14 / 41
第2章 球技大会で見せつけろ
04 いけ好かない同級生
しおりを挟む「凛。さっきさ、生徒指導の先生と何話してたの?」
「あーまあ、ちょっといろいろ?」
「分かった。凛は寝癖ばっかりつけてくるから、身だしなみで怒られてたんだ」
「んな酷いこと言わないでくれよ。違う」
「じゃあ、何?」
「んーお前には関係ないこと。てか、巻き込まれ事故だな」
俺は、階段をのぼりながら燈司から飛んできた質問に答えていた。
秀人のことを話してもよかったが、あとからあいつに何を言われるかわかったもんじゃないため濁すことにした。
燈司はふーん、と何とも言えない返答をしながら、踊り場で一度足を止める。
「どうした? 燈司」
「…………凛ってさ、この間告白されてたよね」
「ああ、まあ。てか、それ、お前が恋人出来たって言ってきた前の日? 告白されたっちゃ、されたけど……つか、見てたのか?」
まったく気付かなかった。
俺に告白してくれたのは、同じ部活の後輩だった。俺の好きな黒髪で艶々してて、目が大きくて。部活に一生懸命な子だった。
俺みたいな不真面目で、かっこよくもない先輩のどこに惚れたんだとその時聞きたかった。でも、勇気がなかった。告白してくれる後輩には勇気があって、俺にはない。
俺は、その告白を俺なりに一生懸命聞いていた。途中で言葉を詰まらせつつ、声を裏返しつつも後輩は俺に「好きです」と言い切った。
そんな後輩の健気さに、俺は一瞬ドキッとした。その表情が、頭も中で誰かと重なったからだ。
振る理由はなかった。むしろ、付き合ってみてから好きになるとかあるんじゃないかとも思った。けど、これも結局行動に移せなかった。俺は、その後輩をフッてしまったのだ。
秀人にその話をしたら「俺だったら悲しませないのに……凛、EDになれ」と暴言を吐かれてしまった。
俺は、そんなことを思い返し、場が白けないようにと「言ってくれよー」といつもの調子で燈司に言う。しかし、燈司からの反応がなかった。
「と、燈司? 俺、なんかヤバいこと言った?」
「………………ううん。かわいい子だったから、オッケーすると思ってた。凛ってさ、身長高いから目立つけど、それだけじゃなくて、そこそこかっこいいからモテると思うんだよね。気遣いもできるし、ちょっとアホっぽいところも、そう、うん!」
「そ、そうか? アホっぽいは誉め言葉じゃないけどな。でも、モテても嬉しくないかもなー」
「何でさ。こう……男子高校生の夢じゃない?」
「恋人持ちがいうことは違うな。いや、お前それだと、浮気にならねえ?」
俺の言葉に対し、燈司は「一途なんで」と胸を張る。
まあ、モテモテの人生っておんは想像したことがないわけじゃない。でもそれは中学生までだ。
今は、一途に思ってくれる人と巡り合えればそれでいいなって俺は思ってる。モテモテって疲れそうだし。
「なんか、意外だな。凛って、お人好しなところもあるから、かわいい後輩が必死に告白してきたら、お試しでもいいから付き合っちゃうかと思ってた」
「そんな薄情なこと……いや、ちょっとは思った。けど、なんか違うなーって思ったんだよな。あっ、てか、その後輩、お前に似てた」
俺に? と燈司は瞬きする。ネクタイを弄っていた手を止めて、まっすぐと俺のほうを見る。
「そっ。艶々な黒髪で、目がおっきくてさ。何事にも一生懸命なところとか。あーそっか。俺があんとき頭の中に誰かと似てるなって思ったのは燈司だったんだな」
「それ、その時まで俺忘れられてたってこと?」
「違う違う。逆を言えば、ずっと俺の頭の中に燈司がいるってこと。しっくりこなかったから付き合わなかったけど、まー何回か告白はされてきたし、また告白ぐらいされるっしょ」
別にその次、俺が告白にこたえるかどうかは分からないけど。
燈司は、また黙り込んでしまった。だが、どことなく頬を緩めて顔を上げるころには、その顔に笑顔が戻っていた。
「そっか。ごめん、気になってさ」
「気になるっつー言ったら、お前の恋人だけどな? もう一か月経ったのに、いまだにわからないって。てか、俺と登下校一緒にして、恋人のこと疎かにしてねえ?」
「してないよ。毎日メッセージやり取りしてる」
「証拠は?」
「見せないよ。てか、メッセージアプリを見るのは犯罪!」
めっ! と燈司は俺に怒ると、階段をタタタッと軽やかに登って行ってしまった。そして、上から「早く―」と手を振って俺を呼ぶ。
ちょうど、窓から差し込んできた日差しに俺は目を細める。まるで、燈司を照らすようなスポットライトのようだ。
「はいはい、今行く。ホットドック冷めたら美味しくないからな」
「そんなに食べ物が大事!? 俺より!?」
「何だそりゃ。メンヘラ彼女みたいだぞ」
軽口をたたいて、俺は階段を上る。一段一段が軽く感じたのはきっと気のせいじゃないだろう。
41
あなたにおすすめの小説
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
【完結】君の手を取り、紡ぐ言葉は
綾瀬
BL
図書委員の佐倉遥希は、クラスの人気者である葉山綾に密かに想いを寄せていた。しかし、イケメンでスポーツ万能な彼と、地味で取り柄のない自分は住む世界が違うと感じ、遠くから眺める日々を過ごしていた。
ある放課後、遥希は葉山が数学の課題に苦戦しているのを見かける。戸惑いながらも思い切って声をかけると、葉山は「気になる人にバカだと思われるのが恥ずかしい」と打ち明ける。「気になる人」その一言に胸を高鳴らせながら、二人の勉強会が始まることになった。
成績優秀な遥希と、勉強が苦手な葉山。正反対の二人だが、共に過ごす時間の中で少しずつ距離を縮めていく。
不器用な二人の淡くも甘酸っぱい恋の行方を描く、学園青春ラブストーリー。
【爽やか人気者溺愛攻め×勉強だけが取り柄の天然鈍感平凡受け】
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
胎児の頃から執着されていたらしい
夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。
◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。
◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
初恋ミントラヴァーズ
卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。
飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。
ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。
眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。
知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。
藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。
でも想いは勝手に加速して……。
彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。
果たしてふたりは、恋人になれるのか――?
/金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/
じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。
集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。
◆毎日2回更新。11時と20時◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる