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第四話
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店長には違う理由で辞めるといって、雑貨屋を後にした。
まさか元男爵家の失態を、私にまで責任を追及するつもり?
……でも最後の方はほとんど私が回していたし、責任があるといわれたらあるのかもしれない。
「どうしよう、各街の代表者は私の事を知っているし、シルビアって名前も使えないわね。こうなったら元男爵家の領地外へ出て、別人として生きるしかない」
幸い雑貨屋で結構なお給金を頂いたから、領地を出てほとぼり冷めるまで大人しくすることは出来る。
でも……困った事に私は仕事の虫、働かずにいられるかしら。
まずは領地を出て子爵領以外の場所に行かないと。
急いで馬車に乗り込んで、隣の貴族・ティアナ男爵領へと向かった。
ううっ……お尻が痛い……七日かけてティアナ男爵領に到着したけど、途中の街で一泊した以外、ずっと馬車で寝泊まりしたから体がガチガチだわ。
「え? これが同じ男爵領なの?」
馬車を降りた私は目を疑った。
街はキレイに整備され、人々は活発に活動して商売も盛んだ。
あちこちで笑い声が聞こえてみんな幸せそうだ。
「確かティアナ男爵はまだ若いはずだけど、同じ男爵でもこんなに違うものなのね」
これは色々な事を勉強できそうね!
数日後、私はパン屋さんで働いていた。
人気のお店で朝昼はお客さんで一杯になり、何といっても白パンがとっても美味しいの!
このパンの作り方を学びたいっていうのもあったわね。
「ルキノ、これを店に出してきてくれ」
「わかりましたオーナー」
今はルキノと名乗って働いている。
偽名なのはちょっと後ろめたいけど、そんな事をいってられないもの。
オーナーが焼き上げたパンを店頭に並べると、お客さんが群がって来て次々にパンを持っていく。
やっぱりこのお店の白パンは最高よね!
「やぁルキノさん」
このメガネをかけた学者風の若い男性は、ほぼ毎日お店に来てくれる。
「あ、いらっしゃいませ。最近はよくいらっしゃいますね」
「そ、そうだね……すすす、好きなんだ!」
「本当ですか! 嬉しいです。私も大好きなんです」
「え! ほ、本当に?」
「ええ、この白パン、美味しくて大好きなんです」
やっぱりこのお店のパンは絶品よね。
「あー! ルキノンだ! 今日も頬ずりさせろコンチキショウ!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいってば、女同士だからってお店で頬ずりはやめてくださいよ」
「ぶー、ルキノンと愛し合った日々を忘れたというの!?」
「知り合って数日ですけどね?」
私と同い年の女性は元気いっぱいで、お店に来たら私に頬ずりして来る。
今はニキビが無くなったし、ソバカスも随分と減ったから平気だけど、少し前だったら逃げてたと思う。
「ふ~、夜はお客さんが少なくて静かですね」
「パンを焼くのは朝と昼だけだし白パンは焼きたてを食うのが一番うまいからな。黒パンなら数日たっても平気だが、白パンを知った後じゃ食えたもんじゃない」
黒パンは保存食の意味合いもあるからとても堅いため、薄切りにしてスープにつけて食べる。
このお店でも黒パンは売ってるけど、たまにライ麦を持ち込んで黒パンを作ってくれ、というお客さんもいるみたい。
「おっと、そろそろ焼き上がるかな」
「あ、本当ですね、見てきます」
夜の空いた時間は白パンの作り方を教えてもらっている。
お給金が安くてもいいから教えて欲しいと頼み込み、ようやく教えてくれる事になった。
オーブンを見てみると、表面に薄い焦げ目が付いている。
丁度いい感じだわ、早速取り出してオーナーに味見をしてもらいましょう。
「うん、いい感じだ。これなら店に並べても問題ないな」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「それにしてもこんな短期間で焼き方を覚えちまうとは、本当に恐れ入った」
「オーナーの教え方が分かりやすかったからですよ」
「いやぁ~あ、ウチのバカ息子は何年経ってもパンを焼けやしない。この調子じゃルキノに店を継がせることになっちまう」
「あはは、それは光栄です」
「どうだ、いっそのことウチの息子と――」
お店の扉が開いて鈴が鳴る、お客さんがいらしたみたい。
「いらっしゃいませー」
二か月ほどが過ぎて、すっかりお店の常連さん達とも仲良くなった。
私もお店でパンを焼く様になり、お客さんが増えたら接客に回る、毎日が楽しい暮らしをしていたけど、ある日エクサ子爵の使いを名乗る長身の老人がお店に現れた。
「この店にシルビアという娘が働いていると聞きましたが、間違いありませんか?」
「いえ、ウチにはシルビアなんて娘はいませんが……」
「ウソをつくとためになりませんよ?」
「そ、そんな事を言われましても、本当に知らないんです」
ああ、営業中に来られたら逃げられない。
それにこれ以上はお店に、オーナーに迷惑が掛かってしまう。
「私が……シルビアです」
お店の中がざわめいた。
それはそうよね、ルキノなんて偽名を使っていたんだもの、みんな私を軽蔑しているわ。
「る、ルキノ? お前はなにをいってるんだ?」
「すみませんオーナー。ルキノは偽名なんです」
「では君がが男爵家で働いていたメイド、シルビアで間違いありませんね?」
「はい、間違いありません」
「今すぐ元男爵領に戻りますから支度をするように」
そう言って店の前に止めてある馬車を指さす。
ああ、遂に私は罪人として裁かれてしまうのね……
オーナーやお客さんを裏切ってしまったわ。
「ルキノ、いやシルビア? お前一体なにをしたんだ?」
「きっと隣の男爵が捕らえられたので、連帯責任で私も掴まるんだと思います」
「そんな! お前には関係ないじゃないか!」
「ご迷惑をおかけしました。直ぐに荷物をまとめて出て行きます。短い間でしたがお世話になりました」
住み込みで働いていたから、借りていた部屋に行って荷物をトランクに詰め込む。
トランク一つで済むなんて、まるで捕まるのが分かってたみたい。
「シルビア! これを持っていけ」
お店のから出ようとする私に、オーナーは皮袋を手渡した。
音からしてかなりのお金が入ってる。
「え? どうして」
「お前さんには世話になったからな、あって困る事は無いはずだ」
「でも……」
「いい、いいから! そして全てが終わったら戻ってこい!」
何度も何度もお礼を言って、私はエクサ子爵の馬車に乗り込みました。
まさか元男爵家の失態を、私にまで責任を追及するつもり?
……でも最後の方はほとんど私が回していたし、責任があるといわれたらあるのかもしれない。
「どうしよう、各街の代表者は私の事を知っているし、シルビアって名前も使えないわね。こうなったら元男爵家の領地外へ出て、別人として生きるしかない」
幸い雑貨屋で結構なお給金を頂いたから、領地を出てほとぼり冷めるまで大人しくすることは出来る。
でも……困った事に私は仕事の虫、働かずにいられるかしら。
まずは領地を出て子爵領以外の場所に行かないと。
急いで馬車に乗り込んで、隣の貴族・ティアナ男爵領へと向かった。
ううっ……お尻が痛い……七日かけてティアナ男爵領に到着したけど、途中の街で一泊した以外、ずっと馬車で寝泊まりしたから体がガチガチだわ。
「え? これが同じ男爵領なの?」
馬車を降りた私は目を疑った。
街はキレイに整備され、人々は活発に活動して商売も盛んだ。
あちこちで笑い声が聞こえてみんな幸せそうだ。
「確かティアナ男爵はまだ若いはずだけど、同じ男爵でもこんなに違うものなのね」
これは色々な事を勉強できそうね!
数日後、私はパン屋さんで働いていた。
人気のお店で朝昼はお客さんで一杯になり、何といっても白パンがとっても美味しいの!
このパンの作り方を学びたいっていうのもあったわね。
「ルキノ、これを店に出してきてくれ」
「わかりましたオーナー」
今はルキノと名乗って働いている。
偽名なのはちょっと後ろめたいけど、そんな事をいってられないもの。
オーナーが焼き上げたパンを店頭に並べると、お客さんが群がって来て次々にパンを持っていく。
やっぱりこのお店の白パンは最高よね!
「やぁルキノさん」
このメガネをかけた学者風の若い男性は、ほぼ毎日お店に来てくれる。
「あ、いらっしゃいませ。最近はよくいらっしゃいますね」
「そ、そうだね……すすす、好きなんだ!」
「本当ですか! 嬉しいです。私も大好きなんです」
「え! ほ、本当に?」
「ええ、この白パン、美味しくて大好きなんです」
やっぱりこのお店のパンは絶品よね。
「あー! ルキノンだ! 今日も頬ずりさせろコンチキショウ!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいってば、女同士だからってお店で頬ずりはやめてくださいよ」
「ぶー、ルキノンと愛し合った日々を忘れたというの!?」
「知り合って数日ですけどね?」
私と同い年の女性は元気いっぱいで、お店に来たら私に頬ずりして来る。
今はニキビが無くなったし、ソバカスも随分と減ったから平気だけど、少し前だったら逃げてたと思う。
「ふ~、夜はお客さんが少なくて静かですね」
「パンを焼くのは朝と昼だけだし白パンは焼きたてを食うのが一番うまいからな。黒パンなら数日たっても平気だが、白パンを知った後じゃ食えたもんじゃない」
黒パンは保存食の意味合いもあるからとても堅いため、薄切りにしてスープにつけて食べる。
このお店でも黒パンは売ってるけど、たまにライ麦を持ち込んで黒パンを作ってくれ、というお客さんもいるみたい。
「おっと、そろそろ焼き上がるかな」
「あ、本当ですね、見てきます」
夜の空いた時間は白パンの作り方を教えてもらっている。
お給金が安くてもいいから教えて欲しいと頼み込み、ようやく教えてくれる事になった。
オーブンを見てみると、表面に薄い焦げ目が付いている。
丁度いい感じだわ、早速取り出してオーナーに味見をしてもらいましょう。
「うん、いい感じだ。これなら店に並べても問題ないな」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「それにしてもこんな短期間で焼き方を覚えちまうとは、本当に恐れ入った」
「オーナーの教え方が分かりやすかったからですよ」
「いやぁ~あ、ウチのバカ息子は何年経ってもパンを焼けやしない。この調子じゃルキノに店を継がせることになっちまう」
「あはは、それは光栄です」
「どうだ、いっそのことウチの息子と――」
お店の扉が開いて鈴が鳴る、お客さんがいらしたみたい。
「いらっしゃいませー」
二か月ほどが過ぎて、すっかりお店の常連さん達とも仲良くなった。
私もお店でパンを焼く様になり、お客さんが増えたら接客に回る、毎日が楽しい暮らしをしていたけど、ある日エクサ子爵の使いを名乗る長身の老人がお店に現れた。
「この店にシルビアという娘が働いていると聞きましたが、間違いありませんか?」
「いえ、ウチにはシルビアなんて娘はいませんが……」
「ウソをつくとためになりませんよ?」
「そ、そんな事を言われましても、本当に知らないんです」
ああ、営業中に来られたら逃げられない。
それにこれ以上はお店に、オーナーに迷惑が掛かってしまう。
「私が……シルビアです」
お店の中がざわめいた。
それはそうよね、ルキノなんて偽名を使っていたんだもの、みんな私を軽蔑しているわ。
「る、ルキノ? お前はなにをいってるんだ?」
「すみませんオーナー。ルキノは偽名なんです」
「では君がが男爵家で働いていたメイド、シルビアで間違いありませんね?」
「はい、間違いありません」
「今すぐ元男爵領に戻りますから支度をするように」
そう言って店の前に止めてある馬車を指さす。
ああ、遂に私は罪人として裁かれてしまうのね……
オーナーやお客さんを裏切ってしまったわ。
「ルキノ、いやシルビア? お前一体なにをしたんだ?」
「きっと隣の男爵が捕らえられたので、連帯責任で私も掴まるんだと思います」
「そんな! お前には関係ないじゃないか!」
「ご迷惑をおかけしました。直ぐに荷物をまとめて出て行きます。短い間でしたがお世話になりました」
住み込みで働いていたから、借りていた部屋に行って荷物をトランクに詰め込む。
トランク一つで済むなんて、まるで捕まるのが分かってたみたい。
「シルビア! これを持っていけ」
お店のから出ようとする私に、オーナーは皮袋を手渡した。
音からしてかなりのお金が入ってる。
「え? どうして」
「お前さんには世話になったからな、あって困る事は無いはずだ」
「でも……」
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