片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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記憶の残滓編

episode193

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 忌々しさを滲ませて、アルカネットは冷え冷えとした声で言う。

「急いで帰ってきてみれば、案の定、不埒な真似をしようとして…。リッキーさんは重症の怪我人なのですよ。可哀想に、酷い怪我をしているというのに、イヤらしく迫られて、何をされたんだか想像するだけで怖気がします」

「あのな…、俺はまだ、何もしてないぞ」

「何かする気だったんですか。あなた、最低ですね」

「……」

 確かに、想いが熱く熱く噴出しかかって、キスをしよう、イヤだめだ、と自制心と葛藤していた真っ最中だった。

「それに、何故寝間着姿のあなたが、リッキーさんの部屋にいるのですか?」

「もちろん、リッキーが寂しくないよう添い寝するためだ」

 さも当然のように大真面目に言い返されて、アルカネットの眉がぴくりと動く。

「あなたが添い寝したところで、リッキーさんの不安や寂しさが、癒されるわけではありませんよ」

「否! この俺がいてこそ、リッキーの安心感が保たれるんだ!」

「寝込みを襲おうとしているような人が、何を言っているんだか…」

 グッとなりながらも、ベルトルドはひるまない。

「大体だな、お前ばっかり狡いんだ! リッキーのファーストキスを奪いやがって、ずーずーしーんだずーずーしー!」

「ヴァルトみたいな口調にならないでくださいみっともない。混乱のあまり自分で薬が飲めないリッキーさんのために、口移しで飲ませて差し上げただけです。あなたのように端っからイヤラシイ思惑でしたことではありません」

「舌まで入れたくせに!」

「そのほうが、確実に口の中に含ませることが出来ますから」

「ぐぎぎぎぎ、やっぱりずるい!」

 ベルトルドは泣きそうな顔でワナワナと口を震わせると、バッとキュッリッキの方へと身体を向ける。

「やっぱり俺もリッキーとキスする!」

 そう身を乗り出したとき、間近に高温を感じて振り向いた。アルカネットの掌の上に、真っ赤な灼熱の球体が形成されていっている。

「こんなところでなにをしているっ!」

「ブラベウス・プロクス」

 灼熱の球体を投げるように構え、ベルトルドに至近距離で放った。

 ベルトルドは寝転がった姿勢のまま、両掌を前方にかざした。灼熱の球体はベルトルドの掌の前で、空間に吸い込まれるようにして消えていく。

「あちちちち」

 サイ《超能力》を持つ者の中でも、ベルトルドしか出来ないと言われている空間転移で。ブラベウス・プロクスの灼熱の球体を飛ばす

「お前はバカかっ! リッキーが巻き込まれたらどうする!」

 怒号をあげるベルトルドを冷ややかにみやって、アルカネットは目を細めた。

「そんなこと大丈夫に決まっているでしょう。アナタが身を呈して守るんですから」

 そのくらい織り込み済みでやっているんです、と言い置いて、アルカネットはフンッと鼻を鳴らす。

「それでは、さっさとベッドから降りて、出仕の準備をしてくださいな」

「出仕って…まだ3時すぎだぞ?」

 テーブルの上の時計に目を向けると、出仕の時間にはまだまだ早かった。
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