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第97話 従属魔法
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「その子・・・頂戴!!」
ルナレーンの声と共にフェルネスを中心に魔法陣が展開される。
「これは・・・従属の魔法陣・・・」
「うふふふふっ!!このベアちゃんもこの傷ならもう使えないしー!!丁度よかったわーーー!!さあーー!!ダークネス・フェンリルちゃん!この私、ルナレーン様の僕になってぇーー!!」
ルナレーンが魔法陣に魔力を注ぎ込むと魔法陣から真っ赤な光が噴き上がりフェルネスの身体を包み込む!
「フェルネス!!」
(くっ・・ぼ、僕の付け焼き刃の従魔契約が本職のテイマーにそれも魔人のテイマーに勝てる訳がない・・・このままだと・・・フェルネスが・・・)
「そんな事させるかぁぁぁ!!ライトニングボルトォォォォ!!!」
焦るゼノアが放った魔法は上空の雲に巨大な穴を開け荒れ狂う雷がエンペラーデスグリズリーを直撃する!
ズビシャァァァン!!
その衝撃波は辺り一面の木々を吹き飛ばし地面を抉り土砂を巻き上げた。そして焦げ臭い鼻を突く臭いが漂って来る。
「ど、どうだ?!」
土煙が晴れるとそこには大きなクレーターの中央でエンペラーデスグリズリーが真っ黒に焼け焦げよもや生きているとは思えない姿で立っていた。ゼノアが直ぐにフェルネスを振り返り見る。しかし魔法陣は消えずに未だにフェルネスを捕らえていた。
「うくっ!?だ、駄目か!!」
「あーっはっはっはっーー!!凄いねぇーー!!雷魔法なんて!!でもぉぉーー!ざーんねーーん!!ベアちゃんを攻撃したって無駄なのーー!!私はベアちゃんに憑依してるだけだから私は痛くも痒くもないのよーーー!!まあ・・・ベアちゃんはこの傷だと憑依を解いたら死んじゃうけどねーー!!だ・か・らーー!!代わりにぃー!!さぁーー!!おいでぇーー!!私のダークネス・フェンリルちゃん!!」
「・・・お、お前は・・・従魔を何だと思ってるんだぁぁぁ!!!お前のような従魔を消耗品みたいに思ってる奴にフェルネスを渡せるかぁぁぁぁ!!!」
(・・・エンペラーデスグリズリーの姿がある限りあいつのテイムは止められない!!なら・・可哀想だけど・・・消えてもらうよ!!)
ゼノアは両手を構え魔力を集中させて行く・・・
「・・・なんと不憫な・・・」
ふと魔法陣に捕らわれているフェルネスが呟く。
「えっ!!フェルネス?!だ、大丈夫なの?!」
ゼノアが思わずフェルネスを見上げる。
「えぇ。主様。私は大丈夫ですわ。ただ、あのエンペラーデスグリズリーが不憫だと思ってしまって。ふっ・・・取り敢えずこんなもの・・・はっ!!」
ばりぃぃぃぃん・・・
フェルネスが気合いと共に魔力を解放すると従属の魔法陣が粉々に粉砕され虚空に消えた。
「えぇぇーーー!?嘘ぉぉーー!?私の従属魔法が壊れたーーー?!な、なんでぇーー?!」
「ふっ・・・そんな事も解らないのですか?テイムマスターが聞いて呆れますわ!」
フェルネスがまるで何事も無かったようにエンペラーデスグリズリーを見据える。
「な、な、なによぉーー!!何でよぉぉぉーー!!なんで私の僕にならないのよぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・ふん。教えて差し上げますわ。貴女は従魔を従属魔法で従わせているようですね。格上の存在が力を誇示して従わせる力技の魔法ですわ。しかし私と主様とは従魔契約で結ばれているのです。主と従魔が対等の立場で了承し手を取り合う契約ですわ。言わば信頼と絆の契約。そのような一方的な従属魔法で主様と私の契約を上書き出来る訳がないですわ!!その上、主様の膨大な御力に護られている私にとっては心一つ乱す事はないですわ!」
フェルネスは心配そうに見上げるゼノアに優しく微笑むとゼノアを抱き抱え胸の中に収める。
「主様。ご心配をおかけしました。私はこの通り主様の従魔ですわ。」
「う、うん・・・よ、良かった・・本当によかったよ・・・」
ゼノアは涙を隠すようにフェルネスの胸の中で安堵するのだった。
「うにぅぅぅ・・・じゅ、従魔契約?!そんな格下のスキルが私のテイムマスターの称号を超えるというの?!な、なんなのよぉぉぉぉーー!!わ、私よりその人間のちんちくりんの子供の方が私より良いっていうのぉぉぉぉ!!!」
「その通りですわ!私の主様は最高の主ですわ!比べて貴女は従魔を顎で使い恐怖で支配する・・・従魔と心が通わない支配・・・従魔達を切り捨て犠牲にしても何とも思わない主・・・貴女のような主に仕える従魔達が不憫でなりませんわ!!」
「うにゅぅぅ・・・う、五月蝿いわねぇぇ!!従魔なんて所詮道具でしかないのよぉぉぉーー!!主が死ねって言ったら死ぬのが従魔の使命なのぉぉぉぉ!!」
(・・・っ!!こいつは・・・)
「・・・お前・・・許さないよ・・・」
ゼノアが魔力を滲ませながらフェルネスの腕から飛び降りた。
「・・・よくも僕からフェルネスを取り上げようとしたな・・・自分の我儘で誰かの大切なものを奪う奴は絶対許さない!!」
ゼノアは怒りに打ち震えながら魔力を漲らせエンペラーデスグリズリーに近付いて行く。
(ねえ、フェルネス。あの魔獣はまだ生きてるの?)
(・・・はい。テイムマスターのルナレーンの憑依によって辛うじてですが生きていますわ。ですがルナレーンの憑依が解ければ数秒で死に至ますわ。)
(・・・良かった。生きているんだね。それなら助けられるよ。そしたら・・・くくっ・・・)
ゼノアは自分のステータスを見てルナレーンへの嫌がらせを思い付く。すると自然と口元が緩みゴルド譲りの悪い笑みを浮かべた。そんなゼノアの表情をフェルネスは背後からでも容易に想像出来た。
(・・・主様が私のために怒ってくださっている・・・このフェルネス、感激至極の思いですわ。恐らく今の主様の表情は怒りの中に悪巧みを大さじ一杯入れたような悪人顔になっているのでしょうね・・・。ふふっ・・・ルナレーン。誰に喧嘩を売ったか思い知ればいいわ。)
フェルネスもまた口元を歪めルナレーンの末路を楽しみに主であるゼノア背中を眺める。
「ふ、ふーーんだ!!だったらどうだって言うのぉぉーー?!何をするのか知らないけどぉぉーー!私には指一本触れられないわよぉぉぉーー!!」
「ふん!お前の名前・・・ムネナイーンだったか?」
ゼノアがニヤリと笑い指を指す。
「はっ、はぁぁぁ?!ム、ムネナイ・・・ーン?!な、な、何よ失礼なぁぁぁ!!”ン”しか合ってないじゃないのよぉぉぉ!!!ルナレーン!!私はルナレーンよぉぉぉぉ!!」
(うくっ・・こ、こいつ・・気にしてる事を・・・許さないわ・・・)
エンペラーデスグリズリーが無意識に両手で胸を摩る。
「おい!ムネナイーン!今から面白い事をしてやるよ!」
「むきぃぃーー!!!ルナレーンよぉぉぉ!!あんたわざと間違えてるわねぇぇぇぇ!!」
「ふん!そんな事どうでもいいんだよ!それよりその憑依ってやつはお前の意識が今ここにあるって事だよな?」
「えぇ!そーーよ!!テイムマスターしか覚えられないスキルなのぉぉーー!!遠くにいても従魔に意識と精神を移して好きに操れるのよぉぉーー!!凄いでしょーーう!!」
(へーー・・・意識と精神を移してるんだ・・・ふふっ・・僕の考えが正しかったら・・・よし・・・まずは魔法解除。)
ぱきぃぃん・・・
ゼノアが手をかざすとエンペラーデスグリズリーを足止めしていたアースジャベリンが消えた。そして同時に魔法を発動させる。
「ハイヒール!!」
ゼノアが放った聖魔法が丸焦げだったエンペラーデスグリズリーの身体を優しく包み込み全快させる。
「えっ!?な、な、なんで敵を助けるような事をするのぉぉーー?・・・あっ!分かったぁぁぁ!!あんたベアちゃんを可哀想だって思ったんでしょーー!?あまちゃんねーー。」
ゼノアの行動に理解が出来ないルナレーンは虚勢を張るが同時に不安が全身を駆け巡る。
「あぁ・・・そうだよ。フェルネスがお前の従魔が不憫だと言ってたからね。だけど・・・本当の目的は・・・これだよ!!」
ゼノアが魔力を解放し手をかざすとエンペラーデスグリズリーを中心に深紅の魔法陣が現れエンペラーデスグリズリーを包み込む!
(こ、これは従属の魔法陣!!・・・主様が何故?!・・・はっ!あ、あの時・・主様も従属の魔法陣に触れていた・・・主様はその身に受けたスキルを覚える・・・ふふっ・・・テイマーでもない主様が・・・テイムマスターのスキルを取得したのですか・・・流石と言うしかありませんわ!!そして今・・主様がテイムしようとしているのは・・・)
フェルネスがゼノアの意図を理解した時、同時にルナレーンも感じていた不安に気付いた。
「ま、まさか!!!あ、あんた!!魔人の私をテイムしようとしてるのぉぉぉ!?」
「くくくっ・・・やっと気付いた?そうさ
!僕はお前をテイムして従魔達の苦しみを教えてあげようとしているんだよ!!覚悟しろ!!」
「そ、そ、そんな事・・・出来る訳がないじゃないぃぃぃーー!!!」
「くっくっく・・・やってやるよ。お前の失敗は人間を甘く見た事だよ。今からお前は僕の従魔になるんだ。そして今までお前が従魔にして来た理不尽をその身に受けるんだよ!!」
ゼノアは〈魔力創造〉で闘気を魔力に変換して従属の魔法陣を強化して行く!
「う、う、う、嘘ぉぉぉ!!な、な、何よぉぉぉ!!この力はぁぁぁ!!に、に、逃げられないぃぃぃ!!こ、こ、このテイムマスターの私がぁぁぁ!!に、に、人間なんかにぃぃぃぃ!!!いやぁぁぁぁぁ・・・・」
深紅の光に包まれたエンペラーデスグリズリーからルナレーンの憑依が解け意識と精神が本体へと戻って行く・・・。
ルナレーンはゼノアの従属の魔法に抗う事が出来ずに大きな椅子に座ったまま同じく深紅の光に包まれていた。
「・・・な、なんなのよ・・・こ、この魔力・・・だ、だけど・・な、何・・・ち、力が溢れてくる・・・魔力が漲って来る・・・い、今なら何でも出来るような気がするわ・・・」
ルナレーンの全身にゼノアの魔力が漲って行く。するとルナレーンの身長がどんどん伸び、まるで子供から大人の女性へと成長して行った。寂しかった胸はリボンドレスから溢れんばかりに膨らんでいく。着ていたリボンドレスは成長した身体の中央で辛うじて豊満な胸と下半身の下着を隠していた。
「ふ、ふえっ?!な、なに・・・わ、私はどうなったの・・・?!うにゃ?!・・・わ、私の・・お、おっぱいが・・・」
がたんっ!!
ルナレーンは椅子の上で自分の身体の変化に戸惑い慌てて椅子から立ち上がり姿見の大きな鏡の前に立った。
「ふ、ふえっ?!う、嘘っ?!こ、これが・・・わ、わ、私!?」
鏡に映ったルナレーンの姿は赤毛をツインテールにした幼さを裏腹にリボンドレスからスラリと伸びた色白で色っぽい脚、腰はくびれ胸は以前とは比べ物にならない程にリボンドレスを押し広げていた。その姿は世の道ゆく男が目を奪われるのは必然と言っても良い程の理想の女性であった。
「・・・き、綺麗・・・わ、私・・・綺麗・・・あ、あの人間の従属の魔法で私は・・・成長・・いえ・・・進化した・・・」
ルナレーンは鏡の前で美しい自分の姿に夢のような思いでその場で回りながら様々な角度で見惚れていた。
「うふふっ・・・あははっ!私って!私って綺麗ーーー!!」
(・・・おい!今すぐここへ来るんだ!)
「は、はへっ・・・あっ・・・」
突然、頭の中に響く怒気が籠った声にルナレーンは動きを止めて大事な事を思い出し冷たい汗が頬を伝う。
「・・・わ、私・・従魔になっちゃったんだけ・・・ん?待って、確か・・従属魔法は格上が格下の存在を従わせる魔法だったはず・・・なら!間違いなく私の方が格上のはずよ!!」
(早く来い!!!でないとこうだ!!)
ゼノアの怒気と苛つきを解放した声共にルナレーンの頭の中に激しく締め付けられるような激痛が走る。
「うきゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!痛い痛い痛痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!や、やめ、やめ、やめてぇぇぇぇぇ!!!!」
(こ、これはぁぁぁ!!もしかして従属の戒め!?う、嘘よぉぉぉぉ!私の方が格上のはずなのにぃぃぃぃ!!と、とにかくここは言う事を聞いて・・・)
(わ、わ、分かったよぉぉぉぉ!!!だからやめてぇぇぇ!!)
ルナレーンは必死に暗黒魔法で床に黒い空間を作るとその中に転がり込んだ。そして次の瞬間ゼノアの前に黒い空間が現れ激痛に頭を抱えてのたうち回るルナレーンが現れた。
「や、や、やめてぇぇぇ!!!死んじゃうぅぅぅぅ!!!」
「えっ?こ、こいつがルナレーン?!そ、想像してたのと違うんだけど・・・」
ゼノアは目の前でのたうち回る大人の女性を唖然として眺めていた。
「ねえぇぇぇ!!は、早く何とかしてぇぇぇ!!」
「あっ!つい忘れてた・・・」
ゼノアが慌てて戒めを解くとルナレーンは疲れ果てたようにうつ伏せで肩で息をしていた。
「はひぃぃ・・はひぃぃ・・・し、死ぬかと思った・・・」
「・・いつまで寝ているのですか?主様の前ですわよ!?そこに正座なさい!!ふんっ!」
ビシャンッ!!
不意にフェルネスは苛つきを隠せず魔力を滲ませ目を細めるとルナレーンの身体に電撃が走る。
「ひゃうっ!!い、いきなり何するのよぉぉぉ・・・うぅっ。」
ルナレーンが勢いよく身体を起こして顔を上げるが息を飲み言葉を詰まらせる。目の前には魔力を滲ませ殺気の籠った目で見下ろすフェルネスと不思議そうに見下ろすゼノアの姿があった。
(はうっ・・・また戒めが・・・わ、私・・・これからどうなっちゃうの・・・)
ルナレーンは従属の戒めの激痛を思い出しそそくさとその場で正座し手を膝の上に置く。そして目を泳がせながらこれからの事を想像して怯えるのであった。
ルナレーンの声と共にフェルネスを中心に魔法陣が展開される。
「これは・・・従属の魔法陣・・・」
「うふふふふっ!!このベアちゃんもこの傷ならもう使えないしー!!丁度よかったわーーー!!さあーー!!ダークネス・フェンリルちゃん!この私、ルナレーン様の僕になってぇーー!!」
ルナレーンが魔法陣に魔力を注ぎ込むと魔法陣から真っ赤な光が噴き上がりフェルネスの身体を包み込む!
「フェルネス!!」
(くっ・・ぼ、僕の付け焼き刃の従魔契約が本職のテイマーにそれも魔人のテイマーに勝てる訳がない・・・このままだと・・・フェルネスが・・・)
「そんな事させるかぁぁぁ!!ライトニングボルトォォォォ!!!」
焦るゼノアが放った魔法は上空の雲に巨大な穴を開け荒れ狂う雷がエンペラーデスグリズリーを直撃する!
ズビシャァァァン!!
その衝撃波は辺り一面の木々を吹き飛ばし地面を抉り土砂を巻き上げた。そして焦げ臭い鼻を突く臭いが漂って来る。
「ど、どうだ?!」
土煙が晴れるとそこには大きなクレーターの中央でエンペラーデスグリズリーが真っ黒に焼け焦げよもや生きているとは思えない姿で立っていた。ゼノアが直ぐにフェルネスを振り返り見る。しかし魔法陣は消えずに未だにフェルネスを捕らえていた。
「うくっ!?だ、駄目か!!」
「あーっはっはっはっーー!!凄いねぇーー!!雷魔法なんて!!でもぉぉーー!ざーんねーーん!!ベアちゃんを攻撃したって無駄なのーー!!私はベアちゃんに憑依してるだけだから私は痛くも痒くもないのよーーー!!まあ・・・ベアちゃんはこの傷だと憑依を解いたら死んじゃうけどねーー!!だ・か・らーー!!代わりにぃー!!さぁーー!!おいでぇーー!!私のダークネス・フェンリルちゃん!!」
「・・・お、お前は・・・従魔を何だと思ってるんだぁぁぁ!!!お前のような従魔を消耗品みたいに思ってる奴にフェルネスを渡せるかぁぁぁぁ!!!」
(・・・エンペラーデスグリズリーの姿がある限りあいつのテイムは止められない!!なら・・可哀想だけど・・・消えてもらうよ!!)
ゼノアは両手を構え魔力を集中させて行く・・・
「・・・なんと不憫な・・・」
ふと魔法陣に捕らわれているフェルネスが呟く。
「えっ!!フェルネス?!だ、大丈夫なの?!」
ゼノアが思わずフェルネスを見上げる。
「えぇ。主様。私は大丈夫ですわ。ただ、あのエンペラーデスグリズリーが不憫だと思ってしまって。ふっ・・・取り敢えずこんなもの・・・はっ!!」
ばりぃぃぃぃん・・・
フェルネスが気合いと共に魔力を解放すると従属の魔法陣が粉々に粉砕され虚空に消えた。
「えぇぇーーー!?嘘ぉぉーー!?私の従属魔法が壊れたーーー?!な、なんでぇーー?!」
「ふっ・・・そんな事も解らないのですか?テイムマスターが聞いて呆れますわ!」
フェルネスがまるで何事も無かったようにエンペラーデスグリズリーを見据える。
「な、な、なによぉーー!!何でよぉぉぉーー!!なんで私の僕にならないのよぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・ふん。教えて差し上げますわ。貴女は従魔を従属魔法で従わせているようですね。格上の存在が力を誇示して従わせる力技の魔法ですわ。しかし私と主様とは従魔契約で結ばれているのです。主と従魔が対等の立場で了承し手を取り合う契約ですわ。言わば信頼と絆の契約。そのような一方的な従属魔法で主様と私の契約を上書き出来る訳がないですわ!!その上、主様の膨大な御力に護られている私にとっては心一つ乱す事はないですわ!」
フェルネスは心配そうに見上げるゼノアに優しく微笑むとゼノアを抱き抱え胸の中に収める。
「主様。ご心配をおかけしました。私はこの通り主様の従魔ですわ。」
「う、うん・・・よ、良かった・・本当によかったよ・・・」
ゼノアは涙を隠すようにフェルネスの胸の中で安堵するのだった。
「うにぅぅぅ・・・じゅ、従魔契約?!そんな格下のスキルが私のテイムマスターの称号を超えるというの?!な、なんなのよぉぉぉぉーー!!わ、私よりその人間のちんちくりんの子供の方が私より良いっていうのぉぉぉぉ!!!」
「その通りですわ!私の主様は最高の主ですわ!比べて貴女は従魔を顎で使い恐怖で支配する・・・従魔と心が通わない支配・・・従魔達を切り捨て犠牲にしても何とも思わない主・・・貴女のような主に仕える従魔達が不憫でなりませんわ!!」
「うにゅぅぅ・・・う、五月蝿いわねぇぇ!!従魔なんて所詮道具でしかないのよぉぉぉーー!!主が死ねって言ったら死ぬのが従魔の使命なのぉぉぉぉ!!」
(・・・っ!!こいつは・・・)
「・・・お前・・・許さないよ・・・」
ゼノアが魔力を滲ませながらフェルネスの腕から飛び降りた。
「・・・よくも僕からフェルネスを取り上げようとしたな・・・自分の我儘で誰かの大切なものを奪う奴は絶対許さない!!」
ゼノアは怒りに打ち震えながら魔力を漲らせエンペラーデスグリズリーに近付いて行く。
(ねえ、フェルネス。あの魔獣はまだ生きてるの?)
(・・・はい。テイムマスターのルナレーンの憑依によって辛うじてですが生きていますわ。ですがルナレーンの憑依が解ければ数秒で死に至ますわ。)
(・・・良かった。生きているんだね。それなら助けられるよ。そしたら・・・くくっ・・・)
ゼノアは自分のステータスを見てルナレーンへの嫌がらせを思い付く。すると自然と口元が緩みゴルド譲りの悪い笑みを浮かべた。そんなゼノアの表情をフェルネスは背後からでも容易に想像出来た。
(・・・主様が私のために怒ってくださっている・・・このフェルネス、感激至極の思いですわ。恐らく今の主様の表情は怒りの中に悪巧みを大さじ一杯入れたような悪人顔になっているのでしょうね・・・。ふふっ・・・ルナレーン。誰に喧嘩を売ったか思い知ればいいわ。)
フェルネスもまた口元を歪めルナレーンの末路を楽しみに主であるゼノア背中を眺める。
「ふ、ふーーんだ!!だったらどうだって言うのぉぉーー?!何をするのか知らないけどぉぉーー!私には指一本触れられないわよぉぉぉーー!!」
「ふん!お前の名前・・・ムネナイーンだったか?」
ゼノアがニヤリと笑い指を指す。
「はっ、はぁぁぁ?!ム、ムネナイ・・・ーン?!な、な、何よ失礼なぁぁぁ!!”ン”しか合ってないじゃないのよぉぉぉ!!!ルナレーン!!私はルナレーンよぉぉぉぉ!!」
(うくっ・・こ、こいつ・・気にしてる事を・・・許さないわ・・・)
エンペラーデスグリズリーが無意識に両手で胸を摩る。
「おい!ムネナイーン!今から面白い事をしてやるよ!」
「むきぃぃーー!!!ルナレーンよぉぉぉ!!あんたわざと間違えてるわねぇぇぇぇ!!」
「ふん!そんな事どうでもいいんだよ!それよりその憑依ってやつはお前の意識が今ここにあるって事だよな?」
「えぇ!そーーよ!!テイムマスターしか覚えられないスキルなのぉぉーー!!遠くにいても従魔に意識と精神を移して好きに操れるのよぉぉーー!!凄いでしょーーう!!」
(へーー・・・意識と精神を移してるんだ・・・ふふっ・・僕の考えが正しかったら・・・よし・・・まずは魔法解除。)
ぱきぃぃん・・・
ゼノアが手をかざすとエンペラーデスグリズリーを足止めしていたアースジャベリンが消えた。そして同時に魔法を発動させる。
「ハイヒール!!」
ゼノアが放った聖魔法が丸焦げだったエンペラーデスグリズリーの身体を優しく包み込み全快させる。
「えっ!?な、な、なんで敵を助けるような事をするのぉぉーー?・・・あっ!分かったぁぁぁ!!あんたベアちゃんを可哀想だって思ったんでしょーー!?あまちゃんねーー。」
ゼノアの行動に理解が出来ないルナレーンは虚勢を張るが同時に不安が全身を駆け巡る。
「あぁ・・・そうだよ。フェルネスがお前の従魔が不憫だと言ってたからね。だけど・・・本当の目的は・・・これだよ!!」
ゼノアが魔力を解放し手をかざすとエンペラーデスグリズリーを中心に深紅の魔法陣が現れエンペラーデスグリズリーを包み込む!
(こ、これは従属の魔法陣!!・・・主様が何故?!・・・はっ!あ、あの時・・主様も従属の魔法陣に触れていた・・・主様はその身に受けたスキルを覚える・・・ふふっ・・・テイマーでもない主様が・・・テイムマスターのスキルを取得したのですか・・・流石と言うしかありませんわ!!そして今・・主様がテイムしようとしているのは・・・)
フェルネスがゼノアの意図を理解した時、同時にルナレーンも感じていた不安に気付いた。
「ま、まさか!!!あ、あんた!!魔人の私をテイムしようとしてるのぉぉぉ!?」
「くくくっ・・・やっと気付いた?そうさ
!僕はお前をテイムして従魔達の苦しみを教えてあげようとしているんだよ!!覚悟しろ!!」
「そ、そ、そんな事・・・出来る訳がないじゃないぃぃぃーー!!!」
「くっくっく・・・やってやるよ。お前の失敗は人間を甘く見た事だよ。今からお前は僕の従魔になるんだ。そして今までお前が従魔にして来た理不尽をその身に受けるんだよ!!」
ゼノアは〈魔力創造〉で闘気を魔力に変換して従属の魔法陣を強化して行く!
「う、う、う、嘘ぉぉぉ!!な、な、何よぉぉぉ!!この力はぁぁぁ!!に、に、逃げられないぃぃぃ!!こ、こ、このテイムマスターの私がぁぁぁ!!に、に、人間なんかにぃぃぃぃ!!!いやぁぁぁぁぁ・・・・」
深紅の光に包まれたエンペラーデスグリズリーからルナレーンの憑依が解け意識と精神が本体へと戻って行く・・・。
ルナレーンはゼノアの従属の魔法に抗う事が出来ずに大きな椅子に座ったまま同じく深紅の光に包まれていた。
「・・・な、なんなのよ・・・こ、この魔力・・・だ、だけど・・な、何・・・ち、力が溢れてくる・・・魔力が漲って来る・・・い、今なら何でも出来るような気がするわ・・・」
ルナレーンの全身にゼノアの魔力が漲って行く。するとルナレーンの身長がどんどん伸び、まるで子供から大人の女性へと成長して行った。寂しかった胸はリボンドレスから溢れんばかりに膨らんでいく。着ていたリボンドレスは成長した身体の中央で辛うじて豊満な胸と下半身の下着を隠していた。
「ふ、ふえっ?!な、なに・・・わ、私はどうなったの・・・?!うにゃ?!・・・わ、私の・・お、おっぱいが・・・」
がたんっ!!
ルナレーンは椅子の上で自分の身体の変化に戸惑い慌てて椅子から立ち上がり姿見の大きな鏡の前に立った。
「ふ、ふえっ?!う、嘘っ?!こ、これが・・・わ、わ、私!?」
鏡に映ったルナレーンの姿は赤毛をツインテールにした幼さを裏腹にリボンドレスからスラリと伸びた色白で色っぽい脚、腰はくびれ胸は以前とは比べ物にならない程にリボンドレスを押し広げていた。その姿は世の道ゆく男が目を奪われるのは必然と言っても良い程の理想の女性であった。
「・・・き、綺麗・・・わ、私・・・綺麗・・・あ、あの人間の従属の魔法で私は・・・成長・・いえ・・・進化した・・・」
ルナレーンは鏡の前で美しい自分の姿に夢のような思いでその場で回りながら様々な角度で見惚れていた。
「うふふっ・・・あははっ!私って!私って綺麗ーーー!!」
(・・・おい!今すぐここへ来るんだ!)
「は、はへっ・・・あっ・・・」
突然、頭の中に響く怒気が籠った声にルナレーンは動きを止めて大事な事を思い出し冷たい汗が頬を伝う。
「・・・わ、私・・従魔になっちゃったんだけ・・・ん?待って、確か・・従属魔法は格上が格下の存在を従わせる魔法だったはず・・・なら!間違いなく私の方が格上のはずよ!!」
(早く来い!!!でないとこうだ!!)
ゼノアの怒気と苛つきを解放した声共にルナレーンの頭の中に激しく締め付けられるような激痛が走る。
「うきゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!痛い痛い痛痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!や、やめ、やめ、やめてぇぇぇぇぇ!!!!」
(こ、これはぁぁぁ!!もしかして従属の戒め!?う、嘘よぉぉぉぉ!私の方が格上のはずなのにぃぃぃぃ!!と、とにかくここは言う事を聞いて・・・)
(わ、わ、分かったよぉぉぉぉ!!!だからやめてぇぇぇ!!)
ルナレーンは必死に暗黒魔法で床に黒い空間を作るとその中に転がり込んだ。そして次の瞬間ゼノアの前に黒い空間が現れ激痛に頭を抱えてのたうち回るルナレーンが現れた。
「や、や、やめてぇぇぇ!!!死んじゃうぅぅぅぅ!!!」
「えっ?こ、こいつがルナレーン?!そ、想像してたのと違うんだけど・・・」
ゼノアは目の前でのたうち回る大人の女性を唖然として眺めていた。
「ねえぇぇぇ!!は、早く何とかしてぇぇぇ!!」
「あっ!つい忘れてた・・・」
ゼノアが慌てて戒めを解くとルナレーンは疲れ果てたようにうつ伏せで肩で息をしていた。
「はひぃぃ・・はひぃぃ・・・し、死ぬかと思った・・・」
「・・いつまで寝ているのですか?主様の前ですわよ!?そこに正座なさい!!ふんっ!」
ビシャンッ!!
不意にフェルネスは苛つきを隠せず魔力を滲ませ目を細めるとルナレーンの身体に電撃が走る。
「ひゃうっ!!い、いきなり何するのよぉぉぉ・・・うぅっ。」
ルナレーンが勢いよく身体を起こして顔を上げるが息を飲み言葉を詰まらせる。目の前には魔力を滲ませ殺気の籠った目で見下ろすフェルネスと不思議そうに見下ろすゼノアの姿があった。
(はうっ・・・また戒めが・・・わ、私・・・これからどうなっちゃうの・・・)
ルナレーンは従属の戒めの激痛を思い出しそそくさとその場で正座し手を膝の上に置く。そして目を泳がせながらこれからの事を想像して怯えるのであった。
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そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
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