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ナルバ山の遺跡編
episode120
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飛んでいってしまったヴァルトの消えた空を見上げ、カーティスとルーファスは呆けた顔のまま肩を落とした。
「これじゃ、オレたちも敵の只中に突っ込まないと、援護できなくね?」
腰に両手をあてて、ルーファスは空を眺めたままぼやく。一方カーティスは額をおさえて、マジ勘弁といったように頭を振る。
「こうなったら、初めからヴァルトなんてウチには存在しなかった、と記憶を改竄するしかありませんね」
「それか天に帰って星になった、でもいいな」
タルコットとハーマンは、各々防御をしながら対処できるので自由行動に任せたが、大問題はヴァルトだった。
とにかく防御をしない猪戦闘をするので、かけた強化魔法の強度がすぐに崩れる。なので自分から離れないようにと言い含めていた矢先に、翼を広げ元気よく飛んでいってしまったのだった。
「面倒ですが、行きましょうか、2人とも…」
ゲッソリとカーティスに促され、ルーファスとマーゴットは頷いた。
収監施設の中は外に比べると、驚く程手薄だった。外の守りに集中しすぎて、中の守りはどうでもよかったのか?とギャリーは首をひねる。てっきり兵士たちで通路がびっしり詰まっていると想像していたら、僅かに兵士が点在しているだけだった。
「なあ、魔法のトラップとかあるんじゃねえか?」
ギャリーの問いかけに、シビルは意識をこらして魔力探索を開始する。マリオンもサイ〈超能力〉で探りを入れたが、とくに反応はない。
シビルも同じようだった。3個中隊の防御陣を突破して、侵入できる輩がいるとは思わなかったらしい。いささか拍子抜けするが、その分手間が省ける。
「研究者たちはどこだ? ペルラ」
「こっち」
ペルラの案内で、建物の2階へと向かった。
開け放たれた小窓から、そよ風とともに騒音と血なまぐささが漂ってくる。シ・アティウス何事かと首を窓の方へと向けた。
「なにやら外が騒がしいな」
「質問にだけ答えろ!!」
中年の詰問官は手が腫れるんじゃないかと思うほど、何度も何度もテーブルを叩いた。
学者や研究者といった人種は、軽い脅しですぐビクビクと口を割る。だが皇国の研究者たちは全員、見事に口を割らなかった。大した覚悟だが、それがよりいっそう神経を苛立たせる。
とくにこの目の前の男は、ゾッとするほど無表情で、顔の筋肉を僅かも動かさない。色のついた眼鏡の奥ので、時折目だけがチラチラと動くのみだった。更に口を開けば無関係なことを言いたいだけ言って、すぐ黙り込む。
もう一度脅しのつもりで拳を振り上げた瞬間、詰問官の口から「ヒュッ」と息が漏れた。
何事かと喉に手をあてようとしたが、そう思っただけで手は動かなかった。勢いよくどす黒い血を喉から撒き散らして、絶命したからだ。
「血の色からして、あまり健康とは言えないな」
倒れゆく詰問官を見ながら、顔色ひとつ変えずに淡々と呟く。返り血が大量にふりかかってきたが、軽く眉をひそめただけだった。
室内にいた他の兵士たちも、同じように喉を切り裂かれて倒れていった。
「助けにきたぜ」
「これじゃ、オレたちも敵の只中に突っ込まないと、援護できなくね?」
腰に両手をあてて、ルーファスは空を眺めたままぼやく。一方カーティスは額をおさえて、マジ勘弁といったように頭を振る。
「こうなったら、初めからヴァルトなんてウチには存在しなかった、と記憶を改竄するしかありませんね」
「それか天に帰って星になった、でもいいな」
タルコットとハーマンは、各々防御をしながら対処できるので自由行動に任せたが、大問題はヴァルトだった。
とにかく防御をしない猪戦闘をするので、かけた強化魔法の強度がすぐに崩れる。なので自分から離れないようにと言い含めていた矢先に、翼を広げ元気よく飛んでいってしまったのだった。
「面倒ですが、行きましょうか、2人とも…」
ゲッソリとカーティスに促され、ルーファスとマーゴットは頷いた。
収監施設の中は外に比べると、驚く程手薄だった。外の守りに集中しすぎて、中の守りはどうでもよかったのか?とギャリーは首をひねる。てっきり兵士たちで通路がびっしり詰まっていると想像していたら、僅かに兵士が点在しているだけだった。
「なあ、魔法のトラップとかあるんじゃねえか?」
ギャリーの問いかけに、シビルは意識をこらして魔力探索を開始する。マリオンもサイ〈超能力〉で探りを入れたが、とくに反応はない。
シビルも同じようだった。3個中隊の防御陣を突破して、侵入できる輩がいるとは思わなかったらしい。いささか拍子抜けするが、その分手間が省ける。
「研究者たちはどこだ? ペルラ」
「こっち」
ペルラの案内で、建物の2階へと向かった。
開け放たれた小窓から、そよ風とともに騒音と血なまぐささが漂ってくる。シ・アティウス何事かと首を窓の方へと向けた。
「なにやら外が騒がしいな」
「質問にだけ答えろ!!」
中年の詰問官は手が腫れるんじゃないかと思うほど、何度も何度もテーブルを叩いた。
学者や研究者といった人種は、軽い脅しですぐビクビクと口を割る。だが皇国の研究者たちは全員、見事に口を割らなかった。大した覚悟だが、それがよりいっそう神経を苛立たせる。
とくにこの目の前の男は、ゾッとするほど無表情で、顔の筋肉を僅かも動かさない。色のついた眼鏡の奥ので、時折目だけがチラチラと動くのみだった。更に口を開けば無関係なことを言いたいだけ言って、すぐ黙り込む。
もう一度脅しのつもりで拳を振り上げた瞬間、詰問官の口から「ヒュッ」と息が漏れた。
何事かと喉に手をあてようとしたが、そう思っただけで手は動かなかった。勢いよくどす黒い血を喉から撒き散らして、絶命したからだ。
「血の色からして、あまり健康とは言えないな」
倒れゆく詰問官を見ながら、顔色ひとつ変えずに淡々と呟く。返り血が大量にふりかかってきたが、軽く眉をひそめただけだった。
室内にいた他の兵士たちも、同じように喉を切り裂かれて倒れていった。
「助けにきたぜ」
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