法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

文字の大きさ
58 / 201
第十章 犠牲者の上に立つ勝利

第58話 きっかけを作っておいて

しおりを挟む
「よう!元気してたか?」 

 突然会議室の扉が開き、入ってきたのは嵯峨だった。雪駄の間抜けな足音が会議室にこだまする。

「隊長、なんですか?今手が離せないんで、仕事が有るんなら後にしてください」 

 菰田の作業を注視していたアメリアが顔をあげた。嵯峨は頭を掻きながらそれを無視すると義娘のかえでなどを眺めながら誠に歩み寄った。

「やっぱり、お前はたいしたもんだなあ……神前の絵はいつもの卑猥な画像と違ってこうして一般にお見せできるのを描かせても一流だな。なんで美大を目指さなかったの?やっぱり理系の方が就職に有利だとか考えてた?だとしたらご愁傷様だな。うちみたいなところしか引き受け手が無かったんだから」 

 誠の書き上げたイラストを嵯峨はしみじみと見つめた。

「叔父貴がなんで居るんだ?そんなに暇なのか?今度来る強力な機体の搬入の調整とか仕事はいくらでもあるだろうに」 

 かなめはつっけんどんにこの歓迎されざる客にそうツッコんだ。

「仲間はずれかよ、傷つくなあ。一応、俺はここの隊長だぜ。もうちょっと敬意を持ってもらいたいもんだけどな。それにその機体『武悪』の搬入手続きの関係の仕事はとっくに終わってるよ。俺は仕事が早い男なの」 

 嵯峨はそう言いながらふらふらと端末を操作している菰田の方に歩いていった。

「あちらはサラが空回りしていたけどこっちはかなり組織的みたいだねえ。神前が絵を描いて、それをルカが加工して、菰田がネットに上げる。普段の仕事でもこういうチームワークで効率よく仕事をしてくれると助かるんだけどね」 

 そう言うとアメリアが立ちはだかって見えないようにしている端末のモニターを、背伸びをして覗き込もうとした。

「一応秘密ですから。敵に寝返る可能性のある人物にはお見せできません」 

 アメリアに睨みつけられて肩を落す嵯峨はそのまま会議室の出口へと歩いていった。

「ああ、そうだ。一応これは本職じゃないから、あと30分で全員撤収な。役所も最近じゃ労働時間管理にはうるさいんだ。その辺のことも考えておくように」 

 そう言い残して嵯峨は出て行った。誠がその言葉に気がついたように見上げれば窓の外はすでに闇に包まれていた。

「え、五時半?うそでしょ?」 

 アメリアの言葉に全員が時計に目をやった。

「省エネ大臣の高梨参事が来ないうちってことですかね。あの人が来てからさらに経費関係の無駄遣いは厳しく取り締まられるようになりましたから」 

 手だけはすばやくタイピングを続けながら菰田がつぶやいた。誠もこれが明らかに仕事の範囲を逸脱しているものだということは分かっていた。もうそろそろ配属6ヶ月を過ぎて、おそらくこの馬鹿騒ぎは嵯峨と言う中央から白い目で見られている危険人物が隊長をやっているから許されるのだろうとは理解していた。おかげで司法局実働部隊の評価が中央では著しく低いことの理由もみてとれた。

「じゃあ誠ちゃんとカウラとルカは撤収準備をお願い。ちょっと片付け終わったら付き合ってくれるかしら」 

「アタシはどうすんだ?仲間外れかよ。覚えてろよ。そんなこと言うとオメエの映画の出演を拒否するからな!」 

 タバコから戻ってきたかなめが不機嫌そうに叫んだ。同じように菰田が手を止めてアメリアを見上げ、かえでとリンがつまらなそうな視線をアメリアに投げた。

「もう!いいわよ!みんな最後までやりたいんでしょ!じゃあ来たい人は着替え終わったら駐車場に集合!続いての活動は下士官寮でと言うことでいいわね!」 

 そんなアメリアの言葉に全員が納得したと言うように片づけを始めた。誠はデザイン途中のキャラクターの絵をどうしようか悩みながらペンタブを片付けていた。

「途中みたいだが良いのか?」 

 カウラはそう言うと描き途中の絵を手にしていた。何枚かの絵を眺めていたカウラの目がエメラルドグリーンの髪の女性の姿を前にして止まった。

「これは私だな」 

 そう言いながらカウラは複雑そうな笑みを浮かべた。『南條家長女』と誠の説明書きが入ったその絵の女性の胸は明らかにカウラのそれに似て平原だった。

「神前……まあ良いか」 

 以前のカウラには聞かれなかったような明るい調子の声がしたのを確認すると誠は肩をなでおろした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...