異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一

文字の大きさ
59 / 168

第59話  異世界入浴剤

しおりを挟む
「ご指摘の通り、こちらの葉には少し細工が施してあります」
「その細工とやらが、湯に混ぜるだけで君のスキルを使用したかのような超回復を可能とした種というわけか」
「一体、その細工とは?」
 
 興味津々とばかりに瞳を輝かせるゼイロへ、優志はゆっくりと語り出す。

「工夫と言っても、やっていることは簡単なことです――こいつを水へ丸一日浸けておきました」
「水へ?」

 想定していたものよりもあまりに簡単な方法だっため、少し間の抜けた声になってしまったベルギウス。――だが、あることに気づいて手をポンと叩いた。


「なるほどな。その水こそ――君のスキルで強化した超回復水」
「その通りです」
「浸けておくだけでも効果があるのか」

 優志の編み出した乾燥した葉を使用した即席の回復湯。
 ヒントにしたのは以前暮らしていた世界では当たり前のように使用されていた入浴剤だ。

 その詳しい製造方法については把握していないが、冒険者たちが使う干し肉の作り方からヒントを得て試しに作ってみたところこれがビンゴ。思っていた通りの効果を生み出すことに成功したのだ。

「今回は唐突なお話しだったため、詳しい検証は行えませんでしたが――少なくともこの水に浸け、乾燥させた葉をすり潰して粉上にしたものを普通の水に溶かしても効果が得られることだけはたしかです」
「ふむ」
 
 ベルギウスは優志の言わんとしていることを察した。

「つまり遠征先で実際に使えるかどうかは定かでないと」
「遠征先の気候条件などが影響してスキルが発動しない可能性もなくはないかな、と」

 この世界で当たり前に使用されているスキルと呼ばれるものの詳しいメカニズムを優志は知らないし、科学的な検証などはされていないだろう。

 となれば、環境などの条件によってはスキルがうまく働かない可能性があるのではないかと懸念していたのだ。

「正直なところ、その辺はぶっつけ本番になりますが……」
「いや――想定以上の代物だ」

 優志の持ってきた紙袋を掴みあげて、ベルギウスが言う。

「これならば運搬にかかる負担は皆無。いや、それどころか、一度で大量に運ぶことだってできる」

 口調から、ベルギウスは興奮しているようだった。

「こいつがあれば、疲労で悩む騎士たちを一瞬で回復させることができる」
「現地で試していないので効果は未知数ですが」
「すぐに届けて試させる。だが、ブレンの様子から推測するに、恐らく向こうでも変わらぬ効果を発揮するだろう」

 すでにベルギウスは大成功したと思っている。
 優志としても、そこまで大きな違いがあるとは思えないので、きっとここでの効果と同等の結果になるだろうとは予想していた。


 優志からありったけの超回復入浴剤を受け取ったベルギウスは、早速補給遠征部隊の騎士にこれを渡し、大至急届けるよう言いつけて送り出した。

「君のおかげでなんとかなりそうだよ」

 嬉々として語るベルギウスは、後々正式な形で礼がしたいと言ってくれた。
 
「あの粉の活躍次第では勲章を得られるかもな」

 ゼイロからはそんな言葉をかけられる。
 
「勲章……」

 これまで暮らしていた世界ではあり得ない栄誉に、まったく実感が湧かないでいた。
 だが、後から合流したリウィルから、
 
「す、凄いですよ! もし本当にそうなったら――うああ……なんだか私まで緊張してきましたよ!」

 熱の入った喜びを見せつけられ、ようやく事態の重大さを実感した。

「勲章、か……俺なんかがもらっていいものかね」
「これまでの功績を考慮したら十分じゃないですか? 勝手に呼び出した私が言うのもなんですが、ユージさんはこの世界にとても貢献していると思いますよ」
「…………」

 年甲斐もなく熱くなる頬をぺチペチと叩きながら、優志とリウィルは帰路を行く。

「美弦ちゃんには悪いことをしてしまったな。きっと大忙しだったろうに」
「ダズさんとエミリーさん、それに町長さんやロザリアさんまでお手伝いをしてくれたそうなので、そこまで大変じゃなかったそうですよ?」
「え? なんで知ってんの?」
「鳥の姿をした伝令用の召喚獣が私のところへ来たんですよ」

 それでか、と納得すると同時に、

「ロザリアまで手伝いに来てくれたのか」
「年が近いこともあるのか、ミツルさんと意気投合をしたそうですよ?」
「何を話したか凄く気になるな」

 あの無口のロザリアが美弦に懐いた。
 その事実は驚愕に値する。

「まあ……友だちができることはいいことだよな、うん」

 そう無理矢理消化していると、

「綺麗な夕焼けですね」

 ふと、リウィルがそんなことを口にする。

 夕焼けなんて、じっくりと見た記憶がない。
 幼い頃にはあったかもしれないが、社会人になってからは夕焼けの美しさに心を和ませられるほどの余裕はなかった。

 それが、今は違う。

「そうだな……」

 リウィルの言葉に相槌が打てるくらいには余裕がある。

 宮原優志。

 異世界での生活はまだ始まったばかりだ。
しおりを挟む
感想 188

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...