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第94話 商人魂
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(ねえ、フェルネス。アルバンさん達の位置は分かる?)
(・・はい。少々お待ちください。)
フェルネスは位置を探る為に耳を傾けながら鼻を効かせる。
すんすん・・・
(・・・この先、左手の森の中に二人。息を潜めています。近くに魔物の気配がするので隠れているようです。そして、またその先に一人。二体の魔物に襲われています。)
(うん!フェルネス!急いで襲われて居る人を助けて連れて来て!!僕は二人の方へ行くよ!)
ゼノアはフェルネスの背中から飛び降りる。
(はい!かしこまりました!直ぐに連れて参ります!)
フェルネスは更に加速して森の中へと消えて行った。
「・・・う、うぅん・・んん・・お、お父さん?」
イリアがアルバンの腕の中で意識が戻り目を開ける。
「しっ!静かに!」
抱き抱えられたイリアが見上げると険しい表情で一点を見つめる父親の顔があった。
「・・・な、何?ど、どうなったの?!あ、あれ?!お父さん!!キ、キメルは?!キメルはどこ?!どこに行ったの?!い、嫌!!嫌よ!!どこに行ったの!!!」
イリアは恐怖と不安でアルバンの腕のなかでパニックになり暴れ出す。
「イリア!静かにするんだ!魔獣が直ぐそこに居るんだ!落ち着くんだ!!」
「い、嫌っ!!嫌よ!!キメルはどこ?!キメルを探さなきゃ!!」
イリアはアルバンの腕を振り解き隠れていた岩陰から飛び出した。アルバンが手を伸ばすが間に合わなかった。
「イ、イリア!!そっちは駄目だ!!!」
「ぐるるぅぅぅぅ・・・」
「えっ・・・」
岩場から飛び出したイリアは黒く大きな影に覆われた。目の前には黒い毛に覆われた巨木を思わせるような大きな足が二本。恐る恐る見上げるとアルバン達を探していたヘルベアーが牙を剥き出しにしてイリアを見下ろしていた。
「イリアーーっ!!!逃げるんだぁぁぁぁ!!!」
「ぐろぉぉぉぉぉぉ!!」
「・・・え、、、あ、、あぁ・・・」
ヘルベアーはイリアを捕食しようと牙を剥き出しにした大口を開けてイリアに襲い掛かる。イリアは恐怖の余り声も出せずに動く事も出来なかった。只々襲い掛かってくるヘルベアー鋭い牙を棒立ちで涙を流しながら見ているしかなかった。
「・・・あ、、、ひっ、、いっ、、」
「イリアァァァァァァ!!!!」
アルバンの叫びも虚しくヘルベアーの涎を撒き散らしながら迫る牙がイリアの鼻先まで来たその時、地面から鋭く尖った岩が飛び出しヘルベアーの顎の下から脳天へと串刺しにした。
ずざんっ!!
「はへっ・・・?」
イリアは訳も分からず固まっていた。見ればヘルベアーの牙がイリアの鼻先で止まり牙の尖端から赤い涎が滴っていた。
「は、は、はひ・・・あ、あぐっ・・えぐっ・・・えぐっ・・・」
身体の力が抜けたイリアはぺたんと腰が抜けて温かいものが流れ出すを止められなかった。
「イ、イリア!!!」
アルバンが駆け寄りイリアを抱きしめる。
「大丈夫か?!怪我は?!」
「あぐっ・・・うえぐっ・・ひぐっ・・うっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
危機が去った安心感で緊張の糸が切れたイリアは込み上げるものを思いっきり解放した。
「よ、良かった・・・無事で本当に良かった・・・」
アルバンも娘を抱きしめ込み上げるものが頬を濡らした。
「ふう・・・それにしても・・・これは魔法か・・・?」
落ち着きを取り戻したアルバンが改めてヘルベアーを貫いている岩を見上げていると突然ヘルベアーの影から声がする。
「間に合って良かった!!」
「むっ?!誰だ!」
ヘルベアーの影からひょっこり出て来たのは見慣れた少年の姿であった。
「むっ?!き、君は!!!ゼノア君か!!」
(ええっ?!ゼ、ゼノア様?!・・・えはっ・・・あうぅ・・で、でも・・い、今は・・)
イリアはゼノアの名前を聞いて目を輝かせるが濡れた下着に気付き脚をもじもじさせていた。
「はい。アルバンさん。イリアちゃん。お久しぶりです。冒険者ギルドで話を聞いて助けに来ました。本当に無事で良かったです。」
「そ、そうか・・・キメルの言う通りだったな・・・はっ!!キ、キメルが!キメルがまだ馬車の中に!!」
アルバンがゼノアに詰め寄るがゼノアはフェルネスが近付いて来る気配を感じて
いた。
「あぁ・・多分大丈夫ですよ。もう直ぐここへ来ますから・・・」
ざざっ!
「主様。お待たせ致しました。」
「はうっ!?」
突然現れたフェルネスにアルバンが驚き仰け反る。
「主様。ご命令通りお連れ致しました。」
フェルネスはキメルの襟首を掴んだまま少し得意げにゼノアの前に差し出した。
「うん。早かったね。ありがとう。」
「ふふっ・・容易い事ですわ。」
(主様に褒めて頂いたわ・・・うふふっ・・)
(・・・あ、主様?ゼノア様のメイド・・・うくっ・・何よあのおっぱいお化けは・・・)
イリアが自分の胸に目を落としフェルネスの服から溢れそうな胸に頬を引き攣らせる。
「あ・・・あぐっ・・・ア、アルバン様・・ご、ご無事で・・・何よりです・・・」
「おぉ・・キメル!無事だったか!!お前の読み通り応援が来たぞ!!」
「キメルーー!!良かった!無事で良かったーー!!」
イリアは駆け寄るとぶら下がっているキメルの脚にしがみ付いた。
「・・・ぐはっ・・・お、お嬢様も・・うぐっ・・ご無事でなにより・・・くっ・・」
イリアに脚を引っ張られて脇腹に激痛が走る。しかしキメルは苦痛に歪んだ笑顔をイリヤに向けた。
「キメル!どうしたの?!どこか痛いの?!」
キメルの表情を見てイリヤは脚にしがみ付きながら不安な顔で見上げる。
「ぐっ・・た、大した事は・・・はぐっ・・・」
「この者は骨が折れて内臓に程よく刺さっているようです。」
フェルネスが淡々とキメルの状態を語る。するとアルバン達の再会を微笑ましく見ていたゼノアの顔が跳ね上がる。
「えぇっ!!フェルネス!それを早く教えてよ!!」
(はうっ・・あ、主様がお怒りに・・・)
「ヒール!!!」
放たれた蒼白い魔力がキメルを包むと身体に付けられた傷という傷が消えていった。そしてキメルの表情が穏やかになって行く。
「・・・い、痛みが・・・消えた・・身体も動く!」
「フェルネス。もう下ろしてあげて。」
「は、はい!も、申し訳ございません!!」
フェルネスは動揺を見せながらキメルを下ろすとそそくさとゼノアの後ろに下がり申し訳無さそうに項垂れる。
(はうっ・・・わ、私とした事が・・・)
「ふう。ゼノア殿ありがとうございます!まさか救援部隊がゼノア殿とは!私もまだ運に見放されていないようです。」
(・・・だが、あと数秒遅かったら・・・私はどうなっていたか。)
キメルは背筋に悪寒が走るのだった。
「さあ。取り敢えず馬車に戻って荷物を回収しよう。そしたら一度王都に戻るぞ。」
「はい・・・ですが今回の買い付けが無くなるのは惜しいです。今日、交渉の場に居なければライバル商会に先を越されるでしょう。」
キメルは肩を落とし軽く俯く。
「うむ・・・”エナハーブの葉”はかなり希少価値が高い。だが話によればまだ小さい上に素人が薬草と間違えて手荒く扱った為に根も無く葉だけらしい。それに余り状態が良く無いと聞く・・・ふむ、だが確かにそれでも希少価値は高い・・・確かに惜しい気もするな・・・」
(・・・エナハーブ?!あぁ・・だから街道の入口に人が沢山居たんだ・・・あれは商人だったんだね・・・)
ゼノアが少し考えて自分の鞄に目を落とす。
アルバンも”エナハーブ”の希少さは知っている。この機会を逃せばこの先手に入るかも分からないのだ。商人としては何としても手に入れたい物の一つであった。
アルバンとキメルが足を止めて悩みながら肩を落とす。
「あ、あの・・・アルバンさん。」
「ん?何だい?ゼノア君。」
「えっと・・・もしかしてエナハーブってこれの事ですか?」
ゼノアは南の森で採取したエナハーブを鞄から取り出してアルバンに見せた。
「ははっ・・・ゼノア君も冗談が過ぎるよ。そんな都合よくエナハーブがある訳が・・・」
「そうですよ。ゼノア君。そんな簡単にエナハーブが・・・」
アルバンとキメルが口元を緩めながら差出されてたエメラルドの輝きを放つ葉を生やした植物に目を落とした・・・
「「あったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
綺麗にアルバンとキメルの声が揃う。
「ま、ま、間違いない!!こ、これはエナハーブだ!!私も若い時に一度だけオークションで見た事がある!だがあの時見た物より大きく瑞々しい・・・ゼ、ゼ、ゼノア君!こ、これをどこで?!」
アルバンはゼノアに向かって一歩踏み出す。
(はうっ!近い・・・)
「み、南の森で課外授業で薬草取りをしてた時に偶然見付けたんです。」
「ほ、ほう・・み、南の森で・・・そ、それにこれはかなり状態が良い・・・根も周りの土ごと掬い取ってある。これほどの状態であれば・・・オークションでどれほどの値が付くか・・・想像も付かない・・・」
するとキメルも一歩前に出る。
「ゼノア殿。あの・・そのエナハーブをどうするおつもりでしょうか?」
キメルは動揺を押し殺してなるべく丁寧に笑顔を浮かべる。希少なエナハーブを目の前に見据えこの機会をみすみす逃す商人がいる筈もなくキメルは商談のテーブルに着こうと必死であった。
(あうっ・・・笑顔の迫力が半端ない・・・これが商人魂か・・・口の淵から本音が漏れて聞こえそうだよ・・・)
「う、うん。ほ、本当は冒険者ギルドにお願いしようと思っていたんだけど・・・」
「「だけど・・・?」」
アルバンとキメルが同時に詰め寄る。
「あ、えっ・・・えっと・・・」
「その商談!待ってもらいましょうか!!」
ゼノアが二人の圧力に圧倒されていると大木の陰から人影が現れたのであった。
(・・はい。少々お待ちください。)
フェルネスは位置を探る為に耳を傾けながら鼻を効かせる。
すんすん・・・
(・・・この先、左手の森の中に二人。息を潜めています。近くに魔物の気配がするので隠れているようです。そして、またその先に一人。二体の魔物に襲われています。)
(うん!フェルネス!急いで襲われて居る人を助けて連れて来て!!僕は二人の方へ行くよ!)
ゼノアはフェルネスの背中から飛び降りる。
(はい!かしこまりました!直ぐに連れて参ります!)
フェルネスは更に加速して森の中へと消えて行った。
「・・・う、うぅん・・んん・・お、お父さん?」
イリアがアルバンの腕の中で意識が戻り目を開ける。
「しっ!静かに!」
抱き抱えられたイリアが見上げると険しい表情で一点を見つめる父親の顔があった。
「・・・な、何?ど、どうなったの?!あ、あれ?!お父さん!!キ、キメルは?!キメルはどこ?!どこに行ったの?!い、嫌!!嫌よ!!どこに行ったの!!!」
イリアは恐怖と不安でアルバンの腕のなかでパニックになり暴れ出す。
「イリア!静かにするんだ!魔獣が直ぐそこに居るんだ!落ち着くんだ!!」
「い、嫌っ!!嫌よ!!キメルはどこ?!キメルを探さなきゃ!!」
イリアはアルバンの腕を振り解き隠れていた岩陰から飛び出した。アルバンが手を伸ばすが間に合わなかった。
「イ、イリア!!そっちは駄目だ!!!」
「ぐるるぅぅぅぅ・・・」
「えっ・・・」
岩場から飛び出したイリアは黒く大きな影に覆われた。目の前には黒い毛に覆われた巨木を思わせるような大きな足が二本。恐る恐る見上げるとアルバン達を探していたヘルベアーが牙を剥き出しにしてイリアを見下ろしていた。
「イリアーーっ!!!逃げるんだぁぁぁぁ!!!」
「ぐろぉぉぉぉぉぉ!!」
「・・・え、、、あ、、あぁ・・・」
ヘルベアーはイリアを捕食しようと牙を剥き出しにした大口を開けてイリアに襲い掛かる。イリアは恐怖の余り声も出せずに動く事も出来なかった。只々襲い掛かってくるヘルベアー鋭い牙を棒立ちで涙を流しながら見ているしかなかった。
「・・・あ、、、ひっ、、いっ、、」
「イリアァァァァァァ!!!!」
アルバンの叫びも虚しくヘルベアーの涎を撒き散らしながら迫る牙がイリアの鼻先まで来たその時、地面から鋭く尖った岩が飛び出しヘルベアーの顎の下から脳天へと串刺しにした。
ずざんっ!!
「はへっ・・・?」
イリアは訳も分からず固まっていた。見ればヘルベアーの牙がイリアの鼻先で止まり牙の尖端から赤い涎が滴っていた。
「は、は、はひ・・・あ、あぐっ・・えぐっ・・・えぐっ・・・」
身体の力が抜けたイリアはぺたんと腰が抜けて温かいものが流れ出すを止められなかった。
「イ、イリア!!!」
アルバンが駆け寄りイリアを抱きしめる。
「大丈夫か?!怪我は?!」
「あぐっ・・・うえぐっ・・ひぐっ・・うっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
危機が去った安心感で緊張の糸が切れたイリアは込み上げるものを思いっきり解放した。
「よ、良かった・・・無事で本当に良かった・・・」
アルバンも娘を抱きしめ込み上げるものが頬を濡らした。
「ふう・・・それにしても・・・これは魔法か・・・?」
落ち着きを取り戻したアルバンが改めてヘルベアーを貫いている岩を見上げていると突然ヘルベアーの影から声がする。
「間に合って良かった!!」
「むっ?!誰だ!」
ヘルベアーの影からひょっこり出て来たのは見慣れた少年の姿であった。
「むっ?!き、君は!!!ゼノア君か!!」
(ええっ?!ゼ、ゼノア様?!・・・えはっ・・・あうぅ・・で、でも・・い、今は・・)
イリアはゼノアの名前を聞いて目を輝かせるが濡れた下着に気付き脚をもじもじさせていた。
「はい。アルバンさん。イリアちゃん。お久しぶりです。冒険者ギルドで話を聞いて助けに来ました。本当に無事で良かったです。」
「そ、そうか・・・キメルの言う通りだったな・・・はっ!!キ、キメルが!キメルがまだ馬車の中に!!」
アルバンがゼノアに詰め寄るがゼノアはフェルネスが近付いて来る気配を感じて
いた。
「あぁ・・多分大丈夫ですよ。もう直ぐここへ来ますから・・・」
ざざっ!
「主様。お待たせ致しました。」
「はうっ!?」
突然現れたフェルネスにアルバンが驚き仰け反る。
「主様。ご命令通りお連れ致しました。」
フェルネスはキメルの襟首を掴んだまま少し得意げにゼノアの前に差し出した。
「うん。早かったね。ありがとう。」
「ふふっ・・容易い事ですわ。」
(主様に褒めて頂いたわ・・・うふふっ・・)
(・・・あ、主様?ゼノア様のメイド・・・うくっ・・何よあのおっぱいお化けは・・・)
イリアが自分の胸に目を落としフェルネスの服から溢れそうな胸に頬を引き攣らせる。
「あ・・・あぐっ・・・ア、アルバン様・・ご、ご無事で・・・何よりです・・・」
「おぉ・・キメル!無事だったか!!お前の読み通り応援が来たぞ!!」
「キメルーー!!良かった!無事で良かったーー!!」
イリアは駆け寄るとぶら下がっているキメルの脚にしがみ付いた。
「・・・ぐはっ・・・お、お嬢様も・・うぐっ・・ご無事でなにより・・・くっ・・」
イリアに脚を引っ張られて脇腹に激痛が走る。しかしキメルは苦痛に歪んだ笑顔をイリヤに向けた。
「キメル!どうしたの?!どこか痛いの?!」
キメルの表情を見てイリヤは脚にしがみ付きながら不安な顔で見上げる。
「ぐっ・・た、大した事は・・・はぐっ・・・」
「この者は骨が折れて内臓に程よく刺さっているようです。」
フェルネスが淡々とキメルの状態を語る。するとアルバン達の再会を微笑ましく見ていたゼノアの顔が跳ね上がる。
「えぇっ!!フェルネス!それを早く教えてよ!!」
(はうっ・・あ、主様がお怒りに・・・)
「ヒール!!!」
放たれた蒼白い魔力がキメルを包むと身体に付けられた傷という傷が消えていった。そしてキメルの表情が穏やかになって行く。
「・・・い、痛みが・・・消えた・・身体も動く!」
「フェルネス。もう下ろしてあげて。」
「は、はい!も、申し訳ございません!!」
フェルネスは動揺を見せながらキメルを下ろすとそそくさとゼノアの後ろに下がり申し訳無さそうに項垂れる。
(はうっ・・・わ、私とした事が・・・)
「ふう。ゼノア殿ありがとうございます!まさか救援部隊がゼノア殿とは!私もまだ運に見放されていないようです。」
(・・・だが、あと数秒遅かったら・・・私はどうなっていたか。)
キメルは背筋に悪寒が走るのだった。
「さあ。取り敢えず馬車に戻って荷物を回収しよう。そしたら一度王都に戻るぞ。」
「はい・・・ですが今回の買い付けが無くなるのは惜しいです。今日、交渉の場に居なければライバル商会に先を越されるでしょう。」
キメルは肩を落とし軽く俯く。
「うむ・・・”エナハーブの葉”はかなり希少価値が高い。だが話によればまだ小さい上に素人が薬草と間違えて手荒く扱った為に根も無く葉だけらしい。それに余り状態が良く無いと聞く・・・ふむ、だが確かにそれでも希少価値は高い・・・確かに惜しい気もするな・・・」
(・・・エナハーブ?!あぁ・・だから街道の入口に人が沢山居たんだ・・・あれは商人だったんだね・・・)
ゼノアが少し考えて自分の鞄に目を落とす。
アルバンも”エナハーブ”の希少さは知っている。この機会を逃せばこの先手に入るかも分からないのだ。商人としては何としても手に入れたい物の一つであった。
アルバンとキメルが足を止めて悩みながら肩を落とす。
「あ、あの・・・アルバンさん。」
「ん?何だい?ゼノア君。」
「えっと・・・もしかしてエナハーブってこれの事ですか?」
ゼノアは南の森で採取したエナハーブを鞄から取り出してアルバンに見せた。
「ははっ・・・ゼノア君も冗談が過ぎるよ。そんな都合よくエナハーブがある訳が・・・」
「そうですよ。ゼノア君。そんな簡単にエナハーブが・・・」
アルバンとキメルが口元を緩めながら差出されてたエメラルドの輝きを放つ葉を生やした植物に目を落とした・・・
「「あったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
綺麗にアルバンとキメルの声が揃う。
「ま、ま、間違いない!!こ、これはエナハーブだ!!私も若い時に一度だけオークションで見た事がある!だがあの時見た物より大きく瑞々しい・・・ゼ、ゼ、ゼノア君!こ、これをどこで?!」
アルバンはゼノアに向かって一歩踏み出す。
(はうっ!近い・・・)
「み、南の森で課外授業で薬草取りをしてた時に偶然見付けたんです。」
「ほ、ほう・・み、南の森で・・・そ、それにこれはかなり状態が良い・・・根も周りの土ごと掬い取ってある。これほどの状態であれば・・・オークションでどれほどの値が付くか・・・想像も付かない・・・」
するとキメルも一歩前に出る。
「ゼノア殿。あの・・そのエナハーブをどうするおつもりでしょうか?」
キメルは動揺を押し殺してなるべく丁寧に笑顔を浮かべる。希少なエナハーブを目の前に見据えこの機会をみすみす逃す商人がいる筈もなくキメルは商談のテーブルに着こうと必死であった。
(あうっ・・・笑顔の迫力が半端ない・・・これが商人魂か・・・口の淵から本音が漏れて聞こえそうだよ・・・)
「う、うん。ほ、本当は冒険者ギルドにお願いしようと思っていたんだけど・・・」
「「だけど・・・?」」
アルバンとキメルが同時に詰め寄る。
「あ、えっ・・・えっと・・・」
「その商談!待ってもらいましょうか!!」
ゼノアが二人の圧力に圧倒されていると大木の陰から人影が現れたのであった。
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