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第32話 ぼくの希望、まさかの行方
しおりを挟むよし、いったんもう一つのあれを調べてみよう。
「そう、召喚士さん」
これも魔法の適正と他にもなんか特殊な適性が必要らしい。
召喚士の適性を持っている確率(6%)× 魔法学院の召喚士科に入学できる確率(40%)× 召喚士試験に合格する確率(70%)
「はいはい、つまり、ぼくが召喚士になれる確率は約1.7%ってことね」
ちなみに高位召喚士に認定される確率は25%くらいだから、なれる確率は約0.4%くらい。
「はい、誤差ぁぁぁ」
思わず本を机にとん、だ。
「もぉぉぉ、なんなのぉぉ! さっきからずっとぉ、1%とか0.4%とかぁぁ!」
聞かれるとまずいので、ひそひその声で逆ギレだ。
じだんだも小さくトテトテ、だ。
「うぅぅぅ……魔法使いぃぃ……なりたかったぁぁ……」
魔術師さんになってぇ、ふぁぁぁぁってまわり中をお花だらけにしたり、キラキラのちょちょや羽根を舞わせたりしたかった!
召喚士さんになってぇ、ふわふわもふもふの可愛いぃ幻獣さんとかを呼び出してぇ、お友達になってぇ、背中に乗せてもらってぇ、旅とかしてみたかったぁ!
しかし現実はきびしぃぃのだ。ぼくにあるのは、誤差くらいの可能性。
誤差ってあれだよ? もうこれくらいなら、ないってことでいいよ!っていうくらいの少なさ。
そもそも、魔法適性がなかったらアウトぉ、だし。
「でもぉ……」
ひそひそ逆ギレと、控えめじだんだをストップして、机にとん!した本をもう一度手に取る。
「かんがえよぅによってはぁ、1%ってことはぁ、100人いたら1人はいけるよってことだよね」
となると、やっぱり極小とはいえ、可能性はないではないぃのだ。
適性さえあったら、あとは頑張ればいける、ってことでもある。
あとは学校で頑張って勉強して、資格が取れれば……。
「……ん? でもぉ、学校に行くのってどぉしたらいいんだろ?」
誰でも試験とか受けられるぅ?
「ええっとぉ、どっかに書いてるぅかな……?」
本をペラペラしてみると――
「あ、あったぁ! 魔法学院の項目!」
どれどれ、と慎重に見てみる。
『魔法学院は、適正のある志望者に広く門戸が開かれている。身分や出身は関係なく――』
「おおお! 誰でもぉ、はいれるぅ!」
適性さえあって、試験に受かる知能があれば。
『魔法の適性を持つ者は希少であり、魔法職は国にとって重要な役割を担うため、魔法学院の学生は国策によって手厚く保護され、育成される。学費をはじめ、必要な費用のすべては国が負担し、学生の生活費も給付されるため、学業に専念できる環境が整えられている。』
「ふぁぁっ! 学費もなぁんにもかからないの! 生活の保証までぇ!?」
さすが狭き門、めちゃくちゃに手厚い育成制度が用意されてるぅぅ。
『さらに、学院を卒業後、魔法職に就かなかった場合でも、習得した知識や技術は幅広い分野で活かされ、多様な職への道が開かれる。魔法技術を持つ職業人は高く評価され、さまざまな分野で厚遇され、活躍する者が多い。』
「ええっ!! 魔法職につけなくてもぉ、ほかのお仕事でかつやくできるのぉぉ?」
普通の学校を卒業して仕事につくより、魔法学院を出たほうが「魔術」という特殊技術をみにつけてるから、歓迎されるし良い待遇で活躍できると。
「なにそれっ! すっごいエリートさんってことぉぉ?」
おおお、テンションがあがる。これは、これはもしかしてぇ――
「これぇ、入学できれば、むてきのさいこぉなのでは?」
ううう、希望がもりもり湧いてきたぞぉぉ!
まだ、魔法適性があるかどうかわからないぃぃ……のに、あがる! これは……もし適正があって、ぼくが超頑張って学校を卒業さえすれば……
「ひとりだち、かのう!」
えええ、夢みちゃうぅぅ……あこがれぇの、魔法のおしごとで平和にくらしたりできる未来、ないかなぁ……?
「入学試験ってどんな感じなのかなぁ?」
書いてるところはぁ……あ、ここだ!
『魔法学院への入学を志望する者は、規定の志願書に身分証明書の写しを添えて――』
「えっ!」
なんか、見てはいけないけど、言われれば当たり前中の当たり前の単語が目に入った気が……
『魔法学院への入学を志望する者は、規定の志願書に身分証明書の写しを添えて学院に提出する。』
「えっとぉ……」
読み間違いとかじゃ、ない……よね……?
そろーーっと、その文字を見てみる。
――『身分証明書』
「……それはそう!」
学校に志願書出すのに身分証明はいるでしょ! あたりまえ!
そしてぇ、こっそり王宮を逃げ出して、行方不明のおたずね者になった子どもなんかに、身分を証明する方法はぁ……
ないっ!
そう。ない……んだよねぇ……うん。
「ふしゅうぅぅぅぅ……」
力ぬけちゃう。
希望でぱんぱんだったから、針でツンてされた風船みたいに一気にしぼんだ。
「ゆめ、ついえたり……」
異世界、夢も希望もない。
ぼくには未来もない。
「む、むねん……」
気分は討ち死にになった武士。ぼくはぐったりペロンと床にへたりこんでいた。
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