無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第二話

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 女将さんの好意でキツツキ亭で働けるようになった。
 キツツキ亭の旦那さんや従業員とは顔見知りだったから、そっちでの苦労なほとんどなかった。
 でも。

「ほーらシルビア、そんなに丁寧な接客してちゃ回らないよ!」

「あ、ごめんなさい女将さん」

 メイド時代のやり方が身に染みていたせいで、一人一人のお客さんに時間がかかり過ぎてしまう。
 キツツキ亭は宿泊だけでなく一階は食堂として使われているから、昼と夜はかなりの人が訪れる。

 朝は宿泊客だけなので、今まで通りで大丈夫だった。

「なんでぇ女将さん、俺らのシルビアちゃんをどこに連れてくんだよ」

「あんたらのシルビアじゃないよ、ウチのシルビアだ」

「我らはシルビアちゃん解放戦線だ! シルビアちゃんとの会話を要求するー!」

「そうだそうだー」

 酔ったお客さんが女将さんと遊んでる。
 私みたいな女より他の子の方が良いと思うけど……ああ、ああやってからかって遊んでいるのね。

 それなら。

「きゃー女将さん、私、解放戦線に掴まっちゃった~」

 そう言ってお客さんの背中にわざとらしく隠れる。

「なにーシルビアー、待ってな、アタイが今助けてやるよー」

 あれ? 解放戦線だったら女将さんが悪者になるのかしら?
 と考えていたら、何故か宿屋で笑いが巻き起こった。
 お、面白かったならそれでいいわよね?

 そんな感じで三ヶ月が過ぎ、お客さんとも顔見知りが増えてきた。
 名前も覚えてもらったし、ご指名を受ける事も増えた。
 ……指名制度なんでないんだけど。

「シルビア、アンタ最近ニキビが減ってきたねぇ」

「そうなんです! ソバカスも減ってきたし、体力も付いた気がします」

 夜の営業も終わり女将さんとお風呂に入っていると、まじまじと私の顔を見つめて嬉しい事を言ってくれた。
 やっぱりお年頃の女の子としてはニキビとかソバカスは気になる所。

「それにほら、肉付きもよくなって」

 そう言って私の胸を両手でつかむ。

「きゃぁ! お、女将さん何するんですか!」

「来た時はガリガリだったのに、すっかり女らしい体つきになったねぇ。アタシゃ一安心だよ」

 た、確かにこう……お胸が大きくなってきた。
 でも大きさなら女将さんは特大だし、さらにお腹周りは超特大……

「ほぉ? シルビア、今アタイの腹を見たね? そんな子はこうだよ!」

「あっはっはっは! や、やめて女将さん、ごめんなさい、くすぐらないで、横腹をくすぐらないでぇ~」

 雪の季節が来てお客さんの数は少なくなったけど、特に従業員の数が減る事もなく、いつも通りにお仕事をしていた。

 でも雪の季節が終わった頃、お産で休んでいた人が復職する事になった。

「体はもう大丈夫なのかい? 無理して子育てに支障がでちゃいけないからね?」

「大丈夫ですよ女将さん。ウチの母が見てくれますし、私もいつまでも休んでいられませんもの」

 雪の時期が終わった事で、お客さんの数は増えてきた。
 だからと言ってこれ以上従業員が増えても、手が余ってしまうのは目に見えていた。

 潮時……かなぁ。

 でもこの宿は好きだし、復職した人も久しぶりで戸惑う事もあるだろうから、少しだけ様子を見よう。

 数日ほど様子を見てたけど、復職した人は初日こそ手際が悪い事があったけど、翌日からは全く問題なく仕事をこなしていた。
 母親って強い!

 そして予想通り、忙しい昼や夜の時間でも手が余る人が出てきた。
 ふぅ、これまでね。

「女将さん、少しいいですか?」

「おお何だい? かしこまって」

 夜の営業が終わり、片付けをしている女将さんに声をかける。
 辞めると言ったら引き留められたけど、宿の経営状況の話をすると黙り込んでしまった。
 わかってる、余計なお世話かもしれないけど、男爵家を切り盛りしていたから大体の状況は理解できるもの。

 辞める前日にはお別れパーティーを開いてくれて、常連さんも沢山参加してくれた。
 
「うおおおぉぉぉ! シルビアちゃんがいなくなっちまうのかよぉ!」

「俺らはこれから何をかてに生きてきゃいいんだ!」

「いえいえ、普通に奥さんとお子さんを糧に生きてくださいよ」

 というボケにツッコミを入れながら、みんなとお別れをした。
 
 私は朝の馬車に乗って隣町へ行く事にした。
 幸い女将さんが今月のお給金を多めにくれたので、少しだけ余裕がある。
 だから男爵の領地を見て回りたくなったのだ。

 メイド時代は代表者の方と話をしてたけど、実際に街がどうなっているのかは見たことがない。
 だから実際の街の状況をしりたい。

 ……もう男爵家とは関係ないのに、何を考えてるんだろう私。
 いえいえ、これは仕事を探すためよ。
 馬車で昼過ぎには隣町に到着し、私は街を見て驚愕した。

「……さびれているわ」

 前の街は男爵家のおひざ元という事もあり、少ないながらも旅人の行き来があった。
 でもここは違う、人の出入りはここに住んでいる人たちだけだ。

「お仕事、見つかるかしら」

 街を歩いていると、人の動きはあるけれど覇気がない。
 どこか諦めたような、投げやりな空気が街をめているように感じる。

「あら? このお店は……」

 一軒のお店を見つけ、私は立ち止まる。
 看板を見ると雑貨屋さんのようだけど、店先のディスプレイには何も置いてない。

「こんにちは」

 中に入るとホコリが舞い上がった。
 ゲホッゲホッ! もうお店はやって無いのかしら。

「あん? 誰だ」

 カウンターの向こうからお年寄りが現れた。
 丸メガネをかけたお爺さんで、茶色のベストを着ている。

「マグカップはありますか? 金属製の」

「マグ? そこらへんに置いてあるだろう」

 指さした先を見ると、確かにマグカップが置いてあった。
 でも埃がかぶっていて、ずっと売れないでいるのが見て取れる。
 決めた。

「従業員はいりませんか?」
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