無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第十二話

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 アベニール様にお願いして元男爵の屋敷を調べてもらう間、こちらでも何か行動を起こさないといけない。
 実力行使に出て来るとは思わないけど、嫌がらせくらいはしてくるだろう。

「シルビア、言われた通りにワタクシの手の者をサクシード卿の屋敷周辺に住まわせたわ。まずはポルテ元男爵の監視と情報収集に当たらせるわね」

「ありがとうございますプリメラ。でも本当に住まわせたのですね」

「当然よ! それが一番効果があるならケチってる場合じゃないもの」

 寮の自室でソファーに座り、顔を突き合わせながら計画を話しています。
 サクシード侯爵邸の監視や情報収集を提案しましたが、まさか即日実行に移すなんて誰が想像しますか。

「それにまた私の事でご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳――」

「ストップよシルビア。それ以上言ったらワタクシでも怒ります」

「……はい、もう言いません」

 これで二回目だわ。
 これ以上同じてつを踏むわけにはいかないから、私は自分の言動にもっと責任を持とう。
 今後の計画を話合い、この日は終わりです。

 翌日からはいつもよりウワサ話を聞き逃さないように注意しました。
 そしてある日、こんなウワサが学園に広がります。
「男爵家で働いていたメイドが横領をしていたから、男爵が責任を取って爵位を剥奪されたらしい」というものだ。
 
 男爵が誰ともメイドが誰とも言っていないけど、まぁ私の事よね。
 しかしこの程度のウワサなら直ぐに立ち消えるだろう、そう思っていましたが尾ひれがつきました。
「経済に明るいから横領を何年も隠し通した」ようです。

 横領するお金なんてどこを探しても無かったんですけど……
 しかしこのウワサは長引きました。
 なにせ経済に明るいのは試験で証明済みですし、実質的に運営をしていたのは私なので押領し放題。

 しかしまだ大丈夫です。
 実害はありませんし、周囲の友人たちはそんなウサワを否定していつも通りの付き合いをしてくれます。
 そろそろ危ないと思ったのはさっきの事でした。

 学園のお昼、プリメラ達と中庭で食事をしようと準備をし、忘れ物があったので一人で教室に行って戻ってくる時でした。
 校舎を出た瞬間に上からまとまった水が落ちてきたのです。
 量的にはバケツ一杯分、幸いしぶきが足元にかかった程度でしたが、上を見ても誰もいませんでした。

 偶然? という訳ではないわよねコレは。
 一応昼食後にプリメラに話をしましたが、どうしてすぐに言わないのかと怒られてしまいました。
 昼食は楽しく取りたかったんです。

 しかしそれ以降も私が一人になった時には何かが起きました。
 水が降って来るだけではなく人がぶつかって来たり、遠巻きに笑われたり、困ったのは物が無くなった時です。

「なにそれ! こうなったらシルビア防衛態勢を敷くわ!」
 
「な、なんですかそれは?」

「ふっふっふ、いつでもどこでもシルビアには誰かが付いている態勢よ!」

 ああなるほど、私が一人の時に色々起きるなら一人にしなければいいという訳ですね。
 でもそれは皆さんへの負担が……と口に出そうになりましたがグッとこらえました。

「わかりました、それなら私も安心ですね」

 それからというもの、本当に私が一人になる事が無くなりました。
 プリメラだけでなくリバティ様や他の御友人、その付き人に至るまで誰かが私と共に行動しています。
 最初はどうかと思ったけど、慣れてしまえば逆に楽しいわね。

 そんな作戦が功を奏したのか、最近は何事もなく過ごせていました。
 もう大丈夫なんじゃないか、そう油断したのかもしれません。
 講義中に扉がノックされて開くと、他の担当の講師が入ってきました。

「シルビア君、君に来客が来ている。来客口にいるから会いに行くように」

 いくら来客といっても講義中に? 講義が終わってからではダメなのかしら。

「もう少しで講義が終わりますが、それではダメなのでしょうか?」

「急いでいる様だから今の方が良いだろう」

 正直客人に心当たりはありませんが、正式に講師が呼びに来ているので本当に急いでいるのかもしれません。

「先生、ワタクシも一緒に参ります」

「プリメーラ君は講義を受けていたまえ。付き人とはいえ過保護はいかん」

「……わかりました」

 プリメラは座り直すと気を付けてね、とだけ言って送り出してくれました。
 私は小走りで廊下を進み来客口に急ぎます。

「えっと、どちらにいらっしゃるのかしら」

 来客口に着ましたが誰もいません。
 入れ違いになったかしら、でも急ぎならその場を動くはずが無いし。
 来客口の外に出て周りを見回しましたが誰もいません。

「困ったわね、探しに出て入れ違いになってもいけないし」

 来客口の近くでウロウロしていると後ろで音がしました。
 あ、いらしたのかしら。
 振り向くと目の前には知らない男性が立っており、街のどこにでも居そうな服装、帽子、そして目元にはマスクが付けられています。

「だ、誰ですか!?」

 男性はゆっくり私に手を伸ばします。
 その手にはハサミがあり、私の顔の近くで大きくハサミを開きました。

「キャー!」

 足がすくみ、叫び声を上げる事しか出来ません。
 ハサミが私の顔に当たる瞬間!

「なにを、している……」

 まだ若い男性の声が聞こえてきました。
 ハッと顔を上げると男子生徒がハサミ男の背後に立っていました。
 ハサミ男は驚いたように振り向くと男子生徒の顔を見て慌て、一目散に逃げていきます。

「大丈夫……か?」

 銀髪サラサラヘアーの男子生徒はしゃがみ込む私に手を差し伸べてくれました。

「あ、あの、ありがとう、ございます。私はシルビアと申します」

「ん? ああ、僕は……リックだ」
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