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バズった“星屑の詩”と、名前のない共感
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朝の教室は、まだ少し肌寒い。窓の隙間から入ってくる風がカーテンを揺らし、誰もいない席に小さな影を落としている。
悠翔は、制服の上着のポケットからスマートフォンを取り出した。電源を入れると、すぐにバイブレーションが短く連続した。なにスタの通知が、画面いっぱいに並んでいた。
最初は、一瞬だけ誤作動かと思った。だが、スクリーンをなぞる指が止まったところで、見慣れた投稿のタイトルが目に入る。
「“存在しない物語を、もう一度”」
自分が昨夜、なにスタに投稿した詩だった。
読み返すだけのつもりで、誰にも気づかれずに流れていけばいいと願っていた。けれど、その詩にはすでに百を超える“いいね”と、“保存”のマーク。コメント数も二桁に達していた。
一つひとつの通知が、自分の中の何かをざわつかせた。
「うそ……なんで、こんなに」
声に出すことはできなかった。ただ、心の中に沸き起こる動揺が指先に伝わり、画面に触れた指が、なかなか動かなかった。
それでも、ようやく一つ目のコメントに視線を落とす。
「“この感情、どこか懐かしい”」
「“この人の“推し”、もう世界にいないのかな。そう思うと泣けてくる”」
「“詩じゃなくて、祈りみたいだった”」
「“かつて、私も誰かをこんなふうに思ってた気がする”」
どれも知らない誰かの言葉だった。けれど、その一つひとつが、詩に対して返されているのではなく、自分の心に直接触れてくるような感覚があった。
顔を上げると、すでに何人かのクラスメイトが登校してきていた。誰が自分の投稿を読んだのかはわからない。けれど、もしかしたら、あの子も、この子も。そう考えるだけで、呼吸が浅くなる。
それなのに、どこか胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなっているのを感じた。
「これは、もう“ただの記憶”じゃない」
悠翔は、心の中でゆっくりと言葉を繰り返した。
「誰かの今にも、届いてしまってる」
詩の中で語ったのは、前世の推し、レオ様の記憶だったはずだ。
“この剣は、ただの道具じゃない”
“歩けなくなっても、君を守りたいと思った”
そんなフレーズを引用しながら、自分がかつてどんなふうにレオ様に救われていたかを綴った。まるで、それをもう一度自分で読み返すために。もしくは、“レオ様”という存在がこの世界に確かにいたという証拠を、誰かに知ってもらいたかっただけかもしれない。
だけど今、読んでくれている人たちの反応は、どれも“懐かしい”と“今に重ねてる”の両方だった。
「これ、実は今のクラスメイトのことじゃないの?」
「うちの“推し”も、こういう言葉、言いそう」
「距離がある恋って、泣けるよね……」
悠翔は、画面をそっと伏せた。まだ読み切れない。まだすべてを受け止める勇気はなかった。
でも、それでも。
誰かが、自分の言葉に心を寄せてくれていることだけは、どうしても否定できなかった。
ポケットにスマートフォンを戻して、ノートを机の上に広げた。指先がページをめくる。その動作が、昨日までとはどこか違っていた。
これまでは、自分だけのために書いていた。誰にも知られたくなかった。でも今は、ほんの少しだけ、誰かと繋がるために書きたいと思った。
それがどんな形であれ、言葉を綴ることは、自分が感じているものを手放さずにいられる手段だった。
そしてその手段が、誰かに届くことがあるのだと知った今、
それはもう、ただの独り言ではいられない。
「星屑の騎士さん、また投稿してくれませんか?」
「次の詩、待ってます」
「“推し”って、やっぱり生きる力なんだよなあ」
そんなメッセージが、いくつもいくつも届いていた。
悠翔は深く息を吐いた。そして、ゆっくりと目を閉じた。
これは、もう“あの世界”の話じゃない。
今、自分がここで感じている感情が、物語になっている。
自分の記憶と、今ここでの想いが、言葉という形で生き返っていく。
教室の窓の外には、朝日が昇りきった空が広がっていた。
ノートの端に、細いペン先で一行だけ書き加えた。
「“記憶は過去だけのものじゃない。
想い続けたその日から、それは未来を歩き始める”」
それはまだ詩ではなかった。でも、物語のはじまりにはなりそうだった。
悠翔は、制服の上着のポケットからスマートフォンを取り出した。電源を入れると、すぐにバイブレーションが短く連続した。なにスタの通知が、画面いっぱいに並んでいた。
最初は、一瞬だけ誤作動かと思った。だが、スクリーンをなぞる指が止まったところで、見慣れた投稿のタイトルが目に入る。
「“存在しない物語を、もう一度”」
自分が昨夜、なにスタに投稿した詩だった。
読み返すだけのつもりで、誰にも気づかれずに流れていけばいいと願っていた。けれど、その詩にはすでに百を超える“いいね”と、“保存”のマーク。コメント数も二桁に達していた。
一つひとつの通知が、自分の中の何かをざわつかせた。
「うそ……なんで、こんなに」
声に出すことはできなかった。ただ、心の中に沸き起こる動揺が指先に伝わり、画面に触れた指が、なかなか動かなかった。
それでも、ようやく一つ目のコメントに視線を落とす。
「“この感情、どこか懐かしい”」
「“この人の“推し”、もう世界にいないのかな。そう思うと泣けてくる”」
「“詩じゃなくて、祈りみたいだった”」
「“かつて、私も誰かをこんなふうに思ってた気がする”」
どれも知らない誰かの言葉だった。けれど、その一つひとつが、詩に対して返されているのではなく、自分の心に直接触れてくるような感覚があった。
顔を上げると、すでに何人かのクラスメイトが登校してきていた。誰が自分の投稿を読んだのかはわからない。けれど、もしかしたら、あの子も、この子も。そう考えるだけで、呼吸が浅くなる。
それなのに、どこか胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなっているのを感じた。
「これは、もう“ただの記憶”じゃない」
悠翔は、心の中でゆっくりと言葉を繰り返した。
「誰かの今にも、届いてしまってる」
詩の中で語ったのは、前世の推し、レオ様の記憶だったはずだ。
“この剣は、ただの道具じゃない”
“歩けなくなっても、君を守りたいと思った”
そんなフレーズを引用しながら、自分がかつてどんなふうにレオ様に救われていたかを綴った。まるで、それをもう一度自分で読み返すために。もしくは、“レオ様”という存在がこの世界に確かにいたという証拠を、誰かに知ってもらいたかっただけかもしれない。
だけど今、読んでくれている人たちの反応は、どれも“懐かしい”と“今に重ねてる”の両方だった。
「これ、実は今のクラスメイトのことじゃないの?」
「うちの“推し”も、こういう言葉、言いそう」
「距離がある恋って、泣けるよね……」
悠翔は、画面をそっと伏せた。まだ読み切れない。まだすべてを受け止める勇気はなかった。
でも、それでも。
誰かが、自分の言葉に心を寄せてくれていることだけは、どうしても否定できなかった。
ポケットにスマートフォンを戻して、ノートを机の上に広げた。指先がページをめくる。その動作が、昨日までとはどこか違っていた。
これまでは、自分だけのために書いていた。誰にも知られたくなかった。でも今は、ほんの少しだけ、誰かと繋がるために書きたいと思った。
それがどんな形であれ、言葉を綴ることは、自分が感じているものを手放さずにいられる手段だった。
そしてその手段が、誰かに届くことがあるのだと知った今、
それはもう、ただの独り言ではいられない。
「星屑の騎士さん、また投稿してくれませんか?」
「次の詩、待ってます」
「“推し”って、やっぱり生きる力なんだよなあ」
そんなメッセージが、いくつもいくつも届いていた。
悠翔は深く息を吐いた。そして、ゆっくりと目を閉じた。
これは、もう“あの世界”の話じゃない。
今、自分がここで感じている感情が、物語になっている。
自分の記憶と、今ここでの想いが、言葉という形で生き返っていく。
教室の窓の外には、朝日が昇りきった空が広がっていた。
ノートの端に、細いペン先で一行だけ書き加えた。
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