【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第三章 東の国の大きなお風呂編

いつか見た衝撃、再び

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 その結果、即決だった。
 案内された宿屋は他の家屋が平家なのに対して三階まである造りで、それだけでも高級感があるのに案内された部屋も、何よりてぷが楽しみにしていたお風呂も最高のものだった。
 確かにステラは以前てぷに十人が一斉に入れる風呂があると伝えはしたし、それは実際にステラたちがこの国に来たときに入ったものだ。だがしかし、当時なんて豪華だと思っていた風呂がこの国では中程度のグレードであったことを知った。

「お子様もいらっしゃいますのでこちらの方が都合がよろしいかと思いまして。いかがでしょう?」

 そう問いかけてきたのはその宿屋の女将と名乗る人物だった。
 案内された部屋は植物を編んで作った敷物が敷かれていて、ふわりと香る独特な香りがなんとも心地良い。部屋の広さも十分だし、女将から案内された部屋の奥にある扉を開けた時三人の目に飛び込んできたのは本当に三人がちょうど一緒に入れるくらいの大きさの風呂だった。
 とぷとぷとどこからか引いてきたらしいお湯が浴槽に延々と流れ込み、もくもくと湯気が立っているが半分自然が見えているような状態だからかそれも気にならない。

「おい、外だぞ」

 リヴィウスの苦言に女将がほくそ笑んだ。

「ご心配には及びませんわ。こちらは目隠しが施されたこの露天風呂のためだけに作ったうちの庭ですから。外から誰かに見られるなんてことありませんわ」

 それでも少し疑っているようだったが、結局は大興奮しているてぷの『ここがいい!』の一言で即決だったのだ。

『よし! それじゃあ街に行くんだぞ!』

 希望通りの風呂が見つかって大興奮のてぷはそのままの元気で次の目的を満たすべく街の方向を指さした。
 長い長い船旅だったとはいえリヴィウスもステラも冒険者であり元々は魔王と聖女である、この程度では疲労なんて感じるはずもなく、むしろてぷの元気の良さに笑いながら頷くと宿屋を出る。

 すぐに宿屋の客引きに捕まったこともあって、宿屋の暖簾を潜った先にある景色にすでに一度この国に滞在したことのあるステラですら一瞬圧倒されて足を止めた。それくらいこの国は賑やかで、そしてあまりにも異国すぎて脳の処理が追いつかなくなるのだ。

 それはどうやらリヴィウスも同じようで、表情こそいつもと変わらないがその目はあちこちに向いていた。けれどもこの旅で今一番の決定権を持っているのはてぷである。リヴィウスの頭にぎゅっと捕まってすんすんと匂いを嗅いでいたかと思えばカッと目を見開いてある方向を指さした。

『あっちだぞ! あっちから良い匂いがするんだぞ!』

 ステラの身長はこの街の人たちと対して変わらないけれど、リヴィウスは頭一つ以上は抜けている。だからてぷの指さした方向にあるものがなんとなく見えたのか「あれか」と低く呟いてステラの手を引いて歩き出す。目的地さえ決まっていればリヴィウスは迷わないのだ。
 それから歩くこと数分もなかっただろうか。てぷの『もうちょっとだぞ』と明るく弾んだ声に無意識に口角が上がるのを感じていた時だった。

「ちょっとぉ! 肉入り芋揚げがないってどういうことよぉ!」

 野太くはあるがどこか愛らしさと厳しさを感じさせる声が三人の耳に届いた。

「いやあ、その、最近大量注文が入っちまって在庫が」
「いやよいやよいやぁ! アタシはここの肉入り芋揚げじゃないともう満足できないカラダになってんのよ! どうしてくれんのぉ! 今に中毒症状が出るわよ! いいの? いいの? アタシの中毒症状すんごいだからぁッ!」
「今でも十分すご」
「なんか言ったかしら⁉︎」

 てぷの指差した店の前にいたのはどういう原理かはわからないが太陽の光を受けて乱反射する紫の着物を着た女性(仮)。造形は街行く女性たちがきているものと全く同じな筈なのに、その迫力のせいだろうか、隠しきれない屈強な体のせいだろうか、人間が二人と半分くらいの体積を持ったその人の姿にリヴィウスとステラの足はぴたりと止まった。

『……ボク、あのヒトの子見たことあるんだぞ』
「……俺もだ」

 ステラは言葉に出さずに頷いた。
 思い出すのはペタルで行われた花祭りの閉会宣言。そこに現れた個性の塊としか言えない人たちのあまりにも圧倒的すぎるパフォーマンス。それを見た時と同じ衝撃が三人を襲っていた。
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