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§ それは、ホントに不可抗力で。
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四角いテーブルを挟み、四つの瞳が睨み合っている。両者ともに眼光鋭く相手を威圧し、けっして先に視線を逸らすまいと、意地を張り合っていた。
「どうしてひとの言うことが聞けない」
「嫌だって言ったら、嫌なんです!」
声を荒げた私に、尊は声を出さず口だけを動かし『聞こえるぞ』と言った。
外では絶対に皆が聞き耳を立てている。ドアのほうを窺う私に「俺はかまわんが」と、いやらしい笑いを浮かべた尊が、静かに追い打ちをかける。
「俺のアシスタントに就けば、待遇はいまより格段に上がる。給与もいまの五割増しだ」
「それでも嫌です」
声を落とし、拒絶の意を示すと、『重役出勤だぞ』と、目で語る尊の黒い視線を、『ふざけないで!』と、睨み返しねじ伏せた。
「おまえ、前職はプログラマーだろう? 学生時代からアプリ開発の実績もあるじゃないか。なのにどうして総務に居る必要がある?」
「……なんで? なんでそんなこと知ってるの?」
さらに小声で問うと、やはり小声で当然の答えが返ってきた。
「おまえから聞いたに決まってる」
三年前か。三年前この口がしゃべったのだ。まったく、よけいなことを。
「私はいまの総務の仕事が好きで、誇りを持って取り組んでいるんです」
九時五時ほぼ残業無しの好待遇を手放して、あんたのアシスタントに、いや、開発なんか、やる気はさらさら無いんだってば。
「それがどうした?」
「……だから、お気持ちは大変ありがたいのですが、いまの仕事を続けさせていただけませんでしょうか。お願いします! 小林統括!」
外へまで聞こえるように、いかにも熱意と誠意溢れる声音を演じつつ、眉間に皺を寄せ睨みつけたが、おまえの魂胆なんてお見通しだ、と、目の前の口が『ばーか』と動いた。
「ちょっ! バカってなによ? バカって!」
「バカはバカだろうが?」
「と、に、か、く! お断りです! 絶対にイヤ!」
興奮して勢いよく立ち上がり、バンッと机を叩いた私に一瞬目を細めると、尊は椅子の背もたれに上体を預け、ゆっくりと腕組みをし、ニヤリと笑う。
その顔には、はっきりと『イイコト思いついた』と、書いてある。
「おまえの気持ちはわかった。だが、上司の正式な打診を断るからには、それ相応の覚悟があるんだろうな?」
「な、なによそれ? クビにでもする気? わかった。いいわよ。怖くなんてないもん。こっちこそ、清々するわ」
腕組みをしてフンと鼻で笑ってやった。できるものならやってみろ。
「いや、さすがにそこまでは考えていない。考えていない……が、そうだな、書類倉庫も確か総務課の管轄だったか。そんなに総務の仕事が好きなら、おまえをその倉庫番に任命してやろう。篠塚総務課課長には俺から話しておくから、おまえはいますぐ倉庫へ行け」
この私に、そんな脅しが通用するとでも思っているのか。
こっちこそ、あんたの魂胆は、お見通しだ。
「……わかった。倉庫へ行けばいいんでしょう? 関口歩夢は、小林統括部長さんのご命令に従い、いまからすぐ! 倉庫管理の業務に従事させていただきます! これで満足?」
「……おい……ま、」
これでもかと深く一礼し背を向けると、私はニヤリと笑った。
「どうしてひとの言うことが聞けない」
「嫌だって言ったら、嫌なんです!」
声を荒げた私に、尊は声を出さず口だけを動かし『聞こえるぞ』と言った。
外では絶対に皆が聞き耳を立てている。ドアのほうを窺う私に「俺はかまわんが」と、いやらしい笑いを浮かべた尊が、静かに追い打ちをかける。
「俺のアシスタントに就けば、待遇はいまより格段に上がる。給与もいまの五割増しだ」
「それでも嫌です」
声を落とし、拒絶の意を示すと、『重役出勤だぞ』と、目で語る尊の黒い視線を、『ふざけないで!』と、睨み返しねじ伏せた。
「おまえ、前職はプログラマーだろう? 学生時代からアプリ開発の実績もあるじゃないか。なのにどうして総務に居る必要がある?」
「……なんで? なんでそんなこと知ってるの?」
さらに小声で問うと、やはり小声で当然の答えが返ってきた。
「おまえから聞いたに決まってる」
三年前か。三年前この口がしゃべったのだ。まったく、よけいなことを。
「私はいまの総務の仕事が好きで、誇りを持って取り組んでいるんです」
九時五時ほぼ残業無しの好待遇を手放して、あんたのアシスタントに、いや、開発なんか、やる気はさらさら無いんだってば。
「それがどうした?」
「……だから、お気持ちは大変ありがたいのですが、いまの仕事を続けさせていただけませんでしょうか。お願いします! 小林統括!」
外へまで聞こえるように、いかにも熱意と誠意溢れる声音を演じつつ、眉間に皺を寄せ睨みつけたが、おまえの魂胆なんてお見通しだ、と、目の前の口が『ばーか』と動いた。
「ちょっ! バカってなによ? バカって!」
「バカはバカだろうが?」
「と、に、か、く! お断りです! 絶対にイヤ!」
興奮して勢いよく立ち上がり、バンッと机を叩いた私に一瞬目を細めると、尊は椅子の背もたれに上体を預け、ゆっくりと腕組みをし、ニヤリと笑う。
その顔には、はっきりと『イイコト思いついた』と、書いてある。
「おまえの気持ちはわかった。だが、上司の正式な打診を断るからには、それ相応の覚悟があるんだろうな?」
「な、なによそれ? クビにでもする気? わかった。いいわよ。怖くなんてないもん。こっちこそ、清々するわ」
腕組みをしてフンと鼻で笑ってやった。できるものならやってみろ。
「いや、さすがにそこまでは考えていない。考えていない……が、そうだな、書類倉庫も確か総務課の管轄だったか。そんなに総務の仕事が好きなら、おまえをその倉庫番に任命してやろう。篠塚総務課課長には俺から話しておくから、おまえはいますぐ倉庫へ行け」
この私に、そんな脅しが通用するとでも思っているのか。
こっちこそ、あんたの魂胆は、お見通しだ。
「……わかった。倉庫へ行けばいいんでしょう? 関口歩夢は、小林統括部長さんのご命令に従い、いまからすぐ! 倉庫管理の業務に従事させていただきます! これで満足?」
「……おい……ま、」
これでもかと深く一礼し背を向けると、私はニヤリと笑った。
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