【完結】知られてはいけない

ひなこ

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五・準と言う人

準と言う人(1)

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 りょうは一人一部屋ずつ。当然だけどほっとした。
 だれかと一緒だったら、相手がこわくて寝るどころじゃない。

 中には、やっと寝られる大きさのベッドとテレビ。洗面所せんめんじょそなえ付けトイレ・バス。最低限さいていげんのものだけある。
 それとなぜか一冊のノートとえんぴつ一本。何を書けと言うのだろう?
 夜寝ている間にはバトルされないんなら安心だ。
 朝九時から夜九時までの間、バトルにさえ気をつければ。夜しっかり眠れるならありがたい。
 でも、それでもうれしくはないな。ここで負けたら、現実世界げんじつせかいへは帰れないんだから。
 わたしの部屋は、二階の十五号室。はじから二番目。となりはあの庄司佳奈だ。

 結局、佳奈(かな)とはもう近づけないでいる。
 もっとも図書館組としょかんぐみに入ってしまった今はもう、下手へたに他の子とは話せない気がする。仲良くすることがそく裏切うらぎりとはかぎらないけど。
 気をつけた方がいいのはたしかだ。

 ベッド上にある小さな目覚めざまし時計は、今、五時十分。
 まだ夕飯ゆうはんには時間がある。わたしは、一度最初に目覚めざめた教室へと向かった。
 情報収集じょうほうしゅうしゅうできるなら、行ってみよう。

 と、階段かいだんを降りる途中、見知みしった顔がのぼってくる。
 ああ、あの人は……。佳奈と話しかけた、加川準(かがわ・じゅん)って人。
 あっちも、わたしをわかったようだ。何て声をかけるべきか。それとも無言むごん
「……きみか」と、準は言った。
「あの。さっきはすみませんでした」佳奈と押しかけたこと。それくらいしか、話題わだいがなかった。
「別に。気にしてない」
 仏頂面ぶっちょうづらだけど、いやな感じはしなかった。悪い人ではないんでは。
「そうですか」
 そこで話が止まってしまった。お互いに、階段の途中で止まったまま。
 どうしよう。別に、これ以上話す必要ひつようもないんだけどな。
 
 この人も仲間だったらいいのに。ふと、そう思ってしまった。
 でも無理むりだ。
 だって、庄司佳奈がさそったとき"おれはひとりでいい”と言ったんだ。
 それに、図書館の人たちに相談もなしに、勝手かってに仲間に加えたい、とも言えない。
 図書館にけつけた分岐点ぶんきてんに、この人はいなかったんだ。
「あのー、ええっと」何か言わなきゃ、でも、何て?
「お互い、生き残り目指めざしてがんばりましょう!」つい、口をついて出てしまった。
「は?」
「あっ、いえ。何でもないです!」
 なななな、何を言ってるわたし?おかしいのか?
 顔が真っ赤になる。舌が回らないでもたつく。本当にバカ。
「あは、ははは!」急に準が、明るい声で笑い出した。
「ええっ?」
「きみ、面白いよ。うん、笑わせてもらった」
 何で笑うの?傷つくなあ。
「笑わないで下さい!」
「いやごめん。でも、心がやされたよ。ありがとう」
 じゃ、と手を振って去って行く。

 あーあ。何でこうなるの。
 でもあの人……庄司佳奈といたときとは、感じがちがう。何でだろう。
 夕食も何となく終わり、部屋へとこもる。落ち着かずにただ過ごしただけ。

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