118 / 201
第二十六章 差し入れとはまり役
第118話 気遣いと和む雰囲気
しおりを挟む
「すみませんねえ。何から何まで……神前、アン。春子さんにはいつも月島屋で世話になってる上にこんな心遣いまでしてもらってるんだ。感謝しろよ」
嵯峨の言葉ににこやかな笑顔を返すと春子は湯のみを並べていった。
「じゃあ行ってきまーす」
やる気の無い声を上げてかなめはそのまま部屋を出て行った。
「ああ、かなめさんは出番?本当に大変ねえ……でもかなめさんなら美人さんだからきっと映えるわよ」
湯飲みにお湯を春子は注ぎながらカウラにたずねた。
「まあそんなものですか……まあ格好が格好なので……西園寺本人も相当嫌がってます」
カウラは苦笑いを浮かべながらかえでのおどろおどろしい機械魔女の衣装を想像していた。
「それにしても便利ですね、東和は。こんなものを簡単に作れるなんて。僕の国には銃と大砲しかありませんでしたから。でも、内戦も終わった今は違うと思います。平和になればクンサもきっと東和みたいに豊かになれますよね」
アンは感心しながら画面を指差した。休憩を取っているようでおはぎを食べているアメリアと小夏の姿が映されていた。
「新さん、こんな機械を使って撮影するんですか……お高いんでしょ?」
春子は嵯峨に画面に映っている見慣れないカプセルを指さしてそう言った。
「ああ、あの簡易型のヴァーチャル視覚システムのことですか?普通は手が出るレンタル料じゃ無いがアメリアのコネがありましてね。あいつは映画関係とかに知り合いが居るらしいから。なんでも落語家の弟子時代の兄弟子が結局落語家が続かずに放送作家になったらしくて、その人のコネで借りてきたらしいんですよ」
春子が置いた自分の湯飲みを手に取ると静かに茶を啜りながら嵯峨が答えた。
「そうなんですか……。それにしてもこのお茶、良い香りですね。どこのですか?」
自分の濃い緑色の湯飲みを手に取ったアンが誠にたずねた。
「確かこれは……」
「遼帝国の東海よ。遼帝国出身の新さんはあそこのお茶が好きだから」
誠をさえぎるようにして春子が答えた。アンは分かったような分からないようなあいまいな笑みを浮かべながら頷くと茶を啜り始めた。
「東海って遼帝国産ですか。隊長のコネかなんかでがたくさん貰ってきた奴でしたっけ?隊員で分けても多すぎて月島屋にまでもっていったんですよね……」
そんな誠の言葉に嵯峨は表情を曇らせた。
「ここのはサラちゃんがやたら濃いのを煎れるからすぐ使い切っちゃって……今煎れてるは私が持ってきたんだけど……新さん、まずかったかしら?」
春子の言葉が誠に追い討ちをかける。誠は少しへこみながら美少女キャラが書かれたマグカップに入ったお茶を啜りつつ、画面が切り替わった自分の端末に目を移した。
ランの右の握りこぶしが掲げられた場面が転換して夜のような光景になった。懐中電灯を照らしながら山道を歩くサラと小夏が見えた。
『魔法を使っちゃ駄目なの?』
肩に乗った手のひらサイズの小熊のグリンに小夏がたずねた。
『だーめ!勝負を決めるのは魔法の力だけじゃないんだ。瞬間的な判断力や機転、他にも動物的勘や忍耐力。まだまだ魔法以外に学ばなければならないことが一杯あるんだよ』
『うーん。アタシは難しいことは分からないけど……』
そう言って小夏は苦笑いを浮かべた。『難しいことは分からない』と言う小夏の言葉に画面の前に居る誠達が一斉に頷いた。
『つまり私達自身が強くならなきゃ駄目ってことね』
『そう言うこと。それにこの森の波動は僕が居た魔法の森の波動と似ているんだ。きっと修行には最適の場所だよ!』
そう言いながら二人は山道を進んだ。そして画面が切り替わり、夜中だと言うのにサングラスをかけた大男が映し出された。
「あ、明石中佐ですね。あの人来てるんですか?もしかしてアメリアさんがこの役の為だけに本局から呼び出したんですか?迷惑な話だなあ」
蛍光オレンジのベストに手に猟銃を持った明石清海中佐の姿がアップで映った。
「さすがのアメリアも本局から呼び出すような無謀はしない。何でも管理部の提出資料の確認に来たらしいんだがアメリアに捕まってな」
カウラの言葉に納得しながら誠は画面の中の明石を見ていた。
『この気配……』
そう明石が言うとすぐに画面は広場に出た小夏とサラのアップにさし代わった。
『じゃあいいかい。まず目を閉じてごらん』
グリンの言葉で小夏とサラは目を閉じた。小夏の視界のイメージ。真っ暗な世界。
『君達には見えるはずだよ、この森の姿が。そして生き物達の波動が!』
その言葉が終わると小夏の視界を表現していた真っ暗な画面が白く光り始めた。光の渦は木の形、草の形、鳥の形、獣達の形。さまざまに変化を遂げながら中心で微笑む全裸の小夏の心のイメージを取り巻くように流れていった。
『そう!そうすれば分かるはずだよ。そしてそうすれば生き物達の力が君達に注がれるんだ』
グリンの言葉とともに小夏の姿はさまざまな森の生き物達に取り巻かれるようにして森の上空へと飛び立っていった。急に暗雲が空に立ち込めた。
嵯峨の言葉ににこやかな笑顔を返すと春子は湯のみを並べていった。
「じゃあ行ってきまーす」
やる気の無い声を上げてかなめはそのまま部屋を出て行った。
「ああ、かなめさんは出番?本当に大変ねえ……でもかなめさんなら美人さんだからきっと映えるわよ」
湯飲みにお湯を春子は注ぎながらカウラにたずねた。
「まあそんなものですか……まあ格好が格好なので……西園寺本人も相当嫌がってます」
カウラは苦笑いを浮かべながらかえでのおどろおどろしい機械魔女の衣装を想像していた。
「それにしても便利ですね、東和は。こんなものを簡単に作れるなんて。僕の国には銃と大砲しかありませんでしたから。でも、内戦も終わった今は違うと思います。平和になればクンサもきっと東和みたいに豊かになれますよね」
アンは感心しながら画面を指差した。休憩を取っているようでおはぎを食べているアメリアと小夏の姿が映されていた。
「新さん、こんな機械を使って撮影するんですか……お高いんでしょ?」
春子は嵯峨に画面に映っている見慣れないカプセルを指さしてそう言った。
「ああ、あの簡易型のヴァーチャル視覚システムのことですか?普通は手が出るレンタル料じゃ無いがアメリアのコネがありましてね。あいつは映画関係とかに知り合いが居るらしいから。なんでも落語家の弟子時代の兄弟子が結局落語家が続かずに放送作家になったらしくて、その人のコネで借りてきたらしいんですよ」
春子が置いた自分の湯飲みを手に取ると静かに茶を啜りながら嵯峨が答えた。
「そうなんですか……。それにしてもこのお茶、良い香りですね。どこのですか?」
自分の濃い緑色の湯飲みを手に取ったアンが誠にたずねた。
「確かこれは……」
「遼帝国の東海よ。遼帝国出身の新さんはあそこのお茶が好きだから」
誠をさえぎるようにして春子が答えた。アンは分かったような分からないようなあいまいな笑みを浮かべながら頷くと茶を啜り始めた。
「東海って遼帝国産ですか。隊長のコネかなんかでがたくさん貰ってきた奴でしたっけ?隊員で分けても多すぎて月島屋にまでもっていったんですよね……」
そんな誠の言葉に嵯峨は表情を曇らせた。
「ここのはサラちゃんがやたら濃いのを煎れるからすぐ使い切っちゃって……今煎れてるは私が持ってきたんだけど……新さん、まずかったかしら?」
春子の言葉が誠に追い討ちをかける。誠は少しへこみながら美少女キャラが書かれたマグカップに入ったお茶を啜りつつ、画面が切り替わった自分の端末に目を移した。
ランの右の握りこぶしが掲げられた場面が転換して夜のような光景になった。懐中電灯を照らしながら山道を歩くサラと小夏が見えた。
『魔法を使っちゃ駄目なの?』
肩に乗った手のひらサイズの小熊のグリンに小夏がたずねた。
『だーめ!勝負を決めるのは魔法の力だけじゃないんだ。瞬間的な判断力や機転、他にも動物的勘や忍耐力。まだまだ魔法以外に学ばなければならないことが一杯あるんだよ』
『うーん。アタシは難しいことは分からないけど……』
そう言って小夏は苦笑いを浮かべた。『難しいことは分からない』と言う小夏の言葉に画面の前に居る誠達が一斉に頷いた。
『つまり私達自身が強くならなきゃ駄目ってことね』
『そう言うこと。それにこの森の波動は僕が居た魔法の森の波動と似ているんだ。きっと修行には最適の場所だよ!』
そう言いながら二人は山道を進んだ。そして画面が切り替わり、夜中だと言うのにサングラスをかけた大男が映し出された。
「あ、明石中佐ですね。あの人来てるんですか?もしかしてアメリアさんがこの役の為だけに本局から呼び出したんですか?迷惑な話だなあ」
蛍光オレンジのベストに手に猟銃を持った明石清海中佐の姿がアップで映った。
「さすがのアメリアも本局から呼び出すような無謀はしない。何でも管理部の提出資料の確認に来たらしいんだがアメリアに捕まってな」
カウラの言葉に納得しながら誠は画面の中の明石を見ていた。
『この気配……』
そう明石が言うとすぐに画面は広場に出た小夏とサラのアップにさし代わった。
『じゃあいいかい。まず目を閉じてごらん』
グリンの言葉で小夏とサラは目を閉じた。小夏の視界のイメージ。真っ暗な世界。
『君達には見えるはずだよ、この森の姿が。そして生き物達の波動が!』
その言葉が終わると小夏の視界を表現していた真っ暗な画面が白く光り始めた。光の渦は木の形、草の形、鳥の形、獣達の形。さまざまに変化を遂げながら中心で微笑む全裸の小夏の心のイメージを取り巻くように流れていった。
『そう!そうすれば分かるはずだよ。そしてそうすれば生き物達の力が君達に注がれるんだ』
グリンの言葉とともに小夏の姿はさまざまな森の生き物達に取り巻かれるようにして森の上空へと飛び立っていった。急に暗雲が空に立ち込めた。
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる