法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

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第二十六章 差し入れとはまり役

第118話 気遣いと和む雰囲気

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「すみませんねえ。何から何まで……神前、アン。春子さんにはいつも月島屋で世話になってる上にこんな心遣いまでしてもらってるんだ。感謝しろよ」 

 嵯峨の言葉ににこやかな笑顔を返すと春子は湯のみを並べていった。

「じゃあ行ってきまーす」 

 やる気の無い声を上げてかなめはそのまま部屋を出て行った。

「ああ、かなめさんは出番?本当に大変ねえ……でもかなめさんなら美人さんだからきっと映えるわよ」 

 湯飲みにお湯を春子は注ぎながらカウラにたずねた。

「まあそんなものですか……まあ格好が格好なので……西園寺本人も相当嫌がってます」 

 カウラは苦笑いを浮かべながらかえでのおどろおどろしい機械魔女の衣装を想像していた。

「それにしても便利ですね、東和は。こんなものを簡単に作れるなんて。僕の国には銃と大砲しかありませんでしたから。でも、内戦も終わった今は違うと思います。平和になればクンサもきっと東和みたいに豊かになれますよね」 

 アンは感心しながら画面を指差した。休憩を取っているようでおはぎを食べているアメリアと小夏の姿が映されていた。

「新さん、こんな機械を使って撮影するんですか……お高いんでしょ?」

 春子は嵯峨に画面に映っている見慣れないカプセルを指さしてそう言った。

「ああ、あの簡易型のヴァーチャル視覚システムのことですか?普通は手が出るレンタル料じゃ無いがアメリアのコネがありましてね。あいつは映画関係とかに知り合いが居るらしいから。なんでも落語家の弟子時代の兄弟子が結局落語家が続かずに放送作家になったらしくて、その人のコネで借りてきたらしいんですよ」 

 春子が置いた自分の湯飲みを手に取ると静かに茶を啜りながら嵯峨が答えた。

「そうなんですか……。それにしてもこのお茶、良い香りですね。どこのですか?」 

 自分の濃い緑色の湯飲みを手に取ったアンが誠にたずねた。

「確かこれは……」 

「遼帝国の東海よ。遼帝国出身の新さんはあそこのお茶が好きだから」 

 誠をさえぎるようにして春子が答えた。アンは分かったような分からないようなあいまいな笑みを浮かべながら頷くと茶を啜り始めた。

「東海って遼帝国産ですか。隊長のコネかなんかでがたくさん貰ってきた奴でしたっけ?隊員で分けても多すぎて月島屋にまでもっていったんですよね……」 

 そんな誠の言葉に嵯峨は表情を曇らせた。

「ここのはサラちゃんがやたら濃いのを煎れるからすぐ使い切っちゃって……今煎れてるは私が持ってきたんだけど……新さん、まずかったかしら?」 

 春子の言葉が誠に追い討ちをかける。誠は少しへこみながら美少女キャラが書かれたマグカップに入ったお茶を啜りつつ、画面が切り替わった自分の端末に目を移した。

 ランの右の握りこぶしが掲げられた場面が転換して夜のような光景になった。懐中電灯を照らしながら山道を歩くサラと小夏が見えた。

『魔法を使っちゃ駄目なの?』 

 肩に乗った手のひらサイズの小熊のグリンに小夏がたずねた。

『だーめ!勝負を決めるのは魔法の力だけじゃないんだ。瞬間的な判断力や機転、他にも動物的勘や忍耐力。まだまだ魔法以外に学ばなければならないことが一杯あるんだよ』 

『うーん。アタシは難しいことは分からないけど……』 

 そう言って小夏は苦笑いを浮かべた。『難しいことは分からない』と言う小夏の言葉に画面の前に居る誠達が一斉に頷いた。

『つまり私達自身が強くならなきゃ駄目ってことね』 

『そう言うこと。それにこの森の波動は僕が居た魔法の森の波動と似ているんだ。きっと修行には最適の場所だよ!』 

 そう言いながら二人は山道を進んだ。そして画面が切り替わり、夜中だと言うのにサングラスをかけた大男が映し出された。

「あ、明石中佐ですね。あの人来てるんですか?もしかしてアメリアさんがこの役の為だけに本局から呼び出したんですか?迷惑な話だなあ」 

 蛍光オレンジのベストに手に猟銃を持った明石清海中佐の姿がアップで映った。

「さすがのアメリアも本局から呼び出すような無謀はしない。何でも管理部の提出資料の確認に来たらしいんだがアメリアに捕まってな」 

 カウラの言葉に納得しながら誠は画面の中の明石を見ていた。

『この気配……』 

 そう明石が言うとすぐに画面は広場に出た小夏とサラのアップにさし代わった。

『じゃあいいかい。まず目を閉じてごらん』 

 グリンの言葉で小夏とサラは目を閉じた。小夏の視界のイメージ。真っ暗な世界。

『君達には見えるはずだよ、この森の姿が。そして生き物達の波動が!』 

 その言葉が終わると小夏の視界を表現していた真っ暗な画面が白く光り始めた。光の渦は木の形、草の形、鳥の形、獣達の形。さまざまに変化を遂げながら中心で微笑む全裸の小夏の心のイメージを取り巻くように流れていった。

『そう!そうすれば分かるはずだよ。そしてそうすれば生き物達の力が君達に注がれるんだ』 

 グリンの言葉とともに小夏の姿はさまざまな森の生き物達に取り巻かれるようにして森の上空へと飛び立っていった。急に暗雲が空に立ち込めた。

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