52 / 73
連載
第142話 常夏の楽園
しおりを挟む
俺たちがバカンスを楽しむのはセラノス王国南方にある島。
ここは年間を通して気温が高く、まさに常夏の島と呼ぶに相応しい環境だった。
おかげで一年中、海で楽しむことができるという。
さらにその海も透明感があって美しく、泳ぐにはもってこいだ。
「こいつは想像以上だな」
年甲斐もなくはしゃいでいると、同じ馬車に乗っているミネットが微笑みながら話す。
ちなみに、俺たちが寝泊まりする場所は彼女が時々利用するという別荘だ。
「喜んでいただけてわたくしも嬉しいですわ」
「泳ぐのもいいですが、ここは食べ物もおいしいんですよ! 特に海鮮を使った料理はどれも絶品と評判なんです!」
「……ノエリーさんは色気より食い気ですわね」
「何か言った?」
「いえ別に」
同じく馬車に乗るノエリーはミネットに対抗心を燃やしているようだが……この流れも昔の儘で本当に安心する。口ではお互いあんな風に言っているけど、お互いを信頼しているし、大切に思っているのを知っているからだろうな。
どんなにケンカをしていても、エヴェリンに捕まったノエリーを助けようと必死に彼女へ体当たりをした幼い頃のミネットの姿が思い浮かんでしまうよ。
ちなみに、今回は他の参加者(元弟子)も、ミネットが運営する商会の用意してくれた馬車で移動中。
パートナー魔獣に関しては到着後に召喚する予定だ。
「もうすぐ到着ですわね」
「目的地には……もうあの人は来ているんでしょうか」
不意にそんなことを言うノエリー。
彼女のいう「あの人」とは――現地で合流予定となっている、八人目の弟子のことだ。
その名はダリアスと言って、とても正義感が強く、真面目な男だった。
ただ、少し何を考えているのか分からないところがあったものの、仲間想いで優しく、最年長ということもあって全員から兄のように慕われていたな。
エヴェリンはもともと教会で育てた子どもを変態貴族へ売り渡す奴隷商のようなマネをしていたため、あの教会に暮らしていたほとんどは女の子であった。
周囲の目を欺くために少しだけだが男の子もいたが……それがティオグとダリアスのふたりだったんだよな。
そういったこともあって、ティオグはダリアスによく懐いていた。
勉強も運動もそつなくこなすダリアスを心から尊敬し、彼のようになりたいと努力を重ねていたな。
そんなダリアスと再会できる。
話によれば、彼もテイマーとしてパートナー魔獣を連れているらしい。
そちらも気になるが、まずはとにかく本人と早く会いたいって気持ちが強かった。
しばらくしてようやくミネットの別荘へ到着。
だが、どうにも様子がおかしい。
「なんだか使用人の人たちが一ヵ所に集まっているようだな」
「本当ですわね。何かあったのでしょうか」
どうやら、到着早々にトラブルが発生したみたいだな。
ここは年間を通して気温が高く、まさに常夏の島と呼ぶに相応しい環境だった。
おかげで一年中、海で楽しむことができるという。
さらにその海も透明感があって美しく、泳ぐにはもってこいだ。
「こいつは想像以上だな」
年甲斐もなくはしゃいでいると、同じ馬車に乗っているミネットが微笑みながら話す。
ちなみに、俺たちが寝泊まりする場所は彼女が時々利用するという別荘だ。
「喜んでいただけてわたくしも嬉しいですわ」
「泳ぐのもいいですが、ここは食べ物もおいしいんですよ! 特に海鮮を使った料理はどれも絶品と評判なんです!」
「……ノエリーさんは色気より食い気ですわね」
「何か言った?」
「いえ別に」
同じく馬車に乗るノエリーはミネットに対抗心を燃やしているようだが……この流れも昔の儘で本当に安心する。口ではお互いあんな風に言っているけど、お互いを信頼しているし、大切に思っているのを知っているからだろうな。
どんなにケンカをしていても、エヴェリンに捕まったノエリーを助けようと必死に彼女へ体当たりをした幼い頃のミネットの姿が思い浮かんでしまうよ。
ちなみに、今回は他の参加者(元弟子)も、ミネットが運営する商会の用意してくれた馬車で移動中。
パートナー魔獣に関しては到着後に召喚する予定だ。
「もうすぐ到着ですわね」
「目的地には……もうあの人は来ているんでしょうか」
不意にそんなことを言うノエリー。
彼女のいう「あの人」とは――現地で合流予定となっている、八人目の弟子のことだ。
その名はダリアスと言って、とても正義感が強く、真面目な男だった。
ただ、少し何を考えているのか分からないところがあったものの、仲間想いで優しく、最年長ということもあって全員から兄のように慕われていたな。
エヴェリンはもともと教会で育てた子どもを変態貴族へ売り渡す奴隷商のようなマネをしていたため、あの教会に暮らしていたほとんどは女の子であった。
周囲の目を欺くために少しだけだが男の子もいたが……それがティオグとダリアスのふたりだったんだよな。
そういったこともあって、ティオグはダリアスによく懐いていた。
勉強も運動もそつなくこなすダリアスを心から尊敬し、彼のようになりたいと努力を重ねていたな。
そんなダリアスと再会できる。
話によれば、彼もテイマーとしてパートナー魔獣を連れているらしい。
そちらも気になるが、まずはとにかく本人と早く会いたいって気持ちが強かった。
しばらくしてようやくミネットの別荘へ到着。
だが、どうにも様子がおかしい。
「なんだか使用人の人たちが一ヵ所に集まっているようだな」
「本当ですわね。何かあったのでしょうか」
どうやら、到着早々にトラブルが発生したみたいだな。
527
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~
【書籍化決定!】
本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました!
第1巻は10月下旬発売!
よろしくお願いします!
賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。
その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。
一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。
こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
捨てられ従魔とゆる暮らし
KUZUME
ファンタジー
旧題:捨てられ従魔の保護施設!
冒険者として、運送業者として、日々の生活に職業として溶け込む従魔術師。
けれど、世間では様々な理由で飼育しきれなくなった従魔を身勝手に放置していく問題に悩まされていた。
そんな時、従魔術師達の間である噂が流れる。
クリノリン王国、南の田舎地方──の、ルルビ村の東の外れ。
一風変わった造りの家には、とある変わった従魔術師が酔狂にも捨てられた従魔を引き取って暮らしているという。
─魔物を飼うなら最後まで責任持て!
─正しい知識と計画性!
─うちは、便利屋じゃなぁぁぁい!
今日もルルビ村の東の外れの家では、とある従魔術師の叫びと多種多様な魔物達の鳴き声がぎゃあぎゃあと元気良く響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。