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それぞれの悪巧み編
episode291
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「じゃあみんな、またくるから。ティワズ様にもよろしくね」
必死に引きとめようと周りを飛び交う光の玉たちに微笑むと、キュッリッキの姿はうっすらと空気に溶け、やがてその場から消えた。同時にフェンリルの姿も消えている。
病室のベッドの上で微動だにしないキュッリッキの身体が、ピクリと動く。
またたきもしなかった目を軽く閉じ、小さく深呼吸をする。そしてサイドテーブルの上の置時計を見ると、針は午前1時をさしていた。アルケラへ意識を飛ばしている間に、アリサは様子を見に来ていないようだった。
「朝食が7時だから、もう寝なきゃね。おやすみ、フェンリル」
枕に寝転がるフェンリルに微笑むと、キュッリッキはゆっくりと身体を寝かせ、眠りに就いた。
フェンリルはキュッリッキの顔のそばに寄り添い、身体を丸めて目を閉じた。
40歳を越えているベルトルドは、年齢よりもずっと若々しく、怜悧でハンサムな顔立ちをしている。やや剣呑とした目つきと傲岸不遜な笑みを浮かべた口元が、時折恐怖や萎縮を周りに振りまくこともあった。『泣く子も黙らせる』という異名の所以だ。
しかし目元にはヤンチャな雰囲気があり、そこが女性たちから絶大な人気を博している。母性にグッとくるものがあるらしい。そして白い軍服を身にまとうところから、社交界の貴婦人たちからは、白銀の薔薇の君などと呼ばれている。白い軍服は、ベルトルドだけが着用を許されている色だ。
今の出で立ちは、真っ白な半袖のシャツに、クリーム色がかったスラックスを履いており、パッと見どこにでもいるような、ごく普通の青年にしか見えない。
そのベルトルドのやや後ろに控えるように歩いているアルカネットは、この暑苦しい夏の中でも、魔法部隊(ビリエル)の黒い軍服とマントに身を包んでいる。穏やかさを極めたような端正な顔立ちは、少しも暑さを感じさせない、涼しげな余裕を浮かべていた。
2人の大物が病院のエントランスに姿を現すと、ホールにいる人々の視線が一気に集中した。それで気づいた肥え太った初老の小さな男は、小走りに2人に駆け寄った。
「これはこれは副宰相閣下、アルカネット様」
「出迎えご苦労院長。キュッリッキの退院の準備は出来ているな?」
自分の腰のあたりまでしか身長のない院長を見おろし、ベルトルドは尊大に腕を組んだ。
「はい、病室の方でお待ちになっております」
拭いても拭いてもにじみ出てくる汗をハンカチで拭いながら、院長は片手で入院患者の病棟へ行く通路を示した。
別にベルトルドは怒ってもいないし威嚇もしていないが、身体から吹き出すオーラのようなものを感じて、院長は畏れていた。
「結構。では連れて帰る。世話になったな」
院長の返事も待たずにベルトルドは歩き始め、アルカネットも目礼だけして後に続く。その2人の後を、院長は短い足で必死に追いかけた。
必死に引きとめようと周りを飛び交う光の玉たちに微笑むと、キュッリッキの姿はうっすらと空気に溶け、やがてその場から消えた。同時にフェンリルの姿も消えている。
病室のベッドの上で微動だにしないキュッリッキの身体が、ピクリと動く。
またたきもしなかった目を軽く閉じ、小さく深呼吸をする。そしてサイドテーブルの上の置時計を見ると、針は午前1時をさしていた。アルケラへ意識を飛ばしている間に、アリサは様子を見に来ていないようだった。
「朝食が7時だから、もう寝なきゃね。おやすみ、フェンリル」
枕に寝転がるフェンリルに微笑むと、キュッリッキはゆっくりと身体を寝かせ、眠りに就いた。
フェンリルはキュッリッキの顔のそばに寄り添い、身体を丸めて目を閉じた。
40歳を越えているベルトルドは、年齢よりもずっと若々しく、怜悧でハンサムな顔立ちをしている。やや剣呑とした目つきと傲岸不遜な笑みを浮かべた口元が、時折恐怖や萎縮を周りに振りまくこともあった。『泣く子も黙らせる』という異名の所以だ。
しかし目元にはヤンチャな雰囲気があり、そこが女性たちから絶大な人気を博している。母性にグッとくるものがあるらしい。そして白い軍服を身にまとうところから、社交界の貴婦人たちからは、白銀の薔薇の君などと呼ばれている。白い軍服は、ベルトルドだけが着用を許されている色だ。
今の出で立ちは、真っ白な半袖のシャツに、クリーム色がかったスラックスを履いており、パッと見どこにでもいるような、ごく普通の青年にしか見えない。
そのベルトルドのやや後ろに控えるように歩いているアルカネットは、この暑苦しい夏の中でも、魔法部隊(ビリエル)の黒い軍服とマントに身を包んでいる。穏やかさを極めたような端正な顔立ちは、少しも暑さを感じさせない、涼しげな余裕を浮かべていた。
2人の大物が病院のエントランスに姿を現すと、ホールにいる人々の視線が一気に集中した。それで気づいた肥え太った初老の小さな男は、小走りに2人に駆け寄った。
「これはこれは副宰相閣下、アルカネット様」
「出迎えご苦労院長。キュッリッキの退院の準備は出来ているな?」
自分の腰のあたりまでしか身長のない院長を見おろし、ベルトルドは尊大に腕を組んだ。
「はい、病室の方でお待ちになっております」
拭いても拭いてもにじみ出てくる汗をハンカチで拭いながら、院長は片手で入院患者の病棟へ行く通路を示した。
別にベルトルドは怒ってもいないし威嚇もしていないが、身体から吹き出すオーラのようなものを感じて、院長は畏れていた。
「結構。では連れて帰る。世話になったな」
院長の返事も待たずにベルトルドは歩き始め、アルカネットも目礼だけして後に続く。その2人の後を、院長は短い足で必死に追いかけた。
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