法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

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第四十一章 かなり無理のある展開

第168話 空気を読まない『駄目人間』

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「そう言えばみんな休みなんだね。撮影は一段落ついたんだ。もうそろそろ俺の出番だろうなあと思って自分から来てみたんだ。偉いでしょ?」 

 明らかに空気を無視した嵯峨の登場にアメリアは目を潤ませる。嵯峨はその尋常ならざる気配に思わず後ずさりをする。

「さっきの神前の俺を見る目と言い、俺のことなんか噂してた……ような雰囲気だな」 

 頭を掻きながら目にしたのはアメリアの鋭い視線だった。さすがの嵯峨も焦ったように身を引いた。

「クラウゼ、ちょっとその目、怖いんだけど」 

 そう言う嵯峨の前まで早足で近づいたアメリアは嵯峨の両手を取って瞳を潤ませた。

「隊長!た・す・け・て・くださいー!昔、小説書いてたんでしょ?物語の一つや二つ簡単に作れるんでしょ?『悪内府』と甲武で呼ばれてる切れ者なんでしょ?お願いしますよ!」 

 泣きついて来るアメリアにしなだれかかられて鼻の下を伸ばす嵯峨だが、その視線の先に春子と小夏、そしてかなめがいるのを見てアメリアを引き剥がした。

「なんだよ、そんなにひどい出来には見えなかったけどな。予定よりは。まあ、かえでとリンは予想通り危ないシーンが連発してたからそこは編集でカットしてね。それとかなめ坊がマゾに目覚めちゃったのは計算外だな……まあいいか、これでかえでのストレスが少しでも減って第二小隊の本稼働の時にちゃんと仕事をしてくれるようになれば願ったりかなったりだ」 

「見てたんですね!隊長!ひどいですよ!あれでしょ?隊長は甲武の高等予科時代に書いた作品があったとか……」 

 アメリアの言葉に少し首をひねった後、嵯峨はかなめに困ったような顔を向けた。

「いいじゃねえか。知恵ぐらい貸してやれよ」 

 ニヤニヤ笑いながらそう言うかなめを見つめて嵯峨はさらに困惑した表情になった。

「ああ、学生時代の話ね。俺はどっちかというと散文は苦手でね。都都逸(どどいつ)や和歌なんかの韻文はそれなりには自信があったけど。俺って長い小説とか書くの苦手なんだ。書いても掌編程度。まあ、原稿用紙で二三枚かな。ストーリーなんて無いよ。いわゆる私的な日常の感想を書いた私小説。俺って想像力はあまり無い方だから。俺は現実主義者なの」

 嵯峨はそう言い切るのを見てアメリアはがっくりとうなだれた。 

「インブン?サンブン?」 

 嵯峨の言葉に小夏はいつものように一人でパニックに陥っているその肩を叩いたカウラが小夏に寄り添うように立った。

「韻文というのは詩だ。語彙のバリエーションや言葉の響きの美しさを求める文章だ。そして散文は小説や評論なんかだな。意味や内容、構築する技術が求められる」 

 そう言うカウラに小夏は分かったような分からないような表情で答える。誠はどちらかと言えば小夏は理解していないと踏んでいた。

「どっちでもいいけどよー。要するに隊長は多少は物語の良し悪しが分かるんだろ?じゃあなんで前もってこいつに教えてやんなかったんだよ。そりゃーちょっと上司として冷てーんじゃねーか?せっかく自分で仕事を振っといてそのままってのは人としてどーかと思うぞ」 

 嵯峨の後ろで腕組みをしながらランがそう言った。会議室の全員が嵯峨に視線を向けた。

「だってさあ、こいつがこう言うことに才能を開花させちゃったりしたら大変だろ?うちにはこいつが必要だからな。うちは必要最低限の人材で回してるの。一人でも抜けたら部隊が立ちいかなくなるんだ。そんなもん副隊長やってるお前さんが一番良く分かってるじゃないか。だからアメリアには今回の映画では失敗作を作ってもらう。それが今回の俺の策。俺って策士だから当然そこまで読んでるんだ」 

 そう言って嵯峨は落ち込んでいるアメリアの肩を叩いた。

「あのー。私はこっちの分野は才能を開花させたいんですけど……そっちの方が華やかで素敵じゃないですか?」

 アメリアは同人エロゲーム原作者から映画監督へ上り詰めることを夢見ていた。 

「安心しろ!そうなったら俺が全力で潰してやる。こう言うのの権利関係は法律が結構しっかりしててね。いくらでも落とし穴が掘れるんだ。だからそれだけは阻止してやるから安心して撮影に集中してね」 

 嵯峨は満面の笑みを浮かべて窓際でいくつも並べたモニターを眺めている新藤に目をやった。監督はそれを察して了解したとでも言うように黙って手を上げた。

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