外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

文字の大きさ
9 / 69
第一章 冒険者になろう!(初日)

第9話 魔の森からダンジョンへ

しおりを挟む
 魔の森――世界中に広がる森だ。
 魔物森の中には、人を襲う危険モンスター――魔物が生息している。

 魔物と戦えるのは、神から戦闘スキルを授かった冒険者だけ。

『魔の森に近づいてはいけないよ』

 とスラムの子供でも大人に習う。

 俺たちは、城塞都市トロザの西門を出て魔の森へ向かった。

 城塞都市トロザの周りは、農地になっている。
 小麦畑の間に狭い道が続いている。

「この道は農民が使う道だ。もし、農民が魔物に襲われていたら助けてやれ」

 タイソン教官が、歩きながら大声で注意をする。

「そこ! 無駄なおしゃべりをするな! 城壁の外へ出たら、いつ魔物に襲われるかわからんのだ! 小麦畑の中からゴブリンが現れるかもしれんぞ! 周囲を警戒しながら歩け!」

 俺たち新人冒険者はダラダラ歩いていたが、タイソン教官の指導で周囲を注意するようになった。

 三十分ほど歩くと農地エリアを抜けた。
 目の前に草原が広がり、草原の先に森が広がっている。

 誰からともなく、つぶやきが漏れた。

「あれが魔の森か……」

 ゴクリとつばを飲み込む音も聞こえた。

 魔の森は、鬱蒼としていて暗い。
 木々は背が高く、二十メートルはありそうだ。
 前世日本で見たビル街にあるビルとビルの間の細い路地のようで、危険な香りが立ちこめている。
 木の幹は太く人が隠れることも出来そうだ。

 俺は腕を組みジッと魔の森を見ながら、どういうことが起こりうるか脳内でシミュレーションをしてみた。

 下手に剣を振れば、剣が木にひっかかるかもしれない。
 魔物が木の幹に隠れているかもしれない。
 暗いから視界が悪く、魔物の発見が遅れるかもしれない。

(ああ、やらかし猫の危険予知だな……)

 俺は前世日本で見た工事現場に登場する指さし確認をするおっちょこちょいな猫を思い出していた。

「では、オマエたちに問う! これからあの魔の森に入るが、気をつけなくてはならないことは何だ? ジャイル! 言ってみろ?」

「えっ!? ええと……魔物をやっつける?」

「魔物を倒すのは当たり前だ! 魔の森で気をつけることを考えろと言ってるのだ? オマエは?」

 タイソン教官がジャイルを指名したが、ジャイルは上手く答えられなかった。
 次に指名された女の子もダメ。その次の男の子もダメ。

 すると俺の隣に立つミレットがスッと手を上げた。
 タイソン教官がミレットを指さした。

「タイソン様。ここから見る限り魔の森はとても暗いです。魔物が見つけづらいのではありませんか? 木の陰に魔物が隠れていないか気をつけることが肝要かと思います」

「お見事です!」

 ミレットの答えにタイソン教官が軽く頭を下げる。
 ミレットの的確な答えに、俺はウンウンとうなずく。
 ミレットは、ただのお嬢様じゃないな。
 なかなか出来る!

「今の答えの通りだ。魔の森の中は暗く、木々が視界を遮る。狡猾な魔物になると、木の幹に隠れたり、高い木の枝に潜んだりする。不意打ちをくらわないように気をつけるのだ! この中で探知スキルを持つ者はいるか?」

 タイソン教官の問いに三人が手を上げた。

「よし! 探知スキルを持つメンバーがいるパーティーは先頭に立て! 魔物の気配を探知したら周囲に知らせるのだ!」

 探知スキルを持つパーティーを先頭に立てて、俺たちは魔の森に足を踏み入れた。

 魔の森の中は暗い。
 歩いていると目が慣れてきたが、それでも木の幹や下草の影になっている場所は見えづらい。

(おや?)

 しばらく歩いて気が付いたが、魔の森の中に道がある。
 人が一人歩けるほどの細い道だが、下草が踏み固められ所々地面が露出している。
 タイソン教官はむやみやたらに魔の森を歩かせているわけではないようだ。

 俺は振り向きパーティーメンバーで魔法使いのミレットに声を掛けた。

「ミレット。道があるのはわかる?」

「ええ。見えています。多分、ダンジョンへ向かっているのだと思います」

「ダンジョンへ?」

「魔の森の中には無数のダンジョンがあるそうです。冒険者がよく利用するダンジョンがいくつかあると聞いたことがあります」

「ほうほう。そうなんだ」

「ふふふ! ほうほうなんて、おじさんみたい! ふふ!」

 グサッときた!
 転生したから中身はおじさんなんだよ!

 それから三十分、俺たちは森の中を歩いた。
 大人数で行動しているせいか、魔物に襲われることはなかった。

 途中で分かれ道を一番右へ進み、ダンジョンへ到着した。

「ここがダンジョンか……」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

処理中です...