88 / 201
第十八章 サイボーグの嫉妬
第88話 生身を羨むサイボーグ
しおりを挟む
「一応、今日は僕達はアメリアさんの手伝いをするために来たと思うんですけど。銃を撃ちに来たわけじゃ無いですよ」
誠はかなめの機嫌を損ねないように恐る恐るそう切り出した。
「はぁ?あのアホの手伝いなんてするために来たんじゃねえよ、アタシは。あいつがアホなことしてうちの部隊に迷惑をかけないかどうか監視しに来たんだ。手伝い?そりゃあ絵が描ける神前がやれば良いことじゃねえか。アタシにできる事なんて何もねえよ」
そう言うと、かなめは射撃レンジを占領した。そしていつものように数秒で全弾をターゲットの胸元に叩き込むと空のマガジンを取り出した。
「そうですの。じゃあここで無駄に弾を消費するのは目的とは反しているわけではなくて?さっさとクラウゼ中佐の監視にお行きなさいな」
不意を突かれた茜の一言にかなめは戸惑ったように視線を泳がせた。
「茜が言うんじゃ仕方ねえな。ちょっと待ってろ、片付けたら行くから。確かに茜の言う通りアメリアを放置しておくとろくなことが起きねえ」
かなめはまるで子供のように口を尖らせながら自分が使っていたレンジにとって返した。そのまま保管庫にかけていた上着を着込み、素早くガンベルトを巻いてテーブルに弾薬が空の拳銃のマガジンを置いた。
その動作を一通り見ていた誠はそのまま彼女の隣に座った。かなめは相変わらず拗ねた子供のような表情で、誠に視線を合わせようともせずただ弾薬の入った箱からS&W40弾を一発ずつ取り出してはマガジンにこめていった。
その隣のレンジに置かれた丸椅子に腰掛けた誠は黙ってその様子を見つめていた。
「オメエもさ……」
突然いつもの棘のあるような言葉の響きとは違う力の抜けた調子でかなめが話を切り出した。いつもならタレ目で馬鹿にしたように誠をにらみつけるはずのかなめが悲しそうに自分の手元を見つめていた。
「どうせ、『許婚』のかえでやカウラやアメリアがいいんだろ?アタシなんかこの『機械の身体』だ。作りもののお人形だ。人形の相手なんかつまらねえだろ?どうせ抱くなら生身が良いんだろ?言ってみろよ、正直なところ。本音で行こうや、お互い」
誠はただ黙って一発一発の弾丸を見極めながらマガジンに装弾するかなめを見つめていた。人口筋肉の強化が進んでいる今、か細い女性のように作られているかなめの体はいかにも脆く儚げに見えた。
「いいんだぜ、私みたいな作り物の体の持ち主なんかに関わるのはごめんなんだろ?それにオメエも知ってるだろうが非正規部隊の女工作員の仕事なんて……体を売って何ぼだ」
最後の言葉を飲み込んだかなめは装弾を終えたマガジンを握った拳銃に叩き込んだ。そして誠をにごった目で見つめた。誠は配属直後に起きた『近藤事件』の後、隊の人間の素性についてネットで調べて見たことがあった。
ランは10年前の遼南内戦での輝かしい功績が目に付いた。そんな経歴を見渡してみてもかなめの情報はほとんど見つけることができなかった。アングラサイトでかなめの情報を拾った。
それを見つけたのは偶然だった。先輩の島田から聞かされたパスワードでランダムで再生していたアダルトサイトの一件の動画だった。そこに五、六人の怪しげな男にかこまれている女の姿があった。一人の男が画面を拡大しようと手をカメラに伸ばした瞬間、胸をさらけ出している女に手を伸ばした男が悲鳴を上げ、血しぶきが画面を覆った。
返り血を浴びて画面に映し出される女の顔。それはどう見てもかなめだった。誰が何のためにその動画をサイトに乗せたのかはわからない。だが、5年前には甲武陸軍の特殊作戦集団の一員として東都にいたと言うことは同盟厚生局の違法法術研究の摘発の際にかなめの口からも知らされていた。
当時、甲武陸軍は財政の危機に直面していたとされている。遼帝国からの薬物や違法採掘資源の密輸ラインが寸断されたことで新たな活路として南方の失敗国家がならぶ大陸ベルルカンからのルートが開拓された。その非合法物資ルートをめぐり裏社会や非正規活動の資金を稼ぐためにさまざまなシンジケートと甲武陸軍が抗争劇を繰り広げたことは誠もニュースで散々聞かされたものだった。
そんな血に彩られた東都湾岸地区のシンジケート達の攻防、俗に言う『東都戦争』にかなめが関わるとしたらあの動画のようなことを彼女がしていたとしても不思議ではない。そう考えると誠はかなめのことは何も知らないころに気づいた。
誠はかなめの機嫌を損ねないように恐る恐るそう切り出した。
「はぁ?あのアホの手伝いなんてするために来たんじゃねえよ、アタシは。あいつがアホなことしてうちの部隊に迷惑をかけないかどうか監視しに来たんだ。手伝い?そりゃあ絵が描ける神前がやれば良いことじゃねえか。アタシにできる事なんて何もねえよ」
そう言うと、かなめは射撃レンジを占領した。そしていつものように数秒で全弾をターゲットの胸元に叩き込むと空のマガジンを取り出した。
「そうですの。じゃあここで無駄に弾を消費するのは目的とは反しているわけではなくて?さっさとクラウゼ中佐の監視にお行きなさいな」
不意を突かれた茜の一言にかなめは戸惑ったように視線を泳がせた。
「茜が言うんじゃ仕方ねえな。ちょっと待ってろ、片付けたら行くから。確かに茜の言う通りアメリアを放置しておくとろくなことが起きねえ」
かなめはまるで子供のように口を尖らせながら自分が使っていたレンジにとって返した。そのまま保管庫にかけていた上着を着込み、素早くガンベルトを巻いてテーブルに弾薬が空の拳銃のマガジンを置いた。
その動作を一通り見ていた誠はそのまま彼女の隣に座った。かなめは相変わらず拗ねた子供のような表情で、誠に視線を合わせようともせずただ弾薬の入った箱からS&W40弾を一発ずつ取り出してはマガジンにこめていった。
その隣のレンジに置かれた丸椅子に腰掛けた誠は黙ってその様子を見つめていた。
「オメエもさ……」
突然いつもの棘のあるような言葉の響きとは違う力の抜けた調子でかなめが話を切り出した。いつもならタレ目で馬鹿にしたように誠をにらみつけるはずのかなめが悲しそうに自分の手元を見つめていた。
「どうせ、『許婚』のかえでやカウラやアメリアがいいんだろ?アタシなんかこの『機械の身体』だ。作りもののお人形だ。人形の相手なんかつまらねえだろ?どうせ抱くなら生身が良いんだろ?言ってみろよ、正直なところ。本音で行こうや、お互い」
誠はただ黙って一発一発の弾丸を見極めながらマガジンに装弾するかなめを見つめていた。人口筋肉の強化が進んでいる今、か細い女性のように作られているかなめの体はいかにも脆く儚げに見えた。
「いいんだぜ、私みたいな作り物の体の持ち主なんかに関わるのはごめんなんだろ?それにオメエも知ってるだろうが非正規部隊の女工作員の仕事なんて……体を売って何ぼだ」
最後の言葉を飲み込んだかなめは装弾を終えたマガジンを握った拳銃に叩き込んだ。そして誠をにごった目で見つめた。誠は配属直後に起きた『近藤事件』の後、隊の人間の素性についてネットで調べて見たことがあった。
ランは10年前の遼南内戦での輝かしい功績が目に付いた。そんな経歴を見渡してみてもかなめの情報はほとんど見つけることができなかった。アングラサイトでかなめの情報を拾った。
それを見つけたのは偶然だった。先輩の島田から聞かされたパスワードでランダムで再生していたアダルトサイトの一件の動画だった。そこに五、六人の怪しげな男にかこまれている女の姿があった。一人の男が画面を拡大しようと手をカメラに伸ばした瞬間、胸をさらけ出している女に手を伸ばした男が悲鳴を上げ、血しぶきが画面を覆った。
返り血を浴びて画面に映し出される女の顔。それはどう見てもかなめだった。誰が何のためにその動画をサイトに乗せたのかはわからない。だが、5年前には甲武陸軍の特殊作戦集団の一員として東都にいたと言うことは同盟厚生局の違法法術研究の摘発の際にかなめの口からも知らされていた。
当時、甲武陸軍は財政の危機に直面していたとされている。遼帝国からの薬物や違法採掘資源の密輸ラインが寸断されたことで新たな活路として南方の失敗国家がならぶ大陸ベルルカンからのルートが開拓された。その非合法物資ルートをめぐり裏社会や非正規活動の資金を稼ぐためにさまざまなシンジケートと甲武陸軍が抗争劇を繰り広げたことは誠もニュースで散々聞かされたものだった。
そんな血に彩られた東都湾岸地区のシンジケート達の攻防、俗に言う『東都戦争』にかなめが関わるとしたらあの動画のようなことを彼女がしていたとしても不思議ではない。そう考えると誠はかなめのことは何も知らないころに気づいた。
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる