片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
125 / 882
ナルバ山の遺跡編

episode122

しおりを挟む
 キュッリッキは首都アルイールのある方角を、身じろぎせずジッと見ていた。

 すでに闇色に塗り変わろうとする空は、わずかに朱色と紫色の雲を残し、白い星がその存在を照らし出している。

 カーティスから連絡が入ってすぐ、キュッリッキは遺跡の外へ出ると、首都アルイールの方角を向いて、地面にぺたりと座り込んだ。そしてフェンリルは大きな狼の姿に戻ると、前脚でキュッリッキを挟み込むようにして座った。

 それからずっと、座ったまま目を凝らし続けている。

 ガエルとメルヴィンはキュッリッキの両側に立ち、辺りへ警戒を向けていた。哨戒に出ている綿毛からは、異変の知らせは何もない。

 麓には何もなく、濃い闇に包まれようとしていたが、キュッリッキは瞬きもしない。黄緑色の瞳には虹色の光彩が満ち、灯りもないのに淡い光を放っている。

 キュッリッキはフェンリルの力を借りて、カーティスとギャリーの肩にとまる小鳥と視覚をリンクさせていた。この場からは見ることのできない光景を、しっかりと見ていた。

 アルケラから喚びだした住人たちは、離ればなれになっていても、アンテナの役割を果たすものがいれば、簡単に遠隔操作が可能だ。この場合のアンテナの役割は、フェンリルが担っている。

「あっちの敵も、すご~い、いっぱい」

 独りごちるキュッリッキに、メルヴィンが状況を尋ねた。

「こっちにいた倍の兵士たちだよ。3個中隊くらいかなあ」

「あらまあ…」

 メルヴィンが苦笑気味に肩をすくめると、ガエルが小さく笑った。

「ヴァルトとタルコットが、さぞ張り切って喜んでいるだろうな」



 救出部隊のギャリーたちは、研究者らを救出し終えると、脱出のために屋上を目指して走っていた。そして、屋上へと登る階段前の広場で、待ち構えていたソレル王国兵たちとぶつかった。

 施設に侵入者あり、とさすがにバレたらしく、外の兵士たちが大挙として乗り込んできていたのだ。

「ケッ、勤勉な奴らだな」

 ギャリーは忌々しげにぼやくと、背に背負っていた両手剣を抜く。

「シビル、防御結界で研究者たちだけは必死で守れ。銃弾がくるとマズイからな。俺らはテキトーでいい」

「あいあい」

 言われなくとも、といったふうに、シビルは研究者たちを背後に庇い杖を前方に掲げる。

「ペルラとマリオンは、抜けてきた敵に集中しろ」

「おっけ~」

「判った」

「俺の魔剣シラーで、お前ら根こそぎ吹っ飛ばしてやる」

 通常の大剣とサイズは変わらなかったが、柄から鍔にかけて、翼を広げた龍を模した意匠が見事である。そして刀身は灯りを弾いて光沢を放つ純金だった。

 いかにも重そうな魔剣シラーを、ギャリーは両手で柄を握り、肩に担ぐようにして構えた。

「いくぜ」

 低く呟き、敵に走り寄りながら、勢い付けて黄金の大剣を振り下ろそうとした、まさにそのとき。

「おめーら全員ぶっ殺すって言っただろーが!!」

 突如ヴァルトが階下から現れて、翼を全開に広げて広場に飛び込んできたのだ。

「うそっ」

 ギャリーは慌てて自分にブレーキをかけて踏みとどまる。そのまま振り下ろしていたら、間違いなく目の前に飛び込んできたヴァルトを真っ二つにしているところだった。

 両足で踏ん張り姿勢を立て直すと、ギャリーは憤然とヴァルトに怒鳴った。

「てめー!! 俺の見せ場を邪魔しやがってあぶねーだろが!」

「あん?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

処理中です...