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ナルバ山の遺跡編
episode122
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キュッリッキは首都アルイールのある方角を、身じろぎせずジッと見ていた。
すでに闇色に塗り変わろうとする空は、わずかに朱色と紫色の雲を残し、白い星がその存在を照らし出している。
カーティスから連絡が入ってすぐ、キュッリッキは遺跡の外へ出ると、首都アルイールの方角を向いて、地面にぺたりと座り込んだ。そしてフェンリルは大きな狼の姿に戻ると、前脚でキュッリッキを挟み込むようにして座った。
それからずっと、座ったまま目を凝らし続けている。
ガエルとメルヴィンはキュッリッキの両側に立ち、辺りへ警戒を向けていた。哨戒に出ている綿毛からは、異変の知らせは何もない。
麓には何もなく、濃い闇に包まれようとしていたが、キュッリッキは瞬きもしない。黄緑色の瞳には虹色の光彩が満ち、灯りもないのに淡い光を放っている。
キュッリッキはフェンリルの力を借りて、カーティスとギャリーの肩にとまる小鳥と視覚をリンクさせていた。この場からは見ることのできない光景を、しっかりと見ていた。
アルケラから喚びだした住人たちは、離ればなれになっていても、アンテナの役割を果たすものがいれば、簡単に遠隔操作が可能だ。この場合のアンテナの役割は、フェンリルが担っている。
「あっちの敵も、すご~い、いっぱい」
独りごちるキュッリッキに、メルヴィンが状況を尋ねた。
「こっちにいた倍の兵士たちだよ。3個中隊くらいかなあ」
「あらまあ…」
メルヴィンが苦笑気味に肩をすくめると、ガエルが小さく笑った。
「ヴァルトとタルコットが、さぞ張り切って喜んでいるだろうな」
救出部隊のギャリーたちは、研究者らを救出し終えると、脱出のために屋上を目指して走っていた。そして、屋上へと登る階段前の広場で、待ち構えていたソレル王国兵たちとぶつかった。
施設に侵入者あり、とさすがにバレたらしく、外の兵士たちが大挙として乗り込んできていたのだ。
「ケッ、勤勉な奴らだな」
ギャリーは忌々しげにぼやくと、背に背負っていた両手剣を抜く。
「シビル、防御結界で研究者たちだけは必死で守れ。銃弾がくるとマズイからな。俺らはテキトーでいい」
「あいあい」
言われなくとも、といったふうに、シビルは研究者たちを背後に庇い杖を前方に掲げる。
「ペルラとマリオンは、抜けてきた敵に集中しろ」
「おっけ~」
「判った」
「俺の魔剣シラーで、お前ら根こそぎ吹っ飛ばしてやる」
通常の大剣とサイズは変わらなかったが、柄から鍔にかけて、翼を広げた龍を模した意匠が見事である。そして刀身は灯りを弾いて光沢を放つ純金だった。
いかにも重そうな魔剣シラーを、ギャリーは両手で柄を握り、肩に担ぐようにして構えた。
「いくぜ」
低く呟き、敵に走り寄りながら、勢い付けて黄金の大剣を振り下ろそうとした、まさにそのとき。
「おめーら全員ぶっ殺すって言っただろーが!!」
突如ヴァルトが階下から現れて、翼を全開に広げて広場に飛び込んできたのだ。
「うそっ」
ギャリーは慌てて自分にブレーキをかけて踏みとどまる。そのまま振り下ろしていたら、間違いなく目の前に飛び込んできたヴァルトを真っ二つにしているところだった。
両足で踏ん張り姿勢を立て直すと、ギャリーは憤然とヴァルトに怒鳴った。
「てめー!! 俺の見せ場を邪魔しやがってあぶねーだろが!」
「あん?」
すでに闇色に塗り変わろうとする空は、わずかに朱色と紫色の雲を残し、白い星がその存在を照らし出している。
カーティスから連絡が入ってすぐ、キュッリッキは遺跡の外へ出ると、首都アルイールの方角を向いて、地面にぺたりと座り込んだ。そしてフェンリルは大きな狼の姿に戻ると、前脚でキュッリッキを挟み込むようにして座った。
それからずっと、座ったまま目を凝らし続けている。
ガエルとメルヴィンはキュッリッキの両側に立ち、辺りへ警戒を向けていた。哨戒に出ている綿毛からは、異変の知らせは何もない。
麓には何もなく、濃い闇に包まれようとしていたが、キュッリッキは瞬きもしない。黄緑色の瞳には虹色の光彩が満ち、灯りもないのに淡い光を放っている。
キュッリッキはフェンリルの力を借りて、カーティスとギャリーの肩にとまる小鳥と視覚をリンクさせていた。この場からは見ることのできない光景を、しっかりと見ていた。
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「あっちの敵も、すご~い、いっぱい」
独りごちるキュッリッキに、メルヴィンが状況を尋ねた。
「こっちにいた倍の兵士たちだよ。3個中隊くらいかなあ」
「あらまあ…」
メルヴィンが苦笑気味に肩をすくめると、ガエルが小さく笑った。
「ヴァルトとタルコットが、さぞ張り切って喜んでいるだろうな」
救出部隊のギャリーたちは、研究者らを救出し終えると、脱出のために屋上を目指して走っていた。そして、屋上へと登る階段前の広場で、待ち構えていたソレル王国兵たちとぶつかった。
施設に侵入者あり、とさすがにバレたらしく、外の兵士たちが大挙として乗り込んできていたのだ。
「ケッ、勤勉な奴らだな」
ギャリーは忌々しげにぼやくと、背に背負っていた両手剣を抜く。
「シビル、防御結界で研究者たちだけは必死で守れ。銃弾がくるとマズイからな。俺らはテキトーでいい」
「あいあい」
言われなくとも、といったふうに、シビルは研究者たちを背後に庇い杖を前方に掲げる。
「ペルラとマリオンは、抜けてきた敵に集中しろ」
「おっけ~」
「判った」
「俺の魔剣シラーで、お前ら根こそぎ吹っ飛ばしてやる」
通常の大剣とサイズは変わらなかったが、柄から鍔にかけて、翼を広げた龍を模した意匠が見事である。そして刀身は灯りを弾いて光沢を放つ純金だった。
いかにも重そうな魔剣シラーを、ギャリーは両手で柄を握り、肩に担ぐようにして構えた。
「いくぜ」
低く呟き、敵に走り寄りながら、勢い付けて黄金の大剣を振り下ろそうとした、まさにそのとき。
「おめーら全員ぶっ殺すって言っただろーが!!」
突如ヴァルトが階下から現れて、翼を全開に広げて広場に飛び込んできたのだ。
「うそっ」
ギャリーは慌てて自分にブレーキをかけて踏みとどまる。そのまま振り下ろしていたら、間違いなく目の前に飛び込んできたヴァルトを真っ二つにしているところだった。
両足で踏ん張り姿勢を立て直すと、ギャリーは憤然とヴァルトに怒鳴った。
「てめー!! 俺の見せ場を邪魔しやがってあぶねーだろが!」
「あん?」
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