91 / 102
第91話 新人研修
しおりを挟む
冒険者ギルドの一階では冒険者達がただならぬ雰囲気にざわめいていた。
「お、おい・・・なんか・・ゆ、揺れてないか?もしかして地震か?」
「あぁ・・確かに揺れてるぞ・・・そ、それになんか寒気がしないか?」
「お、お前もか?!さっきから鳥肌が立って震えが止まらないんだ・・・」
どっごおぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
突然、冒険者達が動揺する中、ギルド内に轟音が響き渡った・・・
「な、な、何だ?!」
「訓練場の方からだぞ?!」
「・・・ふん・・あいつね・・・」
「あぁ・・間違いない・・・」
「そうね・・・また壁にでも穴を開けたんじゃない?」
慌てる冒険者達の中リルーナが呆れた顔で天井を見上げる。
すると冒険者の男が口を開く。
「そう言えばよ・・・さっき”撃滅の拳”の奴らをぶっ飛ばしたガキ・・・冒険者登録とか言ってたよな・・・あの強さで新人か・・・ん?という事は・・・アレをするんだよな・・・」
「んあっ!そうか・・・新人か!」
「あぁ!アレか!な、なるほど!!あの強さなら・・・」
「・・・Bランクを倒すほどの新人なら・・・んふっ・・これはチャンスだわ・・・」
その男の一言にギルド内の冒険者達が何かに気付いたようにざわつく。
「なっ・・・あ、あいつ余計な事を・・・」
アルグが思わずこめかみを引き攣らせ声を漏らすのであった。
「・・・あ、あ、あぁ・・・か、か、壁が・・・ご、五重に展開した防御結界を・・・ま、まるで土壁みたいに・・・」
デルマは大きな風穴が空いた壁を力無く眺めていた。そして膝から力が抜けてペタンと座り込む。
(・・あ、あり得ない・・・)
デルマは無意識にゆっくりと首を横に振っていた。
「あぁ・・・外しちゃった・・・」
(こ、これ・・・ご、合格なのかな・・・?)
ゼノアがゆっくり振り返ると、唖然としているデルマがゆっくりと首を横に振っていた。
「えぇっ・・・だ、駄目なの?あうぅ・・・」
「へっ?」
混乱するデルマから呆けた声が漏れる。
(・・・あっ!そうか!聖魔法と光魔法の身体強化魔法を使ってなかった・・・だから全力じゃないって事か!さすがギルドマスター・・・僕の力を見抜いていたんだ・・・よおぉし!今度こそ・・・)
気合いを入れ直したゼノアがデルマに一礼する。
「デルマさん!!ごめんなさい!僕はまだ全力じゃありませんでした!!今度こそ本気で行きます!!」
「・・・ほ、ほへっ・・い、今・・な、なんて・・・?」
デルマは理解が追いつかずいつもの凛々しい表情が崩れ首を傾げる。
「さすが主様ですわ!!相手の方を気遣って手加減されていたのですね!!それにデルマ様もなんだかんだ言っても手加減していた事を見抜いていらしたのですね!」
「ふへっ?」
デルマが呆けたまま見上げると嬉々としたフェルネスと目が合った。
「・・・あ、でもさっきので魔力が・・・足りない・・・」
(そうだ!)
「フェルネス!お願い!魔力を貸して!!」
「ふえっ?!あ、主様が・・この私にお願いを・・・うふっ!は、はい!喜んで!!」
フェルネスはゼノアからの初めてのお願いに嬉々として一瞬でゼノアの背後に立ち抱きしめる。
「どうぞ主様。御存分にお使いください。」
フェルネスが全力でゼノアに魔力を送り込む。
「うん!ありがとう!行くよ!身体強化!!」
デルマの目の前でデジャブのようにゼノアから力の波動が放たれる。
「あっ・・・い、いや、ま、待って!!も、もうやめて・・・」
腰を抜かしたデルマのか細い声はゼノアには届かない。しかし先程まで気を失っていたモーリアが目を覚ました。
「う、うぅ・・・わ、私は・・・た、確か・・・って・・・」
モーリアは訓練場の中がやけに明るく感じ冷たい風を感じた。そして何気なく背後の壁を見上げた・・・
「はぁ?!な、何?!この穴は・・・んはっ!!お、思い出した!!あ、あの子供・・・って・・・?!」
モーリアの数分前の記憶が戻る。咄嗟に振り返ると再び力の波動を撒き散らすゼノアの姿があった・・・
「えあっ?!ま、ま、まさか・・・こ、こ、この穴は・・・ま、ま、待って・・・ア、アレを・・も、もう一回?!む、む、無理ーーーっ!!!!」
モーリアが無我夢中でゼノアに向かって走り出す。
「も、もう合格ぅぅぅぅ!!!だからやめてぇぇぇぇぇぇ!!!」
モーリアが全身全霊で訓練場の床を蹴り抜きゼノアに迫る。ゼノアも意表を突かれ焦る。
「ああっ!!し、しまった!!初撃が躱されたから次は相手の番なんだ!!」
焦るゼノアが腰を落として避けようとしたその時、必死に止めようと飛び掛かるモーリアの鎧にヒビが入りそのまま砕け散る。そしてインナー越しにでも分かるモーリアの豊満な胸がゼノアの前に曝け出された・・・
「お、おっふ・・・すご・・・」
もにゅうん・・・
モーリアの胸に圧倒され逃げ遅れたゼノアの顔がモーリアの柔らかな谷間に勢いよく収まる・・・
「もぶっ!?ぶもっ・・ぶもっ・・・」
(・・・こ、こんな攻撃・・・・あぶっ・・・あ、ありがとう・・・)
「ま、まいびまじた・・・」
(参りました・・・)
ゼノアは抵抗する事なくモーリアの谷間に収まり大人しくなる。
(・・こ、この人間・・・主様を無力化するとは!くっ・・・あ、あの僅かな立ち回りで主様の唯一の弱点を・・・うくっ・・・な、なんでしょうか・・この苛立ちは・・・)
フェルネスはモーリアの胸の谷間に大人しく収まるゼノアに嫉妬と悔しさが入り混じり全身から魔力が滲み出ていた。
「くっ・・い、いつまで主様にくっ付いているつもりですか!?ハレンチな!!」
フェルネスはモーリアの深い谷間に収まるゼノアを奪い取り自らの谷間に収める。
「わぶっ・・・」
(うぶっ・・・こ、これは・・これで・・・)
「んっ?な、何?胸の辺りが・・・」
呆けるモーリアはいつもの感覚の違いに気付き自分の胸元に目を落とした。
「は、はうわっ!!わ、私の鎧・・・鎧が・・・」
モーリアは顔を赤らめて胸元を隠し辺りを見回すと破壊された真紅の鎧が転がっていた。
「なっ?!わ、私の鎧が・・・な、何故・・・ま、まさか・・・さ、最初の攻撃で・・・?!」
(わ、私の鎧はミスリル製だぞ・・・そ、それを掠っただけで破壊?!・・・も、もしも・・もしも鎧が無ければ私は今頃・・・ごくっ・・)
砕け散った自分の鎧を見つめるとモーリアの全身に寒気が走る。そして背筋に冷たい汗が吹き出るのだった。
そして安心したデルマはゆっくりと立ち上がりいつもの威厳ある表情に戻る。
(・・・ふうぅぅぅ・・こ、これは今後の為にきっちりと話しをする必要があるわさ・・・)
「さて・・・言いたい事は多々あるけど、まずはこれを渡しておくわさ。」
(えっ・・なんか怒ってる・・・)
僕達はギルドの訓練場から連れ出されギルドマスターのデルマの部屋に連れてこられた。今、目の前には机を挟み複雑な表情で物言いたげなデルマがソファに腰掛けゼノアの前にBランク国選冒険者証を置いた。
「えっ、あっ・・こ、これは・・・」
デルマの不機嫌に見えるその雰囲気に恐る恐る上目遣いでデルマの顔を見る。
「見ての通り冒険者証だわさ。試験は合格。約束通り冒険者登録はしておいたわさ・・・」
デルマの語尾は続けて何かを言いたそうであったがゼノアを膝の上に乗せているフェルネスの眼光がデルマの口を塞いでいた。
(・・・機密事項・・・あの刺さるような眼光は”余計な詮索をするな”と言う事か・・・改めて見ても対峙してるだけで鳥肌が立つわさ・・・聞きたい事は多々ある・・・だが確かに冒険者の能力についての詮索はマナーに反する事だわさ・・・さて、どうしたものか・・・)
(ふっ・・・要件は済みました。面倒な話を切り出される前に・・・)
フェルネスはデルマの考えが纏まる前にがゼノアを膝から下ろして立ち上がる。
「さあ。これで主様の冒険者登録は終わりましたね。主様。それでは失礼いたしましょう。」
「うん。そうだね!」
「えっ、あっ、ま、待って!」
咄嗟にデルマも慌てて立ち上がる。考えは纏ってはいなかったが、とにかく時間を稼いで考えを纏めたかったのだ。
「ん?」
「まだ何かあるのですか?」
フェルネスの眼光がデルマに刺さる。
「あ、あ、あぁ!!ま、まだ冒険者ギルドの説明をまだしてないわさ!だ、だからもう少し時間をくれるとありがたいわさ。」
デルマがぎこちない作り笑いを見せる。
するとフェルネスはチラリとゼノアの反応を確認する。
「うん。よく考えたら冒険者ギルドの事あまり知らないからいい機会じゃないかな。」
ゼノアがにっこり笑うとフェルネスは軽く肩の力を抜く。
「ふふ・・主様がそう仰るのならお聞きしましょう。」
再びフェルネスはソファに腰を下ろして当然のようにゼノアを膝に乗せた。
(ふぅぅぅ・・・危なかった。こ、このまま帰してあんな力を街中で使われたら大変な事になるわさ・・・)
デルマはスッと息を吸い込み自分を落ち着かせる為に静かに息を吐く。そして背筋を伸ばし目を見開くといつもの威厳あるギルドマスターの雰囲気を漂わせた。
「改めて、私はセルバイヤ王都冒険者ギルドマスターのデルマ・スランダーだわさ。早速だけど君はゼノア君。そちらはフェルネス殿でいいわね?」
「はい。ゼノアです。よろしくお願いします。」
「えぇ。」
フェルネスは口元を軽く緩めて小首を傾げる。
「最初に冒険者のランクにはHランクからSランクまであるわさ。当然の事だがランクによって依頼内容が変わる。基本的にはランクに合った依頼しか受けられない。だけど例外として一つ上のランクの依頼を受ける条件として自分の一つ上のランクの冒険者パーティーの庇護下にあれば受ける事が出来るわさ。だけど、まあ・・現実には、わざわざランク下の足手纏いを連れて行く冒険者パーティーは珍しいわさ。」
「それじゃあBランクの僕がAランクの依頼を受けるにはAランクパーティーの許可がないと受けれないって事ですね?」
ゼノアは笑顔でデルマに首を傾げる。
「・・ま、まあ・・・そ、そう言う事になるわさ・・・」
(ふっ・・・流石ギルドマスターと言った所ですね。主様の実力を解っているようですね・・・)
歯切れの悪いデルマを見据えてフェルネスが満足そうに目を細める。
(・・うくっ・・・こ、この少年は自覚が無いのか?セルバイヤ王国唯一のAランク冒険者を圧倒したのを・・・ま、まあ、それは置いておいて・・・ここからが本題だわさ。)
覚悟を決めたデルマが口を開く。
「さてゼノア君。冒険者登録は基本的には10歳からになっているわさ。だけど君は陛下からの強い推薦で特別に7歳で冒険者登録を認められたわさ。そこでギルドのルールとして学園卒業生や初めて冒険者登録した者には一ヶ月間の研修制度を設けているわさ。」
「研修・・制度?」
「そうだわさ。新人冒険者の死亡率を下げる為に先輩冒険者パーティーの荷物持ちとして参加して冒険者のイロハを学んで貰う。これは国王陛下からの提案で始まった事だわさ。だから例外はない。いいわね?」
その瞬間フェルネスが目を細めデルマを見据える。そしてデルマの背筋に冷たい汗が伝う。
(うくっ・・・やっぱり・・)
「・・・主様に格下冒険者の荷物持ちをさせるですって?ふん・・・デルマ殿よく考えてもみなさい。格下冒険者達が主様の実力を知ったらどうなるかを。必ず私利私欲に塗れた冒険者達が主様を利用しようと殺到するでしょう。」
「・・・うっ・・た、確かにその可能性は有り得るわさ・・・」
デルマはフェルネスに盲点を突かれ言葉を失う。
「それにもう既に小競り合いが始まってるみたいですわ。」
「はっ?」
フェルネスの耳にはギルドの一階で冒険者達の言い争っている声が聞こえていた。
コンコンコンコンッ!!
すると突然、慌てていると分かる扉をノックの音が響く・・・
「何だい?!騒々しいわさ!」
ガチャッ!!
扉が勢いよく開き受付嬢のマリンが飛び込んで来る。
「し、失礼致します!ギ、ギルマス!!今、受付カウンターに新人冒険者の受け入れ希望者が殺到しています!!!もう収拾がつかない状況です!!助けてください!!」
「なっ・・・何だって?!・・・くっ・・・」
デルマが頭を抱える。そして罰が悪い表情てフェルネスを見るとフェルネスが呆れ顔で肩をすくめるのであった。
(あぁ・・・また面倒事が始まる予感がするよ・・・)
ゼノアもまたため息を付き項垂れるのだった。
「お、おい・・・なんか・・ゆ、揺れてないか?もしかして地震か?」
「あぁ・・確かに揺れてるぞ・・・そ、それになんか寒気がしないか?」
「お、お前もか?!さっきから鳥肌が立って震えが止まらないんだ・・・」
どっごおぉぉぉぉぉぉぉん!!!!
突然、冒険者達が動揺する中、ギルド内に轟音が響き渡った・・・
「な、な、何だ?!」
「訓練場の方からだぞ?!」
「・・・ふん・・あいつね・・・」
「あぁ・・間違いない・・・」
「そうね・・・また壁にでも穴を開けたんじゃない?」
慌てる冒険者達の中リルーナが呆れた顔で天井を見上げる。
すると冒険者の男が口を開く。
「そう言えばよ・・・さっき”撃滅の拳”の奴らをぶっ飛ばしたガキ・・・冒険者登録とか言ってたよな・・・あの強さで新人か・・・ん?という事は・・・アレをするんだよな・・・」
「んあっ!そうか・・・新人か!」
「あぁ!アレか!な、なるほど!!あの強さなら・・・」
「・・・Bランクを倒すほどの新人なら・・・んふっ・・これはチャンスだわ・・・」
その男の一言にギルド内の冒険者達が何かに気付いたようにざわつく。
「なっ・・・あ、あいつ余計な事を・・・」
アルグが思わずこめかみを引き攣らせ声を漏らすのであった。
「・・・あ、あ、あぁ・・・か、か、壁が・・・ご、五重に展開した防御結界を・・・ま、まるで土壁みたいに・・・」
デルマは大きな風穴が空いた壁を力無く眺めていた。そして膝から力が抜けてペタンと座り込む。
(・・あ、あり得ない・・・)
デルマは無意識にゆっくりと首を横に振っていた。
「あぁ・・・外しちゃった・・・」
(こ、これ・・・ご、合格なのかな・・・?)
ゼノアがゆっくり振り返ると、唖然としているデルマがゆっくりと首を横に振っていた。
「えぇっ・・・だ、駄目なの?あうぅ・・・」
「へっ?」
混乱するデルマから呆けた声が漏れる。
(・・・あっ!そうか!聖魔法と光魔法の身体強化魔法を使ってなかった・・・だから全力じゃないって事か!さすがギルドマスター・・・僕の力を見抜いていたんだ・・・よおぉし!今度こそ・・・)
気合いを入れ直したゼノアがデルマに一礼する。
「デルマさん!!ごめんなさい!僕はまだ全力じゃありませんでした!!今度こそ本気で行きます!!」
「・・・ほ、ほへっ・・い、今・・な、なんて・・・?」
デルマは理解が追いつかずいつもの凛々しい表情が崩れ首を傾げる。
「さすが主様ですわ!!相手の方を気遣って手加減されていたのですね!!それにデルマ様もなんだかんだ言っても手加減していた事を見抜いていらしたのですね!」
「ふへっ?」
デルマが呆けたまま見上げると嬉々としたフェルネスと目が合った。
「・・・あ、でもさっきので魔力が・・・足りない・・・」
(そうだ!)
「フェルネス!お願い!魔力を貸して!!」
「ふえっ?!あ、主様が・・この私にお願いを・・・うふっ!は、はい!喜んで!!」
フェルネスはゼノアからの初めてのお願いに嬉々として一瞬でゼノアの背後に立ち抱きしめる。
「どうぞ主様。御存分にお使いください。」
フェルネスが全力でゼノアに魔力を送り込む。
「うん!ありがとう!行くよ!身体強化!!」
デルマの目の前でデジャブのようにゼノアから力の波動が放たれる。
「あっ・・・い、いや、ま、待って!!も、もうやめて・・・」
腰を抜かしたデルマのか細い声はゼノアには届かない。しかし先程まで気を失っていたモーリアが目を覚ました。
「う、うぅ・・・わ、私は・・・た、確か・・・って・・・」
モーリアは訓練場の中がやけに明るく感じ冷たい風を感じた。そして何気なく背後の壁を見上げた・・・
「はぁ?!な、何?!この穴は・・・んはっ!!お、思い出した!!あ、あの子供・・・って・・・?!」
モーリアの数分前の記憶が戻る。咄嗟に振り返ると再び力の波動を撒き散らすゼノアの姿があった・・・
「えあっ?!ま、ま、まさか・・・こ、こ、この穴は・・・ま、ま、待って・・・ア、アレを・・も、もう一回?!む、む、無理ーーーっ!!!!」
モーリアが無我夢中でゼノアに向かって走り出す。
「も、もう合格ぅぅぅぅ!!!だからやめてぇぇぇぇぇぇ!!!」
モーリアが全身全霊で訓練場の床を蹴り抜きゼノアに迫る。ゼノアも意表を突かれ焦る。
「ああっ!!し、しまった!!初撃が躱されたから次は相手の番なんだ!!」
焦るゼノアが腰を落として避けようとしたその時、必死に止めようと飛び掛かるモーリアの鎧にヒビが入りそのまま砕け散る。そしてインナー越しにでも分かるモーリアの豊満な胸がゼノアの前に曝け出された・・・
「お、おっふ・・・すご・・・」
もにゅうん・・・
モーリアの胸に圧倒され逃げ遅れたゼノアの顔がモーリアの柔らかな谷間に勢いよく収まる・・・
「もぶっ!?ぶもっ・・ぶもっ・・・」
(・・・こ、こんな攻撃・・・・あぶっ・・・あ、ありがとう・・・)
「ま、まいびまじた・・・」
(参りました・・・)
ゼノアは抵抗する事なくモーリアの谷間に収まり大人しくなる。
(・・こ、この人間・・・主様を無力化するとは!くっ・・・あ、あの僅かな立ち回りで主様の唯一の弱点を・・・うくっ・・・な、なんでしょうか・・この苛立ちは・・・)
フェルネスはモーリアの胸の谷間に大人しく収まるゼノアに嫉妬と悔しさが入り混じり全身から魔力が滲み出ていた。
「くっ・・い、いつまで主様にくっ付いているつもりですか!?ハレンチな!!」
フェルネスはモーリアの深い谷間に収まるゼノアを奪い取り自らの谷間に収める。
「わぶっ・・・」
(うぶっ・・・こ、これは・・これで・・・)
「んっ?な、何?胸の辺りが・・・」
呆けるモーリアはいつもの感覚の違いに気付き自分の胸元に目を落とした。
「は、はうわっ!!わ、私の鎧・・・鎧が・・・」
モーリアは顔を赤らめて胸元を隠し辺りを見回すと破壊された真紅の鎧が転がっていた。
「なっ?!わ、私の鎧が・・・な、何故・・・ま、まさか・・・さ、最初の攻撃で・・・?!」
(わ、私の鎧はミスリル製だぞ・・・そ、それを掠っただけで破壊?!・・・も、もしも・・もしも鎧が無ければ私は今頃・・・ごくっ・・)
砕け散った自分の鎧を見つめるとモーリアの全身に寒気が走る。そして背筋に冷たい汗が吹き出るのだった。
そして安心したデルマはゆっくりと立ち上がりいつもの威厳ある表情に戻る。
(・・・ふうぅぅぅ・・こ、これは今後の為にきっちりと話しをする必要があるわさ・・・)
「さて・・・言いたい事は多々あるけど、まずはこれを渡しておくわさ。」
(えっ・・なんか怒ってる・・・)
僕達はギルドの訓練場から連れ出されギルドマスターのデルマの部屋に連れてこられた。今、目の前には机を挟み複雑な表情で物言いたげなデルマがソファに腰掛けゼノアの前にBランク国選冒険者証を置いた。
「えっ、あっ・・こ、これは・・・」
デルマの不機嫌に見えるその雰囲気に恐る恐る上目遣いでデルマの顔を見る。
「見ての通り冒険者証だわさ。試験は合格。約束通り冒険者登録はしておいたわさ・・・」
デルマの語尾は続けて何かを言いたそうであったがゼノアを膝の上に乗せているフェルネスの眼光がデルマの口を塞いでいた。
(・・・機密事項・・・あの刺さるような眼光は”余計な詮索をするな”と言う事か・・・改めて見ても対峙してるだけで鳥肌が立つわさ・・・聞きたい事は多々ある・・・だが確かに冒険者の能力についての詮索はマナーに反する事だわさ・・・さて、どうしたものか・・・)
(ふっ・・・要件は済みました。面倒な話を切り出される前に・・・)
フェルネスはデルマの考えが纏まる前にがゼノアを膝から下ろして立ち上がる。
「さあ。これで主様の冒険者登録は終わりましたね。主様。それでは失礼いたしましょう。」
「うん。そうだね!」
「えっ、あっ、ま、待って!」
咄嗟にデルマも慌てて立ち上がる。考えは纏ってはいなかったが、とにかく時間を稼いで考えを纏めたかったのだ。
「ん?」
「まだ何かあるのですか?」
フェルネスの眼光がデルマに刺さる。
「あ、あ、あぁ!!ま、まだ冒険者ギルドの説明をまだしてないわさ!だ、だからもう少し時間をくれるとありがたいわさ。」
デルマがぎこちない作り笑いを見せる。
するとフェルネスはチラリとゼノアの反応を確認する。
「うん。よく考えたら冒険者ギルドの事あまり知らないからいい機会じゃないかな。」
ゼノアがにっこり笑うとフェルネスは軽く肩の力を抜く。
「ふふ・・主様がそう仰るのならお聞きしましょう。」
再びフェルネスはソファに腰を下ろして当然のようにゼノアを膝に乗せた。
(ふぅぅぅ・・・危なかった。こ、このまま帰してあんな力を街中で使われたら大変な事になるわさ・・・)
デルマはスッと息を吸い込み自分を落ち着かせる為に静かに息を吐く。そして背筋を伸ばし目を見開くといつもの威厳あるギルドマスターの雰囲気を漂わせた。
「改めて、私はセルバイヤ王都冒険者ギルドマスターのデルマ・スランダーだわさ。早速だけど君はゼノア君。そちらはフェルネス殿でいいわね?」
「はい。ゼノアです。よろしくお願いします。」
「えぇ。」
フェルネスは口元を軽く緩めて小首を傾げる。
「最初に冒険者のランクにはHランクからSランクまであるわさ。当然の事だがランクによって依頼内容が変わる。基本的にはランクに合った依頼しか受けられない。だけど例外として一つ上のランクの依頼を受ける条件として自分の一つ上のランクの冒険者パーティーの庇護下にあれば受ける事が出来るわさ。だけど、まあ・・現実には、わざわざランク下の足手纏いを連れて行く冒険者パーティーは珍しいわさ。」
「それじゃあBランクの僕がAランクの依頼を受けるにはAランクパーティーの許可がないと受けれないって事ですね?」
ゼノアは笑顔でデルマに首を傾げる。
「・・ま、まあ・・・そ、そう言う事になるわさ・・・」
(ふっ・・・流石ギルドマスターと言った所ですね。主様の実力を解っているようですね・・・)
歯切れの悪いデルマを見据えてフェルネスが満足そうに目を細める。
(・・うくっ・・・こ、この少年は自覚が無いのか?セルバイヤ王国唯一のAランク冒険者を圧倒したのを・・・ま、まあ、それは置いておいて・・・ここからが本題だわさ。)
覚悟を決めたデルマが口を開く。
「さてゼノア君。冒険者登録は基本的には10歳からになっているわさ。だけど君は陛下からの強い推薦で特別に7歳で冒険者登録を認められたわさ。そこでギルドのルールとして学園卒業生や初めて冒険者登録した者には一ヶ月間の研修制度を設けているわさ。」
「研修・・制度?」
「そうだわさ。新人冒険者の死亡率を下げる為に先輩冒険者パーティーの荷物持ちとして参加して冒険者のイロハを学んで貰う。これは国王陛下からの提案で始まった事だわさ。だから例外はない。いいわね?」
その瞬間フェルネスが目を細めデルマを見据える。そしてデルマの背筋に冷たい汗が伝う。
(うくっ・・・やっぱり・・)
「・・・主様に格下冒険者の荷物持ちをさせるですって?ふん・・・デルマ殿よく考えてもみなさい。格下冒険者達が主様の実力を知ったらどうなるかを。必ず私利私欲に塗れた冒険者達が主様を利用しようと殺到するでしょう。」
「・・・うっ・・た、確かにその可能性は有り得るわさ・・・」
デルマはフェルネスに盲点を突かれ言葉を失う。
「それにもう既に小競り合いが始まってるみたいですわ。」
「はっ?」
フェルネスの耳にはギルドの一階で冒険者達の言い争っている声が聞こえていた。
コンコンコンコンッ!!
すると突然、慌てていると分かる扉をノックの音が響く・・・
「何だい?!騒々しいわさ!」
ガチャッ!!
扉が勢いよく開き受付嬢のマリンが飛び込んで来る。
「し、失礼致します!ギ、ギルマス!!今、受付カウンターに新人冒険者の受け入れ希望者が殺到しています!!!もう収拾がつかない状況です!!助けてください!!」
「なっ・・・何だって?!・・・くっ・・・」
デルマが頭を抱える。そして罰が悪い表情てフェルネスを見るとフェルネスが呆れ顔で肩をすくめるのであった。
(あぁ・・・また面倒事が始まる予感がするよ・・・)
ゼノアもまたため息を付き項垂れるのだった。
259
あなたにおすすめの小説
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!
yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる