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九・そして事件は起きた
そして事件は起きた(4)
しおりを挟むえええっ?そ、そんな。
自分から攻撃するとは思えなかった、加川準(かがわ・じゅん)が……先にバトル宣言する、なんて。紗英(さえ)を助けるために?だとしても……、自分から。
わたしはショックのあまり、まばたきすらできなかった。
加川準は、そんなことしないって信じてた?
ううん、桜(さくら)の言うように”しなくてはいけない時”は、あると?
「はあ?おれを当てる気?返り討ちしてやるよ?」にやついて向き直る一紀(かずき)。
準は、わたしたちをもう見ていなかった。
目の前に浮き出た、”このまま続行しますか?”の画面にイエスと返す。
と、同時に準と一紀を囲むようにまた、白い糸の群れが地面から沸き上がった。
「危ない!」
わたしは紗英をかばって、糸の群れから逃げた。
糸の動きがあまりに勢いよくて、ぶつかったらケガしそうだったから。
「何、あの白い糸?」紗英は震えている。
「あれが、バトルのときに現れる繭。結界だよ」
「結界?」
たくさんの糸は絡み合い、もう中に閉ざされた二人は見えない。
ライアンのときと同じに、中で二人の戦いが始まるのだ。
それにしても、準はなぜわたしがしようとしていたバトルを先にした?
「遠野(とおの)さん、助けてくれてありがとう。わたし……」紗英は涙ぐむ。
「いいえ、わたしじゃない。助けたのは」
今、繭の中で一紀と戦っている加川準だ。
わたしには、きっとバトルはできなかった。
何をやってるんだろう、わたしは?
正義ぶって、いろいろご託を並べるくせに全然行動できてない。だから、恩田桜(おんだ・さくら)にもああ注意された。それをわかっていて、準はバトルをしたのではないか。紗英とわたしを助けるために、身代わりのように。
「さっきの男の先輩、あの人の名前は?」と、紗英が問う。
「加川さん。勝ってくれることを祈ろう」
もう、わたしが口をはさむことじゃない。
加川さんは決意したのだ。
戦うと。
一紀が勝ち残った場合、わたしと紗英はどっちも狙われるだろう。
紗英が、繭の外側をさわる。
巨大な、かまくらかテントみたいだ。中で二人入ってるせいか、それなりに大きい。
「バトルって一人に対しては、一回しかできないんでしょう?もし、どっちかが外れたら?」
負けた方は、跡形もなく消え去る。
ライアンに当てられてしまった、まなみのように。
「加川さんは、勝つ宛てもなしにバトルしないと思う。だから大丈夫だよ」
「よく知ってるんですね。あの人のこと」
はっとする。
わたしは準の何を見て、そう言ってしまったんだろう。
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