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1.フランチェスカ公爵令嬢 婚約破棄
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「君は力は魔の物によるものだ! そのような者と結婚は出来ない、婚約を破棄する!」
ある日の晩餐会で、王太子デイヴィット様から婚約を破棄されました。
私、何か致しましたでしょうか。
それにしても、突然の婚約破棄に、私は少々混乱気味でございます。
「デイヴィット様、私、デイヴィット様に失礼を働きましたでしょうか? もし失礼がございましたらお教えください、逐次直してまいります」
手に持っていたグラスをテーブルに置き、スカートをつまんで頭を下げます。
誠心誠意尽くしていたつもりでしたが、きっと私の独りよがりだったのでしょう。
これからは更にお役に立てるように努めなくては。
「失礼だと? その様な話ではない! フランチェスカの先見の力、あれは魔の物と契約をしたから使えるのではないのか? 文献によると、何の能力も持たない者でも、対価を支払う事で望みをかなえてもらえるそうだ。一体なにを対価として支払ったのだ? 私の命か!」
魔の物? はて、一体何の事でございましょうか。
私の先見の力は生まれ持ったモノのはず、お父様やお母様にもそう教えられました。
まして魔の物などと……恐ろしくて身震いしてしまいそうです。
「デイヴィット様、私は魔の物などという恐ろしい者と契約などしておりません。何かの思い違いではございませんか?」
「白々しいな、お前のことは色々と調べさせてもらった。お前の色は何にも属さないそうだな、我々が知らない色、それが魔の物によるモノなのだ!」
色……確かに私の色は鑑定していただいた時も、その後の調査でも不明のままでした。
それが魔の物と……私は自分の事を知らなさ過ぎた様ですね。
「デイヴィット様、大変失礼を致しました。色については分からない事が多いため、少々放置しておりました。それが魔の物によるモノならば、私は潔く身を引かさせて頂きたく存じます」
「当たり前だ! 危うく王族の中に魔の物を引き入れる所だったぞ! さっさと出て行け!」
手で追いはらうような仕草をされ、私は静かに晩餐会場を後にしました。
お父様とお母様が後を追いかけて来てくれましたが、いけません、今はデイヴィット様のご機嫌を伺ってくださいませ。
後ろを振る返る事なく、お父様とお母様に手で小さく合図をすると、分かってくれたのか、足音が離れていきます。
私は会場前の馬車に乗り、1人寂しく屋敷へと帰るとしましょう。
夜遅くになり、お父様とお母様が戻ってまいりました。
急いで部屋を出ると、お二人は私の部屋の前まで走っている姿が見えます。
どうされたのでしょうか。まさか家にまで影響が?
「フランチェスカ! 急いで家を出るのだ!」
「何が有ったのでございますか?」
「あなたを魔の物として、拷問による処刑が決定されたわ。急いで支度をして!」
拷問? 処刑? それはまるで悪魔裁判ではございませんか。
いえ、悪魔裁判は裁判を行います。それすら無いのであれば、私は悪魔以上の害悪だと判断されたのですね。
私は急いで部屋の戻り、旅行バッグに着替えを放り込み、直ぐに必要な物だけを持って家を出ました。
「隣の国まで走れば王太子の力は届かない。一番速い馬に乗って行け!」
「これ、少ないけど途中で食べて。体に気を付けるのよ」
「お父様、お母様……ありがとうございます。そして申し訳ございません、このような事態を招いてしまって」
「私達こそ済まなかった。もっと早く色の事を調べるべきだった」
2人と抱き合い、馬にまたがりました。
サンダルフォン、あなたが居れば心強いですわね。
「それではお父様、お母様、どうかお達者で」
馬を走らせ、暗闇の中を突き抜けます。
表通りからは離れて、小さな路地を走り門を出ました。
この馬・サンダルフォンと私の顔を見て門番は会釈をしていましたので、手配書などは出回っていないようです。
月明かりに照らされた道を走りながら、この先の事を考えています。
公爵家をでて、私は一体何が出来るでしょうか。
私は……そう、以前お世話になった方々、冒険者になりたいですわ。
あの方々は自由でした。自らを鍛え、自らを律し、自らの責任において、全てを判断しておいででした。
私の様な若輩者で務まるかは分かりませんが、せっかく自由の身になったのです、やりたかった事をやったとて、悪くはありませんわよね?
明るい希望をを胸に、サンダルフォンと共に暗い道を切り開いてまいりましょう!
ある日の晩餐会で、王太子デイヴィット様から婚約を破棄されました。
私、何か致しましたでしょうか。
それにしても、突然の婚約破棄に、私は少々混乱気味でございます。
「デイヴィット様、私、デイヴィット様に失礼を働きましたでしょうか? もし失礼がございましたらお教えください、逐次直してまいります」
手に持っていたグラスをテーブルに置き、スカートをつまんで頭を下げます。
誠心誠意尽くしていたつもりでしたが、きっと私の独りよがりだったのでしょう。
これからは更にお役に立てるように努めなくては。
「失礼だと? その様な話ではない! フランチェスカの先見の力、あれは魔の物と契約をしたから使えるのではないのか? 文献によると、何の能力も持たない者でも、対価を支払う事で望みをかなえてもらえるそうだ。一体なにを対価として支払ったのだ? 私の命か!」
魔の物? はて、一体何の事でございましょうか。
私の先見の力は生まれ持ったモノのはず、お父様やお母様にもそう教えられました。
まして魔の物などと……恐ろしくて身震いしてしまいそうです。
「デイヴィット様、私は魔の物などという恐ろしい者と契約などしておりません。何かの思い違いではございませんか?」
「白々しいな、お前のことは色々と調べさせてもらった。お前の色は何にも属さないそうだな、我々が知らない色、それが魔の物によるモノなのだ!」
色……確かに私の色は鑑定していただいた時も、その後の調査でも不明のままでした。
それが魔の物と……私は自分の事を知らなさ過ぎた様ですね。
「デイヴィット様、大変失礼を致しました。色については分からない事が多いため、少々放置しておりました。それが魔の物によるモノならば、私は潔く身を引かさせて頂きたく存じます」
「当たり前だ! 危うく王族の中に魔の物を引き入れる所だったぞ! さっさと出て行け!」
手で追いはらうような仕草をされ、私は静かに晩餐会場を後にしました。
お父様とお母様が後を追いかけて来てくれましたが、いけません、今はデイヴィット様のご機嫌を伺ってくださいませ。
後ろを振る返る事なく、お父様とお母様に手で小さく合図をすると、分かってくれたのか、足音が離れていきます。
私は会場前の馬車に乗り、1人寂しく屋敷へと帰るとしましょう。
夜遅くになり、お父様とお母様が戻ってまいりました。
急いで部屋を出ると、お二人は私の部屋の前まで走っている姿が見えます。
どうされたのでしょうか。まさか家にまで影響が?
「フランチェスカ! 急いで家を出るのだ!」
「何が有ったのでございますか?」
「あなたを魔の物として、拷問による処刑が決定されたわ。急いで支度をして!」
拷問? 処刑? それはまるで悪魔裁判ではございませんか。
いえ、悪魔裁判は裁判を行います。それすら無いのであれば、私は悪魔以上の害悪だと判断されたのですね。
私は急いで部屋の戻り、旅行バッグに着替えを放り込み、直ぐに必要な物だけを持って家を出ました。
「隣の国まで走れば王太子の力は届かない。一番速い馬に乗って行け!」
「これ、少ないけど途中で食べて。体に気を付けるのよ」
「お父様、お母様……ありがとうございます。そして申し訳ございません、このような事態を招いてしまって」
「私達こそ済まなかった。もっと早く色の事を調べるべきだった」
2人と抱き合い、馬にまたがりました。
サンダルフォン、あなたが居れば心強いですわね。
「それではお父様、お母様、どうかお達者で」
馬を走らせ、暗闇の中を突き抜けます。
表通りからは離れて、小さな路地を走り門を出ました。
この馬・サンダルフォンと私の顔を見て門番は会釈をしていましたので、手配書などは出回っていないようです。
月明かりに照らされた道を走りながら、この先の事を考えています。
公爵家をでて、私は一体何が出来るでしょうか。
私は……そう、以前お世話になった方々、冒険者になりたいですわ。
あの方々は自由でした。自らを鍛え、自らを律し、自らの責任において、全てを判断しておいででした。
私の様な若輩者で務まるかは分かりませんが、せっかく自由の身になったのです、やりたかった事をやったとて、悪くはありませんわよね?
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