無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第十六話

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 リック様がセフィーロ様に挑戦状を叩きつけてからというもの、リック様が教室に来る率が高くなりました。
 以前は昼食時だけでしたが、最近は休憩の度に来るようになりました。
 そして必ず私の隣に座り、それをセフィーロ様がからかったり邪魔をして遊ぶのです。

「はっはっはリック君、君はまだ女性の扱い方をわかっていないね。気のない男に隣に座られると女性は戸惑うだけだぞ?」

「……それはセフィーロ様もです。女性は軽い男が嫌いですよ」

 お、大人しいリック様が喧嘩を売っています!!
 あら? ひょっとしてこの状況は……やっぱり! 他の女生徒が私を睨んでいます!!
 ううっ、この環境はとても居心地が悪いです。

 しかしそれ以上に私の事を気にくわないと思っている人物がいました。
 グランビア様です。
 私に元男爵家を潰したメイドだと言い放ち、試験の時に専攻外の科目会場に連れて行くように仕向けた人です。

 教室は違うのに時々こちらをにらみつけてきて、正直生きた心地がしません。
 それでもセフィーロ様がいるせいか、あれから何もしてくる様子が無いのがせめてもの救いです。

「それでシルビアはどっちと結婚するの? お兄様なら次からは義姉さんと呼ばせてもらうわよ?」

「あらプリメラ、人に恋人を強要するのは良くありませんわよ? ほらシルビア、私に弟がいますからそちらはいかがかしら」

 プリメラだけならず、リバティ様まで遊びに参加してしまいました!
 こうなったら味方はマーチだけ……なぜニヤニヤと楽しそうなんですか!?
 もう! みんなで私をおもちゃにして!

 数日が経過したある日、カフェで私を襲おうとしたウェイトレスの情報を聞きにアベニール様のお屋敷に行きました。
 
「あの女だがな、サターン信者ではあるようだが生活の為に信者になったようだ」

「生活のため? 悪魔教は仕事の斡旋あっせんでもしているのですか?」

「生活の苦しい家庭に優しく言い寄り、家族などを保護するといって施設に連れていくのだ。そして家族を人質に取り犯罪行為を強制している様だな」

「……なんて卑劣な事を。ではあの女性の家族は保護できたのでしょうか」

「残念ながら施設の場所は本人も知らなかった。なので家族は救えていないが情報収集を進めている所だ」

 そしてあの女性、ウェイトレスが身に着けていた物や部屋にあったを全て押収したそうです。
 あの時直接身に着けていた物はお屋敷にあるそうなので、私も見せて頂きました。

 可愛らしい制服、肌着、下着まで⁉ 装飾品、そして……私を傷つけようとしたナイフ。
 やはり気が付かなかったとはいえ、私を害しようとした物を見ると鼓動が早くなるわね。

「あら? このナイフ……」

「どうしたのシルビア。このナイフを知っているの?」

 私に寄り添っていたプリメラが心配そうに見つめてきます。

「いえそうではなく、このナイフの刃……あ、手に持ってもよろしいですか?」

「かまわない」

 アベニール様に許可をいただきナイフを手にします。
 そしてしっかりといである刃を見つめます……やっぱりこの研ぎ方は知っている、アレだわ。

「このナイフをいだのは、私が作ったぎ機によるものでしょうか」

 アベニール様もプリメラも意味がわからず私を見ます。
 あ、そういえば話していなかったわ。
 私が元男爵家を追い出されてからの事を話し、とある道具屋さんで砥ぎ機を作って販売した事を話します。

「個人商店で作った物ならば数が少ないはずだ。まずは同型のナイフで砥いでみて同じなら本格的に調べる価値があるな」

「しかしお父様、鍛冶屋で砥いだものと違いがあるのですか?」

「鍛冶屋で砥いだナイフならほら、これを見てみろ」

 アベニール様が持っているナイフをプリメラに渡すと、プリメラは二本のナイフを見比べます。

「……わかりませんが」

「常人には分からん差だ。この研いである幅が違うのだ。そうだなシルビア」

「その通りです」

 私が砥ぎ機を作る時に一番苦労したのが砥石といしの角度です。
 鍛冶屋の様に刃を薄く鋭く研ごうとしたら刃が砥石に当たらない事が多かったため、砥ぎ機では砥石の角度を小さくして刃が当たりやすいようにしました。
 アベニール様は直ぐにその事に気が付かれたのだ。

「すぐに手配しよう。同じだと分かったら店に赴いて売った先を虱潰しらみつぶしに調べる」

「それでしたら私が手紙を書きましょう。以前お世話になった際、顧客情報は宝だから絶対に口外しないようにお願いしましたので、私からお願いした方がスムーズに進むと思います」

「……ただのメイドがそんな事まで気が回るか。ふっふっふ、俺の目に間違いはなかったな!」

 なぜかアベニール様が喜んでいます。
 新しい手掛かりが手に入ったからかしら。
 それからプリメラにも一つお願いをしました。

「うむ、ではそれぞれ行動を開始するとしようか」
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