【完結】星に焦がれて

白(しろ)

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第一章 僕の話

※知らない顔

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 触れた場所全てが熱い、強く握られた手首は痛いくらいなのにそれよりも口内を好きなように暴かれる違和感の方が大きくて鳥肌が立つ。

「んぅ…っ、ゃ、いやだ、シリウス…!」

 いつの間にか僕の手は一つにまとめられていて、シリウスの空いた手が僕の顎を掴んで固定する。なんとか首を振って唇を離しても次にはまた塞がれて舌が入ってくる。いつもは僕が一喋ると十返してくる男が何も言ってこない。

 本能で逃げようとする僕の舌を器用に捕まえて熱い舌が擦り合わされる。粘膜の接触なんて気色悪いだけなのに、呼吸するのが難しいくらい執拗に舌を絡め取られ上顎を擦られた時なんて感じたことのない感覚に思わずシリウスの舌を噛んでしまった。

「っ」
「ぁ、ごめ」
「ダイジョーブ。でも次はやんないでね」

 次、次ってなんだ。まだやるのか。
 混乱の渦から抜け出せない僕なんてお構いなしにシリウスが僕の首筋に顔を埋めた。さっきまで僕の口を好きなようにしていた舌が今度は首の皮膚を舐め上げて体が跳ねた。

「な、なに」
「アルはさぁ、なーんにも知らないよな」

 体は発熱していると思う程高温なのにシリウスの声は静かだ。静か過ぎて、僕は今こいつを怖いと思っている。
 だって知らないんだ。こんなシリウスは知らない。シリウスはこんな声で喋らない、こんな顔はしない。

「まあそうしたのは俺なんだけど」

 ぢゅう、と首を吸われた。痛みと呼ぶにはあまりに小さな刺激なのにこの状況だからか僕の体は過剰に反応してしまう。

「ひっ、ぅ…」

 喉が引き攣って上擦った声が漏れる。勝手に出てくるこの声がまるで女みたいで、それが嫌で唇を噛もうとしたけど「アル」咎めるみたいにシリウスに名前を呼ばれて出来なくなる。
 するとシリウスの機嫌が良くなるのがわかった。顔は見えないのに、ランプの心許ない灯りしかない空間なのに、それでもシリウスが笑っているのがわかった。

「…は、なに、どうしてボタン」

 顎を掴んでいた手が離れて今度はその手がシャツのボタンを外していく。片手で器用にボタンを外され、熱い手が邪魔だというように前を肌蹴る。シリウスの目に上半身が晒されたけれど、こんなの風呂でいつだって見ているはずだ。
 特に変わった状況ではないはずなのに、今のこの状況が僕の理解の範疇を超えていて更に混乱が深まる。

「ぁっ、ゃ、なに、なにして」

 突然襲ってきた刺激に体が跳ねる。痛いという訳でも、くすぐったいという訳でもない。ただ小さな電流が走るような感覚に目を丸くする。

「ダイジョーブだよ、アル。これからするのは気持ちいいことだから」
「…きもちいい?」
「うん。アルが気持ちよくなってくれたら俺のおかしいのも治るから、だから助けてね」

 言い聞かせるような口調でシリウスが囁く。こんな話し方も僕は知らない。
 僕の手首を掴んでいた手が離れて、熱い指が僕の肌を辿った。その手が胸に触れて、乳首の周りを触れるかどうかの場所でくるくると遊ばれる。

「っ…ふ、」

 形容し難い感覚に息が漏れる。どうしてこんな風にシリウスが僕に触れるのかわからない。でもこれがシリウスを助けることになるんだと思って僕はシーツを掴む。
 吐息のような声でシリウスが「いいこ」って囁いた。

「あっ、…シリウス、なんで乳首なんか…っ、ぁ、嫌だ、」

 剣と杖を握り慣れた太い指が器用に僕の乳首を摘む。口から出る声はやっぱり上擦っていて、それがなぜだか恥ずかしくてしょうがない。
 咄嗟に手で口を覆うと、それを咎めるみたいに痛みが走って視線を胸元に向けると身が竦むような熱を宿した目と視線が絡まった。

「…シリ、ウス…」

 目を逸らすなって言われているみたいだった。
 赤い舌が僕の乳首を舌なめずりするみたいに舐める。ビリビリとした刺激が背筋を駆け上がって来て、息が乱れる。
 シリウスが、僕の乳首を舐めている。
 理解の範疇を超えた出来事に僕の頭はもう思考することすら出来そうにない。

「っ、ふ…ぅ、ぁ、シリウス…っ」

 ちゅ、ぢゅう、耳を塞ぎたくなるような音が聞こえる。
 見ていたくなんて無いのに僕の目はシリウスに釘付けだった。体が熱い、呼吸が乱れる、口からは変な声が出るし、体だっておかしい。
 中心が熱くて兆しているのがわかる。こんなのおかしいことだとわかっているのに、滅多に自慰もしないそこが熱を持って服を押し上げている。それがあまりに恥ずかしくて逃げたいのに、僕の上にいるシリウスがそれを許してくれない。

「かわいい」
「? ひっ、」
「…はは、勃ってる。アルも興奮してくれてて良かった」

 ぐり、ともっと熱くて硬いものが服越しに押し付けられる。
 それがシリウスのものだとわかった瞬間、僕の頭は間違いなくショートした。

「ぁ、あ…っ、だめ、こんなのだめだシリウスっ」
「なんで?」

 性急に服が乱される。僕の目の前で服を脱いだシリウスのそそり立つ中心を見た時、ようやく危機感が実態を持って襲い掛かってきた。でも僕のそんな状態を予見していたかのように熱が直接擦り付けられて目の前に火花が散る。

「んんっ! っ、や、だめだって、こんなの」
「アル」
「ぅん、ぁ、は…っ、ぁ、ンン」

 唇が塞がれ、僕の言葉はシリウスに飲み込まれてしまった。一切の反論を許さないとでもいうような強引な口付けなのに、知ったばかりの刺激を与えられてまたおかしくなる。
 ギシ、とベッドの軋む音がした。

 シリウスが腰を揺らす度に局部が擦れて言いようのない感覚に襲われる。腰が甘く砕けてしまいそうな、自分が自分でなくなるような感覚だ。この感覚は嫌いだ。嫌いなのに、僕はシリウスを突き飛ばせない。

「アル、気持ちいい?」

 夢の中にいるような心地でシリウスが問いかけてくるけど、僕はそれに返す言葉を持ち合わせていない。何を言っても不正解のような気がするからだ。
 第二次性徴の段階でたまにこうして中心に熱が集まることはあった。けれどそれを処理するのは義務的で機械的な動作だった。多少すっきりするような感覚はあったけれど、それはこんなにも自分というものを根こそぎ抉り取るような強烈なものではなかった。

 ベッドが軋む。自分でも聞いたことがない声と、シリウスの少し乱れた呼吸が混ざる。
 触れた場所の全てが熱い。あんまりにも刺激が強くて譫言のように何度も嫌だと伝えるのにシリウスは止まってくれなくて、徐々に視界がぱちぱちと火花みたいに弾け出す。

「っ、ふ…むり、も、むりだから…っ」
「だいじょーぶ、だいじょうぶだよアル」

 息が触れる距離で何度も何度も大丈夫だと刷り込まれる。
 何も大丈夫なんかじゃない。こんなのは僕じゃないのに、シリウスが僕の上で酷く満たされているように笑うから、嫌なのに僕はやっぱりこいつを止められない。

 僕とシリウスの熱から滲む蜜が絡み合って淫靡な音がする。風船みたいに膨らんだ、今にも弾けそうな熱が急速に僕に限界を訴えてくる。息も声も上擦って、僕は思わずシリウスの体に縋り付いた。発火しそうなくらい熱い体に爪を立てると耳元で獣が唸るような音が聞こえた。

 肩に痛みが走る。それと同時に僕の目の前は弾けて、じゅわりと局部が生暖かく濡れた感覚がした。
 凄まじい脱力感に全身で息をする。僕の中心はたった一度精を放っただけでくたりと力を失うのに、シリウスは違うらしく未だに硬さを保ったままの熱を僕の足に擦り付ける。

「は、なんで…?」
「ごめん、まだ全然足りない」

 月のような金色の目が仄暗い熱を孕んで僕を見る。本能と危機感がこれ以上はダメだって何度も何度も警鐘を鳴らしているのが嫌でもわかる。
 外は相変わらずなんの音もしない。月明かりのない真っ暗な闇が、心許ないランプで照らされている空間。シリウスが縋るように、助けを求めるように僕を見る。迷子の子供みたいに、一切の迷いのない目が、僕を見る。

「…たすけて、アル」

 近づく唇を、僕は拒めなかった。
 深く口付けられ、一糸纏わぬ姿にされ、甘く、でもどこか狂気めいた光を孕んだシリウスの目に射抜かれながら間違いなく全身に触れられた。普段あれだけいい加減で大雑把なのに胸の尖りを弄ぶ指先は繊細で、それでももう嫌だって訴える僕を無視して行動する傲慢さはそのままだ。

「ぁあう…っ、ぁ、も、やだ、これやだ…!」

 目の前が明滅するような刺激に戦慄する。
 ぐちゅぐちゅと聞きたくない音が僕の後孔からする。苦しくて違和感しかない筈なのに浅い場所の腹側を押さえられた瞬間また体が跳ねる。

「んんうっ!」

 M字に開いた僕の足の間にシリウスは座っている。僕の腰を持ち上げて自分の太ももに乗せて、霰もない姿をした僕をただじっと見つめている。
 何も喋らないのが不安なのに、そんな僕のことなんてお構いなしに中に埋まった数本の指が中を拡げるように蠢きながら、たまに嫌な場所をぐりっと押し上げて来るから僕の体は勝手に魚みたいに跳ねて口からは甘ったるい声が漏れた。

 …こんなことをされて、もうどれくらいの時間が経っただろう。

 もう時間も感覚もわからない。シリウスの戦い慣れた指が僕の中を暴いて、知らなかったことをどんどん教え込んでいく。熱くて腰が溶けそうで、何度も極限に追いやられたせいか僕の中心からはもう何も出ない。

 これがシリウスの助けになっているなんて到底思えないのに、与えられる感覚があまりに凶悪でまともな言葉を発する余裕すら無くて、思考は水の中を揺蕩っているかのように不明瞭だ。

「…アル、まだちゃんと起きてて」

 ずる、と中から指が抜かれた。腹に指が置かれて魔力が流れ込む。

「ちゃんと俺を見て」
「…? っ、ぁ、~~っ!」

 声にならない程の衝撃が襲った。

「っ、ぁー…、きっつ」

 指なんて比べ物にならない圧迫感が脳を貫いた。ギチギチと音がしそうな程拡げられているのがわかって、僕は限界まで目を見開いてはくはくと口を開閉させた。

「本当はさ、後ろからがいいって、知ってたんだけど」

 シリウスの声がどこか遠くに聞こえる。すぐ近くに、それこそ触れられる距離にいるのに。

「はじめての顔見たかったから、しょうがねえよ、な…っ」
「ぁぐっ、っは、ぅ」

 ばつん、と電流が突き抜けた。
 もう、本当に何もわからない。視界が歪んで自分の声も遠くに聞こえる。
 シリウスが僕に何か言っている気がするけど、それももう聞こえない。自分が何を口走っているのかどんな状態なのかもわからない。

 ただ一つわかるのはシリウスが僕に助けを求めるように、僕もまたシリウスに助けを求めて腕を伸ばしたということだけだった。
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