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第90話 本気の一撃
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「モーリア!始めて!」
訓練場にデルマの声が響き渡る。
(よし・・・行くよ。)
ゼノアは開始の合図と同時に瞑想するように眼を閉じる。そしてゆっくりと息をを吐き眼を開けるとゴルドとの手合わせを思い出し拳を構える。すると辺りに嵐の前の静けさのような異様な緊張感が漂う・・・
(・・・な、何・・・こ、この緊張感・・・何が起ころうとしている・・)
異様で何かが纏わりつくような感覚に襲われるモーリアの頬を冷たい汗が伝い落ちる。
「フェ、フェルネス殿・・・い、今から・・な、何が始まるのだ?こ、この緊張感は異常だわ・・・」
デルマもまた感じた事のない感覚に襲われていた。
「ふふっ。見ていれば分かりますわ。今から主様の最大最強の一撃が放たれるのですわ。あのお相手のモーリアさんでしたか・・・主様の一撃をどう捌くか見ものですわ・・・ふっ・・」
(・・・まあ、どう頑張っても・・・無理でしようけど・・・)
フェルネスは笑顔のままモーリアに哀れみの感情を抱くのであった。
(まずは・・・身体強化!!)
ずぶおぉぉぉぉぉ!!!
〈神級スキル〉により強化された〈身体強化5〉によりゼノアの全身が淡く光りステータスが爆発的に上昇する。そして溢れる力の波動がゼノアの中心にして辺りに吹き荒れる。
「うくっ!・・・こ、これは・・ま、まさか!!し、身体強化か!!それもこの威力・・・な、なるほど・・これがお前の切り札か!!そ、それならば・・・」
モーリアは双剣を剥き放ち防御体制を取った。
「はうっ!!!ば、馬鹿な?!な、何だあの身体強化は?!あ、あれが・・あの少年の全力なのか!!」
ゼノアの力の波動に圧倒されデルマは腰を落として踏ん張っていた。
「ふっ・・まだです。主様のお力はこんなものではありませんわ。それとデルマ様、これから主様の力の余波が予測以上に激しくなって行きます。ですので私の後ろに居ることをお勧め致しますわ。」
「な、何?さ、更に上があると言うの?」
「・・・もちろんですわ。」
(この人間少しうるさいですわ。主様の勇姿に集中したいのに・・・)
フェルネスはゼノアの勇姿を見逃すまいとデルマに振り向く事なく答える。若干隣で騒ぐデルマを疎ましく思うのであった。
ゼノアは下っ腹に力を込めて両脚で踏ん張り腰を落とす。そして次のスキルを選択する。
「・・・ここから・・・ふんっ!!剛気・・・解放ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ずばぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
ゼノアの全身から真紅の闘気が溢れ出しゼノアを中心に吹き荒れ渦巻く!訓練場の壁は激しく振動し悲鳴をあげる。
「うっ、くっ・・・う、う、嘘ぉぉぉぉ!!そ、そ、その歳で〈闘気〉だとぉぉぉぉぉ!!そ、そ、それもレ、レッドオーラァァァァァァ?!」
モーリアはゼノアの闘気波動を避ける為に身体を斜に構え腰を落として両脚で床を踏み締め耐えていた。
(くっ!こ、こいつ・・・し、身体強化に闘気?!い、いや・・・何か・・と、闘気とは何かが違う・・・と、とにかく・・・私も・・)
「〈闘気〉解放!!」
モーリアは攻撃の為でなく防御の為に〈闘気〉を解放した。次に来るであろうゼノアの攻撃に備える為である。
(さあ・・・来い・・・Aランク国選冒険者の名にかけて受けて立つ!)
モーリアはゼノアを子供の相手だとたかを括っていた。だがいつの間にか決死の覚悟で立ち向かう強敵となっていた。
フェルネスの魔力障壁が細かく振動する。その中でデルマは驚愕の表情を浮かべながら膝から崩れ落ちた・・・普段から感情を表に出さないデルマからすれば考えられない姿であった。
「・・・あ、、うぅ・・・う、嘘だと言って・・あ、あ、あの歳で・・・闘気・・しかもレッドオーラ・・・・こ、これがあの少年の本当の力・・・へ、陛下がお認めになるのも頷けるわさ・・」
「ふふっ・・・それは少し違いますわ。」
「えっ?」
「あれは〈剛気〉。〈闘気〉の上位スキルですわ。それに主様はまだ本気ではありませんわ。それにしても真紅を纏った主様・・・本当に素敵ですわ・・・」
うっとりとゼノアの姿に見惚れるフェルネスの足元に座り込んでいたデルマが勢いよく立ち上がった。
「はっ?!はあっ?!ご、ご、剛気?!
あ、あ、あの数百年生きる亜人種が生涯を掛けて身に付けるという上位スキルを産まれながらにして授かったっというの?!」
(うっ・・近い・・・)
フェルネスはデルマに詰め寄られ少し迷惑そうな顔を見せる。
「・・・はぁ。それも違いますわ。」
「はっ?ち、違う?!ど、どういう・・・事?」
「・・・ふふっ。残念ながらこれ以上私の口から主様のお力の事を語るのは出来ませんわ。機密事項なので。」
「・・・き、機密・・事項?」
「さあ!おしゃべりはここまでです!ほら!主様が次の段階に進もうとされています!!ここから先は私も初体験ですわ!」
「ふえっ・・・こ、こ、ここから・・・先・・・っ?!」
思考が追いつかずに呆けていたデルマが慌ててフェルネスに詰め寄る!
「も、も、もういい!!わ、分かったわ!!ご、合格!!冒険者登録を認めるわさ!!だ、だから、こ、これ以上は・・・」
フェルネスは慌てるデルマを嗜めるように軽く首を横に振る。
「デルマ様。残念ながらもう誰にも止められません。主様は既に次の段階に入っています。それに・・この場は既にお相手のモーリア様にとって登録試験から真剣勝負の場になっていますわ。」
フェルネスの目線の先を追えば必死の形相でゼノアの力の波動を受け流しながらも口元を緩めるモーリアの姿があった。
「あ、あの脳筋・・・くっ!やっぱり駄目だわ!このままだと・・・っ?!」
デルマが前に出て声を上げようとしたその時、背後で殺気にも似た波動がデルマの心臓を鷲掴みにする。
「っ・・・あ、うぅ・・・な、な、なにが・・・っ?!」
ゆっくりと振り返ればフェルネスが吸い込まれそうな暗黒の眼を見開き無言でデルマを見据えていた。
「・・・貴女・・今、何をしようとしたのですか?・・主様が一生懸命に事を成そうとしているのに・・・主様の邪魔をしたいのですか?・・・もしそうなら・・・今、ここで・・殺しますわよ?」
フェルネスの殺気という名の威圧をまともに受けてデルマは生きた心地がしなかった。デルマは尻餅を付き無言で首を縦にコクコクと振るしかなかった・・・
(・・・僕の本気を見てもらうんだ!!さあ、ここから〈魔力創造〉!!)
ゼノアはいつも通りに魔力を変換して行く・・・だが魔力の消費量に違和感を感じた。
(・・・あ、あれ?いつもより魔力消費が多いような・・・)
ゼノアは違和感を感じつつも魔力を変換して行く。すると直ぐにゼノアから立ち登る真紅のオーラの中に金色の光の粒が輝き出した。
(・・・えっ?!こ、こんなに早く・・や、やっぱりいつもと違う・・・魔力消費がいつもより激しい・・・な、何故・・・前と違う事といえば・・・闘気を・・・あっ!!い、今・・僕が使っているのは剛気・・・闘気の上位スキルだ・・・上位スキルへの変換は魔力消費も多くなるって事か・・・でも、やる事は変わらない!!全力を見てもらうんだ!」
ゼノアは更に魔力を込める。溢れる剛気が眩く黄金に輝き更なる波動が爆発的に広がって行く。訓練場の備品が吹き飛び部屋の内側に幾重にも展開してある防御結界が悲鳴を上げ訓練場全体が激しく揺れ動く。
ガタガタガタッッッ・・・ピシッ・・ピキっ・・・ビキキッ・・・
「うぐっっっ・・・くっ・・ば、馬鹿な!?・・・お、黄金の闘気!?うぐっ・・・や、奴は・・一体何なんだ?!」
モーリアは既に攻撃する事を諦め更に体制を低く構え全力で踏ん張り耐える。
「・・・あぁ・・なんと美しい・・・黄金を纏う主様・・・この闘気は・・・我らの祖から伝え聞く英雄闘気。この高みまで登り詰めていたのですね。」
「・・え、え、英雄・・闘気・・?そ、そんなの御伽話でしか読んだ事ないわ・・・も、も、もう・・・わ、訳がわからない・・・フェルネス殿・・あ、あの少年は・・・一体何者なの?!」
デルマは全力で魔力障壁を展開しながらゼノアに見惚れるフェルネスを見据える。
「ふふっ・・・」
フェルネスは主であるゼノアの凄さを誇るようにデルマを横目に微笑む。
(・・・我慢ですわ・・私も主様の凄さを語りたいわ・・・ですが、目立たないように過ごしたいと言われる主様の情報を広める訳にはいかないわ。)
フェルネスは口元をうずうずさせながら葛藤に抗う。そしてフェルネスは自重しゼノアに眼を向けた瞬間、ゼノアの黄金の闘気の中に煌めく光の粒が立ち登るのを眼にする。しかしその光の粒は直ぐに消えてしまった。
(・・・あ、あの光の粒は・・・それとも見間違い・・・?)
ゼノアは全力で魔力を剛気へと変換して行く・・・
(・・・あうぅぅ・・やっぱり魔力消費が激しい・・・も、もう限界だ!!)
ゼノアは魔力が枯渇する前に変換を解除する。
(いい機会だからアレを試してみよう。・・・魔力が操作出来るなら、闘気だって操作出来る筈・・・)
ゼノアは両手の掌を身体の前に突き出し荒れ狂う剛気を感じながら集中する。すると今まで吹き荒れていた剛気が段々とゼノアの両手の掌に凝縮して行く・・・
「・・・そ、そ、そんな・・・ま、まさか・・・と、と、闘気を一点に集めているのか?!ば、馬鹿な!!!そんな芸当聞いた事がないぞ!?」
(よし!思った通り出来たぞ!!名付けて・・・剛気弾!)
ゼノアの膨大な剛気が両手の掌に凝縮され直径2m程の黄金の球体が浮かんでいた。そしてゼノアは凶悪な波動を撒き散らす黄金の球体を構え準備は出来たと言わんばかりに驚愕するモーリアを見据えた。
「・・・ふ、ふえっ・・・ちょっ、ちょ、ま、ま、待って・・ま、まさか・・・そ、そ、その危険物を・・わ、わ、私に向かって撃とうとして・・・る?」
モーリアは黄金の球体から放たれる強烈な波動に顔を顰めながら全身から冷たい汗が吹き出すのを感じていた。
「・・・こ、これが・・今の主様の本気・・・あのお歳でこれほどまでのお力を・・・ふふっ・・これから成長された主様はどこまでお強くなるのでしょうか・・・このフェルネス、楽しみでたまりませんわ・・・」
フェルネスもゼノアの力に驚きを隠せなかった。だがその表情には驚きと共に主であるゼノアの成長を一番近くで感じれる事に口元が無意識に緩んだ。
するとデルマが恐怖にも似た表情でよろよろとフェルネスの隣に進み出た。
「・・だ、だだだ、だ、駄目・・駄目だ・・・そ、そんな力をこんな所で解放したら・・・」
そんなデルマの声は集中しているゼノアには届かない。ゼノアはそのまま力を込め目を見開く。
「行きます!!!」
「い、行くなぁぁぁぁぁ!!!!」
「へっ?!」
ずぼおぉぉぉぉん!!
デルマの声に驚き思わずゼノアの手から剛気弾が放たれた・・・
「駄目ぇぇぇぇ!!!モーリアァァァァァァ!!!避けてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・あふっ・・・・」
凶悪な波動を撒き散らしながら高速で迫り来る剛気弾を前にモーリアは気を失い膝から崩れ落ち後ろに倒れ込む。
その瞬間ゼノアが放った剛気弾は倒れるモーリアの真紅の鎧を掠め訓練場の壁に激突する!
どっごおぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
放たれた剛気弾は凶悪な波動を撒き散らしながら訓練場の壁に幾重にも張られた結界を軽々と破壊し訓練場の壁に巨大な風穴を開けると青空の彼方へと消えて行くのであった。
訓練場にデルマの声が響き渡る。
(よし・・・行くよ。)
ゼノアは開始の合図と同時に瞑想するように眼を閉じる。そしてゆっくりと息をを吐き眼を開けるとゴルドとの手合わせを思い出し拳を構える。すると辺りに嵐の前の静けさのような異様な緊張感が漂う・・・
(・・・な、何・・・こ、この緊張感・・・何が起ころうとしている・・)
異様で何かが纏わりつくような感覚に襲われるモーリアの頬を冷たい汗が伝い落ちる。
「フェ、フェルネス殿・・・い、今から・・な、何が始まるのだ?こ、この緊張感は異常だわ・・・」
デルマもまた感じた事のない感覚に襲われていた。
「ふふっ。見ていれば分かりますわ。今から主様の最大最強の一撃が放たれるのですわ。あのお相手のモーリアさんでしたか・・・主様の一撃をどう捌くか見ものですわ・・・ふっ・・」
(・・・まあ、どう頑張っても・・・無理でしようけど・・・)
フェルネスは笑顔のままモーリアに哀れみの感情を抱くのであった。
(まずは・・・身体強化!!)
ずぶおぉぉぉぉぉ!!!
〈神級スキル〉により強化された〈身体強化5〉によりゼノアの全身が淡く光りステータスが爆発的に上昇する。そして溢れる力の波動がゼノアの中心にして辺りに吹き荒れる。
「うくっ!・・・こ、これは・・ま、まさか!!し、身体強化か!!それもこの威力・・・な、なるほど・・これがお前の切り札か!!そ、それならば・・・」
モーリアは双剣を剥き放ち防御体制を取った。
「はうっ!!!ば、馬鹿な?!な、何だあの身体強化は?!あ、あれが・・あの少年の全力なのか!!」
ゼノアの力の波動に圧倒されデルマは腰を落として踏ん張っていた。
「ふっ・・まだです。主様のお力はこんなものではありませんわ。それとデルマ様、これから主様の力の余波が予測以上に激しくなって行きます。ですので私の後ろに居ることをお勧め致しますわ。」
「な、何?さ、更に上があると言うの?」
「・・・もちろんですわ。」
(この人間少しうるさいですわ。主様の勇姿に集中したいのに・・・)
フェルネスはゼノアの勇姿を見逃すまいとデルマに振り向く事なく答える。若干隣で騒ぐデルマを疎ましく思うのであった。
ゼノアは下っ腹に力を込めて両脚で踏ん張り腰を落とす。そして次のスキルを選択する。
「・・・ここから・・・ふんっ!!剛気・・・解放ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ずばぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
ゼノアの全身から真紅の闘気が溢れ出しゼノアを中心に吹き荒れ渦巻く!訓練場の壁は激しく振動し悲鳴をあげる。
「うっ、くっ・・・う、う、嘘ぉぉぉぉ!!そ、そ、その歳で〈闘気〉だとぉぉぉぉぉ!!そ、そ、それもレ、レッドオーラァァァァァァ?!」
モーリアはゼノアの闘気波動を避ける為に身体を斜に構え腰を落として両脚で床を踏み締め耐えていた。
(くっ!こ、こいつ・・・し、身体強化に闘気?!い、いや・・・何か・・と、闘気とは何かが違う・・・と、とにかく・・・私も・・)
「〈闘気〉解放!!」
モーリアは攻撃の為でなく防御の為に〈闘気〉を解放した。次に来るであろうゼノアの攻撃に備える為である。
(さあ・・・来い・・・Aランク国選冒険者の名にかけて受けて立つ!)
モーリアはゼノアを子供の相手だとたかを括っていた。だがいつの間にか決死の覚悟で立ち向かう強敵となっていた。
フェルネスの魔力障壁が細かく振動する。その中でデルマは驚愕の表情を浮かべながら膝から崩れ落ちた・・・普段から感情を表に出さないデルマからすれば考えられない姿であった。
「・・・あ、、うぅ・・・う、嘘だと言って・・あ、あ、あの歳で・・・闘気・・しかもレッドオーラ・・・・こ、これがあの少年の本当の力・・・へ、陛下がお認めになるのも頷けるわさ・・」
「ふふっ・・・それは少し違いますわ。」
「えっ?」
「あれは〈剛気〉。〈闘気〉の上位スキルですわ。それに主様はまだ本気ではありませんわ。それにしても真紅を纏った主様・・・本当に素敵ですわ・・・」
うっとりとゼノアの姿に見惚れるフェルネスの足元に座り込んでいたデルマが勢いよく立ち上がった。
「はっ?!はあっ?!ご、ご、剛気?!
あ、あ、あの数百年生きる亜人種が生涯を掛けて身に付けるという上位スキルを産まれながらにして授かったっというの?!」
(うっ・・近い・・・)
フェルネスはデルマに詰め寄られ少し迷惑そうな顔を見せる。
「・・・はぁ。それも違いますわ。」
「はっ?ち、違う?!ど、どういう・・・事?」
「・・・ふふっ。残念ながらこれ以上私の口から主様のお力の事を語るのは出来ませんわ。機密事項なので。」
「・・・き、機密・・事項?」
「さあ!おしゃべりはここまでです!ほら!主様が次の段階に進もうとされています!!ここから先は私も初体験ですわ!」
「ふえっ・・・こ、こ、ここから・・・先・・・っ?!」
思考が追いつかずに呆けていたデルマが慌ててフェルネスに詰め寄る!
「も、も、もういい!!わ、分かったわ!!ご、合格!!冒険者登録を認めるわさ!!だ、だから、こ、これ以上は・・・」
フェルネスは慌てるデルマを嗜めるように軽く首を横に振る。
「デルマ様。残念ながらもう誰にも止められません。主様は既に次の段階に入っています。それに・・この場は既にお相手のモーリア様にとって登録試験から真剣勝負の場になっていますわ。」
フェルネスの目線の先を追えば必死の形相でゼノアの力の波動を受け流しながらも口元を緩めるモーリアの姿があった。
「あ、あの脳筋・・・くっ!やっぱり駄目だわ!このままだと・・・っ?!」
デルマが前に出て声を上げようとしたその時、背後で殺気にも似た波動がデルマの心臓を鷲掴みにする。
「っ・・・あ、うぅ・・・な、な、なにが・・・っ?!」
ゆっくりと振り返ればフェルネスが吸い込まれそうな暗黒の眼を見開き無言でデルマを見据えていた。
「・・・貴女・・今、何をしようとしたのですか?・・主様が一生懸命に事を成そうとしているのに・・・主様の邪魔をしたいのですか?・・・もしそうなら・・・今、ここで・・殺しますわよ?」
フェルネスの殺気という名の威圧をまともに受けてデルマは生きた心地がしなかった。デルマは尻餅を付き無言で首を縦にコクコクと振るしかなかった・・・
(・・・僕の本気を見てもらうんだ!!さあ、ここから〈魔力創造〉!!)
ゼノアはいつも通りに魔力を変換して行く・・・だが魔力の消費量に違和感を感じた。
(・・・あ、あれ?いつもより魔力消費が多いような・・・)
ゼノアは違和感を感じつつも魔力を変換して行く。すると直ぐにゼノアから立ち登る真紅のオーラの中に金色の光の粒が輝き出した。
(・・・えっ?!こ、こんなに早く・・や、やっぱりいつもと違う・・・魔力消費がいつもより激しい・・・な、何故・・・前と違う事といえば・・・闘気を・・・あっ!!い、今・・僕が使っているのは剛気・・・闘気の上位スキルだ・・・上位スキルへの変換は魔力消費も多くなるって事か・・・でも、やる事は変わらない!!全力を見てもらうんだ!」
ゼノアは更に魔力を込める。溢れる剛気が眩く黄金に輝き更なる波動が爆発的に広がって行く。訓練場の備品が吹き飛び部屋の内側に幾重にも展開してある防御結界が悲鳴を上げ訓練場全体が激しく揺れ動く。
ガタガタガタッッッ・・・ピシッ・・ピキっ・・・ビキキッ・・・
「うぐっっっ・・・くっ・・ば、馬鹿な!?・・・お、黄金の闘気!?うぐっ・・・や、奴は・・一体何なんだ?!」
モーリアは既に攻撃する事を諦め更に体制を低く構え全力で踏ん張り耐える。
「・・・あぁ・・なんと美しい・・・黄金を纏う主様・・・この闘気は・・・我らの祖から伝え聞く英雄闘気。この高みまで登り詰めていたのですね。」
「・・え、え、英雄・・闘気・・?そ、そんなの御伽話でしか読んだ事ないわ・・・も、も、もう・・・わ、訳がわからない・・・フェルネス殿・・あ、あの少年は・・・一体何者なの?!」
デルマは全力で魔力障壁を展開しながらゼノアに見惚れるフェルネスを見据える。
「ふふっ・・・」
フェルネスは主であるゼノアの凄さを誇るようにデルマを横目に微笑む。
(・・・我慢ですわ・・私も主様の凄さを語りたいわ・・・ですが、目立たないように過ごしたいと言われる主様の情報を広める訳にはいかないわ。)
フェルネスは口元をうずうずさせながら葛藤に抗う。そしてフェルネスは自重しゼノアに眼を向けた瞬間、ゼノアの黄金の闘気の中に煌めく光の粒が立ち登るのを眼にする。しかしその光の粒は直ぐに消えてしまった。
(・・・あ、あの光の粒は・・・それとも見間違い・・・?)
ゼノアは全力で魔力を剛気へと変換して行く・・・
(・・・あうぅぅ・・やっぱり魔力消費が激しい・・・も、もう限界だ!!)
ゼノアは魔力が枯渇する前に変換を解除する。
(いい機会だからアレを試してみよう。・・・魔力が操作出来るなら、闘気だって操作出来る筈・・・)
ゼノアは両手の掌を身体の前に突き出し荒れ狂う剛気を感じながら集中する。すると今まで吹き荒れていた剛気が段々とゼノアの両手の掌に凝縮して行く・・・
「・・・そ、そ、そんな・・・ま、まさか・・・と、と、闘気を一点に集めているのか?!ば、馬鹿な!!!そんな芸当聞いた事がないぞ!?」
(よし!思った通り出来たぞ!!名付けて・・・剛気弾!)
ゼノアの膨大な剛気が両手の掌に凝縮され直径2m程の黄金の球体が浮かんでいた。そしてゼノアは凶悪な波動を撒き散らす黄金の球体を構え準備は出来たと言わんばかりに驚愕するモーリアを見据えた。
「・・・ふ、ふえっ・・・ちょっ、ちょ、ま、ま、待って・・ま、まさか・・・そ、そ、その危険物を・・わ、わ、私に向かって撃とうとして・・・る?」
モーリアは黄金の球体から放たれる強烈な波動に顔を顰めながら全身から冷たい汗が吹き出すのを感じていた。
「・・・こ、これが・・今の主様の本気・・・あのお歳でこれほどまでのお力を・・・ふふっ・・これから成長された主様はどこまでお強くなるのでしょうか・・・このフェルネス、楽しみでたまりませんわ・・・」
フェルネスもゼノアの力に驚きを隠せなかった。だがその表情には驚きと共に主であるゼノアの成長を一番近くで感じれる事に口元が無意識に緩んだ。
するとデルマが恐怖にも似た表情でよろよろとフェルネスの隣に進み出た。
「・・だ、だだだ、だ、駄目・・駄目だ・・・そ、そんな力をこんな所で解放したら・・・」
そんなデルマの声は集中しているゼノアには届かない。ゼノアはそのまま力を込め目を見開く。
「行きます!!!」
「い、行くなぁぁぁぁぁ!!!!」
「へっ?!」
ずぼおぉぉぉぉん!!
デルマの声に驚き思わずゼノアの手から剛気弾が放たれた・・・
「駄目ぇぇぇぇ!!!モーリアァァァァァァ!!!避けてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・あふっ・・・・」
凶悪な波動を撒き散らしながら高速で迫り来る剛気弾を前にモーリアは気を失い膝から崩れ落ち後ろに倒れ込む。
その瞬間ゼノアが放った剛気弾は倒れるモーリアの真紅の鎧を掠め訓練場の壁に激突する!
どっごおぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
放たれた剛気弾は凶悪な波動を撒き散らしながら訓練場の壁に幾重にも張られた結界を軽々と破壊し訓練場の壁に巨大な風穴を開けると青空の彼方へと消えて行くのであった。
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