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詩は、剣になる
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夜の部屋は静かだった。
カーテンの隙間からは、街灯の淡い光が差し込んでいて、壁に長い影を落としていた。
机の上のスタンドライトと、モニターの青白い光だけが部屋の一角を照らしていた。
悠翔は、自分の部屋でひとり、ノートパソコンに向かっていた。
ブラウザには開きっぱなしの「なにスタ」。
昼の騒ぎはひと段落したかに見えて、それでも幾つかのタグはまだ更新され続けていた。
目を細めながら、スクロールする指を止める。
“#きょゆう”の関連タグに、ひときわ目を引く投稿が上がっていた。
『星屑の騎士は、いま誰を守ってるの?』
その言葉は、まるで物語の断章のように、孤立したままタイムラインの上に浮かんでいた。
匿名の投稿。文体は淡々としているのに、どこか感情の熱を孕んでいた。
読んだ瞬間、胸の奥が少しだけ揺れた。
誰が書いたのかはわからない。
でも、思い当たる人はいた。
西中島の裏垢の可能性。もしくは、純粋なファンの誰か。
“いま”という時間に焦点がある。
今、この瞬間、悠翔が誰の隣に立っていて、誰を見ているのか──
そんな問いかけのように読めた。
かつての自分なら、ただ画面を閉じていただろう。
何も言わず、そっとしておいてほしいと願っていた。
波風を立てず、匿名の好意と観察の狭間で、じっと身を潜めていた。
でも、今は違う。
机の端に置いてあったノートを手に取る。
“黒星騎士団”の記録とは別の、白紙のページが多い新しいノート。
その表紙に、前に自分で書いたばかりのタイトルが目に映る。
共有される物語のはじまり
表紙をめくる。
手がわずかに震えているのがわかった。
それでも、今は逃げたくなかった。
ペンを取り、指先でキャップを外す。
ひと呼吸おいて、白いページの上に言葉を置いていく。
頭で考えるよりも先に、心の中にあった言葉が、自然と流れ出てくる。
“この剣は、もう隠れるためじゃなく
ふたりで歩くために持ってる”
それを書き終えた瞬間、肩の力が抜けた。
手がじんわりと汗ばんでいて、キャップを戻すのに少しだけもたついた。
ペンを置き、ノートのページを見つめる。
何度も読み返して、ほんの少し手直しして、ようやく胸の内が落ち着いた。
そして、再びモニターに向き直る。
キーボードに指をかけ、ノートの詩をもとに短い投稿を作成する。
タグはつけない。名前も出さない。
でも、伝わる人には伝わるはずだと、そう信じた。
『この剣は、もう隠れるためじゃなく
ふたりで歩くために持ってる』
投稿ボタンを押す前、ひとつだけ深呼吸する。
静かに息を吸い、吐く。
心の中の何かが、音もなく形を変える。
指先が、Enterキーを押した。
画面が切り替わり、投稿が反映される。
即座に何かが起きるわけではなかった。
でも、その沈黙こそが、今は心地よかった。
モニターの明かりが、悠翔の頬を淡く照らしていた。
頬の赤みが、画面の光と溶け合い、そこにあるはずのない熱を運んでくる。
ふう、と息を吐いて、画面を閉じた。
ノートを閉じ、机の明かりも消す。
部屋が闇に包まれていく。
それでも、不思議と怖くはなかった。
ベッドの上に腰を下ろし、仰向けに寝転ぶ。
天井のうっすらとした影を見つめながら、目を閉じた。
胸の奥に、微かな満足感があった。
自分の言葉で、自分の想いを語れたこと。
誰かの問いに、自分なりの答えを返せたこと。
言葉は、剣にもなる。
でも、それは誰かを傷つけるためではなく、
誰かと並んで歩くための剣だ。
その重さを、今の自分はようやく受け止められる気がしていた。
ふと、口元が緩む。
目を閉じたまま、ほんの少しだけ微笑んだ。
夜の静けさの中、悠翔の心には、小さなあかりが灯っていた。
それはまだ頼りない光だけれど、確かに、彼のこれからを照らすものだった。
カーテンの隙間からは、街灯の淡い光が差し込んでいて、壁に長い影を落としていた。
机の上のスタンドライトと、モニターの青白い光だけが部屋の一角を照らしていた。
悠翔は、自分の部屋でひとり、ノートパソコンに向かっていた。
ブラウザには開きっぱなしの「なにスタ」。
昼の騒ぎはひと段落したかに見えて、それでも幾つかのタグはまだ更新され続けていた。
目を細めながら、スクロールする指を止める。
“#きょゆう”の関連タグに、ひときわ目を引く投稿が上がっていた。
『星屑の騎士は、いま誰を守ってるの?』
その言葉は、まるで物語の断章のように、孤立したままタイムラインの上に浮かんでいた。
匿名の投稿。文体は淡々としているのに、どこか感情の熱を孕んでいた。
読んだ瞬間、胸の奥が少しだけ揺れた。
誰が書いたのかはわからない。
でも、思い当たる人はいた。
西中島の裏垢の可能性。もしくは、純粋なファンの誰か。
“いま”という時間に焦点がある。
今、この瞬間、悠翔が誰の隣に立っていて、誰を見ているのか──
そんな問いかけのように読めた。
かつての自分なら、ただ画面を閉じていただろう。
何も言わず、そっとしておいてほしいと願っていた。
波風を立てず、匿名の好意と観察の狭間で、じっと身を潜めていた。
でも、今は違う。
机の端に置いてあったノートを手に取る。
“黒星騎士団”の記録とは別の、白紙のページが多い新しいノート。
その表紙に、前に自分で書いたばかりのタイトルが目に映る。
共有される物語のはじまり
表紙をめくる。
手がわずかに震えているのがわかった。
それでも、今は逃げたくなかった。
ペンを取り、指先でキャップを外す。
ひと呼吸おいて、白いページの上に言葉を置いていく。
頭で考えるよりも先に、心の中にあった言葉が、自然と流れ出てくる。
“この剣は、もう隠れるためじゃなく
ふたりで歩くために持ってる”
それを書き終えた瞬間、肩の力が抜けた。
手がじんわりと汗ばんでいて、キャップを戻すのに少しだけもたついた。
ペンを置き、ノートのページを見つめる。
何度も読み返して、ほんの少し手直しして、ようやく胸の内が落ち着いた。
そして、再びモニターに向き直る。
キーボードに指をかけ、ノートの詩をもとに短い投稿を作成する。
タグはつけない。名前も出さない。
でも、伝わる人には伝わるはずだと、そう信じた。
『この剣は、もう隠れるためじゃなく
ふたりで歩くために持ってる』
投稿ボタンを押す前、ひとつだけ深呼吸する。
静かに息を吸い、吐く。
心の中の何かが、音もなく形を変える。
指先が、Enterキーを押した。
画面が切り替わり、投稿が反映される。
即座に何かが起きるわけではなかった。
でも、その沈黙こそが、今は心地よかった。
モニターの明かりが、悠翔の頬を淡く照らしていた。
頬の赤みが、画面の光と溶け合い、そこにあるはずのない熱を運んでくる。
ふう、と息を吐いて、画面を閉じた。
ノートを閉じ、机の明かりも消す。
部屋が闇に包まれていく。
それでも、不思議と怖くはなかった。
ベッドの上に腰を下ろし、仰向けに寝転ぶ。
天井のうっすらとした影を見つめながら、目を閉じた。
胸の奥に、微かな満足感があった。
自分の言葉で、自分の想いを語れたこと。
誰かの問いに、自分なりの答えを返せたこと。
言葉は、剣にもなる。
でも、それは誰かを傷つけるためではなく、
誰かと並んで歩くための剣だ。
その重さを、今の自分はようやく受け止められる気がしていた。
ふと、口元が緩む。
目を閉じたまま、ほんの少しだけ微笑んだ。
夜の静けさの中、悠翔の心には、小さなあかりが灯っていた。
それはまだ頼りない光だけれど、確かに、彼のこれからを照らすものだった。
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