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第二章 冒険の始まり(二日目)
第26話 自己中プレイのオナニー野郎
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俺は何者かにつけられていた。
初心者ダンジョンの入り口で追いつかれ、何者かに声を掛けられる。
「オイ!」
聞き覚えのある声だ。
警戒しながらゆっくり振り向くと知った顔だった。
ジャイルだ。
神殿で成人の儀式を受けた時から、ちょこちょこ俺にウザがらみしてくる。
ジャイルは眉間にシワを寄せて、見るからに不機嫌そうだ。
ジャイルは、いきなり怒鳴りだした。
「外れ野郎! オマエのせいで、俺は迷惑をしてるんだ!」
俺は左手に持った盾を、さり気ない動きで体の前に持ってくる。
右手で自分のアゴをさする動作をし、均等に両足に体重をかけ、すぐ動けるように意識する。
ジャイルの雰囲気からすると、ケンカになるかもしれない。
両手を下ろした無防備な状態で攻撃されると、防御や回避がワンテンポ遅れてしまう。
だが、手を上に上げておくと、手を動かしやすくなるのだ。
例えば、顔を触る。 待て! 待て! とジェスチャーをする。
不自然でない形で、手を前面に持ってくると不意打ちを防げる。
これはスラムで生活していて得た経験だ。
俺はケンカになることに備え、さり気なく身構える。
ジャイルは、大声で俺を一方的に責める。
「オマエが何でミレット様とパーティーを組むんだ! 今すぐ取り消せよ!」
「ジャイルには関係ないだろう?」
「俺がミレット様とパーティーを組む予定だったんだ!」
それは俺に言われても困るな。
いわゆるご学友的なメンバーにジャイルが選ばれていたとしても、俺とパーティーを組むと選択したのはミレット本人だ。
「ジャイル。俺とパーティーを組むと決めたのはミレット本人だ」
「俺の方がミレット様のパーティーメンバーに相応しい!」
「ミレットがジャイルと組みたいというなら反対しない。決めるのはミレットだ」
俺は冷静にジャイルに反論した。
別に論破や説得をしたいわけではない。
この場を穏便に済ませたいとは思う。
だが、一方的にジャイルの非難を受け入れるつもりはない。
自分の正しさを、きちんと主張しておかねば……と思うのだ。
「俺はミレットの意思を尊重する。ジャイルもミレットを良く思っているなら、ミレットの意思を尊重しろよ」
「だから! オマエがいなくなれば、ミレット様は俺と一緒に!」
ジャイルが聞き分けのない子供ようにカッカしだした。
いや……、俺たちはまだ十三歳なのだ。
成人の儀式を済ませたとはいえ、まだまだガキか……。
「ジャイル。何度も言うが、ミレットの意思を尊重しろ。仮に俺がいなくなったとしても、ミレットがジャイルと組むとは限らない」
「なんだとゥ!」
「オマエ評判が悪いぞ。昨日の時点で、悪い噂を聞いた。俺も、ミレットもだ。他のパーティーの獲物を横取りしたらしいな?」
「横取りじゃない! ターゲットがかぶったから、譲れと命令したんだ!」
俺は眉をひそめる。
命令って……。
俺たち新人冒険者は、少なくとも冒険者としては対等のハズだ。
ジャイルの実家が金持ちなのか、権力者なのか知らないが、命令というのは上から目線が過ぎるだろう。
「ジャイル。パーティー内でも、自分中心に戦い過ぎると聞いているぞ」
「俺がパーティーの中心になって何が悪い! 余計なお世話だ!」
「ミレットは、そういう自己中は嫌がると思うが?」
まだ、二日しか一緒に活動していないが、ミレットが良い子だと感じている。
ミレットは、あきらかに上流階級の人間だが、スラム出身の俺や他の新人とも親しく話す。
ジャイルのように威張り散らす子供は、ミレットの嫌いなタイプだろう。
ジャイルは俺の言葉を聞いて、髪の毛を逆立てるほど怒った。
「オマエに何がわかる!」
「今日はパーティーメンバーはどうした? 昨日は一緒に活動していただろう?」
俺が指摘をすると、ジャイルはウッと言葉に詰まった。
どうやら触れられたくない部分だったらしい。
「あいつらは辞めた……」
「辞めたって……」
愛想を尽かされたのか……。
まあ、当然だな。
ジャイルの自己中プレイに付き合わされるパーティーメンバーはたまったものではない。
ちょっとは反省しろ!
「オマエが悪いんだ! 外れ野郎!」
「え?」
ジャイルが憎悪のこもった目で俺をにらみ、拳を握って一歩前へ踏み出した。
――来る!
俺はジャイルと一戦交えることになると確信する。
俺は右手を前に出し、『やめろ』とジェスチャーをする。
同時に攻撃に備える。
「八つ当たりはやめろ。俺は何も悪いことはしていない」
「オマエの存在自体が邪魔なんだ! このスラムのクソ外れ野郎! どうせ淫売の母親から産まれたんだろう!」
さすがの俺もサオリママを侮辱されては冷静ではいられない。
瞬間的にかっとなり、汚い言葉で言い返す。
「うるさい! 自己中プレイのオナニー野郎! オマエのかーちゃん! でーべーそ!」
「黙れぇ!」
ジャイルが殴りかかってきた。
初心者ダンジョンの入り口で追いつかれ、何者かに声を掛けられる。
「オイ!」
聞き覚えのある声だ。
警戒しながらゆっくり振り向くと知った顔だった。
ジャイルだ。
神殿で成人の儀式を受けた時から、ちょこちょこ俺にウザがらみしてくる。
ジャイルは眉間にシワを寄せて、見るからに不機嫌そうだ。
ジャイルは、いきなり怒鳴りだした。
「外れ野郎! オマエのせいで、俺は迷惑をしてるんだ!」
俺は左手に持った盾を、さり気ない動きで体の前に持ってくる。
右手で自分のアゴをさする動作をし、均等に両足に体重をかけ、すぐ動けるように意識する。
ジャイルの雰囲気からすると、ケンカになるかもしれない。
両手を下ろした無防備な状態で攻撃されると、防御や回避がワンテンポ遅れてしまう。
だが、手を上に上げておくと、手を動かしやすくなるのだ。
例えば、顔を触る。 待て! 待て! とジェスチャーをする。
不自然でない形で、手を前面に持ってくると不意打ちを防げる。
これはスラムで生活していて得た経験だ。
俺はケンカになることに備え、さり気なく身構える。
ジャイルは、大声で俺を一方的に責める。
「オマエが何でミレット様とパーティーを組むんだ! 今すぐ取り消せよ!」
「ジャイルには関係ないだろう?」
「俺がミレット様とパーティーを組む予定だったんだ!」
それは俺に言われても困るな。
いわゆるご学友的なメンバーにジャイルが選ばれていたとしても、俺とパーティーを組むと選択したのはミレット本人だ。
「ジャイル。俺とパーティーを組むと決めたのはミレット本人だ」
「俺の方がミレット様のパーティーメンバーに相応しい!」
「ミレットがジャイルと組みたいというなら反対しない。決めるのはミレットだ」
俺は冷静にジャイルに反論した。
別に論破や説得をしたいわけではない。
この場を穏便に済ませたいとは思う。
だが、一方的にジャイルの非難を受け入れるつもりはない。
自分の正しさを、きちんと主張しておかねば……と思うのだ。
「俺はミレットの意思を尊重する。ジャイルもミレットを良く思っているなら、ミレットの意思を尊重しろよ」
「だから! オマエがいなくなれば、ミレット様は俺と一緒に!」
ジャイルが聞き分けのない子供ようにカッカしだした。
いや……、俺たちはまだ十三歳なのだ。
成人の儀式を済ませたとはいえ、まだまだガキか……。
「ジャイル。何度も言うが、ミレットの意思を尊重しろ。仮に俺がいなくなったとしても、ミレットがジャイルと組むとは限らない」
「なんだとゥ!」
「オマエ評判が悪いぞ。昨日の時点で、悪い噂を聞いた。俺も、ミレットもだ。他のパーティーの獲物を横取りしたらしいな?」
「横取りじゃない! ターゲットがかぶったから、譲れと命令したんだ!」
俺は眉をひそめる。
命令って……。
俺たち新人冒険者は、少なくとも冒険者としては対等のハズだ。
ジャイルの実家が金持ちなのか、権力者なのか知らないが、命令というのは上から目線が過ぎるだろう。
「ジャイル。パーティー内でも、自分中心に戦い過ぎると聞いているぞ」
「俺がパーティーの中心になって何が悪い! 余計なお世話だ!」
「ミレットは、そういう自己中は嫌がると思うが?」
まだ、二日しか一緒に活動していないが、ミレットが良い子だと感じている。
ミレットは、あきらかに上流階級の人間だが、スラム出身の俺や他の新人とも親しく話す。
ジャイルのように威張り散らす子供は、ミレットの嫌いなタイプだろう。
ジャイルは俺の言葉を聞いて、髪の毛を逆立てるほど怒った。
「オマエに何がわかる!」
「今日はパーティーメンバーはどうした? 昨日は一緒に活動していただろう?」
俺が指摘をすると、ジャイルはウッと言葉に詰まった。
どうやら触れられたくない部分だったらしい。
「あいつらは辞めた……」
「辞めたって……」
愛想を尽かされたのか……。
まあ、当然だな。
ジャイルの自己中プレイに付き合わされるパーティーメンバーはたまったものではない。
ちょっとは反省しろ!
「オマエが悪いんだ! 外れ野郎!」
「え?」
ジャイルが憎悪のこもった目で俺をにらみ、拳を握って一歩前へ踏み出した。
――来る!
俺はジャイルと一戦交えることになると確信する。
俺は右手を前に出し、『やめろ』とジェスチャーをする。
同時に攻撃に備える。
「八つ当たりはやめろ。俺は何も悪いことはしていない」
「オマエの存在自体が邪魔なんだ! このスラムのクソ外れ野郎! どうせ淫売の母親から産まれたんだろう!」
さすがの俺もサオリママを侮辱されては冷静ではいられない。
瞬間的にかっとなり、汚い言葉で言い返す。
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「黙れぇ!」
ジャイルが殴りかかってきた。
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