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ちょっとした女性の買い物を済ませた依里は、家の洗面所を見て引きつった。
風呂場では室内乾燥がかけられており、風呂場の扉を開けるとずらっと、パンツが干されていたのだ。
ずらっと並んだ、同じメーカーと同じ素材と七色のパンツ……これは間違いなく晴美のパンツである。
依里が干したわけではないので、絶対に晴美である。パンツは見間違いようのないボクサーパンツ、男物だった。
「洗濯するのはいいんだが……何のために自分の部屋ってものがあるんだ……」
彼女がぼそりという物の、聞いている人間は誰もいない。帰ってきたらなんでパンツがずらっと並んでいるのか聞かなければ、と彼女は一つやる事を決めて、手洗などを済ませた。
そしてすぐさま、顔に塗っていたあらゆる化粧品を落すと、そこでやっと一息つける。こう言った事がしたいから、洗面は割と大きく鏡も大きな、明るい所を選んだのだ。
家賃補助が会社から出なければ、絶対にこんな物件借りられないな、と思っちゃう素敵なものだが、ここは古い鉄筋コンクリマンションを、リノベーションしたところである。
防音のために鉄筋コンクリ製は譲れなかった彼女が、いくつかの物件を内見した結果、一番防音性の高い物件がここだったのだ。
古い見た目とは違い、結構綺麗な内装だし、キッチンは晴美がはしゃぎまわる程度にはいいものが入っている。
女性のあれこれを洗面所にしまった彼女は、大きく伸びをして、それからスマホを動かし、座りっぱなしで凝りまくった体をほぐすための、ラジオ体操を始めた。
こう言った事も実はしたかったのだが、この前までの物件ではさすがに、飛び跳ねられないため我慢していたのだ。
結果と言うのか何と言うのか、ラジオ体操を大真面目に行った依里は、盛大に太ももの裏側が痙攣した。
さすがにこれはまずいだろう、もっと運動をしなければ。これでは痴漢や不審者を撃退する際に、決定的な一撃を放てない。
依里は自分の運動不足をとても反省して、大きく深呼吸をし、ラジオ体操を終わらせた。
それにしても小腹が空いた。だがきっと晴美は二人分のご飯を作りたがるんだろうな……あいつそう言うの大好きだし。
そんな事を考えながら冷蔵庫を開けると、作り置きの総菜がいくつか入っている。
だがこれだけで夕飯を食べたら、きっと晴美がへそを曲げるのだ。
汁物を作らせろ、主菜を作らせろ、とわあわあ主張するに違いない。
そんな面倒くさい事はしたくないので、小腹はおかしで満たす事にしよう。
そんな事を思いつつ、依里は食器棚の下段を開けた。これは引っ越す前から持ってきている食器棚であり、ここにいつもお菓子を入れていたのだが。
「やっちまった」
依里はぼそっと呟いた。そうだ、引っ越す前に、荷物が増えるのが面倒だと、お菓子はみんな食べきってしまったのだ。
そして数日前の買い出しの際に、お菓子は買わなかったのだ。
晴美がたくさんの食料品を買い込み、お菓子が入るほどエコバックの空きがなかったからだ。
「なんかねえかな……」
腹が減ってはいら立ちが募るばかりだ。依里は諦め悪くあちこちの棚や引き出しを開けた結果、お菓子は何も入っていない事実を知った。
台所の収納は、晴美が主体的にやるからという事で、あいつに決めさせていたのだ。
そのため意外な所に意外なものが入っており、自分の家なのに新鮮味を感じる事も多い。
だがそれでもお菓子は入っていない。
なんかコンビニで買ってこようかな。
依里はそれも考えたのだが、仕事から帰ってきて、また出かけるのが面倒くさい。
お茶を飲んでしのぐか……と依里はとりあえずお湯を沸かす事にした。
お茶を飲み休憩している間にも、晴美は帰って来ない。帰って来ないなら家の掃除もしておこう、と依里は立ち上がった。何せ掃除機の音が大嫌いな同居人だ。掃除機をかけたいならば、その同居人がいない時間を見計らわねばなるまい。
ミルクと砂糖がたっぷり入った紅茶を飲み干し、ふう、と一息ついた依里は、ハンディワイパーを取り出して、窓を開け、そのまま掃除を始めた。
確か何かの番組で、埃が床に落ちるまでには八時間かかる、と言っていた。家を出てから帰ってくるまでにそれ位の時間は、過ぎているだろう。
それに、一度床にワイパーをかけた後掃除機をかけた方が、埃が舞い散らないとも聞いた気がする。
そのため、ワイパー、掃除機、と手順よく掃除を終わらせた時だ。
彼女の部屋着の尻ポケットに突っ込まれていたスマホが、着信を告げた。
誰からだ。着信を見るとそれは柳川からで、開くとそこには改めてのお礼の言葉と、祖母からの食事の誘いだろう言葉が書かれていた。
それらは丁寧なものであり、礼儀正しく、同居人が破天荒な彼女からすると、さすが違うな、と感心する文面だった。
直接誘うと、女性社員たちに何を言われるかわからない依里からすれば、ラインでのやり取りはありがたかった。
今週末の日曜日に、指定されたホテルのレストランでお礼のお食事を、と書かれていたため、依里は予定が何も入っていない事を確認した。
高級ホテルのレストランなんて、絶対に一人ではいかない場所だ。お礼のご馳走ならば、飛び切りのご馳走が食べられるに違いない。
作法はあまり知らないが、見苦しくなく食べればそれで、問題ないだろう。
そこまで思った食いしん坊は、ホテルの名前と、レストランの店名を見て、あれ、と思った。
「これ晴美の働いてるところじゃないか」
……絶対においしいものが出て来るに違いない。あいつがいて、まずいものを出すわけがないのだ。この店名は間違いなく晴美が本店から飛ばされた場所でもある。
一応晴美にそれを言った方がいいのだろうか? いや仕事中だろうから言わなくていいか。
日曜日は稼ぎ時、だからお仕事お仕事! と歌うように言っていた幼馴染だったのである。
「何食べさせてくれるんだろう……でも高級すぎると嫌だな……」
依里としては結構なおせっかいをしただけなのだ。それを感謝するのは、相手の考え方次第だが、あまり大仰に感謝されても座りが悪い。
そのため依里は、丁寧な文面で、
「大した事をしたわけではないので、あまり大げさにしないでください」
といった中身を伝えた。
伝えた途端に即座に、
「あなたはとてもすごい事をしたのです」
と返信が返ってきたため、そんなにすごいか? と依里は考えた。
だが大学時代にあらゆる修羅場に巻き込まれ、被害女子を庇い被害男子を庇い、と時には腕ずくもしていたから、そんな大げさな事をしたとは思えなかった。
そして
「一度だけなので、どうかこちらの感謝の気持ちを受け取ってください」
とまで言われた結果、それ以上色々言うのも大人げないので、依里はその食事会を受ける事にした。
さてそんなやり取りをし、掃除も終わった頃を見計らったように、がちゃがちゃと鍵の開く音が聞こえて来て、それからじゃれた仔犬のような声が響いた。
「ヨリちゃんただいま! ご飯直ぐ用意するから待っててね! お腹空いたでしょう!」
「おやつを買い忘れてたからな」
「またお買い物行こうね」
いいつつばたばたと洗面所にいき、戻ってきた晴美は冷蔵庫にケーキの箱らしいものをしまい、手際よく食事の支度を始めた。
小鉢があっという間に三品も並び……常備菜だ……香ばしい肉を焼く音が響き渡り、出汁のいい香りが台所にあふれる。驚くべき手際の良さだ。
「手伝うか」
「ご飯食べたいだけ温めて」
「おう」
依里は冷凍庫の中のご飯を温め始めた。一食分が小分けにされているから、温める時に楽である。
そしてわずか十五分で仕上がったのは、薄切り肉の焼いたのに、きんぴらごぼう、ピーマンのじゃこ和え、サツマイモを甘く煮てバターを絡めたもの、それから豆腐とわかめの味噌汁であった。
これだけの品数を、あっという間に用意できる晴美は、まるで魔法使いのようだった。
「手際がいいし速いな」
「出汁は冷蔵庫で取ってあったし、お肉以外は朝に作ったもの出しただけよ、味をしみこませたくて朝に作ったんだー」
いそいそと食卓に着く晴美が、依里がいただきます、と言ったとたんに元気よく
「いただきます!」
と言って喜々として食事を始めた。
依里も食事を始めたのだが、いちいち晴美の料理はおいしい。ピーマンのじゃこ和えは程よい歯ごたえでじゃこの風味がいい感じだし、きんぴらは実家の安心感に似た甘じょっぱさ。そしてサツマイモはふくふくと甘さとたまらないバターが染みている。
晴美があっという間に作った豚薄切り肉の焼いたものは、カリッとした歯ごたえに仕上がっており、それが塩気でご飯がみるみるなくなる味付けである。
さらには味噌汁も、嗅覚に直撃する癒される出汁の香りなのだ。
「……彼女の家でもこれだけ作ってたのか」
「え、うん! でもあの子はもっとおしゃれな料理がいいっていうから、おしゃれ料理の研究したよ、でもやっぱりこう言うののほうがおいしいよねえ」
「きんぴら、温めてあるな」
「だって温かい料理の方が、ヨリちゃん好みでしょ。温め直した方がおいしいものとかも、色々あるからね」
ぱくぱく、もぐもぐ、はぐはぐ、とどんどん食べて行く晴美である。男だし、料理人は重労働だし、これだけ食べても腹が出ないのは、それだけ大変だからだろう。
最近座ってばかりで、少し腹周りが気になっている依里としては、少しうらやましい腹周りだった。
そして夕飯が終わるや否や、いそいそと晴美が、食卓に置きっぱなしになっていた紙製の箱の封を開けた。
そこには綺麗な、色とりどりのフルーツが乗ったタルトに、定番のショートケーキだが形が四角形のもの、チョコレートの色味のもの、真っ白なクリームに抹茶が降りかけられたものが出来た。
どれも文句なしに美しい造作だ。さすが有名ホテルのパティシエたちの力作の試作品である。
どこか見たような気がするのに、全く見覚えがないように感じられる、このセンスの良さは、確かにマダムたちにも、女子にも受けがいいだろう。
「内訳は?」
「旬のフルーツタルトは、あのお店の定番クリスマス商品だから、それの味の調整をかけてみた奴でしょ、今年はショートケーキって名前じゃなくてフレジェって名前にしたおしゃれなイチゴのケーキでしょ、甘さをできるだけ抑えたオペラと、抹茶ティラミス」
「ホテルによってもクリスマスの看板が違ったのか?」
「仕入れ先が違うんだから、そりゃあ独自性は出るでしょ、だから面白いよ。今のお店はフルーツの仕入れ先ととっても仲良しなんだって。だから一番いいのをおろしてもらえるから、一番おいしいフルーツタルトなんだってさ」
「お前が食べた感じどうだった?」
「いろんな味がし過ぎて喧嘩しそうになってた」
自慢の一品を容赦なく評価する、味覚だけは確かな男の発言である。
「どれもおいしい果物なのに、混ざりあい過ぎて喧嘩するなんてもったいないから、それの調整を皆でしたんだ。皆も、こっちの方が口に入る分のバランスが良くていくらでも食べられちゃうって、言ったから、上もそうしようって事になったの」
「じゃあ私は、フルーツタルトにしようかな」
「もう一つどうする?」
「まて、私は一度に二つもケーキは食べないぞ」
「えー? なんで?」
晴美が目を瞬かせた。そうだこの幼馴染は、胃袋がブラックホールだった学生時代を知っているのだ……と依里は思い出した。
「こんな時間に二つもケーキ食べてたら、全部ぜい肉になっちゃうだろうが! 私タダでも腹周り気にしてるんだぞ」
「ヨリちゃんスリムだよ?」
「いや、お前なあ……私の体重知らないからそんな事言ってられるんだろ」
「女の子に体重を聞くのはデリカシーがないから、って彼女が言ってた」
言いつつ晴美は、フレジェを手に取っている。
「いっただきまーす」
話を聞いているのかいないのか? そんな事を第三者に思わせる切り替えの早さだが、依里はこれも慣れていた。大体、こいつの目の前にお菓子を並べておいて、直ぐ食べられないなんて事は滅多にないのだ。
何しろこいつの家は男三兄弟、目の前の食べ物はすぐに食べなければ取り分がなくなる戦いの夕飯……そしておやつの時間……だったのだ。
そして晴美は、幼馴染の前で我慢なんてしなくっていいと知っている。
それゆえ、こう言った事に迷いがないに違いなかった。
「ううん、クリームがちょっと濃厚すぎるかも、これも微調整しておかなくちゃ」
「濃厚なクリームじゃだめなのか?」
「イチゴと真剣勝負しすぎるクリームってだめでしょ。このケーキの主役はイチゴなんだから」
ぱくぱくと平らげて行く晴美である。その食べっぷりは見ていて気持ちがいいものだ。
「農家さんから一番おいしいのを出してもらってるんだから、美味しいって強調するのはイチゴにして、他の物はそれを引き立たせる味にならなくちゃ。舞台の主役は一役で十分なんだよ」
「ふうん……」
晴美の何かポリシーが働いたらしい。それはそれで結構だ。
そんな事を思いながら、依里はフルーツタルトを口にした。
さわやかだ。クリームがくどくない。そしてタルト生地もカスタードも、とてもおいしいものに間違いないのに、どこか控えめな存在感である。このタルトのかなめは間違いなく、美味しさが抜群のフルーツたちである。
艶出しのナパージュも薄く薄く、限界まで薄く塗られているからだろうか? 口の中で邪魔をしない。
「お、おいしい……こんなおいしいタルト初めて食べたかもしれない」
「でしょう? これはね、お店の基本のレシピが、とっても完成されてるから、これだけのものが出来るんだよ!」
にこにこきらきら、とエフェクトでもかかりそうな笑顔で、嬉しそうに言う晴美。
「昔の味付けだったからかな、砂糖の量が今風じゃなかったからそれの調整とか、風味付けのバニラとか、色々悩むところだったんだけどね、出来上がったのがとっても美味しいから、皆すっごく喜んでた」
「お前が皆微調整したのか?」
「だって皆が、やってっていうんだもの。だからお店で料理して、休憩時間にレシピ見ながらケーキ焼いてみて、クリーム作って、ってしてたんだ」
「お前休憩時間は休憩しろよ」
「お菓子作りは休憩でーす! 気分転換!」
朗らかに言う晴美である。依里は昔の事を思い出した。
「そう言ってお前大昔に、クリスマスケーキ一人で焼いてたよな、それも型は牛乳パックの再利用で」
「そうそう! なつかしいなあ、じいちゃんのお客様に出すお茶請けのケーキ! 皆お代わりしたいって言うから、クリスマスイブに何本も焼いたよね」
「私は覚えてるぞ、お前はケーキ焼いて鶏肉の山椒焼きを焼いてた」
「山椒焼きはばあちゃんの得意料理だったからね! クリスマスはばあちゃんにお休みしてほしかったし。父さんも弟たちもこたつの虫だったから、それを眺めながら料理したりケーキ焼くのすごい楽しかった」
そしてその家族だけのお祝いであるはずの、クリスマスは結局、集まって酒が飲めるという謎の理論により、近隣のジジババ大集合となっていたのも、依里はもちろん覚えていた。
そこまで来ると、材料や総菜持ち込みで晴美の家に大集合していたのだ、あの頃は。
そして依里も、買い出しにおわれながらもそれに参加して、晴美のクリスマスケーキを食べていたのだ。
あの田舎はびっくりするくらい人とのつながりが密だったんだよなあ……そして村親戚という暗黙の了解もあった物だ。
「で。今年はどうするんだお前。年末年始」
「帰るよ! もう六年以上帰ってないんだもの」
「へえ……」
この、売り上げに響く天才を、年末年始の稼ぎ時に、店が休ませるか? そんな事を思った物の、晴美が帰ると決めたら梃子でも動かない事くらい、幼馴染でなくとも、分かる事だった。
晴美は頑固だ。こだわりも強い。そして自分の決めた事を曲げないし、折れない。
そのくせこだわりのない事に関しては、折れるし曲がるし回り道もする。そのため、意思がないと思う人もいれば、大変な頑固ものだと評する知り合いもいる。
「本店時代は帰れなかったのか?」
「後輩とか先輩とかに、帰っちゃヤダー! 年越しは大鷺の年越しそばを食べるんだー! おせち―! って泣きつかれてたからね。特に後輩はかわいいもの。でも今年から、そうも言ってられないし、いい加減帰ってきてくれ、じいちゃんばあちゃんが晴美は帰って来ないのか、って首を長くして待ってるっていうし」
奔放で寂しがりだった母親が、ろくに育児をしなかった晴美は、それゆえ、育ての親であるじじばばと近所の人と父親に大変弱い。
彼等がいい加減帰ってこい、と言えば、即座に頷き帰ってしまうだろう。
「もう上司の皆さんに言ってあるんだ、六年かえってないから実家に帰らせて! って。皆そんなに帰ってなかったのかって、すごくびっくりしてたし、本店の売り上げが年末年始すごくよかったのも納得だって言ったけど、あれなんなんだろうね」
お前の飯を食べたさに、セレブ達がホテルを利用したからだろ。
依里は言いたい事を飲み込んだ。
風呂場では室内乾燥がかけられており、風呂場の扉を開けるとずらっと、パンツが干されていたのだ。
ずらっと並んだ、同じメーカーと同じ素材と七色のパンツ……これは間違いなく晴美のパンツである。
依里が干したわけではないので、絶対に晴美である。パンツは見間違いようのないボクサーパンツ、男物だった。
「洗濯するのはいいんだが……何のために自分の部屋ってものがあるんだ……」
彼女がぼそりという物の、聞いている人間は誰もいない。帰ってきたらなんでパンツがずらっと並んでいるのか聞かなければ、と彼女は一つやる事を決めて、手洗などを済ませた。
そしてすぐさま、顔に塗っていたあらゆる化粧品を落すと、そこでやっと一息つける。こう言った事がしたいから、洗面は割と大きく鏡も大きな、明るい所を選んだのだ。
家賃補助が会社から出なければ、絶対にこんな物件借りられないな、と思っちゃう素敵なものだが、ここは古い鉄筋コンクリマンションを、リノベーションしたところである。
防音のために鉄筋コンクリ製は譲れなかった彼女が、いくつかの物件を内見した結果、一番防音性の高い物件がここだったのだ。
古い見た目とは違い、結構綺麗な内装だし、キッチンは晴美がはしゃぎまわる程度にはいいものが入っている。
女性のあれこれを洗面所にしまった彼女は、大きく伸びをして、それからスマホを動かし、座りっぱなしで凝りまくった体をほぐすための、ラジオ体操を始めた。
こう言った事も実はしたかったのだが、この前までの物件ではさすがに、飛び跳ねられないため我慢していたのだ。
結果と言うのか何と言うのか、ラジオ体操を大真面目に行った依里は、盛大に太ももの裏側が痙攣した。
さすがにこれはまずいだろう、もっと運動をしなければ。これでは痴漢や不審者を撃退する際に、決定的な一撃を放てない。
依里は自分の運動不足をとても反省して、大きく深呼吸をし、ラジオ体操を終わらせた。
それにしても小腹が空いた。だがきっと晴美は二人分のご飯を作りたがるんだろうな……あいつそう言うの大好きだし。
そんな事を考えながら冷蔵庫を開けると、作り置きの総菜がいくつか入っている。
だがこれだけで夕飯を食べたら、きっと晴美がへそを曲げるのだ。
汁物を作らせろ、主菜を作らせろ、とわあわあ主張するに違いない。
そんな面倒くさい事はしたくないので、小腹はおかしで満たす事にしよう。
そんな事を思いつつ、依里は食器棚の下段を開けた。これは引っ越す前から持ってきている食器棚であり、ここにいつもお菓子を入れていたのだが。
「やっちまった」
依里はぼそっと呟いた。そうだ、引っ越す前に、荷物が増えるのが面倒だと、お菓子はみんな食べきってしまったのだ。
そして数日前の買い出しの際に、お菓子は買わなかったのだ。
晴美がたくさんの食料品を買い込み、お菓子が入るほどエコバックの空きがなかったからだ。
「なんかねえかな……」
腹が減ってはいら立ちが募るばかりだ。依里は諦め悪くあちこちの棚や引き出しを開けた結果、お菓子は何も入っていない事実を知った。
台所の収納は、晴美が主体的にやるからという事で、あいつに決めさせていたのだ。
そのため意外な所に意外なものが入っており、自分の家なのに新鮮味を感じる事も多い。
だがそれでもお菓子は入っていない。
なんかコンビニで買ってこようかな。
依里はそれも考えたのだが、仕事から帰ってきて、また出かけるのが面倒くさい。
お茶を飲んでしのぐか……と依里はとりあえずお湯を沸かす事にした。
お茶を飲み休憩している間にも、晴美は帰って来ない。帰って来ないなら家の掃除もしておこう、と依里は立ち上がった。何せ掃除機の音が大嫌いな同居人だ。掃除機をかけたいならば、その同居人がいない時間を見計らわねばなるまい。
ミルクと砂糖がたっぷり入った紅茶を飲み干し、ふう、と一息ついた依里は、ハンディワイパーを取り出して、窓を開け、そのまま掃除を始めた。
確か何かの番組で、埃が床に落ちるまでには八時間かかる、と言っていた。家を出てから帰ってくるまでにそれ位の時間は、過ぎているだろう。
それに、一度床にワイパーをかけた後掃除機をかけた方が、埃が舞い散らないとも聞いた気がする。
そのため、ワイパー、掃除機、と手順よく掃除を終わらせた時だ。
彼女の部屋着の尻ポケットに突っ込まれていたスマホが、着信を告げた。
誰からだ。着信を見るとそれは柳川からで、開くとそこには改めてのお礼の言葉と、祖母からの食事の誘いだろう言葉が書かれていた。
それらは丁寧なものであり、礼儀正しく、同居人が破天荒な彼女からすると、さすが違うな、と感心する文面だった。
直接誘うと、女性社員たちに何を言われるかわからない依里からすれば、ラインでのやり取りはありがたかった。
今週末の日曜日に、指定されたホテルのレストランでお礼のお食事を、と書かれていたため、依里は予定が何も入っていない事を確認した。
高級ホテルのレストランなんて、絶対に一人ではいかない場所だ。お礼のご馳走ならば、飛び切りのご馳走が食べられるに違いない。
作法はあまり知らないが、見苦しくなく食べればそれで、問題ないだろう。
そこまで思った食いしん坊は、ホテルの名前と、レストランの店名を見て、あれ、と思った。
「これ晴美の働いてるところじゃないか」
……絶対においしいものが出て来るに違いない。あいつがいて、まずいものを出すわけがないのだ。この店名は間違いなく晴美が本店から飛ばされた場所でもある。
一応晴美にそれを言った方がいいのだろうか? いや仕事中だろうから言わなくていいか。
日曜日は稼ぎ時、だからお仕事お仕事! と歌うように言っていた幼馴染だったのである。
「何食べさせてくれるんだろう……でも高級すぎると嫌だな……」
依里としては結構なおせっかいをしただけなのだ。それを感謝するのは、相手の考え方次第だが、あまり大仰に感謝されても座りが悪い。
そのため依里は、丁寧な文面で、
「大した事をしたわけではないので、あまり大げさにしないでください」
といった中身を伝えた。
伝えた途端に即座に、
「あなたはとてもすごい事をしたのです」
と返信が返ってきたため、そんなにすごいか? と依里は考えた。
だが大学時代にあらゆる修羅場に巻き込まれ、被害女子を庇い被害男子を庇い、と時には腕ずくもしていたから、そんな大げさな事をしたとは思えなかった。
そして
「一度だけなので、どうかこちらの感謝の気持ちを受け取ってください」
とまで言われた結果、それ以上色々言うのも大人げないので、依里はその食事会を受ける事にした。
さてそんなやり取りをし、掃除も終わった頃を見計らったように、がちゃがちゃと鍵の開く音が聞こえて来て、それからじゃれた仔犬のような声が響いた。
「ヨリちゃんただいま! ご飯直ぐ用意するから待っててね! お腹空いたでしょう!」
「おやつを買い忘れてたからな」
「またお買い物行こうね」
いいつつばたばたと洗面所にいき、戻ってきた晴美は冷蔵庫にケーキの箱らしいものをしまい、手際よく食事の支度を始めた。
小鉢があっという間に三品も並び……常備菜だ……香ばしい肉を焼く音が響き渡り、出汁のいい香りが台所にあふれる。驚くべき手際の良さだ。
「手伝うか」
「ご飯食べたいだけ温めて」
「おう」
依里は冷凍庫の中のご飯を温め始めた。一食分が小分けにされているから、温める時に楽である。
そしてわずか十五分で仕上がったのは、薄切り肉の焼いたのに、きんぴらごぼう、ピーマンのじゃこ和え、サツマイモを甘く煮てバターを絡めたもの、それから豆腐とわかめの味噌汁であった。
これだけの品数を、あっという間に用意できる晴美は、まるで魔法使いのようだった。
「手際がいいし速いな」
「出汁は冷蔵庫で取ってあったし、お肉以外は朝に作ったもの出しただけよ、味をしみこませたくて朝に作ったんだー」
いそいそと食卓に着く晴美が、依里がいただきます、と言ったとたんに元気よく
「いただきます!」
と言って喜々として食事を始めた。
依里も食事を始めたのだが、いちいち晴美の料理はおいしい。ピーマンのじゃこ和えは程よい歯ごたえでじゃこの風味がいい感じだし、きんぴらは実家の安心感に似た甘じょっぱさ。そしてサツマイモはふくふくと甘さとたまらないバターが染みている。
晴美があっという間に作った豚薄切り肉の焼いたものは、カリッとした歯ごたえに仕上がっており、それが塩気でご飯がみるみるなくなる味付けである。
さらには味噌汁も、嗅覚に直撃する癒される出汁の香りなのだ。
「……彼女の家でもこれだけ作ってたのか」
「え、うん! でもあの子はもっとおしゃれな料理がいいっていうから、おしゃれ料理の研究したよ、でもやっぱりこう言うののほうがおいしいよねえ」
「きんぴら、温めてあるな」
「だって温かい料理の方が、ヨリちゃん好みでしょ。温め直した方がおいしいものとかも、色々あるからね」
ぱくぱく、もぐもぐ、はぐはぐ、とどんどん食べて行く晴美である。男だし、料理人は重労働だし、これだけ食べても腹が出ないのは、それだけ大変だからだろう。
最近座ってばかりで、少し腹周りが気になっている依里としては、少しうらやましい腹周りだった。
そして夕飯が終わるや否や、いそいそと晴美が、食卓に置きっぱなしになっていた紙製の箱の封を開けた。
そこには綺麗な、色とりどりのフルーツが乗ったタルトに、定番のショートケーキだが形が四角形のもの、チョコレートの色味のもの、真っ白なクリームに抹茶が降りかけられたものが出来た。
どれも文句なしに美しい造作だ。さすが有名ホテルのパティシエたちの力作の試作品である。
どこか見たような気がするのに、全く見覚えがないように感じられる、このセンスの良さは、確かにマダムたちにも、女子にも受けがいいだろう。
「内訳は?」
「旬のフルーツタルトは、あのお店の定番クリスマス商品だから、それの味の調整をかけてみた奴でしょ、今年はショートケーキって名前じゃなくてフレジェって名前にしたおしゃれなイチゴのケーキでしょ、甘さをできるだけ抑えたオペラと、抹茶ティラミス」
「ホテルによってもクリスマスの看板が違ったのか?」
「仕入れ先が違うんだから、そりゃあ独自性は出るでしょ、だから面白いよ。今のお店はフルーツの仕入れ先ととっても仲良しなんだって。だから一番いいのをおろしてもらえるから、一番おいしいフルーツタルトなんだってさ」
「お前が食べた感じどうだった?」
「いろんな味がし過ぎて喧嘩しそうになってた」
自慢の一品を容赦なく評価する、味覚だけは確かな男の発言である。
「どれもおいしい果物なのに、混ざりあい過ぎて喧嘩するなんてもったいないから、それの調整を皆でしたんだ。皆も、こっちの方が口に入る分のバランスが良くていくらでも食べられちゃうって、言ったから、上もそうしようって事になったの」
「じゃあ私は、フルーツタルトにしようかな」
「もう一つどうする?」
「まて、私は一度に二つもケーキは食べないぞ」
「えー? なんで?」
晴美が目を瞬かせた。そうだこの幼馴染は、胃袋がブラックホールだった学生時代を知っているのだ……と依里は思い出した。
「こんな時間に二つもケーキ食べてたら、全部ぜい肉になっちゃうだろうが! 私タダでも腹周り気にしてるんだぞ」
「ヨリちゃんスリムだよ?」
「いや、お前なあ……私の体重知らないからそんな事言ってられるんだろ」
「女の子に体重を聞くのはデリカシーがないから、って彼女が言ってた」
言いつつ晴美は、フレジェを手に取っている。
「いっただきまーす」
話を聞いているのかいないのか? そんな事を第三者に思わせる切り替えの早さだが、依里はこれも慣れていた。大体、こいつの目の前にお菓子を並べておいて、直ぐ食べられないなんて事は滅多にないのだ。
何しろこいつの家は男三兄弟、目の前の食べ物はすぐに食べなければ取り分がなくなる戦いの夕飯……そしておやつの時間……だったのだ。
そして晴美は、幼馴染の前で我慢なんてしなくっていいと知っている。
それゆえ、こう言った事に迷いがないに違いなかった。
「ううん、クリームがちょっと濃厚すぎるかも、これも微調整しておかなくちゃ」
「濃厚なクリームじゃだめなのか?」
「イチゴと真剣勝負しすぎるクリームってだめでしょ。このケーキの主役はイチゴなんだから」
ぱくぱくと平らげて行く晴美である。その食べっぷりは見ていて気持ちがいいものだ。
「農家さんから一番おいしいのを出してもらってるんだから、美味しいって強調するのはイチゴにして、他の物はそれを引き立たせる味にならなくちゃ。舞台の主役は一役で十分なんだよ」
「ふうん……」
晴美の何かポリシーが働いたらしい。それはそれで結構だ。
そんな事を思いながら、依里はフルーツタルトを口にした。
さわやかだ。クリームがくどくない。そしてタルト生地もカスタードも、とてもおいしいものに間違いないのに、どこか控えめな存在感である。このタルトのかなめは間違いなく、美味しさが抜群のフルーツたちである。
艶出しのナパージュも薄く薄く、限界まで薄く塗られているからだろうか? 口の中で邪魔をしない。
「お、おいしい……こんなおいしいタルト初めて食べたかもしれない」
「でしょう? これはね、お店の基本のレシピが、とっても完成されてるから、これだけのものが出来るんだよ!」
にこにこきらきら、とエフェクトでもかかりそうな笑顔で、嬉しそうに言う晴美。
「昔の味付けだったからかな、砂糖の量が今風じゃなかったからそれの調整とか、風味付けのバニラとか、色々悩むところだったんだけどね、出来上がったのがとっても美味しいから、皆すっごく喜んでた」
「お前が皆微調整したのか?」
「だって皆が、やってっていうんだもの。だからお店で料理して、休憩時間にレシピ見ながらケーキ焼いてみて、クリーム作って、ってしてたんだ」
「お前休憩時間は休憩しろよ」
「お菓子作りは休憩でーす! 気分転換!」
朗らかに言う晴美である。依里は昔の事を思い出した。
「そう言ってお前大昔に、クリスマスケーキ一人で焼いてたよな、それも型は牛乳パックの再利用で」
「そうそう! なつかしいなあ、じいちゃんのお客様に出すお茶請けのケーキ! 皆お代わりしたいって言うから、クリスマスイブに何本も焼いたよね」
「私は覚えてるぞ、お前はケーキ焼いて鶏肉の山椒焼きを焼いてた」
「山椒焼きはばあちゃんの得意料理だったからね! クリスマスはばあちゃんにお休みしてほしかったし。父さんも弟たちもこたつの虫だったから、それを眺めながら料理したりケーキ焼くのすごい楽しかった」
そしてその家族だけのお祝いであるはずの、クリスマスは結局、集まって酒が飲めるという謎の理論により、近隣のジジババ大集合となっていたのも、依里はもちろん覚えていた。
そこまで来ると、材料や総菜持ち込みで晴美の家に大集合していたのだ、あの頃は。
そして依里も、買い出しにおわれながらもそれに参加して、晴美のクリスマスケーキを食べていたのだ。
あの田舎はびっくりするくらい人とのつながりが密だったんだよなあ……そして村親戚という暗黙の了解もあった物だ。
「で。今年はどうするんだお前。年末年始」
「帰るよ! もう六年以上帰ってないんだもの」
「へえ……」
この、売り上げに響く天才を、年末年始の稼ぎ時に、店が休ませるか? そんな事を思った物の、晴美が帰ると決めたら梃子でも動かない事くらい、幼馴染でなくとも、分かる事だった。
晴美は頑固だ。こだわりも強い。そして自分の決めた事を曲げないし、折れない。
そのくせこだわりのない事に関しては、折れるし曲がるし回り道もする。そのため、意思がないと思う人もいれば、大変な頑固ものだと評する知り合いもいる。
「本店時代は帰れなかったのか?」
「後輩とか先輩とかに、帰っちゃヤダー! 年越しは大鷺の年越しそばを食べるんだー! おせち―! って泣きつかれてたからね。特に後輩はかわいいもの。でも今年から、そうも言ってられないし、いい加減帰ってきてくれ、じいちゃんばあちゃんが晴美は帰って来ないのか、って首を長くして待ってるっていうし」
奔放で寂しがりだった母親が、ろくに育児をしなかった晴美は、それゆえ、育ての親であるじじばばと近所の人と父親に大変弱い。
彼等がいい加減帰ってこい、と言えば、即座に頷き帰ってしまうだろう。
「もう上司の皆さんに言ってあるんだ、六年かえってないから実家に帰らせて! って。皆そんなに帰ってなかったのかって、すごくびっくりしてたし、本店の売り上げが年末年始すごくよかったのも納得だって言ったけど、あれなんなんだろうね」
お前の飯を食べたさに、セレブ達がホテルを利用したからだろ。
依里は言いたい事を飲み込んだ。
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