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第43話 一難去って・・・
しおりを挟むここはロディアス商会セルバイヤ王都支部の執務室。責任者を務めるヘルバン・ロディアスが報告を聞きこめかみを震わせている。
ヘルバン・ロディアスはアルバン・ロディアスの弟でありセルバイヤ王都支部で責任者として勤めていた。しかし素行が悪く使用人へのセクハラやパワハラに加え相当な額の横領が発覚したのだった。その為アルバンの視察に合わせて使用人達が横領の証拠を掻き集め内部告発に至ったのだった。
「な、何だと?!ぜ、全滅?!今、全滅と言ったのか?!」
「・・そうです。全滅・・です。闇ギルドから雇った二十五人は十八人が死亡。七人は全身の骨を砕かれ再起不能です。我々が偵察に行った時には既に・・・アルバン・ロディアスの一行の姿は無く屍が転がっているだけでした。・・・しかし気になるのは生き残った者が譫言のように悪魔だの魔族だのと口走り怯えているという事です。一体何があったのか検討も付きません。」
だぁぁぁぁん!!
ヘルバンが両手の拳を振り上げ書類が乗った机に打ち付ける。
「くっ・・くそぉぉぉ!!アルバンめぇぇ!!奴も凄腕の護衛を雇っていたか!!ちぃ!!あの時いた冒険者かぁぁぁぁ!!くそぉ!!くそぉ!!くそぉぉぉぉぉ!!」
拳を握り締めたヘルバンの歯軋りが部屋の中に響く。
「・・・奴等は!奴等は何処に行った?!まだそう遠くには行っていない筈だ!!今すぐ追えぇぇ!!奴等が本部に戻る前に書類もろとも始末するんだ!!金は幾ら掛かっても構わん!!闇ギルドの手練を居るだけ連れて行け!!急げぇぇぇぇぇ!!」
ヘルバンが立ち上がり怒鳴り散らし補佐役のナルベスを目玉が落ちんばかりに睨み付けると黙って頷き部屋を出て行った。
ナルベスは頭を抱えため息を吐く。
(・・・はぁ・・・全く・・・そう言えばあの場には馬車の跡が二台分あった・・・あの車輪の幅は王家専用の馬車だ・・・一体あの場所で何があった・・・何か嫌な予感がする・・・少し調べるか・・・)
(う、うん・・・ここは・・・知らない天井・・・だ・・・)
ゼノアは人の気配を感じて薄目を開ける。すると目線と天井の間に見た事のある女性の顔が現れる。
「あら?ゼノア様。お目覚めですか?」
セルバイヤ王都から一緒に来たメイドであった。ゼノアが寝ている間の自ら看病を進んで申し出ていたのだ。
「あ・・お姉さんは・・・」
「はい。私はセシーラと申します。この度この屋敷でメイドとして働く事になりました。よろしくお願いしますね。」
「あ、うん・・・ところでゴルじいは?」
「はい。今、ゼノア様がお助けになったアルバン・ロディアス様とお話しの最中です。」
(あぁ・・・そうだよね・・・あんな魔法使っちゃったもんね・・・)
ゼノアはベットの上で身体を起こすと身体を捻り自分の状態を確認する。
(うん!もう大丈夫だ!!)
ゼノア
Lv 156
称号 スキル神官
力 2370
体力 2267
素早さ 2089
魔力 2280
スキルポイント 67
【固有スキル】〈神級スキル〉〈育成の種5〉〈寒耐性10〉〈苦痛耐性12〉〈状態異常耐性15〉〈運搬13〉〈料理9〉〈解体8〉〈腕力強化9〉〈体力強化9〉〈脚力強化9〉〈物理防御9〉〈魔力強化9〉〈鑑定7〉〈格闘4〉〈豪剣技1〉〈闘気4〉〈暗黒魔法2〉〈魔法防御2〉〈魔力創造2〉〈堅固2〉〈威圧2〉〈加速1〉〈聖魔法3〉〈光魔法2〉〈身体強化3〉
「セシーラさん。僕、ゴルじいのところに行って来るよ。」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
セシーラがニッコリ笑って一礼し扉を開けるとゼノアはよいしょとベットから降りて部屋を出て行く。その後からセシーラも付いて行く。
(あれからどんな話になっているんだろう。)
ゼノアは足早にゴルド達の元へ向かうのだった。
コンコン・・・
ガベル達とアルバン達が打ち解け談笑しているとノックの音が響き会話が途切れ皆の視線扉に集まる。
(おっ!来たか・・・)
「ゼノア様がお目覚めになりました。」
ゴルドの期待通り扉の外からセシーラの声がすると扉が開きゼノアがひょっこりと顔を出した。
「おっ!主役の登場だ!身体はもういいのか?」
「うん!もう大丈夫!」
ゼノアはゴルドに向かってニッコリ笑う。ガベルとユフィリアも安心したように口元を緩ませた。
(あの子です。間違いありません。)
(そ、そうか・・・あの子供が・・・)
キメルの耳打ちにアルバンは部屋に入って来たゼノアを目で追っていた。あんな子供がと一瞬頭を過ぎるがそれを振り払い立ちあがろうとするが一瞬早く目を輝かせたイリアがゼノアに向かって突進して行った・・・
「ゼノア様ぁぁぁぁぁ!!!!」
「えっ?!な、何、何、何?!?!?!」
ゼノアは突進してくるイリアにどうして良いものか分からず立ち尽くしていると感極まり溢れる笑顔のままタックルにも似た勢いでゼノアに飛びついた。
「ゼノア様!ゼノア様!ゼノア様!ゼノア様!ゼノア様!私のゼノア様ぁぁぁぁぁ!!!」
イリアはゼノアの頭を一心不乱に胸に押し付け抱き締めて左右に振り回す。
「あうわぁぁぁぁ・・・・な、何?!この状況・・・」
「これは運命なの!!私達は結婚する運命なの!!子供は何人欲しい?!多い方がいい?!それじゃあ!!作りましょう!!今すぐ作りましょう!!」
イリアはゼノアを抱き締めたまま部屋を出て行こうとする。
「こ、こら!!イリア!!はしたないぞ!!ゼノア君が困っているじゃないか!!」
アルバンは慌てて駆け寄るとイリアを捕まえてゼノアから引き剥がす!!しかしアルバンに掴まれながらもイリアは手足をばたつかせていた。まるで背中を持たれた虫のように見えたゼノアであった。
「あうっ!!嫌よ!!離して!!何するの?!これからゼノア様とバシバシ子供を作って・・・」
「こら!!イリア!落ち着きなさい!!女の子がこんな事を口走っては駄目だ!!それこそゼノア君に嫌われるぞ!?」
「えっ?!」
嫌われると言われ冷静になったイリアがチラリと見ると目を逸らし苦笑いをするゼノアがいた。
「・・・あ、あうぅぅ・・・」
イリアは我に返り恥ずかしさのあまり目を泳がせ大人しくなる。アルバンはイリアを下ろしてソファに座らせた。
「はぁ・・・全くお前って子は・・・暫くここで大人しく座っていなさい。」
「・・・はい。ごめんなさい・・・」
イリアは座りながらももじもじとチラリチラリとゼノアを見ていた。
アルバンは気を取り直すと躊躇なくゼノアの前で両膝を付いた。
「へっ?!」
「ゼノア君・・いや、ゼノア殿。この度の事・・どんなに感謝しても感謝しきれない。あの時の君の想いは私の中に刻まれている。さっきのように生きてイリアを抱けるのは君のお陰だ。本当に・・・本当にありがとう。」
手を膝に置き腰から頭を下げる。アルバンは最大級の感謝をゼノアに向けた。
ゴルド達もアルバンの気持ちを察し目尻の光るものを拭うのだった。
「あ、あの・・・感謝は受け取りました。頭を上げてください。アルバンさんだって僕と同じ立場だったら同じ事をした筈です。ですから僕が将来困った時に手を貸してくれたらそれで良いです。」
アルバンはほっとしたように頭を上げる。
「ふっ。ゼノア殿と話しているととても五歳とは思えないな。だがそう言ってくれると私も助かる。早速だがこれを受け取って欲しい。」
アルバンは懐から金色の縁取りがされた黒い札と革に金色の文字が刻み込まれ四角い大きな金色の印が押された手紙のような物を取り出した。
「これはこの世界にある全てのロディアス商会で特別な対応を約束する物だよ。ロディアス商会は王族や貴族の御用達が基本だがこの札を見せればいつでも利用出来るんだ。しかもこの証書を見せれば基本的にはゼノア君が支払いをする必要はない。全てロディアス商会が負担する。だが例外もあるからその時は聞くと良い。更に各国の商業ギルドでこの二つを見せれば君の身元をロディアス商会が責任を持って保証するという証明にもなる。君の前途に協力させて欲しいんだ。是非受け取ってくれ。」
(えっ?!えっ?!そ、それって・・・凄い事だよね・・・良いの?!良いのかな・・・?)
ゼノアは”どうしよう?”という顔でゴルド達を見るとゴルド達も目をまん丸にして固まっていた。そしていち早く動いたのはユフィリアであった。ユフィリアはゼノアの背後に周りゼノアの肩越しに顔を出す。
「ゼノアくぅん。アルバンさんの感謝の気持ちなんだからぁ・・・受け取らないとぉ・・失礼よぉ・・・ほらぁ・・・ね?」
「えっ・・う、うん・・・そうだよね・・・じゃあ・・」
(あ、あの顔は・・・絶対ゼノアの為に言ってねぇな・・)
(あぁ・・・もちろんだ・・個人的欲望が丸見えだ・・・)
ゼノアはユフィリアに背中を押されて差し出された札と証書を恐る恐る受け取った。
「あ、ありがとうございます。大切に使わせてもらいます。」
「良いんだ。私にはこれぐらいしか出来ないからね。今後ともロディアス商会をご贔屓に頼むよ。」
「はい。もちろんです。」
ゼノアがニッコリと笑う。そしてゼノアの背後でユフィリアが目を細めにんまり笑うのをゴルドとガベルは見逃さなかった・・・
細く暗い路地の闇から補佐役ナルベスが神妙な面持ちで姿を現す。
(ここ数日でセルバイヤ王都から出た王家専用車は一台だけ・・・ゲイブルの町の魔族スタンピードの功労者を乗せた一台のみ・・・Sランク冒険者が立ち上げた町ゲイブル・・・この辺りに住む者なら知らぬ者はいない町ゲイブル。恐らくアルバン・ロディアスに助太刀に入ったのは・・・王都ゼルガリアの守護者達・・・これは途轍もなくリスクが大き過ぎる・・・魔族すらも蹴散らし討ち破る町ゲイブル・・・なるほど・・・Cランクごときの烏合の集では歯が立たなかった訳だ・・・ならば・・・リスクを回避する方法を考えなければ・・・)
補佐役ナルベスは愚直にヘルバン・ロディアスの要望に答えるべく最善手を模索するのであった・・・
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