法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

文字の大きさ
141 / 201
第三十三章 ある意味宿命の対決

第141話 お約束と言えばお約束

しおりを挟む
『黒板ねえ……地球じゃモニターを使って授業をしてるんだよな。まあ、東和はどこまで行っても二十世紀末の日本を再現した国だから。映画を見てる人も東和人だから自然に受け止められるだろう』 

 東和の二十世紀へのこだわりにツッコミたい衝動に駆られる自分を抑えて誠はアメリアの後姿を眺めた。

『おい、神前』 

 出番の無いかなめが呼びかけてきた。

『東和もまだ甲武みたいに黒板使ってるのか?』

 かなめは甲武育ちなので東和の事を良く知らないので誠に尋ねてきた。 

『東和は二十世紀に拘る国なんで法律でそう決まってるらしいんですよ。甲武も黒板なんですか?活字の読めない西園寺さんの事だから寺子屋みたいに一人一人筆で書いてると思ってました』

 かなめの筆文字は黒板では再現できないだろうことを思い出して誠はそう答えた。

『甲武を舐めるな!甲武は『大正ロマンの国』だ!黒板くらいある!まあ、アタシは黒板の字が読めなかったから成績は最悪だったけどな』  

『なるほど』 

 納得したようにそう言うとかなめは黙り込んだ。10問の数式を書き終えたアメリアは満面の笑みで振り向いた。

「じゃあ、この問題を誰にやってもらおうかしら?」 

 アメリアがこう言うと一斉に手を上げる子供達。だが、小夏は身を縮めてじっとしていた。

「あら?小夏ちゃんどうしたの?」 

 ポロリとアメリアがそう言うと周りの生徒達が小夏に目を向けた。

「あ!こいつ計算苦手だからな!」 

「そうだよ!南條は数学できないからな!」 

 二人の男の子がそう言って笑った。それを見て怒ったように頬を膨らませた小夏が手を上げた。

「そんなこと無いよ!先生!私を指名してください!」 

 勢いよく立ち上がる小夏にアメリアは困ったような顔をした。

「良いの?本当に」 

「大丈夫です!」 

 そう言うと小夏はそのまま黒板に向かった。背の小さい彼女は見上げるようにして一番最初の数式を見つめた。そしてゆっくりと深呼吸をした。

『これって設定上は苦戦するはずだよな。アイツは神前と同じで典型的な理系脳だから簡単に解いちまうぞ。そしたら後々設定と矛盾することになるんじゃねえのか?』 

『そうですね……でも小夏ちゃんはいつも月島屋でお客さんの相手をして空気を読むのを覚えてますから。僕よりは上手く数学苦手キャラを演じられると思いますよ』 

 かなめの言葉に誠も余裕を持って小夏の方を眺めた。いわゆる鶴亀算の書かれた黒板の文字を凝視する小夏。彼女はゆっくりとチョークを手に持った。

『分かるものを分からない演技をするのは難しいだろ?あの雌餓鬼にそんな器用なことが出来るのか?』 

 小夏の動きが止まったのを見てかなめの口が重くなる。

 しばらく経つ。そしてチョークを手にした腕を持ち上げる。

『大丈夫なんだろうな』 

 小夏は一瞬だけ黒板に触れたがすぐに手を引っ込めた。

『おい!』 

 その姿に誠とかなめは同時に突っ込みを入れていた。

 誠は黒板の前で困った顔をしている小夏を見て問題を読み始めた。答えはすべて5。第一問さえ分かれば他の問題もすべて答えられるものだった。

 だが、小夏は困った顔でアメリアを見つめた。誠はここまではおバカキャラを上手く演じている小夏に感心していた。

「あらー南條さん、分からないのかな?」 

 アメリアは冷や汗を流しながらヒロイン南條小夏役の小夏を見つめる。小夏はすぐに隣にあった椅子を指差した。

「先生!届かないからこれを使って良いですか?」 

「良いわよ!」 

 さすがにこの問題が分からないわけが無いだろうとアメリアはほっとしてそれを許可する。小夏はそのままその椅子を運んでくると一番上の問題の下にそれを置いた。

 小夏はそのまま問題と見詰め合った。

『アメリアが簡単すぎる問題を出したから怒ってるんじゃねえの?アイツにもプライドくらいあるだろ?叔父貴と違って』 

 かなめはそう言ってあまり仲の良くない小夏を気遣った。

『アメリアさんはラスト・バタリオンだから学校とか行ったこと無いですからね。先生がどういう物かはたぶんアニメでしか知らないと思いますよ。でも、ロールアウトした時から大学の数学科でやるような高等数学がスラスラ解けるんですから。ある意味羨ましいですけど』 

 小夏はしばらくうなった後、すらすらと答えを黒板に書き始めた。あまりにも自然に書き続ける様は最初から答えなど分かっていたというようにしか見えなかった。

『あーあ、不自然。これまずいんじゃないですか?』 

 小夏が楽しげに中学生としては結構難しい数式の答えを書いていく有様に誠は呆れた。

『所詮は中学生だ。分かる答えは書きたくなるんだろ?あれだけためたから勉強ができないキャラはクリアーしたんだぞってな感じで』 

 かなめはそう言って乾いた笑いを漏らした。そのまま小夏はすべての解答に5と言う数字を書き込むと意気揚々と自分の席に戻った。

「凄いわね小夏ちゃん!全部正解よ!」 

 アメリアは明らかに不自然な小夏の行動をとがめるわけにも行かず歯が浮くような白々しさでそう言ってのけた。

「すげー南條。お前いつ勉強してたんだ?」 

「何よ!あなた達が勝手に思い込んでいただけじゃないの。ねえ、南條さん」 

 明らかに小夏の間違いを期待していた男子に言い返す女子。いかにも中学校の教室の雰囲気が出来上がって誠はなんとか胸をなでおろした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...