【改訂版】特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第一部 『特殊な部隊始まる』

橋本 直

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運用艦『ふさ』と『特殊な趣味』の連中

第93話 まるで遊覧船のような内装

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「どーだ、『特殊な部隊』の自慢の運用艦は」 

 『ふさ』への連絡橋の前にはクバルカ・ラン中佐が立っていた。

「じゃあ、私達はこれで」

 そう言ってアメリアとかなめは去っていく。カウラも『ふさ』にある『パチンコ台コレクション』にでも行くようにその後を追った。

 ランの小さな体の向こうには巨大な『ふさ』の船体が見えた。

「大きいですね」 

 誠はランの言葉に率直な感想を述べた。

 『偉大なる中佐殿』の顔は明らかに期待はずれの答えを誠が出したと言うような呆れた顔をしていた。

「でかいって言うなら東和共和国の宇宙軍の戦艦にはもっとでけーのがあるぞ。……ってまーこいつの凄さは外から見てわかるもんじゃねーかんな」 

 そうして連絡橋にたどり着いた二人は、大きなコンテナを積んだトレーラーの後ろを歩いていく。

 誠達は連絡橋を渡り、艦の中に入った。東和軍の所有の軍艦なら何度か乗せられた経験もある。これまで誠が乗った艦より『広すぎる』ように感じる倉庫の中を嵯峨に導かれるようにして歩く。

「ここまでは普通」 

 ランはそう言うとこの区画の端に設けられたエレベータの中に乗り込んで、誠が入ったのを確認して上昇のボタンを押した。ドアが閉まり沈黙が訪れた。

 そしてドアが開く。そこで初めて誠はランの言葉の意味を知った。

 生活区画の通路は、以前、誠が宇宙での各種戦闘技術の訓練のために乗った輸送艦の数倍の幅がある。

「巡洋艦って凄いんですね……」 

 誠の声にランは笑いながら振り向く。

「これは特別だ。遼州星系の艦は『ある理由』から他の星系の戦闘艦より兵隊を多く載せるんだが、うちは『特殊な部隊』で『武装警察』の側面もあるから、人員は他の戦闘艦に比べてすくねーんだ。だからこんなに広い」 

 しばらくしてエレベーターは艦の中央部のスペースで停止した。

「吐きすぎて腹が空いたろ。飯にしよーや。ここの飯はすっげーうめーぞ」

 開いた扉からランは『ちょこん』と降りる。誠はその後に続いて広めのエレベーターから降りた。

 その階は共有スペースのようだったが、やはり『釣り部』の支配地域であることが誠にも分かった。

「なんで……壁中に『魚拓』が貼ってあるんですか?」

 悠然と歩く『偉大なる中佐殿』に誠は尋ねた。

「『魚拓』だけじゃねーぞ。写真もいっぱいある」

 ランはそう言って食堂らしい扉の脇に張られた写真を指さす。

 そこには巨大なカジキマグロを釣り上げた女性と、それを祝福する『釣りマニア』達の姿があった。ちゃんと『遼州同盟・司法局実働部隊・艦船管理部・医務班』と言う垂れ幕まで映り込んでいる。よく見ると釣り上げた女性が特殊な部隊の癒しの象徴である神前ひよこ軍曹であることが分かって誠は呆れつつ苦笑いを浮かべた。

「『艦船管理部』って……『ふさ』の他にも船があるんですか?」

 誠を置いて食堂に入ろうとするランに慌てて声をかけた。

「あったりめーだ!奴等は『世間から後ろ指をさされる』ぐれーの根性の入った『釣り人』だ。遼州星系から『漁業業界』や『海運業界』から続々と『猛者』達が集結した」

 自信をもって誠を見上げるランを見ながら誠は思った。

『この船『軍艦』なんですけど』

 当然、気の弱い誠は『偉大なる中佐殿』にそんなことは言えなかった。

「それだけじゃねーぞ。他にも『医療関係者』。意外とこの業界には『釣りの為なら患者も殺す』ような、根性の座った奴が多い。あと、『元傭兵』もいる。奴等は銃撃戦の最中も『釣り』のために『仲間の死』すら恐れなかった『プロフェッショナル』だ!」

「そんな医者や傭兵は嫌ですよ、そんな人達と一緒にいるのは。僕は死にたくないんで」

 誠のまともなツッコミを完全に無視してランは食堂の奥のテーブルに腰かけた。誠は仕方なく彼女の正面に座る。

「おい!アレだ!」

 ランは食堂の奥に向かって叫んだ。

 誠はここで周りの『特殊な部隊』の先輩達が『船盛』や『盛り合わせ寿司』を食べていることに気づいた。

「さすがに……『軍艦』ですからね……魚料理しか無いってことは……」

 そう言ってみたものの、ランの前に並んだものを見て誠は自分が甘かったことに気づいた。

 それは金目鯛の煮つけ、そして……。

「やっぱりここに来たら『キンメの煮つけ』と当然……これだ!注げ、神前!」

 ランはそう言って徳利にしか見えないものを誠に差し出す。

「アタシは34歳だからな!合法だ!オメーは上寿司がいーか?」

 そう言って『偉大なる中佐殿』は冷えた小さな日本酒用のグラスを差し出す。

 彼女の萌え萌えな表情と対照的なグラスを持つ慣れた手つきに、誠は引きつり笑いを浮かべた。

「……普通の寿司でいいです」

 たぶんこのまま演習の間は魚しか食べられないだろう。

 誠はそう思いながら、自分が魚好きだったことを母に感謝した。
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