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第54話 二年後
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ゼノアが七歳になるのに合わせてセルバイヤ王から直々の書状が届いた。ゼノアのセルバイヤ王都の冒険者育成学院への推薦状であった。しかしゴルドを始めガベル、ユフィリアは首を傾げる。何故ならゼノアの希望により三人の元Sランク冒険者が冒険者の心得から薬草の採取方法など冒険者に必要な事を教え込まれていたのだ。その上ゼノアの戦闘能力で初心者に近い子供の中に混ざれば逆に危険極まりないのだ。
「ガベル。どうする?ゼノアは乗り気だが周りの奴らが心配だぜ・・・貴族のガキ共がちょっかい出そうもんならデコピン一撃で死ぬぞ?」
「あぁ。私もそれを懸念している。かと言って陛下直々の推薦だ。ゼノア君が全力で拒否する以外受けないという選択肢は無い・・・くれぐれも自重する様に言うしかあるまい。」
「まあ、大丈夫でしょ!陛下から学院に事情は伝わっているでしょう。それに本当の目的はセルバイヤ王国に留まらせる事よ。だからここまで沈黙を守って来たんじゃないの?」
「ふむ。確かに。そこまで待たせて”行きません!”は非常に不味いな・・・まあ、幸いゼノア君が行く気ならそれに従おう。」
「そうだな。」
「良いんじゃない。」
三人は仕方なしと結論を出し頷くのであった。
ゼノアがセルバイヤ王都へ出発する当日、ゲイブルの街の冒険者ギルドの扉が勢いよく開かれゼノアが飛び込んでくる。
「こんにちはー!」
ゼノアの姿を見付けた受付け嬢が待ってましたとばかりに駆け寄る。
「ゼノア君!さあ!こちらへ!!」
「あっ!は、はい!!」
受付け嬢がゼノアの手を取ると足早に奥の部屋に案内する。部屋の中は診療所になっておりベットの上には怪我をした四人の冒険者が応急処置をされて横たわっていた。
「来てくれたか!ゼノア君!新人のくせに無理をしてこの様よ!早速だけどこいつらを助けてやって!!」
「はい!」
ギルドマスターのミランダがホッと胸を撫で下ろす。怪我をした冒険者達はギルドのポーションでは回復しきれずに緊迫した状態だった。そんな時にゼノアは時折りギルドからの依頼で冒険者の治療を請け負っていたのだった。
(よし。これの実験にちょうどいいね!)
ゼノアはカバンから小瓶を取り出し蓋を開ける。すると部屋全体に温かな光と魔法陣が広がった。そして横たわる冒険者達の傷がみるみるうちに塞がって行く。
(なっ?!何?あの小瓶は?!)
「き、傷が・・・無い?!それどころか身体が軽いぞ!」
「お、俺の千切れ掛かった腕が・・・動く!!」
「う、うぅ・・た、助かったの・・私、助かったのね・・」
「も、もう駄目かと思ったのに・・・ど、どうして・・・」
冒険者達はミランダに目を向ける。
「はん!礼を言うならそこに居るゼノア君にいいな!!今日は出発の日だってのにわざわざお前達の為に来てくれたんだよ!!」
ミランダの言葉に冒険者達が驚いたようにゼノアに目を向ける。
「えっ?!・・・じゃ、じゃあ・・こ、この子がこの街の守護者ゼノア?!」
(あぁ・・また大袈裟な二つ名を付けてくれたね・・・)
「・・ゼノアと言います。怪我が治って良かったですね・・・」
照れ臭そうに頭を掻くゼノアの前に冒険者達が歩み寄り膝を付いた。
「な、何と礼を言ったらいいか分からないがありがとう!!本当に助かった!」
「ゼノア君。本当にありがとう・・私もう死んじゃうと思ってたの・・・うぅ・・」
「粋がって先走った結果がこれだ・・・君に救ってもらった命・・もっと大切にするよ。」
「・・本当に・・あ、ありがとう・・・ねえ、ゼノア君・・うちのパーティーに入らない?」
「えっ?!」
短髪赤毛の女剣士が妖艶な雰囲気て獲物を狙うかのように胸元をちらつかせながらゼノアににじり寄る。
(んーー・・・ちょっと・・)
「ごめんなさい!僕は今日から冒険者育成学院に入学するんです。だから無理なんです。」
「そうなんだ・・・確か三年間よね?私は待つわよ?どう?」
女剣士が食い下がるがゼノアの目線は女剣士の胸元と魔法使いであろう紫髪のロングヘアーの女性の胸元を交互に見ていた。
(・・・残念ながら・・・)
「お、お断りします・・・」
「えっ?!い、今・・何処を見て・・・」
女剣士がゼノアの目線を辿りこめかみを震わせる。すると笑いを堪えていたミランダが口を開く。
「はーはっはっ!!分かったかい?!お前の寂しい胸じゃあゼノア君を誘惑出来ないんだよ!!何せゼノア君のもう一つの通り名は『おっぱい守護者』なんだからね!」
「なっ?!・・お、おっぱ・・・」
女剣士が思わず自分の胸元を手で隠して立ち上がる。
(えぇぇーーー何その恥ずかしい通り名は?!あっ・・・ゴ、ゴブリンキングの時の・・・アレか・・・)
ゼノアは頭を抱えて自分の言動を後悔した。
「ほら!!分かったらさっさとゼノア君に銀貨一枚払って隣の部屋で待ってな!!みっちり説教してやるわ!!ほら!行った!行った!」
すると剣士の男が自分の耳を疑うようにミランダを見る。
「えっ!ま、待ってくれ!ぎ、銀貨一枚でいいのか?!あ、あの傷なら普通は金貨一枚は取られると思っていたんだぞ?」
「あぁ・・本人がそれで良いって言ってるんだから良いわ。ゼノア君にとっては大した事じゃ無いらしいからね。感謝しなさいよ!」
「そ、そう言う事なら・・・ゼノア君。本当にありがとう。」
冒険者達は一人一人ゼノアの広げた手のひらに銀貨を置いて部屋を出て行く。だが女剣士だけは納得出来ない表情で部屋を出て行くのであった。
「さて・・ゼノア君。説明してもらいましょうか?さっきの小瓶は何?」
ミランダが腕を組んで目を細める。
(や、やっぱり気になるよね・・・)
「えっと・・・これは〈エリアハイヒール〉を小瓶に封じ込めたマジックポーションなんです。普通のポーションって一人一本だから怪我人が多い時にはすぐに無くなっちゃうでしょ?そこで小瓶に薬を入れるんじゃなくて魔法を封じ込めたら一回で沢山の人を回復出来るんじゃないかって思って・・・作ったんで・・す・・・けど・・・」
ゼノアの説明を聞きながらじわじわと迫るミランダにゼノアの声が怯えるように段々と声が小さくなる。
ゼノアはこの二年の間で冒険者の回復の依頼が多いと感じていた。中には致命傷に近い状態で運び込まれる者も少なく無いのだ。その為自分が居ない時の事を考え聖魔法を魔力創造により魔力で包み込み小瓶に封じ込める事を思いついたのであった。
「・・・はぁ・・全く・・とんでもない物を作ったわね。そんな事考えたって出来るものじゃないわ。・・・で、それをどうするつもり?」
「あっ!それはガベルさんに言われてガベルさんの屋敷に保管してあります。だから取り敢えず手持ちにあるこの三本はここに置いて行きます。」
ゼノアは鞄から蒼白く光を放つ小瓶を取り出しベットの上に置く。ミランダはその一つを恐る恐る手に取りまじまじと見つめる。
(・・・なるほど。領主様もこれがどれ程規格外のポーションが分かっているのね。もしこのポーションを横流しでもされて世に知れたら・・・考えただけでも寒気がするわ。ふっ・・領主様が頭を抱える姿が目に浮かぶわ・・・)
そしてミランダは光るポーションを眺めながらある事に気付く・・・
「・・・ん?魔法を封じ込めた・・・?という事は・・ゼノア君・・・このポーション・・回復魔法だけじゃ無いわよね?」
「えっ・・・そ、その・・・」
「もう驚かないわ!言いなさい!!何を作ったの?!」
「えっ・・えっと・・結界とか呪い解除とか・・対ア、アンデット用とか・・あと・・攻撃用の魔法です・・・」
「はぁ・・・そうよね・・回復だけって事は無いわよね・・・因みに在庫は?」
ミランダが予想通りの答えに安心するように呆れ顔になる。
「・・・えっと・・・それぞれ三十・・・」
「えっ?!それぞれ三十本もあるの?!」
「あ、あの・・い、いえ・・・あの・・そ、それぞれ・・三十ダースです・・・」
「は、はあぁぁぁぁぁぁ!!!!三十ダースぅぅぅぅ?!?!?」
ミランダは目眩を覚え全力の驚きの声をギルド中に響き渡らせるのであった。
迎えに来た馬車の前でいつも通りシーラに抱きしめられシーラの胸にゼノアは埋れていた。
「ゼノアちゃん!寂しくなるわ・・たまには帰って来てね!」
「う、うぶっ!もぶっ!」
(こ、これも暫くお預けか・・・よし!必ず帰ってこよう・・・)
そんな光景を微笑ましく眺めているガベルの横にミランダが歩み出る。
「領主様。」
「ミランダか。どうした?」
「はい。あのゼノア君のマジックポーションの件です。効果の程をこの目で見ました。この街の事を思ってくれるのはありがたいですが・・・この事が世に知れたら面倒な事になりかねませんよ。」
「あぁ。私も同意見だ。相談された時は皆が度肝を抜かれた。特に攻撃魔法に関しては詳しくは言えないが危険過ぎる。試しに使う勇気もない。まさにゲイブルの街の最終兵器だ。・・・だがミランダ、何だかんだ言ってもゼノア君に助けられていたのは事実だ。魔族のスタンピード然り、ゼノア君のお陰で冒険者の死亡率も格段に低くなった。彼自身もここを離れる事に責任を感じているのだろう。私達はその気持ちを汲んで上手くやるしかないだろうな。」
「・・・確かに領主様の言う通りです。分かりました。・・・それにしても最終兵器が三十ダース・・・彼は自分がどれだけ規格外が分かっているのかねぇ・・・」
ミランダは手を振りながら馬車に乗り込むゼノアを苦笑いで見送る。
「ふっ・・私達からくれぐれも自重する様には言ってある。後は彼に任せるしかあるまい。何事もない事を祈っているがな・・・」
「はん!!何事もない訳ないだろう!!」
突然話を聞いていたゴルドがガベルの肩に手を置く。
「んおっ・・・ゴルドか。」
「ゼノアだぜ?大人しくしている訳がないだろう?!これから俺達は忙しくなるぜ・・・陛下からの呼び出しにな!」
「・・ふっ・・それもそうだな。退屈する事は無さそうだ・・・」
「あら?呼び出しの時は私も行くわよ!ついでにロディアス商会に寄るんだから!」
ユフィリアも冗談ぽくガベルとゴルドの間に割って入る。
(ふふっ・・・不安どころか楽しそうじゃないか・・・)
ミランダは孫の悪戯を楽しみにする様に笑い合う三人を見て考え過ぎていた自分が馬鹿らしく思えるのであった。
ゼノアが馬車の窓から上半身を乗り出し大きく手を振る。
「皆んなーー!!行ってきまーーす!!」
「おう!楽しんで来い!!」
「なるべく自重してくれよ!!」
ゼノアの出発を皆が大きく手をふり返し見送るのであった。
するとユフィリアの背後に一つの影が跪く。
「ユフィリア様。ユフィリア様の懸念通りセルバイヤ王都への道中に十人程度の盗賊がおりましたので排除しておきました。」
顔を上げればそれは元暗殺者オーレンであった。ユフィリアとゼノアに打ちのめされ助けられたあの日からユフィリア直属の諜報員として使われていた。
「そう。ご苦労様。せっかくのゼノア君の門出を汚されたくないからね。で、メーリアちゃんは手筈通りに向かってるのかしら?」
「はい。ゼノア様の情報は逐一報告が入るようになっております。」
「んっ!流石ね。これは必要経費と報酬よ。また頼むわよ。」
ユフィリアは金貨の入った袋を鞄から取り出しオーレンに渡す。オーレンの手にはずっしりとした重さを感じる。
「あ、ありがとうございます。こ、この金貨の量・・・今回の一件・・失敗は許されないという事を念頭に任務を遂行致します。それでは!」
オーレンはその場から音もなく消えるのであった・・・
「ガベル。どうする?ゼノアは乗り気だが周りの奴らが心配だぜ・・・貴族のガキ共がちょっかい出そうもんならデコピン一撃で死ぬぞ?」
「あぁ。私もそれを懸念している。かと言って陛下直々の推薦だ。ゼノア君が全力で拒否する以外受けないという選択肢は無い・・・くれぐれも自重する様に言うしかあるまい。」
「まあ、大丈夫でしょ!陛下から学院に事情は伝わっているでしょう。それに本当の目的はセルバイヤ王国に留まらせる事よ。だからここまで沈黙を守って来たんじゃないの?」
「ふむ。確かに。そこまで待たせて”行きません!”は非常に不味いな・・・まあ、幸いゼノア君が行く気ならそれに従おう。」
「そうだな。」
「良いんじゃない。」
三人は仕方なしと結論を出し頷くのであった。
ゼノアがセルバイヤ王都へ出発する当日、ゲイブルの街の冒険者ギルドの扉が勢いよく開かれゼノアが飛び込んでくる。
「こんにちはー!」
ゼノアの姿を見付けた受付け嬢が待ってましたとばかりに駆け寄る。
「ゼノア君!さあ!こちらへ!!」
「あっ!は、はい!!」
受付け嬢がゼノアの手を取ると足早に奥の部屋に案内する。部屋の中は診療所になっておりベットの上には怪我をした四人の冒険者が応急処置をされて横たわっていた。
「来てくれたか!ゼノア君!新人のくせに無理をしてこの様よ!早速だけどこいつらを助けてやって!!」
「はい!」
ギルドマスターのミランダがホッと胸を撫で下ろす。怪我をした冒険者達はギルドのポーションでは回復しきれずに緊迫した状態だった。そんな時にゼノアは時折りギルドからの依頼で冒険者の治療を請け負っていたのだった。
(よし。これの実験にちょうどいいね!)
ゼノアはカバンから小瓶を取り出し蓋を開ける。すると部屋全体に温かな光と魔法陣が広がった。そして横たわる冒険者達の傷がみるみるうちに塞がって行く。
(なっ?!何?あの小瓶は?!)
「き、傷が・・・無い?!それどころか身体が軽いぞ!」
「お、俺の千切れ掛かった腕が・・・動く!!」
「う、うぅ・・た、助かったの・・私、助かったのね・・」
「も、もう駄目かと思ったのに・・・ど、どうして・・・」
冒険者達はミランダに目を向ける。
「はん!礼を言うならそこに居るゼノア君にいいな!!今日は出発の日だってのにわざわざお前達の為に来てくれたんだよ!!」
ミランダの言葉に冒険者達が驚いたようにゼノアに目を向ける。
「えっ?!・・・じゃ、じゃあ・・こ、この子がこの街の守護者ゼノア?!」
(あぁ・・また大袈裟な二つ名を付けてくれたね・・・)
「・・ゼノアと言います。怪我が治って良かったですね・・・」
照れ臭そうに頭を掻くゼノアの前に冒険者達が歩み寄り膝を付いた。
「な、何と礼を言ったらいいか分からないがありがとう!!本当に助かった!」
「ゼノア君。本当にありがとう・・私もう死んじゃうと思ってたの・・・うぅ・・」
「粋がって先走った結果がこれだ・・・君に救ってもらった命・・もっと大切にするよ。」
「・・本当に・・あ、ありがとう・・・ねえ、ゼノア君・・うちのパーティーに入らない?」
「えっ?!」
短髪赤毛の女剣士が妖艶な雰囲気て獲物を狙うかのように胸元をちらつかせながらゼノアににじり寄る。
(んーー・・・ちょっと・・)
「ごめんなさい!僕は今日から冒険者育成学院に入学するんです。だから無理なんです。」
「そうなんだ・・・確か三年間よね?私は待つわよ?どう?」
女剣士が食い下がるがゼノアの目線は女剣士の胸元と魔法使いであろう紫髪のロングヘアーの女性の胸元を交互に見ていた。
(・・・残念ながら・・・)
「お、お断りします・・・」
「えっ?!い、今・・何処を見て・・・」
女剣士がゼノアの目線を辿りこめかみを震わせる。すると笑いを堪えていたミランダが口を開く。
「はーはっはっ!!分かったかい?!お前の寂しい胸じゃあゼノア君を誘惑出来ないんだよ!!何せゼノア君のもう一つの通り名は『おっぱい守護者』なんだからね!」
「なっ?!・・お、おっぱ・・・」
女剣士が思わず自分の胸元を手で隠して立ち上がる。
(えぇぇーーー何その恥ずかしい通り名は?!あっ・・・ゴ、ゴブリンキングの時の・・・アレか・・・)
ゼノアは頭を抱えて自分の言動を後悔した。
「ほら!!分かったらさっさとゼノア君に銀貨一枚払って隣の部屋で待ってな!!みっちり説教してやるわ!!ほら!行った!行った!」
すると剣士の男が自分の耳を疑うようにミランダを見る。
「えっ!ま、待ってくれ!ぎ、銀貨一枚でいいのか?!あ、あの傷なら普通は金貨一枚は取られると思っていたんだぞ?」
「あぁ・・本人がそれで良いって言ってるんだから良いわ。ゼノア君にとっては大した事じゃ無いらしいからね。感謝しなさいよ!」
「そ、そう言う事なら・・・ゼノア君。本当にありがとう。」
冒険者達は一人一人ゼノアの広げた手のひらに銀貨を置いて部屋を出て行く。だが女剣士だけは納得出来ない表情で部屋を出て行くのであった。
「さて・・ゼノア君。説明してもらいましょうか?さっきの小瓶は何?」
ミランダが腕を組んで目を細める。
(や、やっぱり気になるよね・・・)
「えっと・・・これは〈エリアハイヒール〉を小瓶に封じ込めたマジックポーションなんです。普通のポーションって一人一本だから怪我人が多い時にはすぐに無くなっちゃうでしょ?そこで小瓶に薬を入れるんじゃなくて魔法を封じ込めたら一回で沢山の人を回復出来るんじゃないかって思って・・・作ったんで・・す・・・けど・・・」
ゼノアの説明を聞きながらじわじわと迫るミランダにゼノアの声が怯えるように段々と声が小さくなる。
ゼノアはこの二年の間で冒険者の回復の依頼が多いと感じていた。中には致命傷に近い状態で運び込まれる者も少なく無いのだ。その為自分が居ない時の事を考え聖魔法を魔力創造により魔力で包み込み小瓶に封じ込める事を思いついたのであった。
「・・・はぁ・・全く・・とんでもない物を作ったわね。そんな事考えたって出来るものじゃないわ。・・・で、それをどうするつもり?」
「あっ!それはガベルさんに言われてガベルさんの屋敷に保管してあります。だから取り敢えず手持ちにあるこの三本はここに置いて行きます。」
ゼノアは鞄から蒼白く光を放つ小瓶を取り出しベットの上に置く。ミランダはその一つを恐る恐る手に取りまじまじと見つめる。
(・・・なるほど。領主様もこれがどれ程規格外のポーションが分かっているのね。もしこのポーションを横流しでもされて世に知れたら・・・考えただけでも寒気がするわ。ふっ・・領主様が頭を抱える姿が目に浮かぶわ・・・)
そしてミランダは光るポーションを眺めながらある事に気付く・・・
「・・・ん?魔法を封じ込めた・・・?という事は・・ゼノア君・・・このポーション・・回復魔法だけじゃ無いわよね?」
「えっ・・・そ、その・・・」
「もう驚かないわ!言いなさい!!何を作ったの?!」
「えっ・・えっと・・結界とか呪い解除とか・・対ア、アンデット用とか・・あと・・攻撃用の魔法です・・・」
「はぁ・・・そうよね・・回復だけって事は無いわよね・・・因みに在庫は?」
ミランダが予想通りの答えに安心するように呆れ顔になる。
「・・・えっと・・・それぞれ三十・・・」
「えっ?!それぞれ三十本もあるの?!」
「あ、あの・・い、いえ・・・あの・・そ、それぞれ・・三十ダースです・・・」
「は、はあぁぁぁぁぁぁ!!!!三十ダースぅぅぅぅ?!?!?」
ミランダは目眩を覚え全力の驚きの声をギルド中に響き渡らせるのであった。
迎えに来た馬車の前でいつも通りシーラに抱きしめられシーラの胸にゼノアは埋れていた。
「ゼノアちゃん!寂しくなるわ・・たまには帰って来てね!」
「う、うぶっ!もぶっ!」
(こ、これも暫くお預けか・・・よし!必ず帰ってこよう・・・)
そんな光景を微笑ましく眺めているガベルの横にミランダが歩み出る。
「領主様。」
「ミランダか。どうした?」
「はい。あのゼノア君のマジックポーションの件です。効果の程をこの目で見ました。この街の事を思ってくれるのはありがたいですが・・・この事が世に知れたら面倒な事になりかねませんよ。」
「あぁ。私も同意見だ。相談された時は皆が度肝を抜かれた。特に攻撃魔法に関しては詳しくは言えないが危険過ぎる。試しに使う勇気もない。まさにゲイブルの街の最終兵器だ。・・・だがミランダ、何だかんだ言ってもゼノア君に助けられていたのは事実だ。魔族のスタンピード然り、ゼノア君のお陰で冒険者の死亡率も格段に低くなった。彼自身もここを離れる事に責任を感じているのだろう。私達はその気持ちを汲んで上手くやるしかないだろうな。」
「・・・確かに領主様の言う通りです。分かりました。・・・それにしても最終兵器が三十ダース・・・彼は自分がどれだけ規格外が分かっているのかねぇ・・・」
ミランダは手を振りながら馬車に乗り込むゼノアを苦笑いで見送る。
「ふっ・・私達からくれぐれも自重する様には言ってある。後は彼に任せるしかあるまい。何事もない事を祈っているがな・・・」
「はん!!何事もない訳ないだろう!!」
突然話を聞いていたゴルドがガベルの肩に手を置く。
「んおっ・・・ゴルドか。」
「ゼノアだぜ?大人しくしている訳がないだろう?!これから俺達は忙しくなるぜ・・・陛下からの呼び出しにな!」
「・・ふっ・・それもそうだな。退屈する事は無さそうだ・・・」
「あら?呼び出しの時は私も行くわよ!ついでにロディアス商会に寄るんだから!」
ユフィリアも冗談ぽくガベルとゴルドの間に割って入る。
(ふふっ・・・不安どころか楽しそうじゃないか・・・)
ミランダは孫の悪戯を楽しみにする様に笑い合う三人を見て考え過ぎていた自分が馬鹿らしく思えるのであった。
ゼノアが馬車の窓から上半身を乗り出し大きく手を振る。
「皆んなーー!!行ってきまーーす!!」
「おう!楽しんで来い!!」
「なるべく自重してくれよ!!」
ゼノアの出発を皆が大きく手をふり返し見送るのであった。
するとユフィリアの背後に一つの影が跪く。
「ユフィリア様。ユフィリア様の懸念通りセルバイヤ王都への道中に十人程度の盗賊がおりましたので排除しておきました。」
顔を上げればそれは元暗殺者オーレンであった。ユフィリアとゼノアに打ちのめされ助けられたあの日からユフィリア直属の諜報員として使われていた。
「そう。ご苦労様。せっかくのゼノア君の門出を汚されたくないからね。で、メーリアちゃんは手筈通りに向かってるのかしら?」
「はい。ゼノア様の情報は逐一報告が入るようになっております。」
「んっ!流石ね。これは必要経費と報酬よ。また頼むわよ。」
ユフィリアは金貨の入った袋を鞄から取り出しオーレンに渡す。オーレンの手にはずっしりとした重さを感じる。
「あ、ありがとうございます。こ、この金貨の量・・・今回の一件・・失敗は許されないという事を念頭に任務を遂行致します。それでは!」
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