法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

文字の大きさ
140 / 201
第三十三章 ある意味宿命の対決

第140話 無難な役を自分に振る人

しおりを挟む
『カット!まあ……なんというか……かなめちゃん……』 

 アメリアは誠と同じくかなめの演技に呆れ果てているようだった。

「あ?何が言いてえんだ?アタシの演技に文句が有るみてえだな。大根だと言いてえのか?臭いと言いてえのか?配役したのはテメエだ。監督だろ?責任取れよ。後で顔を貸せ、射殺してやる」 

 手を引いたかなめが明らかに不機嫌そうにつぶやいた。

『まあ、良いわ。甲武のお姫様のセンスはそれと言うことにしておいてあげる。それじゃあ次のシーンね。今度は私も出るから』 

 次の小夏の中学校の担任役でアメリアが登場した。新藤はテキストで『分かった』と返事を出した。恐らくはかなめの怪演に大笑いをしているんだろう。そう思うと誠はかなめに同情してしまった。

『じゃあ皆さんはご自由にどうぞ……かなめちゃんは自重』 

「うるせえ!」 

 かなめの捨て台詞が響くと素早く周りが暗くなった。そしてしばらくたって再びカメラ目線に誠の視界が固定された。そこには小学校。特に誠には縁の無かったような制服を着た私立の小学校の教室の風景が広がっていた。小夏は元気そうに自分のスカートをめくろうとした男子生徒のズボンを引き摺り下ろした。そして彼とつるんで自分を挑発していた男子生徒達を追いかけ回し始めた。

『小夏ちゃん……』

 あまりにはまる小夏の行動に誠は自然とつぶやいていた。

 チャイムが鳴る。いかにもクラス委員といった眼鏡をかけたお嬢様チックな少女が立ち上がるのを見ると騒いでいた生徒達も一斉に自分の机に戻った。

 その時ドアに思い切り何かがぶつかったような音が響いた。そしてしばらくの沈黙の後、その長身ゆえにドアの上端に頭をぶつけたアメリアが額をさすりながらドアを丁寧に開いて教室に入ってきた。

「先生!いつもそこで頭ぶつけて……馬鹿になっちゃいますよ!」 

 先ほど小夏にズボンを下ろされていた男子生徒が指をさして叫んだ。周りの生徒達もそれに合わせて大きな声で笑い始めた。それが扉を開かずにクラスに入ろうとして額をぶつけた音だと言うのが分かり誠の頬も緩んだ。

「本当に!みんな意地悪なんだから!」 

 アメリアはしなを作りながらよたよたと教壇に向かった。なぜか眼鏡をかけているのはお約束ということで誠は突っ込まないでいるつもりだった。それ以上に自分への配役があまりにも無難なアメリアに対して怒りを覚えていた。

「はい!静かに!礼!」 

 委員長の言葉で生徒達は一斉に礼をした。

「着席!」 

 再び生徒達は一糸乱れず席に着いた。雰囲気的にはエリート子女向けの私立中学と言った感じのピリッとした緊張感がそこにあった。大学以外は公立学校で過ごしてきた誠はその一糸乱れぬ行動をする生徒たちが存在する光景に少し違和感を感じながら目の前の中学校の教室を見つめていた。アメリアの知識は脳へのプリンティングで得ているはずなので彼女の学校のイメージが良く分かった。それを見て誠はニヤニヤしながらバイザーの中の世界の観察を再開した。

「皆さん!数学の宿題はやってきましたか!」 

 アメリアはいつものように明るい口調で生徒達にそう語りかけた。

「はーい!」 

 元気な中学生達。中央の目立つ席についている小夏も元気に答えた。

『やっぱり小夏ちゃん、はまりすぎ……って本当に中学生なんだから当然か。でも小夏ちゃんも公立中学のはずだからこの雰囲気は居づらいだろうな……』 

 リアル中学生である小夏の少し緊張したような姿に誠は苦笑いを浮かべた。

「そう!みんな元気にお返事できましたね!じゃあ早速これから書く問題をやってもらうわね」 

 そう言ってアメリアは相変わらずなよなよしながら黒板にチョークで数式を書き始めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...