19 / 73
19 プロポーズ 本心
しおりを挟む
「あの皆さん? これは一体どういった状況なのでしょうか」
ダンスパーティーから私の勧誘合戦、そして横一列に並んだ男性たちが、私に手を差し出してプロポーズを始めました。
状況がさっぱり理解できません。
「それがですね聖女様」
私の疑問に、ギルドの受付嬢が答えてくれました。
「聖女様のウワサは随分前から聞いていて、美しい女性だと聞いた独身冒険者がこぞって結婚したいと言い出しまして……止めたのですが、抑えきれず……」
なるほど、女性ならば誰でも良く、聖女ならば文句はない、と言った感じでしょうか。
残念ながら私、社交辞令でしか美しいと言われた事がありません。
あ、ロビーはキレイだと言ってくれました。とてもうれしかったです。
「そういう事なのですね。理解しました、ならば私からは一言だけ言わせていただきます」
一呼吸おいて、男性たちに頭を下げます。
「申し訳ございませんが、お断りさせていただきます」
するとどうでしょう、誰でもいいと言っておきながら、泣き崩れるではありませんか。
大げさですね。ああ、ここまでが茶番なのでしょうか。
茶番が終わり、パーティーがお開きになったので宿に入りました。
聖国の方で屋敷を用意してくれるそうなので、明日からはそちらに移動です。
この宿は小さいので、全員が個室です。今日は最後の宿生活を楽しむとしましょう。
部屋のドアがノックされました。
こんな夜分に誰でしょうか。警戒して扉を開けると……ロビーが居ました。
「ご、ごめんね? 夜遅くに。寝てた?」
「いいえ、まだ起きていました。どうしたのですか? こんな時間に」
「少し、話がしたいんだけど……いい?」
「どうぞ」
部屋に招き入れ、ベッドに並んで座ります。
ロビーはずっとうつむき、時々何かを言おうとして、またうつむきます。
私から声をかけた方が良いのでしょうか。
冒険で何かあったのでしょうか、それとも私の料理がマズイ事でしょうか、それとも……。
「ふ、フラン!」
「はい、ロビー」
「あの、えっと、さ。ギルドで、沢山の人にプ、プロポーズされて、さ、困った人たちだよね、ほんと」
「そうですね。あの様な場で、見世物のように使われては、お付き合いなど出来るはずもありません」
「そ、そうだよね、ははは」
またうつ向いてしまいました。
どうしたのでしょうかロビーは。普段はこのように言い淀むことは無いのですが。
「どこか、体調がすぐれないのですか?」
「そ、そうじゃないんだ。そうじゃなくて」
言葉を止めて深呼吸を始めました。
やっと本題に入るのでしょうか。
「フラン! 大好きです! 僕とお付き合いしてください!」
意を決して出した言葉の後、真っ直ぐに私を見つめ、私の返事を待っています。
ああ、本気だったのですねロビーは。
てっきり姉として、私の事を気にかけているのだと思っていました。
「ロビー。ロビーの気持ち、本当にうれしく思います。私もロビーの事が好きです」
「じゃ、じゃあ!」
「申し訳ありません。今はまだ、弟分としての好き、に留まっています」
見る見るロビーの顔が崩れていきます。
違うのです、そんな顔をしないでください。
「ロビー。以前私の事をキレイだと言ってくれました。本当にうれしかったのです。社交辞令ではよく言われますが、素直な気持ちで、真っ直ぐに言われた事はありませんでした。それに今の言葉、正面から好きだと言われた事、生まれて初めての経験です」
「え? だってフランには婚約者が……」
「いいえ、婚約者と言っても政略的な物です。そこに私の心などありません。公爵の娘だから、王太子が気に入ったから、それだけの理由なのです。好きなどと、一度も言われた事はありません」
「だって、フランはとっても優しくて、頼りになって、それに……キレイ……なのに」
「ふふふ、ありがとうございます。ですから私、いまとってもドキドキしています。ロビーに好きと言われて、とっても幸せな気持ちなのです」
「でも、弟分だよ?」
「今はそうでしょう。ですが数年経てばどうでしょうか。ロビーは成長期。あっという間に私より大きくなり、たくましくなるでしょう。弟に見えなくなった時、気持ちが変わっていなければ、もう一度、今の言葉を聞かせていただけますか? 改めてお返事させて頂きます」
「うん……分かったよフラン! 何年かたって、僕が男になった時、もう一度告白するよ!」
そう言って私の手を握ってくれました。
力強いですね。子供だと思っていましたが、やはり男の子です。
「ふふふ、では私も、嫌われないようにしなくてはいけませんね」
「大丈夫! 絶対に嫌いにならないから! それじゃあ、おやすみ!」
元気に部屋を出て行きました。
ベッドに横になり、握られた手を眺めます。
いま受けてしまうと、私は甘えてしまいます。
まだなにも、冒険者としても、フランチェスカとしても、なにも出来ていません。
聖女という肩書に頼るだけでは、ロビーに呆れられてしまいます。
もう少しだけ、もう少しだけ待っていてくださいロビー。
あなたの自慢できる仲間として、自慢できる恋人になれるまで、少しだけ……。
ダンスパーティーから私の勧誘合戦、そして横一列に並んだ男性たちが、私に手を差し出してプロポーズを始めました。
状況がさっぱり理解できません。
「それがですね聖女様」
私の疑問に、ギルドの受付嬢が答えてくれました。
「聖女様のウワサは随分前から聞いていて、美しい女性だと聞いた独身冒険者がこぞって結婚したいと言い出しまして……止めたのですが、抑えきれず……」
なるほど、女性ならば誰でも良く、聖女ならば文句はない、と言った感じでしょうか。
残念ながら私、社交辞令でしか美しいと言われた事がありません。
あ、ロビーはキレイだと言ってくれました。とてもうれしかったです。
「そういう事なのですね。理解しました、ならば私からは一言だけ言わせていただきます」
一呼吸おいて、男性たちに頭を下げます。
「申し訳ございませんが、お断りさせていただきます」
するとどうでしょう、誰でもいいと言っておきながら、泣き崩れるではありませんか。
大げさですね。ああ、ここまでが茶番なのでしょうか。
茶番が終わり、パーティーがお開きになったので宿に入りました。
聖国の方で屋敷を用意してくれるそうなので、明日からはそちらに移動です。
この宿は小さいので、全員が個室です。今日は最後の宿生活を楽しむとしましょう。
部屋のドアがノックされました。
こんな夜分に誰でしょうか。警戒して扉を開けると……ロビーが居ました。
「ご、ごめんね? 夜遅くに。寝てた?」
「いいえ、まだ起きていました。どうしたのですか? こんな時間に」
「少し、話がしたいんだけど……いい?」
「どうぞ」
部屋に招き入れ、ベッドに並んで座ります。
ロビーはずっとうつむき、時々何かを言おうとして、またうつむきます。
私から声をかけた方が良いのでしょうか。
冒険で何かあったのでしょうか、それとも私の料理がマズイ事でしょうか、それとも……。
「ふ、フラン!」
「はい、ロビー」
「あの、えっと、さ。ギルドで、沢山の人にプ、プロポーズされて、さ、困った人たちだよね、ほんと」
「そうですね。あの様な場で、見世物のように使われては、お付き合いなど出来るはずもありません」
「そ、そうだよね、ははは」
またうつ向いてしまいました。
どうしたのでしょうかロビーは。普段はこのように言い淀むことは無いのですが。
「どこか、体調がすぐれないのですか?」
「そ、そうじゃないんだ。そうじゃなくて」
言葉を止めて深呼吸を始めました。
やっと本題に入るのでしょうか。
「フラン! 大好きです! 僕とお付き合いしてください!」
意を決して出した言葉の後、真っ直ぐに私を見つめ、私の返事を待っています。
ああ、本気だったのですねロビーは。
てっきり姉として、私の事を気にかけているのだと思っていました。
「ロビー。ロビーの気持ち、本当にうれしく思います。私もロビーの事が好きです」
「じゃ、じゃあ!」
「申し訳ありません。今はまだ、弟分としての好き、に留まっています」
見る見るロビーの顔が崩れていきます。
違うのです、そんな顔をしないでください。
「ロビー。以前私の事をキレイだと言ってくれました。本当にうれしかったのです。社交辞令ではよく言われますが、素直な気持ちで、真っ直ぐに言われた事はありませんでした。それに今の言葉、正面から好きだと言われた事、生まれて初めての経験です」
「え? だってフランには婚約者が……」
「いいえ、婚約者と言っても政略的な物です。そこに私の心などありません。公爵の娘だから、王太子が気に入ったから、それだけの理由なのです。好きなどと、一度も言われた事はありません」
「だって、フランはとっても優しくて、頼りになって、それに……キレイ……なのに」
「ふふふ、ありがとうございます。ですから私、いまとってもドキドキしています。ロビーに好きと言われて、とっても幸せな気持ちなのです」
「でも、弟分だよ?」
「今はそうでしょう。ですが数年経てばどうでしょうか。ロビーは成長期。あっという間に私より大きくなり、たくましくなるでしょう。弟に見えなくなった時、気持ちが変わっていなければ、もう一度、今の言葉を聞かせていただけますか? 改めてお返事させて頂きます」
「うん……分かったよフラン! 何年かたって、僕が男になった時、もう一度告白するよ!」
そう言って私の手を握ってくれました。
力強いですね。子供だと思っていましたが、やはり男の子です。
「ふふふ、では私も、嫌われないようにしなくてはいけませんね」
「大丈夫! 絶対に嫌いにならないから! それじゃあ、おやすみ!」
元気に部屋を出て行きました。
ベッドに横になり、握られた手を眺めます。
いま受けてしまうと、私は甘えてしまいます。
まだなにも、冒険者としても、フランチェスカとしても、なにも出来ていません。
聖女という肩書に頼るだけでは、ロビーに呆れられてしまいます。
もう少しだけ、もう少しだけ待っていてくださいロビー。
あなたの自慢できる仲間として、自慢できる恋人になれるまで、少しだけ……。
4
あなたにおすすめの小説
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する
ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」
ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。
■あらすじ
聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。
実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。
そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。
だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。
儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。
そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。
「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」
追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。
しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。
「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」
「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」
刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。
果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。
※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
婚約破棄されたら、実はわたし聖女でした~捨てられ令嬢は神殿に迎えられ、元婚約者は断罪される~
腐ったバナナ
ファンタジー
「地味で役立たずな令嬢」――そう婚約者に笑われ、社交パーティで公開婚約破棄されたエリス。
誰も味方はいない、絶望の夜。だがそのとき、神殿の大神官が告げた。「彼女こそ真の聖女だ」と――。
一夜にして立場は逆転。かつて自分を捨てた婚約者は社交界から孤立し、失態をさらす。
傷ついた心を抱えながらも、エリスは新たな力を手に、国を救う奇跡を起こし、人々の尊敬を勝ち取っていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!
南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」
パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。
王太子は続けて言う。
システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。
突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。
馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。
目指すは西の隣国。
八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。
魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。
「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」
多勢に無勢。
窮地のシスティーナは叫ぶ。
「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」
■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる