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第三章 東の国の大きなお風呂編
いざ尋常に、お風呂!
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その日はさすがに疲労が溜まっていた為三人は宿に戻ることにした。
戦いや移動で疲れたのではない。芋揚げ屋のおリンに始まりキキョウの店での屈強な乙女たちの襲撃で三人は身も心もへとへとだったのだ。
『……宿に辿り着いた途端すんごく疲れたんだぞ』
「……そうだな」
「よし、じゃあ二人とも。いきましょう」
ここに来てまだ何かするのかとうんざりとした顔をしている二人が同じタイミングでステラを見た。それにステラも同じように疲労の色が濃い顔に笑みを浮かべてグッと親指を立てたのだ。
「お風呂、いきましょう」
『!』
てぷの顔に満開の花が咲いた。
『行くんだぞ! ほらステラもリヴィもさっさと用意するんだぞ!』
ぽふん、という音と一緒に元のてっぷりとしたドラゴンの姿に戻ったてぷはふよふよと浮きながら興奮を表すかのように羽をぱたぱたと動かした。
それにリヴィウスは呆れたように笑い、ステラは微笑ましいなと思いながら口角を上げる。
あんまりにもてぷが嬉しそうにするから二人はいそいそと入浴の準備を始めた。とは言っても準備をするのは大抵ステラだけで、リヴィウスはてぷを一緒に既に室内にある風呂場に向かっている。
少し離れた場所から聞こえるてぷのはしゃいだ声とそれを嗜めるリヴィウスの声にくすくすと笑いながら準備を進めていれば、ふと低いテーブルに紙が置かれてあるのに気が付く。そこに書かれていたのはこうだ・
「……ふすまの中に寝巻きをご用意しております……?」
なんのことだと思いながらステラは首を傾げつつ、ちょうど顔を上げた先にある襖を見た。なんの変哲もないもののように思うけれど、これを開けたら服が入っているのだろうかと思いながらステラはそこに近づき、そっと手を掛けて開く。
「‼︎ こ、これは…!」
そこにあった代物に、ステラは目を見開くのだった。
『ステラ! 遅いんだぞ!』
浴室に続く扉を開けたと同時にかけられた言葉にステラは苦笑する。
「すみません、準備に少し手間取りました。……それにしても湯気がすごいですね、霧みたい」
半分外のようなものなのに今が夜だからか、月明かりの心許なさのせいか、今ステラの視界はほとんど湯気で覆われている。てぷの声を頼りにゆっくりと裸足で進んでいけば、濡れた岩の感触とそこに流れる温泉の温かさを感じる。
進んでいけば目が慣れたのか湯気が落ち着いたのか視界が開けた。
そこにいたのはドラゴンの姿のまま大きなお風呂の中をすいすいと心地良さそうに泳ぐてぷの姿と、浴槽の縁に背中を預けて呆れた様子でそれを見ているリヴィウスだった。
もう随分と長い時間を共にしているのに、こうして肌を見るのは初めてだなと漠然とそう思った時、ステラの心臓がとくりと脈打った。
「?」
その違和感に首を傾げ胸元に手をやる。最近、こういうのが多いのだ。
もしや何か悪い病気だろうかと嫌な考えが脳裏に過ったとき『ステラー!』とほかほかに温まったてぷが胸に飛び込んで来て少しだけバランスを崩す。
「う、わ…っ」
下は石だったな。服を着ていない今、尻餅を着いたらそれは痛いだろうな。でもてぷを抱き締めない選択肢はないしな、よし、甘んじて痛みを受け入れよう。そんな思考がステラの頭の中を瞬く間に巡り、痛みを覚悟しててぷを抱き締めようとした時だ。
右腕はてぷの温もりに触れることができたけれど左腕はできなかった。何故か。強い力で引かれたからだ。
「‼︎」
後ろに倒れそうになったのが今度は前につんのめりそうになる。ステラは驚きに目を丸くしたけれど、しっかりと抱き締められたてぷは我関せずのご満悦顔である。
このままじゃ今度は顔面からお風呂に突っ込んでしまうなと、冷静な部分がそう結論付けたのだがそれもまた外れた。
ふわりと浮遊感が体を包んだかと思えば、状況を理解する前にばしゃん! と大きな音と一緒に湯の中に落ちた。どこからかと問われたら尻から。
一瞬で頭の先から足の先までずぶ濡れになったステラは水面から顔を出して、自分を浴槽に落とした人物を恨めしげに見る。
「もう少し優しくできませんか」
「尻餅を着くのと顔面から無様に突っ込むのはどっちが良かったんだ」
「今のも相当無様だったと思いますが」
腕を掴んでいた手はいつの間にか離れており、恨めしげな視線を向けたリヴィウスはステラが落とされた拍子に跳ねたお湯で濡れた髪をかき上げている。横目でステラを見るその仕草は、同性だというのに見惚れてしまうほどの色香を溢れさせていてステラは思わず言葉に詰まった。
少しの間無言で見合った二人だが、ふとリヴィウスの視線が動きそしてその赤い目が俄に見開かれる。それにステラが首を傾げた。
「……お前、」
『ステラ、さっきのどぼんってやつもう一回やるんだぞ!』
てぷの明るい声が響いた。
戦いや移動で疲れたのではない。芋揚げ屋のおリンに始まりキキョウの店での屈強な乙女たちの襲撃で三人は身も心もへとへとだったのだ。
『……宿に辿り着いた途端すんごく疲れたんだぞ』
「……そうだな」
「よし、じゃあ二人とも。いきましょう」
ここに来てまだ何かするのかとうんざりとした顔をしている二人が同じタイミングでステラを見た。それにステラも同じように疲労の色が濃い顔に笑みを浮かべてグッと親指を立てたのだ。
「お風呂、いきましょう」
『!』
てぷの顔に満開の花が咲いた。
『行くんだぞ! ほらステラもリヴィもさっさと用意するんだぞ!』
ぽふん、という音と一緒に元のてっぷりとしたドラゴンの姿に戻ったてぷはふよふよと浮きながら興奮を表すかのように羽をぱたぱたと動かした。
それにリヴィウスは呆れたように笑い、ステラは微笑ましいなと思いながら口角を上げる。
あんまりにもてぷが嬉しそうにするから二人はいそいそと入浴の準備を始めた。とは言っても準備をするのは大抵ステラだけで、リヴィウスはてぷを一緒に既に室内にある風呂場に向かっている。
少し離れた場所から聞こえるてぷのはしゃいだ声とそれを嗜めるリヴィウスの声にくすくすと笑いながら準備を進めていれば、ふと低いテーブルに紙が置かれてあるのに気が付く。そこに書かれていたのはこうだ・
「……ふすまの中に寝巻きをご用意しております……?」
なんのことだと思いながらステラは首を傾げつつ、ちょうど顔を上げた先にある襖を見た。なんの変哲もないもののように思うけれど、これを開けたら服が入っているのだろうかと思いながらステラはそこに近づき、そっと手を掛けて開く。
「‼︎ こ、これは…!」
そこにあった代物に、ステラは目を見開くのだった。
『ステラ! 遅いんだぞ!』
浴室に続く扉を開けたと同時にかけられた言葉にステラは苦笑する。
「すみません、準備に少し手間取りました。……それにしても湯気がすごいですね、霧みたい」
半分外のようなものなのに今が夜だからか、月明かりの心許なさのせいか、今ステラの視界はほとんど湯気で覆われている。てぷの声を頼りにゆっくりと裸足で進んでいけば、濡れた岩の感触とそこに流れる温泉の温かさを感じる。
進んでいけば目が慣れたのか湯気が落ち着いたのか視界が開けた。
そこにいたのはドラゴンの姿のまま大きなお風呂の中をすいすいと心地良さそうに泳ぐてぷの姿と、浴槽の縁に背中を預けて呆れた様子でそれを見ているリヴィウスだった。
もう随分と長い時間を共にしているのに、こうして肌を見るのは初めてだなと漠然とそう思った時、ステラの心臓がとくりと脈打った。
「?」
その違和感に首を傾げ胸元に手をやる。最近、こういうのが多いのだ。
もしや何か悪い病気だろうかと嫌な考えが脳裏に過ったとき『ステラー!』とほかほかに温まったてぷが胸に飛び込んで来て少しだけバランスを崩す。
「う、わ…っ」
下は石だったな。服を着ていない今、尻餅を着いたらそれは痛いだろうな。でもてぷを抱き締めない選択肢はないしな、よし、甘んじて痛みを受け入れよう。そんな思考がステラの頭の中を瞬く間に巡り、痛みを覚悟しててぷを抱き締めようとした時だ。
右腕はてぷの温もりに触れることができたけれど左腕はできなかった。何故か。強い力で引かれたからだ。
「‼︎」
後ろに倒れそうになったのが今度は前につんのめりそうになる。ステラは驚きに目を丸くしたけれど、しっかりと抱き締められたてぷは我関せずのご満悦顔である。
このままじゃ今度は顔面からお風呂に突っ込んでしまうなと、冷静な部分がそう結論付けたのだがそれもまた外れた。
ふわりと浮遊感が体を包んだかと思えば、状況を理解する前にばしゃん! と大きな音と一緒に湯の中に落ちた。どこからかと問われたら尻から。
一瞬で頭の先から足の先までずぶ濡れになったステラは水面から顔を出して、自分を浴槽に落とした人物を恨めしげに見る。
「もう少し優しくできませんか」
「尻餅を着くのと顔面から無様に突っ込むのはどっちが良かったんだ」
「今のも相当無様だったと思いますが」
腕を掴んでいた手はいつの間にか離れており、恨めしげな視線を向けたリヴィウスはステラが落とされた拍子に跳ねたお湯で濡れた髪をかき上げている。横目でステラを見るその仕草は、同性だというのに見惚れてしまうほどの色香を溢れさせていてステラは思わず言葉に詰まった。
少しの間無言で見合った二人だが、ふとリヴィウスの視線が動きそしてその赤い目が俄に見開かれる。それにステラが首を傾げた。
「……お前、」
『ステラ、さっきのどぼんってやつもう一回やるんだぞ!』
てぷの明るい声が響いた。
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