引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい

鈴木竜一

文字の大きさ
表紙へ
81 / 82
連載

書籍発売記念SS 若かりし頃(?)の黄金世代とオーリン

しおりを挟む
 これは、オーリンがまだ賢者を引退するより一年以上前の話――

「ブリッツ? 用事って何?」

 この日、のちに黄金世代と呼ばれる者たちのひとりであるウェンデルは、同期のブリッツに呼びだされて学園の一室を訪れた。
 そこには、

「あれ? エリーゼとジャクリーヌも呼びだされたの?」
「えぇ」
「ブリッツったら……わたくしたちを呼びだして何をするつもりなのかしら?」
「それについてはこれから説明しよう!」

 全員が揃ったところで、勢いよく部屋へと入ってくるブリッツ。そのまま備えつけてある黒板の前に立つと、チョークを使って何やら文字を書き始める。
 その途中で、神妙な顔つきをしながら、

「我々は今……重大な局面を迎えている」

 と呟いた。
 鬼気迫る思いのブリッツとは対照的に、いきなり呼びだされた三人はポカンとして顔を見合わせる。それから顔を寄せ合って相談を始めた。

「ちょっと、ブリッツは一体どうしちゃったっていうの?」
「僕も知らないよ……」
「いつもとちょっと雰囲気が違う気がしますね」
「変なヤツだとは前々から思っていたけど……とうとう歯止めが利かなくなってしまったというわけね」

 ジャクリーヌがため息交じりにそんな言葉を口にした直後、ブリッツが黒板に文字を書き終えた。その文字をバシンと叩きながら、力強く告げる。

「まもなくオーリン先生は誕生日を迎える!」
「「「あっ」」」

 その言葉で、三人はブリッツがなぜ自分たちを呼びだしたのかを理解した。

「なるほど……いつもお世話になっているオーリン先生のために、誕生パーティーがしたいというわけですね」
「いいじゃん! 大賛成!」
「わたくしも賛成ですが……それより、よくオーリン先生の誕生日を知っていましたわね」
「……オーリン先生から受けた恩を返すには、俺などまだまだ未熟。――だが、そんな状況でも何か返したいという思いは前々から持っていたのだ」
「それで誕生日を祝おうと……」

 言い終えて、チラリとエリーゼやジャクリーヌに視線を移すウェンデル。
 他の三人もまったく同じ気持ちではあった。

 病弱な体質のため、憧れだった騎士になるという夢を絶とうとしていたブリッツ。
 ハーフエルフという血筋のため、幼い頃から偏見の中で生きてきたエリーゼ。
 引きこもりがちだったが、陽の当たる場所へと連れだしてもらったウェンデル。
 生まれて初めて敗北し、世界にはまだまだ上がいることを教わったジャクリーヌ。

 四人がこうして無事に学園へと通えているのは、すべてオーリンのおかげであった。当のオーリンはそんなことなど微塵も思ってはいなく、それぞれの努力の賜物であると語るのだが、紛れもなくきっかけを与えたのは彼だった。

 それを重々理解している四人は、学生という今の立場からできる恩返しをするため、早速パーティーの準備に取りかかるのだった。


 ――数時間後。

「こ、これは……」

 エリーゼに呼ばれて会場となる教室へやってきたオーリンは、飾りつけられた室内を目の当たりにして驚く。

「私たち、お誕生日を祝うと同時に、普段のお礼の気持ちを込めたパーティーをしようと考えたんです」
「先生の誕生日をお祝いしたくて、頑張りましたのよ」
「盛大で豪華な料理――とまではいかないけど、いろいろと用意してみたよ!」
「これらの許可はすでに取ってありますので、安心してください」
「みんな……」

 四人の心遣いに、オーリンの目頭が熱くなる。
 それから五人は楽しいひと時を過ごすのだった。
しおりを挟む
表紙へ
感想 59

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。