867 / 882
最終章 永遠の翼
episode804
しおりを挟む
着替えてダイニングへ行くと、ブッフェで好きなものをトレイにのせ、バルコニーの席に3人は座った。朝でも陽射しが強いので、白い布の張られた大きな傘がさされていた。
「小娘にこれ渡しておくわ」
そう言ってリュリュは日傘を渡した。
「すでにもう陽射しの強さで判ると思うけど、火傷しちゃうから日傘さしてなさいね。あと、UVケアの日焼け止めも、ちゃんと塗っておくのよ」
「うん、ありがとう」
真夏のような気温になっていて、ノースリーブのワンピースの上に、薄手のカーティガンを羽織って陽除けをしていた。
「あーたは平気そうね」
メルヴィンの方を見て、リュリュは鼻を鳴らす。
「オレは大丈夫です」
帰る頃には真っ黒に日焼けしていそうだと、メルヴィンは苦笑した。
「ゼイルストラは1年中こんな暑さよ」
「よく生きてられますね…」
手でパタパタ顔を扇ぎながら、メルヴィンがげっそりと言うと、リュリュはくすくすと笑った。
「住めば都よ。ほら、アーナンド島が見えてきたわ」
リュリュが進行方向を指すと、煌く光をまぶした青い海の向こうに、大きな島が見えていた。
「あれがアーナンド島。ゼイルストラ・カウプンキの中心島よ」
豪華客船が港に接岸すると、続々と沢山の人々が下船していった。
メルヴィンに手を引かれながら桟橋を降りきったとき、素っ頓狂な声がかけられて、キュッリッキは目を瞬いた。
「リューディアちゃん!?」
ドスドスと駆け寄ってきた女性は、キュッリッキの双肩を掴むと、グイッと顔を突き出してマジマジとキュッリッキを見つめた。
「ンもー、早とちりしないでよ、サーラおばちゃん」
「リュリュちゃん!」
女性はキュッリッキから離れると、すかさずリュリュに抱きついた。
「久しぶりねサーラおばちゃん」
「ホントだわ、何年ぶりかしら。すっかりいい大人になっちゃって」
「おばちゃんは相変わらず、若くて美人ね」
「おほほ、ありがとう」
面食らって目を瞬いているキュッリッキとメルヴィンを向いて、リュリュが女性の両肩に手を置く。
「あーたたちに紹介するわね。こちらはサーラ、ベルトルドのお母さんよ」
「は、初めまして。メルヴィンと申します」
メルヴィンは鯱張って頭を下げる。やけに若いなと、内心つぶやきながら。
「キュッリッキです」
以前ベルトルドの記憶で見せられたサーラの姿と、ほとんど変わっていない。
アイオン族は成人すると、外見の老化がとても遅くなる。ヴィプネン族と比べると、20歳前後の開きが出てくるのだ。
快活そうな美人で、ベルトルドと同じ髪の色をしていて、オシャレに短くカットしている。こんな強い陽射しの強い国で暮らしているだろうに、肌は日焼けもしておらず綺麗に白い。
半袖のラフなシャツにデニムの短パンを履いている姿は、ほっそりとしているが躍動的で、じっとしていることを由としない雰囲気をまとっていた。
こうして改めて見ると、ベルトルドは母サーラに似ているような気がすると、キュッリッキは思った。
「いきなりごめんなさいね。初めまして、サーラです。遠くからようこそ」
明るい声とにっこり笑う顔は無邪気で、ますますベルトルドとよく似ていた。
「リュリュちゃんたちがくるって連絡もらってたから、迎えに来たのよ。みんな島で待っているわ。行きましょう」
笑顔のサーラに促されて、3人は頷いた。
サーラの操縦するクルーザーに乗って、4人はシャシカラ島を目指した。
真っ青な空と紺碧色の海。船がたてる波しぶきは、太陽の光に反射して白銀色に煌き、今が秋だという雰囲気は微塵も感じない。何もかも色が濃くて明るさに満ち溢れている。
大きさが様々な小島の間を縫うように、クルーザーは突き進んでいた。
「懐かしい風だわあ」
風で帽子が飛ばされないように両手で押さえ、リュリュは気持ちよさそうに息を吸った。
「10年くらい前かしら? 一度戻ってきたっきり、ベルトルドもアルカネットちゃんもリュリュちゃんも、全然里帰りしてこないんだから」
「皇国の要職に就いてるから、色々忙しくって」
リュリュは短く言うにとどめた。実際目の回るような忙しい日々で、仕事に忙殺されていたのもある。ベルトルドたちの計画の妨害工作もまた、忙しかったのだ。
「それにしても、キュッリッキちゃんは本当にリューディアちゃんにそっくりね。クスタヴィもカーリナも、びっくりしちゃうわよ」
「そうねん…。――元気にしてるかしら、あの二人」
「ええ、見た目は随分老け込んだけど、元気に働いているわよ」
二人の会話を黙って聞きながら、キュッリッキは以前ベルトルドに見せられた過去の記憶の中で、リューディアが死んだあとのリュリュ親子の、悲しい場面を思い出していた。
リュリュの口調やサーラの表情から察するに、あれ以来あまり良好な関係には戻れていないようだ。
親に酷い言葉と態度で拒絶される悲しみを、リュリュも味わっていたのだと思うと、キュッリッキは自分のことのように胸を痛めた。
捨てられたわけではないから、リュリュには生まれ故郷がある。しかしこうして不本意な帰郷を果たすことになり、リュリュもまた沢山の複雑な想いを背負っているのだと、キュッリッキはそのことを、ようやく思いやれるようになっていた。
他愛ないお喋りをしながら、クルーザーはシャシカラ島へたどり着いた。
「小娘にこれ渡しておくわ」
そう言ってリュリュは日傘を渡した。
「すでにもう陽射しの強さで判ると思うけど、火傷しちゃうから日傘さしてなさいね。あと、UVケアの日焼け止めも、ちゃんと塗っておくのよ」
「うん、ありがとう」
真夏のような気温になっていて、ノースリーブのワンピースの上に、薄手のカーティガンを羽織って陽除けをしていた。
「あーたは平気そうね」
メルヴィンの方を見て、リュリュは鼻を鳴らす。
「オレは大丈夫です」
帰る頃には真っ黒に日焼けしていそうだと、メルヴィンは苦笑した。
「ゼイルストラは1年中こんな暑さよ」
「よく生きてられますね…」
手でパタパタ顔を扇ぎながら、メルヴィンがげっそりと言うと、リュリュはくすくすと笑った。
「住めば都よ。ほら、アーナンド島が見えてきたわ」
リュリュが進行方向を指すと、煌く光をまぶした青い海の向こうに、大きな島が見えていた。
「あれがアーナンド島。ゼイルストラ・カウプンキの中心島よ」
豪華客船が港に接岸すると、続々と沢山の人々が下船していった。
メルヴィンに手を引かれながら桟橋を降りきったとき、素っ頓狂な声がかけられて、キュッリッキは目を瞬いた。
「リューディアちゃん!?」
ドスドスと駆け寄ってきた女性は、キュッリッキの双肩を掴むと、グイッと顔を突き出してマジマジとキュッリッキを見つめた。
「ンもー、早とちりしないでよ、サーラおばちゃん」
「リュリュちゃん!」
女性はキュッリッキから離れると、すかさずリュリュに抱きついた。
「久しぶりねサーラおばちゃん」
「ホントだわ、何年ぶりかしら。すっかりいい大人になっちゃって」
「おばちゃんは相変わらず、若くて美人ね」
「おほほ、ありがとう」
面食らって目を瞬いているキュッリッキとメルヴィンを向いて、リュリュが女性の両肩に手を置く。
「あーたたちに紹介するわね。こちらはサーラ、ベルトルドのお母さんよ」
「は、初めまして。メルヴィンと申します」
メルヴィンは鯱張って頭を下げる。やけに若いなと、内心つぶやきながら。
「キュッリッキです」
以前ベルトルドの記憶で見せられたサーラの姿と、ほとんど変わっていない。
アイオン族は成人すると、外見の老化がとても遅くなる。ヴィプネン族と比べると、20歳前後の開きが出てくるのだ。
快活そうな美人で、ベルトルドと同じ髪の色をしていて、オシャレに短くカットしている。こんな強い陽射しの強い国で暮らしているだろうに、肌は日焼けもしておらず綺麗に白い。
半袖のラフなシャツにデニムの短パンを履いている姿は、ほっそりとしているが躍動的で、じっとしていることを由としない雰囲気をまとっていた。
こうして改めて見ると、ベルトルドは母サーラに似ているような気がすると、キュッリッキは思った。
「いきなりごめんなさいね。初めまして、サーラです。遠くからようこそ」
明るい声とにっこり笑う顔は無邪気で、ますますベルトルドとよく似ていた。
「リュリュちゃんたちがくるって連絡もらってたから、迎えに来たのよ。みんな島で待っているわ。行きましょう」
笑顔のサーラに促されて、3人は頷いた。
サーラの操縦するクルーザーに乗って、4人はシャシカラ島を目指した。
真っ青な空と紺碧色の海。船がたてる波しぶきは、太陽の光に反射して白銀色に煌き、今が秋だという雰囲気は微塵も感じない。何もかも色が濃くて明るさに満ち溢れている。
大きさが様々な小島の間を縫うように、クルーザーは突き進んでいた。
「懐かしい風だわあ」
風で帽子が飛ばされないように両手で押さえ、リュリュは気持ちよさそうに息を吸った。
「10年くらい前かしら? 一度戻ってきたっきり、ベルトルドもアルカネットちゃんもリュリュちゃんも、全然里帰りしてこないんだから」
「皇国の要職に就いてるから、色々忙しくって」
リュリュは短く言うにとどめた。実際目の回るような忙しい日々で、仕事に忙殺されていたのもある。ベルトルドたちの計画の妨害工作もまた、忙しかったのだ。
「それにしても、キュッリッキちゃんは本当にリューディアちゃんにそっくりね。クスタヴィもカーリナも、びっくりしちゃうわよ」
「そうねん…。――元気にしてるかしら、あの二人」
「ええ、見た目は随分老け込んだけど、元気に働いているわよ」
二人の会話を黙って聞きながら、キュッリッキは以前ベルトルドに見せられた過去の記憶の中で、リューディアが死んだあとのリュリュ親子の、悲しい場面を思い出していた。
リュリュの口調やサーラの表情から察するに、あれ以来あまり良好な関係には戻れていないようだ。
親に酷い言葉と態度で拒絶される悲しみを、リュリュも味わっていたのだと思うと、キュッリッキは自分のことのように胸を痛めた。
捨てられたわけではないから、リュリュには生まれ故郷がある。しかしこうして不本意な帰郷を果たすことになり、リュリュもまた沢山の複雑な想いを背負っているのだと、キュッリッキはそのことを、ようやく思いやれるようになっていた。
他愛ないお喋りをしながら、クルーザーはシャシカラ島へたどり着いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる