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第59話 異世界入浴剤
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「ご指摘の通り、こちらの葉には少し細工が施してあります」
「その細工とやらが、湯に混ぜるだけで君のスキルを使用したかのような超回復を可能とした種というわけか」
「一体、その細工とは?」
興味津々とばかりに瞳を輝かせるゼイロへ、優志はゆっくりと語り出す。
「工夫と言っても、やっていることは簡単なことです――こいつを水へ丸一日浸けておきました」
「水へ?」
想定していたものよりもあまりに簡単な方法だっため、少し間の抜けた声になってしまったベルギウス。――だが、あることに気づいて手をポンと叩いた。
「なるほどな。その水こそ――君のスキルで強化した超回復水」
「その通りです」
「浸けておくだけでも効果があるのか」
優志の編み出した乾燥した葉を使用した即席の回復湯。
ヒントにしたのは以前暮らしていた世界では当たり前のように使用されていた入浴剤だ。
その詳しい製造方法については把握していないが、冒険者たちが使う干し肉の作り方からヒントを得て試しに作ってみたところこれがビンゴ。思っていた通りの効果を生み出すことに成功したのだ。
「今回は唐突なお話しだったため、詳しい検証は行えませんでしたが――少なくともこの水に浸け、乾燥させた葉をすり潰して粉上にしたものを普通の水に溶かしても効果が得られることだけはたしかです」
「ふむ」
ベルギウスは優志の言わんとしていることを察した。
「つまり遠征先で実際に使えるかどうかは定かでないと」
「遠征先の気候条件などが影響してスキルが発動しない可能性もなくはないかな、と」
この世界で当たり前に使用されているスキルと呼ばれるものの詳しいメカニズムを優志は知らないし、科学的な検証などはされていないだろう。
となれば、環境などの条件によってはスキルがうまく働かない可能性があるのではないかと懸念していたのだ。
「正直なところ、その辺はぶっつけ本番になりますが……」
「いや――想定以上の代物だ」
優志の持ってきた紙袋を掴みあげて、ベルギウスが言う。
「これならば運搬にかかる負担は皆無。いや、それどころか、一度で大量に運ぶことだってできる」
口調から、ベルギウスは興奮しているようだった。
「こいつがあれば、疲労で悩む騎士たちを一瞬で回復させることができる」
「現地で試していないので効果は未知数ですが」
「すぐに届けて試させる。だが、ブレンの様子から推測するに、恐らく向こうでも変わらぬ効果を発揮するだろう」
すでにベルギウスは大成功したと思っている。
優志としても、そこまで大きな違いがあるとは思えないので、きっとここでの効果と同等の結果になるだろうとは予想していた。
優志からありったけの超回復入浴剤を受け取ったベルギウスは、早速補給遠征部隊の騎士にこれを渡し、大至急届けるよう言いつけて送り出した。
「君のおかげでなんとかなりそうだよ」
嬉々として語るベルギウスは、後々正式な形で礼がしたいと言ってくれた。
「あの粉の活躍次第では勲章を得られるかもな」
ゼイロからはそんな言葉をかけられる。
「勲章……」
これまで暮らしていた世界ではあり得ない栄誉に、まったく実感が湧かないでいた。
だが、後から合流したリウィルから、
「す、凄いですよ! もし本当にそうなったら――うああ……なんだか私まで緊張してきましたよ!」
熱の入った喜びを見せつけられ、ようやく事態の重大さを実感した。
「勲章、か……俺なんかがもらっていいものかね」
「これまでの功績を考慮したら十分じゃないですか? 勝手に呼び出した私が言うのもなんですが、ユージさんはこの世界にとても貢献していると思いますよ」
「…………」
年甲斐もなく熱くなる頬をぺチペチと叩きながら、優志とリウィルは帰路を行く。
「美弦ちゃんには悪いことをしてしまったな。きっと大忙しだったろうに」
「ダズさんとエミリーさん、それに町長さんやロザリアさんまでお手伝いをしてくれたそうなので、そこまで大変じゃなかったそうですよ?」
「え? なんで知ってんの?」
「鳥の姿をした伝令用の召喚獣が私のところへ来たんですよ」
それでか、と納得すると同時に、
「ロザリアまで手伝いに来てくれたのか」
「年が近いこともあるのか、ミツルさんと意気投合をしたそうですよ?」
「何を話したか凄く気になるな」
あの無口のロザリアが美弦に懐いた。
その事実は驚愕に値する。
「まあ……友だちができることはいいことだよな、うん」
そう無理矢理消化していると、
「綺麗な夕焼けですね」
ふと、リウィルがそんなことを口にする。
夕焼けなんて、じっくりと見た記憶がない。
幼い頃にはあったかもしれないが、社会人になってからは夕焼けの美しさに心を和ませられるほどの余裕はなかった。
それが、今は違う。
「そうだな……」
リウィルの言葉に相槌が打てるくらいには余裕がある。
宮原優志。
異世界での生活はまだ始まったばかりだ。
「その細工とやらが、湯に混ぜるだけで君のスキルを使用したかのような超回復を可能とした種というわけか」
「一体、その細工とは?」
興味津々とばかりに瞳を輝かせるゼイロへ、優志はゆっくりと語り出す。
「工夫と言っても、やっていることは簡単なことです――こいつを水へ丸一日浸けておきました」
「水へ?」
想定していたものよりもあまりに簡単な方法だっため、少し間の抜けた声になってしまったベルギウス。――だが、あることに気づいて手をポンと叩いた。
「なるほどな。その水こそ――君のスキルで強化した超回復水」
「その通りです」
「浸けておくだけでも効果があるのか」
優志の編み出した乾燥した葉を使用した即席の回復湯。
ヒントにしたのは以前暮らしていた世界では当たり前のように使用されていた入浴剤だ。
その詳しい製造方法については把握していないが、冒険者たちが使う干し肉の作り方からヒントを得て試しに作ってみたところこれがビンゴ。思っていた通りの効果を生み出すことに成功したのだ。
「今回は唐突なお話しだったため、詳しい検証は行えませんでしたが――少なくともこの水に浸け、乾燥させた葉をすり潰して粉上にしたものを普通の水に溶かしても効果が得られることだけはたしかです」
「ふむ」
ベルギウスは優志の言わんとしていることを察した。
「つまり遠征先で実際に使えるかどうかは定かでないと」
「遠征先の気候条件などが影響してスキルが発動しない可能性もなくはないかな、と」
この世界で当たり前に使用されているスキルと呼ばれるものの詳しいメカニズムを優志は知らないし、科学的な検証などはされていないだろう。
となれば、環境などの条件によってはスキルがうまく働かない可能性があるのではないかと懸念していたのだ。
「正直なところ、その辺はぶっつけ本番になりますが……」
「いや――想定以上の代物だ」
優志の持ってきた紙袋を掴みあげて、ベルギウスが言う。
「これならば運搬にかかる負担は皆無。いや、それどころか、一度で大量に運ぶことだってできる」
口調から、ベルギウスは興奮しているようだった。
「こいつがあれば、疲労で悩む騎士たちを一瞬で回復させることができる」
「現地で試していないので効果は未知数ですが」
「すぐに届けて試させる。だが、ブレンの様子から推測するに、恐らく向こうでも変わらぬ効果を発揮するだろう」
すでにベルギウスは大成功したと思っている。
優志としても、そこまで大きな違いがあるとは思えないので、きっとここでの効果と同等の結果になるだろうとは予想していた。
優志からありったけの超回復入浴剤を受け取ったベルギウスは、早速補給遠征部隊の騎士にこれを渡し、大至急届けるよう言いつけて送り出した。
「君のおかげでなんとかなりそうだよ」
嬉々として語るベルギウスは、後々正式な形で礼がしたいと言ってくれた。
「あの粉の活躍次第では勲章を得られるかもな」
ゼイロからはそんな言葉をかけられる。
「勲章……」
これまで暮らしていた世界ではあり得ない栄誉に、まったく実感が湧かないでいた。
だが、後から合流したリウィルから、
「す、凄いですよ! もし本当にそうなったら――うああ……なんだか私まで緊張してきましたよ!」
熱の入った喜びを見せつけられ、ようやく事態の重大さを実感した。
「勲章、か……俺なんかがもらっていいものかね」
「これまでの功績を考慮したら十分じゃないですか? 勝手に呼び出した私が言うのもなんですが、ユージさんはこの世界にとても貢献していると思いますよ」
「…………」
年甲斐もなく熱くなる頬をぺチペチと叩きながら、優志とリウィルは帰路を行く。
「美弦ちゃんには悪いことをしてしまったな。きっと大忙しだったろうに」
「ダズさんとエミリーさん、それに町長さんやロザリアさんまでお手伝いをしてくれたそうなので、そこまで大変じゃなかったそうですよ?」
「え? なんで知ってんの?」
「鳥の姿をした伝令用の召喚獣が私のところへ来たんですよ」
それでか、と納得すると同時に、
「ロザリアまで手伝いに来てくれたのか」
「年が近いこともあるのか、ミツルさんと意気投合をしたそうですよ?」
「何を話したか凄く気になるな」
あの無口のロザリアが美弦に懐いた。
その事実は驚愕に値する。
「まあ……友だちができることはいいことだよな、うん」
そう無理矢理消化していると、
「綺麗な夕焼けですね」
ふと、リウィルがそんなことを口にする。
夕焼けなんて、じっくりと見た記憶がない。
幼い頃にはあったかもしれないが、社会人になってからは夕焼けの美しさに心を和ませられるほどの余裕はなかった。
それが、今は違う。
「そうだな……」
リウィルの言葉に相槌が打てるくらいには余裕がある。
宮原優志。
異世界での生活はまだ始まったばかりだ。
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