無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一

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第142話 常夏の楽園

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 俺たちがバカンスを楽しむのはセラノス王国南方にある島。
 ここは年間を通して気温が高く、まさに常夏の島と呼ぶに相応しい環境だった。
 おかげで一年中、海で楽しむことができるという。

 さらにその海も透明感があって美しく、泳ぐにはもってこいだ。

「こいつは想像以上だな」

 年甲斐もなくはしゃいでいると、同じ馬車に乗っているミネットが微笑みながら話す。
 ちなみに、俺たちが寝泊まりする場所は彼女が時々利用するという別荘だ。

「喜んでいただけてわたくしも嬉しいですわ」
「泳ぐのもいいですが、ここは食べ物もおいしいんですよ! 特に海鮮を使った料理はどれも絶品と評判なんです!」
「……ノエリーさんは色気より食い気ですわね」
「何か言った?」
「いえ別に」

 同じく馬車に乗るノエリーはミネットに対抗心を燃やしているようだが……この流れも昔の儘で本当に安心する。口ではお互いあんな風に言っているけど、お互いを信頼しているし、大切に思っているのを知っているからだろうな。

 どんなにケンカをしていても、エヴェリンに捕まったノエリーを助けようと必死に彼女へ体当たりをした幼い頃のミネットの姿が思い浮かんでしまうよ。

 ちなみに、今回は他の参加者(元弟子)も、ミネットが運営する商会の用意してくれた馬車で移動中。
 パートナー魔獣に関しては到着後に召喚する予定だ。

「もうすぐ到着ですわね」
「目的地には……もうあの人は来ているんでしょうか」

 不意にそんなことを言うノエリー。
 彼女のいう「あの人」とは――現地で合流予定となっている、八人目の弟子のことだ。

 その名はダリアスと言って、とても正義感が強く、真面目な男だった。
 ただ、少し何を考えているのか分からないところがあったものの、仲間想いで優しく、最年長ということもあって全員から兄のように慕われていたな。

 エヴェリンはもともと教会で育てた子どもを変態貴族へ売り渡す奴隷商のようなマネをしていたため、あの教会に暮らしていたほとんどは女の子であった。

 周囲の目を欺くために少しだけだが男の子もいたが……それがティオグとダリアスのふたりだったんだよな。

 そういったこともあって、ティオグはダリアスによく懐いていた。
 勉強も運動もそつなくこなすダリアスを心から尊敬し、彼のようになりたいと努力を重ねていたな。

 そんなダリアスと再会できる。
 話によれば、彼もテイマーとしてパートナー魔獣を連れているらしい。

 そちらも気になるが、まずはとにかく本人と早く会いたいって気持ちが強かった。

 しばらくしてようやくミネットの別荘へ到着。
 だが、どうにも様子がおかしい。

「なんだか使用人の人たちが一ヵ所に集まっているようだな」
「本当ですわね。何かあったのでしょうか」

 どうやら、到着早々にトラブルが発生したみたいだな。

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