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第19章 プリンス・シュン
しおりを挟む土曜日の朝六時二十分に春花は俊の家まで行った。約束は二十五分だったけれど、俊はもう門のところで待っていた。
満開の、まさに躑躅色のツツジたちの前にすらりと立つジーンズとオフホワイトのパーカー姿の俊にちょっと見惚れる。チアガール達を従えた王子様みたい、と思ってから、心の中で苦笑する。その取り合わせは変だ。チアガールなら前に立つのはアメフトのスター選手とかだろうし、王子様なら後ろに従えるのは…なんだろう。侍女?身分の高いお嬢さん達?でもなぜか濃いピンク色のツツジたちはチアガールに見えて、俊は王子様に見えたのだ。
「おはよう」
「おはよ。入って」
春花を先に通して門を閉める。
「おばちゃんたちは?」
「大丈夫。出かけた」
俊と練った計画通り、昨夜の夕飯の席で、春花はお父さんとお母さんに
「明日ね、俊ちゃんと○○山に行ってくる」
と、電車一本で行かれる郊外のハイキングコースの名前を告げた。
土曜日の朝から一日中出かけるとなると、まずその辺が適当だろうということになったのだ。六時半ならかなり高い確率で俊の両親はウォーキングに出掛けていて留守だし、俊の部屋は一階で庭から出入りができるので、帰ってくる時にも何かと——必要ならば俊の両親に言いわけするのに——便利だ、というわけで、今回は俊の部屋から一緒に行くことになった。
庭の方へまわり、掃き出し窓から俊の部屋に入る。靴をビニール袋に入れてクローゼットに隠す。
「俊ちゃんの部屋に来るの、久しぶり」
そう呟いて春花は俊の部屋を見回した。三人で集まる時は大抵入江家だったけれど、たまに訪れる俊の部屋が春花は好きだった。落ち着いたブルーとベージュの部屋。大きな本棚にぎっしりの本。額に入ったマグリットとゾーヴァの絵。
「そうだな。秋の梨狩りの時以来かな」
入江家と沢崎家の秋の恒例行事だ。クリスマスパーティもするけれど、昨年は入江家が会場だった。
俊の部屋に一人で来たのは初めてだった。
考えないようにしていたけれど、でもさっきから何だか変にすうすうした、バランスがうまく取れないような、前と同じ部屋なのに違うところに来たような感じがしていた。
俊ちゃんも同じことを考えてるだろうな。
そう思ったら急に、さっき門のところで俊の目に映ったものが見えた気がした。
新緑に彩られた静かな住宅街。見慣れた風景。朝の光の中、道の向こうから歩いてくるのは春花だけ。春樹はいない。
春樹はいない。
ハル。
ツツジたちは、俊の胸の痛みを感じて、全力で俊を支えようとしていたのかもしれない。だからチアガールに見えたのかもしれない。
喉につかえそうになった塊をぐっと飲み込み、声が震えないように明るく言った。
「おじちゃんとおばちゃん、ウォーキング続けてるんだ。すごいね」
俊の声も明るくなった。
「うん、結構意外。まあ土日だけだけどな。あ、そうだ、これこれ」
弾みをつけた声音で言って、俊がクローゼットの中から大きな紙箱を出してきて机の上に置いた。まるでコーデュロイのように見えるグレイの蓋を取ると、中は紙類だ。画用紙に描かれた絵などの下をごそごそやって俊が取り出したのは、淡いピンクの封筒。濃いピンクで書かれたお世辞にもきれいとは絶対に言えない字が踊っている。
「プリンス シュン さま」
「ひゃー」
裏には金色の封蝋と、
「プリンセス ロザモンド より」
「恥ずかしいー。…開けてもいい?」
怖いもの見たさの気分だ。
「どうぞ」
くすくす笑う俊の前で、ドキドキしながら懐かしいバラ模様のカードを取り出す。一体どんな恥ずかしいものを目にするのだろう…。
「プリンス シュン さま
ごきげんうるわしゅうござりまする。
どようびの12じに、
おしろでぶとうかいをひらきまするので、
ごしょうたいいたしまする。
どうぞ、いらっしゃってくださりませ。
プリンセス ロザモンド より」
「やだもうー」
恥ずかしくて顔が熱い。字も言葉遣いも凄まじい。それにしてもいくら小さかったからって、せめてもうちょっと真っ直ぐに書けないものかね…と踊り狂っている字を信じられない思いで眺めながら、さっき門のところで俊が王子様に見えたことを思い出す。
王子様、か…。プリンス・シュン様。
私にとっては小さい時から王子様だったんだよね。俊ちゃんも、ハルも。
うふふと笑って見上げたら、応えるように俊がニヤリとした。
「ラブレターもどきもあるんだな、これが」
「ええっ」
「ほい」
渡されたのは同じピンクの封筒とバラ模様のカード。字の様子はさっきのカードよりも少しマシでほっとするも、書き出しにぎょっとなる。
「いとしい プリンス シュン さま
シュンさま、ごきげんよう。
おびょうきはなおりましたか?
シュンさまにあえないと、とてもさびしいです。
シュンさまのおびょうきが、なおるように、
いっしょうけんめい、おいのりしています。
はやくなおって、おしろに、あそびにきてくださいませ。
あなたをおしたいする
うるわしの プリンセス ロザモンド より」
「……」
顔から火が出るとはこのことだ。
「俺が風邪ひいた時だよ。小二の時かな」
ぼんやりと覚えている。まだ俊が隣に住んでいた頃だった。俊の母に学校の連絡帳を届けにいく春樹にくっついていって、カードを言付けた。
「どこでこんな言葉覚えたんだろう…」
春花は赤面しながら呟いた。愛しいとかお慕いするとか…。
「自分のこと『麗しの』なんて言ってるしな。自惚れ」
からかうように言ってから、俊が柔らかく目を細めてカードの上の躍る字を見下ろす。
「すげえ嬉しかったよ」
どっきりして、顔だけじゃなく目の中まで赤くなったような気がした。と同時に、すぐ目の前にある俊の胸に顔を埋めたいような衝動を感じて二度どっきりする。身体が勝手にふうっと俊に向かって傾いだような気がして、慌てて真っ直ぐに立とうとしたら後ろにちょっとよろめいてしまった。
「わ」
「っと。大丈夫か?」
俊の手が腕に触れる。急いで照れ笑いをしてみせる。
「ちょっとくらっとしちゃった。お腹空いてるのかも」
「天高くルカ肥える春」
「失礼しちゃう」
「座って」
俊が机の前のデスクチェアを春花の方にくるりと回し、自分は紙箱をちょっとずらして机の上に腰掛けた。
「ありがとう」
背もたれの高い肘掛け付きのデスクチェア。
「すごーい、これ座り心地いい」
「だろ。父さんのもらったんだ」
「重役の椅子みたい。なんだか偉そう」
「リクライニングもできる。そこの下にレバーがあるだろ。それを前に引っ張って…そう、で、ぐっと寄りかかってみて」
「わーほんとだ」
「結構気持ちよくてさ、こないだそのまま寝ちゃって…」
笑って会話を続けながら、本当はこんなことが話したいんじゃないのにな、と思った。
訊きたいことがあるのに…。
メラニーのことが好きなんでしょ?
ハルの好みとか言ってたけど、メラニーのこと好きなのは本当は俊ちゃんなんでしょ?
どうしてメラニーが好きなの?
…そんなこと訊けないような気がするなあ、やっぱり。
そこでふと思った。ユマならどうするかな。
ユマの笑顔が浮かんで、頭の後ろの方でカチッとスイッチが入った。よし。
「あのね、俊ちゃん」
勢い込んで言いかけたところへ、
「おはよう」
低い囁き声と共に、いかにも抜き足差し足忍足といった感じでリオが現れた。俊が片目をつぶってみせる。
「大丈夫。両親とも出かけてる」
「土曜なのに仕事?」
「いや、エクササイズ」
「いいね」
リオがにこりとする。
「大使も今夜は一緒にバーベキューできるって。久しぶりだって張り切ってたよ」
「あーなんだかルカじゃないけど腹減ってきた。楽しみ!」
楽しそうに言って机から下りた俊が春花を振り返った。
「で、何?ルカ」
「え?」
「なんか言おうとしてただろ」
「えっ、ああ、うん、いいの。後で後で。早く行こ」
リオが来てくれてよかった、と心からほっとした。やっぱりそんなこと訊かない方がいい。だって…。
だって…。
どうして訊かない方がいいと思うのかは、実ははっきりとはわからなかった。
バーベキューは最高に楽しくてとびきりおいしかった。
キャラメライズされたオニオンとりんごを挟んだハンバーガーも、ぷりぷりの自家製ソーセージとザワークラウトたっぷりのホットドッグも、おばあさま直伝だというタレに漬け込んで焼いた野菜たちも、本当にほっぺたが落ちやしないかと思うくらいおいしかったけれど、なぜか春花が一番気に入ったのは、フランツが作ってくれたごくシンプルな小さいバゲットのようなパンをスライスしてチーズをのせて焼いたもので、次々とお皿にのせてくれるそばからおいしいおいしいとパクパク食べてフランツを喜ばせた。
「僕もこれが大好きなんですよ。なんだか同志を発見したようで嬉しいな。これはね、絶対にこのパンとこのチーズじゃなきゃだめなんです。最高のコンビネーションなんですよ」
初めは陽が沈んだばかりの華やかなすみれ色の黄昏だったのが、みんなが満腹になった頃には穏やかな藍色の夜になっていた。満月に一日二日足りないくらいの大きな月が辺りを照らし、対岸の家々の明かりがちらちらと瞬いているのが木々の間から見え隠れしている。テーブルの上にいくつか置かれた丸いボールのような灯りの温かい光が、満ち足りたみんなの顔やグラスやお皿を柔らかく照らし、まだ仄かに漂っている煙と食べ物の匂いと共にこの上もなく幸せな雰囲気を作り出していた。
しばらくおしゃべりした後で、
「ねえ春花、お話読んで」
ユマが甘えたような声を上げ、みんなが口々に賛同の声を上げた。
「あら素敵!」
「それはいいですね。食後のお楽しみにぴったりだ」
「是非聴きたいな!」
「ピーター・パンは?」
「あるよ、持ってくる!」
ユマが一目散に駆け出し、すぐにハードカバーの本を抱えて戻ってきた。春花のところに明かりが集められる。
「…そういえば」
春花の隣からユマが持ってきた本を覗きこんで俊が呟いた。
「不思議なんだけど…どうして読めるようになったんだろう。最初の日、大使館のフランツの部屋でタイトルの読めない本がいっぱいあったのに」
フランツがにこりとした。
「それはまあ魔法のせいだということになっています。ここだけでなく、『もう一つのお隣』でも、魔法発明学者たちの世界でも、同じなんですよ。他の世界から来た人たちは例外なくみんな最初から聴くことと話すことができる。読むのと書くのの方は個人差があります。すぐできる人は稀ですね」
「魔法のせい…っていうことは、こう、辺りに」
と俊は手を宙でくるくるさせた。
「魔法が漂っている、っていうことですか。だから他の世界から来ても言葉が通じるし、他の言語でも読める、って」
フランツが微笑む。
「そんなところです」
「そういえば、フェルナンドさんともランレイさんとも話せたね」
春花が言うと、俊は目を丸くした。
「ほんとだ。そういえばそうだった…向こうならスペイン語と中国語のはずなのに」
そして春花を見てため息をついた。
「俺たちの世界って、魔法がないのかな、やっぱり。他の言語読めないし通じないもんな」
「そんなことないと思うよ。だって僕たちメッセンジャーが行って、コミュニケーションが取れるんだから。それに、『もう一つのお隣』からそっちの世界に行ってる人たちも問題なくコミュニケーションが取れてるそうだから、魔法はあるんだと思うよ」
「『もう一つのお隣』から人が来てるの?俺たちのとこに?」
「結構たくさん行ってるらしいよ。そっちが気に入って移住したりなんてこともあるらしいし」
春花と俊が目を見開いて異口同音に「…わお」と言ったので、エルザがくすくす笑った。
「ユマが感染っちゃったわね。ね、春花、私、子供たちが帰ってきたシーンが聴きたいわ」
ユマが口を尖らせる。
「ええー。私はピーターとウェンディが初めて会話するところが聴きたい」
「じゃ、両方ってことで」
俊が笑って言って本を取り上げると、まずは物語の進行順にピーターとウェンディが初めて会った場面を開いて春花の前に置いた。
結局他にもリクエストのあったいくつかのシーンも朗読し、最後はやはりエンディングで締めくくって、みんなの拍手の中、春花は大きく息をついた。
こんなにたくさん一度に朗読したのは初めてだったのでかなり疲れたけれど、毛細血管の隅々まで充実感がみなぎるような経験だった。指先が熱くて、心臓と一緒にじんじんしている。
「すごいな」
リオが目を細めてしみじみと言った。
「こんなふうに読める人に会ったことがないよ」
「まったくですよ。こういうのを『天が与えたもの』と言うんでしょうね」
フランツもため息をついて微笑んだ。
「素晴らしいわ。しかもあらかじめ練習もしないで、いきなり読んでこんな…。ねえ春花、」
涙ぐんだエルザが春花をじっと見つめた。
「あなたはね、きっとたくさんの人を幸せにすることができると思うわ」
春花はびっくりして頬が熱くなった。そんなふうに考えてみたことは一度もなかった。私の朗読で人を幸せにすることができるっていうこと?
「言ったでしょ、すごいって」
ユマは大得意でニコニコしている。
ちらりと隣に座った俊の方を見ると、感嘆の眼差しにぶつかった。
「…すげえ感動した」
柔らかな微笑みと共にくれたシンプルなその一言で、ふわっと心の奥が花開いたようになった。胸がふくらんで、そっと息をつく。まるで満開の桜たちを見上げた時のような気持ち。
すると突然後ろから、
「ブラヴィッシマ!」
と男の人の声が聞こえて、春花はびくっとして振り向いた。すらりとした若者が笑顔で立っていたが、
「アリ!」
ユマに乱暴に飛びつかれて足元をよろけさせた。
「こら!もうでかいんだからちょっとは手加減しろって」
「ごめーん」
ユマはくすくす笑って、
「春花、俊、リオ、こちら兄のアリ。アリ、こちらはお隣の春花と俊、それからメッセンジャーのリオ」
よろしく、初めまして、とアリはニコニコして三人と握手した。
「素晴らしい朗読だったよ。最後の方しか聴けなくて残念だった。また是非聴かせてもらいたいな」
少年のような笑顔がとても素敵だ。なんだかどこかで見たような笑顔だなあと思っていたら、テーブルの向こう側にまわってエルザとフランツとハグをしているアリの横顔を見ながら、俊が興奮したようなひそひそ声でこそこそっと、
「A River Runs Through Itのブラピみたいじゃん」
と言ったので、ああ!と納得した。お母さんが大絶賛していたので春樹と俊と三人で半年くらい前に見た映画だ。美しい映画だった。ポールの笑顔が印象的だった。
うーむ、確かにこれはメラニーじゃなくても惹かれるなあ…。
「素敵なお兄さんね」
心から言うと、ユマが嬉しそうに笑って、
「でしょ!」
と言った。その笑顔がまたアリに少し似ているのに気づいた春花は、心の中でもう一度うーむと唸った。若い時のブラピに笑顔が似てる女の子か…。女子校だったらファンクラブができたりするんだろうな、きっと。
アリは話し上手で聴き上手だった。穏やかで生真面目で丁寧な会話の仕方。相手が投げたボールをきっちり受け取って、相手が受け取りやすいように丁寧に投げ返す。こんなお医者さんだったら病院に行くのが嫌じゃなくなるのになあと春花は思った。ぶっきらぼうだったり、親しみやすくしようとしてなのか妙に言葉遣いがぞんざいだったり、こちらの目をちらりとしか見なかったり、ああいうお医者さんたちは苦手だ。
アリが昔メッセンジャーになりたかったという話から、メッセンジャーの試験の話になり、リオが自分は今大学受験のために医学の勉強をしていると話した。そこから今度はアリの病院での研修の話になった。
「どんなことが一番大変ですか」
俊が訊く。
「そうだね、身体的に大変なことっていうと忙しさだけど、精神的にはやっぱり患者さんを救えなかった時とか、悪い知らせを伝えなければいけない時とか、そういうことかな」
小さくため息をついて続ける。
「医者になろうっていうのにこんなこと言うのはあれだけど、病気や怪我で苦しんでいる人達や、そのことで心を痛めている家族の人たちを毎日間近で見ているのは結構辛いよ。助けられるならいい。少しでも楽にしてあげられるのなら。でもそうじゃない場合もたくさんあって…。それが子供だったりすると、本当に辛い。亡くなる場合もそうだね。高齢の人だと、まだ天寿を全うしたという感じだけど、若い人とか、特に子供が亡くなったりすると、家族じゃない、担当医でさえもない、僕みたいなただの見習い医師でも、すごく辛いものだよ」
頬杖をついてまたため息をついた。
「今日もね、一人亡くなった子がいて…。運ばれてきた時はもう心臓が止まってた。蘇生を試みたけど、助けられなかったんだ。その子のお父さんが担当医に食ってかかって…どうして助けてくれなかったんだ、ってね」
「でもお医者さんはベストを尽くしたんでしょ?最初から心臓が止まってたんだし、お医者さんを責めるのはフェアじゃないじゃない」
ユマが憤慨したように言うと、アリは宥めるように言った。
「そんなのはよくあることなんだよ。責められることには医者だって慣れてるし、わかってるんだ。仕方のないことなんだって。それも仕事のうちだってわかってるんだよ。愛する人が死んだ時、人は誰かを責めることが正しいことかどうかなんて考えられなくなるものだからね。僕が辛いのは…医者たちの大半も同じだろうと思うけど、不当に責められたり酷い言葉を投げつけられたりすることよりも、その人たちの辛い気持ちを感じることなんだ」
アリはテーブルの上で組んだ自分の両手に視線を落とした。柔らかな明かりに照らされたその真剣な顔は、まるで祈っているように見えた。
「病院のスタッフっていうのは、患者さんたちを助けたいと思うからそういう職についてる。助けたいという思いが人一倍強い。だからなのかもしれないけど、助けられなかった人の家族とか友人とかの、彼らを失った悲しみっていうものも人一倍強く感じてしまうような気がする。助けられなかったことの悔しさや悲しみに加えて、遺族の悲しみも強く感じてしまうから、ダブルパンチでね。結構きついよ。こういうことに耐えられるように、もっと強くならなきゃって思ってる。そうでなきゃ人の辛さを軽くしてあげることはできない」
エルザが心配そうに眉を寄せる。
「アリ…、本当に医者になりたいの?」
アリは顔を上げてにこりと笑ってみせた。
「もちろんだよ」
「そんなに辛い思いをするのに?」
ユマが深刻な顔で訊く。
「お兄ちゃんみたいに優しい人は医者にならない方がいいんじゃないの?もう少し冷血で無神経な人がなるほうがいいんだよ、きっと」
「ひどいこと言うなあ。医者が冷血で無神経じゃ患者さんが困るだろ」
おかしそうに笑って言うアリの素敵な笑顔を見ながら、春花の胸は後悔で震えた。
あの病院に行ってあの時のお医者さんに謝ろう、と思った。
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