【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

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56 反撃 片割れ 

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「エステバン?」

 神出鬼没で正体不明の黒い影、エステバンがブラックの剣を受け止めていました。
 一体どうしてエステバンがここに?
 いえ、今はそんな事よりもロビーの治療が優先です!

「フラン、フラン。僕はもう怪我をしてないから大丈夫だよ」

「血は止まっていても、毒が入っているかもしれません!」

「スキルで見て、毒は入ってた?」

「……入っていません」

「じゃあ大丈夫だね。今は皆と協力してブラックを倒そう?」

 背後を指差され、皆がエステバンと協力してブラックと戦っていました。
 いけませんね、以前ロビーが誘拐された時の様に不安に駆られてしまい、自分を見失っていました。

わたくし達も戦いましょう!」

 ロビーと共に剣を取り、ブラックへと向き直ります!

「貴様は何者だ! なぜ【後の先ごのせん】を受け止める事が出来る!」

 戸惑うブラックの言葉に、エステバンは沈黙を返します。
 そうなのです、先ほどからエステバンはブラックの反撃を受け止め、更にブラックに【後の先】を使っているように見えます。

 【後の先】は勇者にしか使えないスキルです。
 それを使えるというのなら、エステバンも勇者だという事ですが……。

「フラン! ロビー! お前たちはブラックの背後に回れ! 俺達ではまともに攻撃すら出来ん!」

「わかりました!」

 レッド達が必死にブラックに攻撃を仕掛けようとしていますが、先ほどのロビーの様に一瞬で立場が逆転してしまうため、それに対応できるエステバンのフォローしか出来ていません。
 そして【後の先】に対抗できるもう一つのスキル【先見の明せんけんのめい】で対抗するしかありません。

 ブラックの背後に付きましたが、何でしょうかこのプレッシャーは、間違いなく背後に居るはずなのに、ずっと見られている感覚に陥ります。
 ブラックの正面にはエステバンとレッド、マット・ケイが戦っていますが、やはりエステバン以外の攻撃は【後の先】が返ってくるため何もできないでいます。

 なにせ2人が同時に攻撃を仕掛けても、2人に同時に攻撃が返ってくるのです。
 ズルイとしか言いようがありません。

 わたくしは何とか【先見の明】で未来を見ながら戦えていますが、直接対決では勇者であるブラックに分があるうえ、地力でも向こうが上です。
 未来を見ながらエステバンの攻撃に合わせてブラックを攻撃します。
 エステバンとの攻撃ならばブラックはにしか反撃できないようです。
 それでも片方には攻撃できるのですから、理不尽極まりないですね。

 レッドがワザと外す攻撃を行って注意を奪い、その隙にマットとロビーがブラックを挟んで前後左右から攻撃し、エステバンはそれに合わせて剣を振ります。
 わたくしはブラックの【後の先】が誰の所に向かうかを【先見の明】で確認し、そちらの防御に回ります。
 ケイはわたくし達に身体強化を掛けています。

 これだけ攻撃を重ねても、ブラックには通じません。
 気のせいか、エステバンの攻撃すら余裕を持って捌いているように見えます。

「貴様が何者なのか、なんとなく分かってきたぞ。貴様は俺だ」

 何を言っているのでしょうか。エステバンが自分?
 勇者だという事で自分と言っているのでしょうか。
 いえ……違いますね、本当に自分なのかもしれません。
 ブラックとエステバンの太刀筋が、あまりにも酷似しています。

 剣を振った際の肘の位置、振り終わった後のフォローに仕方、弱点の付き方。
 どれをとってもブラックとエステバンは同じなのです。
 しかし同じというのならば、実力も同じではないといけません。
 見る限りではブラックの方が余裕があるようですし。

「貴様は俺の呪いだな? 兄貴を呪い殺すときに全ての感情を込めたが、呪いに必要のない善性の感情がお前ではないのか?」

「だとしたら何だ。お前が捨てた感情だ、今更戻れなどとは言うまい?」

「戻れ? 馬鹿な事を、お前は必要ないモノなんだ、だから捨てたんだ。今さら戻ってきても、お前の居場所はない」

 なんと、本当にブラック自身だったようです。
 呪いの時に抜け出した善性の感情……それがエステバンだったのですね。
 どうりで前触れもなく現れると思いました。
 しかしだとしたら、感情の一部分でしかないエステバンでは、本来の能力を発揮できない。

 だから押され始めたのですね。

 ならば急がなくてはなりません。
 時間をかければブラックは完全に体制を立て直し、付け入るスキが無くなってしまいます。
 まだ完全に対応できていない内に終わらせなければ!

 しかし、その時は直ぐに訪れました。
 ブラックの攻撃がエステバンに当たり始め、エステバンは徐々に追い詰められていったのです。

「はははっははは! どうやらこれまでのようだな! 貴様の様な善性など必要ないと証明されたわけだ!」

「クッ! このままでは……」

 いけません、このままでは全滅してしまいます。
 エステバンの攻撃すら通用しないとなると、こちらには打つ手がありません。
 撤退……いえ、逃げられるビジョンが見えません。
 背中を突き刺されるビジョンしか見えません。

 このままではジワリジワリと削られて全滅です。
 他に可能性は無いのですか? もっと、もっと別のビジョンは無いのですか!?

 不意に、今までとは違うビジョンが見えました。

「え?」

 そのビジョンは……ロビーの体にエステバンが同化する物でした。
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