47 / 83
§ 女房とタタミは『古い方』が良い。
05
しおりを挟む
「ねえ波瑠、どうしたの? なにかいいことでもあった?」
モニタを見つめる顔がニヤついていたらしく、早速弥生さんに嗅ぎつけられた。自分としてはポーカーフェイス、至って真面目に仕事をしているつもりだったのに。
「別に? 何も無いけど?」
「なんにも無いようには見えないけどなぁ? 金曜日はすごく調子悪そうだったのに、今日は別人みたいよ? ねえ、晶ちゃん」
「そうですよー。今日の波瑠さん、なんだかキレイです」
すっぴん前髪ちょんまげ穴あきジャージのどこがキレイなのか教えて欲しい。
「晶ちゃん、大丈夫? 眼科行った方がいいんじゃない?」
「ほら、今日の波瑠さん、やっぱり何か違う」
モニタの前から強制的に引き剥がされ両側から挟まれ腕を取られ、ソファに押さえ込まれた。
「さあ、白状しなさい。休みの間に何があったの?」
「ねえ、ふたりとも。そういうのどうでもいいから仕事しようよ」
「どうでもよくないですよ。気になって仕事できません」
晶ちゃんの真剣な眼差しから逃れたくて弥生さんを見ると、意地悪な目をして面白そうにニヤッと笑った。駄目だ。観念して正直にすべて話すまで、解放してはくれないらしい。
「もしかして、山内さん? この間、食事に行ってたよね? 何か進展あったんだ?」
「えっ? 山内さんなんですか?」
晶ちゃんの表情がみるみる青くなっていく。私は大慌てで弥生さんの言葉を否定した。
「晶ちゃん違う! 山内さんじゃないから!」
「じゃあ、やっぱり浅野さんですか?」
「決まってるでしょう? 俊輔君の他に誰がいるのよ? さあ、何があったのかちゃんと私たちに話しなさい」
ふたりの誘導尋問に引っかかってしまったようだ。
「そうですよ。話せば楽になりますよ?」
「いや、別に楽にはならないと思うけど?」
「そういうのもういいから、早く吐いちゃいなさいって」
「そうです、無駄な抵抗はやめましょう」
「それとも……私たちに言えないようなことしちゃったとか?」
「えー?」
何を想像しているのか晶ちゃんの顔がみるみる赤く染まる。青くなったり赤くなったり、まったく忙しい子だ。
「言えないようなことなんてなんにもしてないから!」
「だったら、早く吐いちゃえ」
「あ、ちょっと待って! 携帯鳴ってる」
良いタイミングだ。きっと浅野さんですよ、ラブラブだねと嬉しそうなふたりの声を背に受けながら、バッグから携帯を取り出し画面を見ると、メール着信のお知らせが。
「…………ナニコレ?」
「波瑠?」
「どうかしたんですか?」
両側からふたりが、私の手に握られている携帯を覗き込んだ。
「……どちら様?」
「……さあ?」
「でもこれ、波瑠さん宛てで間違いないですよね?」
——波瑠さん、如何お過ごしですか。女性とのお付き合いにおいては頻繁に連絡を取り合い相互理解を深めるべきであると、母より進言を受けました。しかし電話でお話しする時間がありませんので、今後はメールにて頻繁に連絡を取ることにします。僕は多忙で返事は遅くなりますが、波瑠さんも遠慮なくメールをしてください。
モニタを見つめる顔がニヤついていたらしく、早速弥生さんに嗅ぎつけられた。自分としてはポーカーフェイス、至って真面目に仕事をしているつもりだったのに。
「別に? 何も無いけど?」
「なんにも無いようには見えないけどなぁ? 金曜日はすごく調子悪そうだったのに、今日は別人みたいよ? ねえ、晶ちゃん」
「そうですよー。今日の波瑠さん、なんだかキレイです」
すっぴん前髪ちょんまげ穴あきジャージのどこがキレイなのか教えて欲しい。
「晶ちゃん、大丈夫? 眼科行った方がいいんじゃない?」
「ほら、今日の波瑠さん、やっぱり何か違う」
モニタの前から強制的に引き剥がされ両側から挟まれ腕を取られ、ソファに押さえ込まれた。
「さあ、白状しなさい。休みの間に何があったの?」
「ねえ、ふたりとも。そういうのどうでもいいから仕事しようよ」
「どうでもよくないですよ。気になって仕事できません」
晶ちゃんの真剣な眼差しから逃れたくて弥生さんを見ると、意地悪な目をして面白そうにニヤッと笑った。駄目だ。観念して正直にすべて話すまで、解放してはくれないらしい。
「もしかして、山内さん? この間、食事に行ってたよね? 何か進展あったんだ?」
「えっ? 山内さんなんですか?」
晶ちゃんの表情がみるみる青くなっていく。私は大慌てで弥生さんの言葉を否定した。
「晶ちゃん違う! 山内さんじゃないから!」
「じゃあ、やっぱり浅野さんですか?」
「決まってるでしょう? 俊輔君の他に誰がいるのよ? さあ、何があったのかちゃんと私たちに話しなさい」
ふたりの誘導尋問に引っかかってしまったようだ。
「そうですよ。話せば楽になりますよ?」
「いや、別に楽にはならないと思うけど?」
「そういうのもういいから、早く吐いちゃいなさいって」
「そうです、無駄な抵抗はやめましょう」
「それとも……私たちに言えないようなことしちゃったとか?」
「えー?」
何を想像しているのか晶ちゃんの顔がみるみる赤く染まる。青くなったり赤くなったり、まったく忙しい子だ。
「言えないようなことなんてなんにもしてないから!」
「だったら、早く吐いちゃえ」
「あ、ちょっと待って! 携帯鳴ってる」
良いタイミングだ。きっと浅野さんですよ、ラブラブだねと嬉しそうなふたりの声を背に受けながら、バッグから携帯を取り出し画面を見ると、メール着信のお知らせが。
「…………ナニコレ?」
「波瑠?」
「どうかしたんですか?」
両側からふたりが、私の手に握られている携帯を覗き込んだ。
「……どちら様?」
「……さあ?」
「でもこれ、波瑠さん宛てで間違いないですよね?」
——波瑠さん、如何お過ごしですか。女性とのお付き合いにおいては頻繁に連絡を取り合い相互理解を深めるべきであると、母より進言を受けました。しかし電話でお話しする時間がありませんので、今後はメールにて頻繁に連絡を取ることにします。僕は多忙で返事は遅くなりますが、波瑠さんも遠慮なくメールをしてください。
0
あなたにおすすめの小説
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
婚約破棄、ありがとうございます
奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる