法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

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第十八章 サイボーグの嫉妬

第88話 生身を羨むサイボーグ

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「一応、今日は僕達はアメリアさんの手伝いをするために来たと思うんですけど。銃を撃ちに来たわけじゃ無いですよ」 

 誠はかなめの機嫌を損ねないように恐る恐るそう切り出した。

「はぁ?あのアホの手伝いなんてするために来たんじゃねえよ、アタシは。あいつがアホなことしてうちの部隊に迷惑をかけないかどうか監視しに来たんだ。手伝い?そりゃあ絵が描ける神前がやれば良いことじゃねえか。アタシにできる事なんて何もねえよ」 

 そう言うと、かなめは射撃レンジを占領した。そしていつものように数秒で全弾をターゲットの胸元に叩き込むと空のマガジンを取り出した。

「そうですの。じゃあここで無駄に弾を消費するのは目的とは反しているわけではなくて?さっさとクラウゼ中佐の監視にお行きなさいな」 

 不意を突かれた茜の一言にかなめは戸惑ったように視線を泳がせた。

「茜が言うんじゃ仕方ねえな。ちょっと待ってろ、片付けたら行くから。確かに茜の言う通りアメリアを放置しておくとろくなことが起きねえ」 

 かなめはまるで子供のように口を尖らせながら自分が使っていたレンジにとって返した。そのまま保管庫にかけていた上着を着込み、素早くガンベルトを巻いてテーブルに弾薬が空の拳銃のマガジンを置いた。

 その動作を一通り見ていた誠はそのまま彼女の隣に座った。かなめは相変わらず拗ねた子供のような表情で、誠に視線を合わせようともせずただ弾薬の入った箱からS&W40弾を一発ずつ取り出してはマガジンにこめていった。

 その隣のレンジに置かれた丸椅子に腰掛けた誠は黙ってその様子を見つめていた。

「オメエもさ……」 

 突然いつもの棘のあるような言葉の響きとは違う力の抜けた調子でかなめが話を切り出した。いつもならタレ目で馬鹿にしたように誠をにらみつけるはずのかなめが悲しそうに自分の手元を見つめていた。

「どうせ、『許婚』のかえでやカウラやアメリアがいいんだろ?アタシなんかこの『機械の身体』だ。作りもののお人形だ。人形の相手なんかつまらねえだろ?どうせ抱くなら生身が良いんだろ?言ってみろよ、正直なところ。本音で行こうや、お互い」 

 誠はただ黙って一発一発の弾丸を見極めながらマガジンに装弾するかなめを見つめていた。人口筋肉の強化が進んでいる今、か細い女性のように作られているかなめの体はいかにも脆く儚げに見えた。

「いいんだぜ、私みたいな作り物の体の持ち主なんかに関わるのはごめんなんだろ?それにオメエも知ってるだろうが非正規部隊の女工作員の仕事なんて……体を売って何ぼだ」 

 最後の言葉を飲み込んだかなめは装弾を終えたマガジンを握った拳銃に叩き込んだ。そして誠をにごった目で見つめた。誠は配属直後に起きた『近藤事件』の後、隊の人間の素性についてネットで調べて見たことがあった。

 ランは10年前の遼南内戦での輝かしい功績が目に付いた。そんな経歴を見渡してみてもかなめの情報はほとんど見つけることができなかった。アングラサイトでかなめの情報を拾った。

 それを見つけたのは偶然だった。先輩の島田から聞かされたパスワードでランダムで再生していたアダルトサイトの一件の動画だった。そこに五、六人の怪しげな男にかこまれている女の姿があった。一人の男が画面を拡大しようと手をカメラに伸ばした瞬間、胸をさらけ出している女に手を伸ばした男が悲鳴を上げ、血しぶきが画面を覆った。

 返り血を浴びて画面に映し出される女の顔。それはどう見てもかなめだった。誰が何のためにその動画をサイトに乗せたのかはわからない。だが、5年前には甲武陸軍の特殊作戦集団の一員として東都にいたと言うことは同盟厚生局の違法法術研究の摘発の際にかなめの口からも知らされていた。

 当時、甲武陸軍は財政の危機に直面していたとされている。遼帝国からの薬物や違法採掘資源の密輸ラインが寸断されたことで新たな活路として南方の失敗国家がならぶ大陸ベルルカンからのルートが開拓された。その非合法物資ルートをめぐり裏社会や非正規活動の資金を稼ぐためにさまざまなシンジケートと甲武陸軍が抗争劇を繰り広げたことは誠もニュースで散々聞かされたものだった。

 そんな血に彩られた東都湾岸地区のシンジケート達の攻防、俗に言う『東都戦争』にかなめが関わるとしたらあの動画のようなことを彼女がしていたとしても不思議ではない。そう考えると誠はかなめのことは何も知らないころに気づいた。

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