカ中佐が切れるぞ!」
そう言うと大野は更衣室から出て行った。誠は急いでワイシャツのボタンを留め、ズボンに手を伸ばした。
「あのー……」
突然誠の隣で声がした。驚いた誠が見下ろすと小柄な浅黒い肌の少年がおずおずと誠を見上げていた。
そこにはアン・ナン・パク軍曹の姿があった。意外な人物の登場に誠は思わず飛びのいた。
「いつからいたんだ!」
「はじめからいたんですけど……僕ってそんなに存在感無いですか?」
そう言って流し目を送ってくるアンに正直誠は引いていた。毎晩夜間中学に通っているアンは彼氏とホテルに通うのが日課となっていた。それがほぼ毎日続くうえに、土日などの休日には一日中デートをしているらしいので二人の関係が何処までただれたものになっているのか想像するのが運航部の一部女子の間で流行っていた。そして、その女子にとってその彼氏からアンを奪還しようと誠が企んでいると言ういわれも無いデマが流されていた。そのデマの発信源がおそらくアメリアであることは誠には十分予想がついていた。
誠はその言葉の意味がわかるだけに目を潤ませて誠に視線を送るアンをゆっくりと後ずさりながら眺めていた。確かに上半身裸でシャツを着ようとするアンはとても華奢でかわいらしく見えた。そしてそれなりに目鼻立ちのはっきりしたところなどは『あっさり系美少年』と言われる西、そして『男装の麗人』かえでと運行部の女性士官達の人気をわけていることも納得できた。
「魔法少女。がんばってくださいね。同じ『男の娘』として応援してます!」
アンはそう声をかけてにっこりと笑った。誠は半歩後ずさって彼の言葉を聞いていた。
「アン、言っとくけど俺は『男の娘』じゃないから。そんなものに決まったわけじゃないから。同じ『男の娘』って……僕は毎日ラブホテルに通ったりはして無いんだけど。それにグリファン中尉の合体ロボならそれはそれで良いんじゃないかと今では思ってるんだよ。俺が魔法少女をやるくらいなら」
「駄目です!」
突然アンは大きな声で叫ぶ。誠は結ぼうとしたネクタイを取り落とした。
「ああ、変ですね……変ですよね……僕……」
誠は『変だという自覚はあるんだな』と思いながらもじもじしたままいつまでも手にしたワイシャツを着ようとしないアンから逃れるべくネクタイを拾うとぞんざいにそれを首に巻こうとした。
「気がつきませんでした!僕が結んで差し上げます」
そう言って手を伸ばしてくるアンに誠は思い切り飛びずさるようにしてその手をかわした。アンは一瞬悲しそうな顔をするとようやくワイシャツに袖を通した。
「でも一度でいいから見たいですよね……先輩の……」
誠が考えていることは一つ。更衣室から一刻も早く抜け出すこと。誠はその思いでネクタイを結び終えるとすばやくハンガーにかけられた制服を手にして、ぞんざいにロッカーからベルトを取り出した。
「そんなに……僕のこと嫌いですか?」
更衣室の扉にすがり付いてアンはつぶやいた。誠はそれを横目に見ながら勢いでネクタイを結んだ。
「いや……その……」
誠の背筋が凍った。仕方なく振り返るとそこには明らかに甘えるような視線を誠に向けるアンがいる。誠は戻って震える手でロッカーを閉めようとするが、アンはすばやくその手をさえぎった。そして左の手に長いものを持ってそれを誠の方に向けた。
「ごめんなさい!わ!わ!わ!」
誠は思わずアンに頭を下げていた。だが、アンが手にしていたのは誠の常備している刀、『バカブの剣』だった。黒い鞘に収められた太刀が静かに誠の腰のベルトに釣り下がるのを待っていた。
「これ、忘れてますよ」
アンはそれだけ言うとにっこりと笑う。誠はあわててそれを握ると逃げるように更衣室を飛び出した。
うなだれる誠の肩に大野は手をやった。
「まあ安心しろ。俺もオメエの魔法少女コスは見たくねえからな。こっちの選挙対策委員長は班長だぜ。それにうちの情報将校も味方にいるんだ。絶対に勝ってみせる!それに東和の軍と警察だけが投票権を持ってるって誰が決めた?そっちがルールを変えるんならこっちもそれに合わせてルールを変える……まあ見てろ。勝利はいつも栄光の整備班に輝く物なんだよ」
大野はそう力強く言った。誠は明らかに問題の根本が摩り替えられつつある現状に気づいて頭を抱えた。
「とっとと着替えないとクバルカ中佐が切れるぞ!」
そう言うと大野は更衣室から出て行った。誠は急いでワイシャツのボタンを留め、ズボンに手を伸ばした。
「あのー……」
突然誠の隣で声がした。驚いた誠が見下ろすと小柄な浅黒い肌の少年がおずおずと誠を見上げていた。
そこにはアン・ナン・パク軍曹の姿があった。意外な人物の登場に誠は思わず飛びのいた。
「いつからいたんだ!」
「はじめからいたんですけど……僕ってそんなに存在感無いですか?」
そう言って流し目を送ってくるアンに正直誠は引いていた。毎晩夜間中学に通っているアンは彼氏とホテルに通うのが日課となっていた。それがほぼ毎日続くうえに、土日などの休日には一日中デートをしているらしいので二人の関係が何処までただれたものになっているのか想像するのが運航部の一部女子の間で流行っていた。そして、その女子にとってその彼氏からアンを奪還しようと誠が企んでいると言ういわれも無いデマが流されていた。そのデマの発信源がおそらくアメリアであることは誠には十分予想がついていた。
誠はその言葉の意味がわかるだけに目を潤ませて誠に視線を送るアンをゆっくりと後ずさりながら眺めていた。確かに上半身裸でシャツを着ようとするアンはとても華奢でかわいらしく見えた。そしてそれなりに目鼻立ちのはっきりしたところなどは『あっさり系美少年』と言われる西、そして『男装の麗人』かえでと運行部の女性士官達の人気をわけていることも納得できた。
「魔法少女。がんばってくださいね。同じ『男の娘』として応援してます!」
アンはそう声をかけてにっこりと笑った。誠は半歩後ずさって彼の言葉を聞いていた。
「アン、言っとくけど俺は『男の娘』じゃないから。そんなものに決まったわけじゃないから。同じ『男の娘』って……僕は毎日ラブホテルに通ったりはして無いんだけど。それにグリファン中尉の合体ロボならそれはそれで良いんじゃないかと今では思ってるんだよ。俺が魔法少女をやるくらいなら」
「駄目です!」
突然アンは大きな声で叫ぶ。誠は結ぼうとしたネクタイを取り落とした。
「ああ、変ですね……変ですよね……僕……」
誠は『変だという自覚はあるんだな』と思いながらもじもじしたままいつまでも手にしたワイシャツを着ようとしないアンから逃れるべくネクタイを拾うとぞんざいにそれを首に巻こうとした。
「気がつきませんでした!僕が結んで差し上げます」
そう言って手を伸ばしてくるアンに誠は思い切り飛びずさるようにしてその手をかわした。アンは一瞬悲しそうな顔をするとようやくワイシャツに袖を通した。
「でも一度でいいから見たいですよね……先輩の……」
誠が考えていることは一つ。更衣室から一刻も早く抜け出すこと。誠はその思いでネクタイを結び終えるとすばやくハンガーにかけられた制服を手にして、ぞんざいにロッカーからベルトを取り出した。
「そんなに……僕のこと嫌いですか?」
更衣室の扉にすがり付いてアンはつぶやいた。誠はそれを横目に見ながら勢いでネクタイを結んだ。
「いや……その……」
誠の背筋が凍った。仕方なく振り返るとそこには明らかに甘えるような視線を誠に向けるアンがいる。誠は戻って震える手でロッカーを閉めようとするが、アンはすばやくその手をさえぎった。そして左の手に長いものを持ってそれを誠の方に向けた。
「ごめんなさい!わ!わ!わ!」
誠は思わずアンに頭を下げていた。だが、アンが手にしていたのは誠の常備している刀、『バカブの剣』だった。黒い鞘に収められた太刀が静かに誠の腰のベルトに釣り下がるのを待っていた。
「これ、忘れてますよ」
アンはそれだけ言うとにっこりと笑う。誠はあわててそれを握ると逃げるように更衣室を飛び出した。
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