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ナルバ山の遺跡編
episode74
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(うわあ…すご~い)
アジトの建物なんて、家畜小屋にしか思えないほど、ベルトルドの屋敷は広大だった。宮殿の一画だと言われても、キュッリッキは疑いもしなかっただろう。
玄関ロビーは大ホールのように広く、天井まで吹き抜けていて、2階の通路も手摺越しに見える。いくつも下がるシャンデリアも豪奢だ。
正面には階段一階から上階に向かい、踊り場を経由して、2つの階段に末広がりに分かれる大階段も素晴らしい。階段は象牙色の大理石で、濃紺の絨毯が中央に敷き詰められていた。
玄関から左側の通路へ案内されて入っていく。キュッリッキはアルカネットに手を引かれ、キョロキョロと見回していた。
青いマーブル模様の入った大理石の床は鏡のように磨き上げられ、壁や柱に施された繊細な彫刻も見事だった。キュッリッキはふと自分の姿を省みる。安物の綿のワンピース姿では、場違いな気がして申し訳ない気持ちになってしまう。せめて麻にすればよかったかも、などとちょっと思った。
物珍しさを隠しもしないキュッリッキの様子を見て、アルカネットは自然と笑顔が漏れた。
「本当に可愛らしいお嬢様ですね。ハーメンリンナは初めてですか?」
「はいっ」
アルカネットに柔らかく話しかけられ、思わず声が裏返ってしまう。
ベルトルドの屋敷の執事をしているという。見た感じは20代後半に差し掛かるくらいだろうか。スラリとした長身を、黒いスーツで包み込んでいた。そしてアルカネットという名の通り、綺麗な紫色の髪と瞳が印象的だった。
執事と聞くと、堅苦しい年寄りがするものと印象のあるキュッリッキだったが、アルカネットのような執事だったら、日々穏やかでいいだろうなあ、と思えた。
とくに誰も咎めていなかったが、あまりにもキョロキョロしすぎたのを、みっともないと感じ始め、キュッリッキは顔を赤らめて俯いてしまった。
そんなキュッリッキの様子に、3人とも微苦笑する。
無駄に長いと思える程の廊下を歩いて、大きな扉の前で止まる。アルカネットは両手で扉を押し開くと、そこは広々とした応接室だった。
「掛けてお待ちください。すぐにお飲み物を、お持ち致します」
恭しく一礼すると、アルカネットは応接室をあとにした。
扉が閉まると、キュッリッキは青い天鵞絨張りの長椅子に座り、全身から吐き出すようなため息をついた。
「何だかすごーく、緊張したの~」
「あはははっ。そんなに緊張するようなところじゃないって」
腹をかかえて笑うルーファスを、捨て犬のような顔で睨む。だって慣れてないもん、と口の中でもごもご呟く。
「ベルトルド卿もアルカネットさんも、あまり細かいことには五月蝿くありませんから。最低限の礼儀さえ守っていれば、大丈夫ですよ」
そうカーティスに言われて、キュッリッキは肩の力を抜いた。ちらりと二人を見ると、自然とこの屋敷の雰囲気に馴染んでいる気がして、僅かに首を傾げた。
「二人とも、なんだかこういう場所に慣れてる感じだね」
「オレたちもともと、この国の騎士・軍人だったからね」
「そうですねえ。戦争も内戦も起こらないような、平和な平和な皇都勤めでしたから。嫌でもハーメンリンナ暮らしが長かったんですよ」
カーティスとルーファスは、互をみやってヤレヤレと肩をすくめた。
アジトの建物なんて、家畜小屋にしか思えないほど、ベルトルドの屋敷は広大だった。宮殿の一画だと言われても、キュッリッキは疑いもしなかっただろう。
玄関ロビーは大ホールのように広く、天井まで吹き抜けていて、2階の通路も手摺越しに見える。いくつも下がるシャンデリアも豪奢だ。
正面には階段一階から上階に向かい、踊り場を経由して、2つの階段に末広がりに分かれる大階段も素晴らしい。階段は象牙色の大理石で、濃紺の絨毯が中央に敷き詰められていた。
玄関から左側の通路へ案内されて入っていく。キュッリッキはアルカネットに手を引かれ、キョロキョロと見回していた。
青いマーブル模様の入った大理石の床は鏡のように磨き上げられ、壁や柱に施された繊細な彫刻も見事だった。キュッリッキはふと自分の姿を省みる。安物の綿のワンピース姿では、場違いな気がして申し訳ない気持ちになってしまう。せめて麻にすればよかったかも、などとちょっと思った。
物珍しさを隠しもしないキュッリッキの様子を見て、アルカネットは自然と笑顔が漏れた。
「本当に可愛らしいお嬢様ですね。ハーメンリンナは初めてですか?」
「はいっ」
アルカネットに柔らかく話しかけられ、思わず声が裏返ってしまう。
ベルトルドの屋敷の執事をしているという。見た感じは20代後半に差し掛かるくらいだろうか。スラリとした長身を、黒いスーツで包み込んでいた。そしてアルカネットという名の通り、綺麗な紫色の髪と瞳が印象的だった。
執事と聞くと、堅苦しい年寄りがするものと印象のあるキュッリッキだったが、アルカネットのような執事だったら、日々穏やかでいいだろうなあ、と思えた。
とくに誰も咎めていなかったが、あまりにもキョロキョロしすぎたのを、みっともないと感じ始め、キュッリッキは顔を赤らめて俯いてしまった。
そんなキュッリッキの様子に、3人とも微苦笑する。
無駄に長いと思える程の廊下を歩いて、大きな扉の前で止まる。アルカネットは両手で扉を押し開くと、そこは広々とした応接室だった。
「掛けてお待ちください。すぐにお飲み物を、お持ち致します」
恭しく一礼すると、アルカネットは応接室をあとにした。
扉が閉まると、キュッリッキは青い天鵞絨張りの長椅子に座り、全身から吐き出すようなため息をついた。
「何だかすごーく、緊張したの~」
「あはははっ。そんなに緊張するようなところじゃないって」
腹をかかえて笑うルーファスを、捨て犬のような顔で睨む。だって慣れてないもん、と口の中でもごもご呟く。
「ベルトルド卿もアルカネットさんも、あまり細かいことには五月蝿くありませんから。最低限の礼儀さえ守っていれば、大丈夫ですよ」
そうカーティスに言われて、キュッリッキは肩の力を抜いた。ちらりと二人を見ると、自然とこの屋敷の雰囲気に馴染んでいる気がして、僅かに首を傾げた。
「二人とも、なんだかこういう場所に慣れてる感じだね」
「オレたちもともと、この国の騎士・軍人だったからね」
「そうですねえ。戦争も内戦も起こらないような、平和な平和な皇都勤めでしたから。嫌でもハーメンリンナ暮らしが長かったんですよ」
カーティスとルーファスは、互をみやってヤレヤレと肩をすくめた。
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