無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第二十八話

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 今日はリバティ様の部屋で漬物作りです。
 といっても私とマーチが作り、プリメラとリバティ様はお茶をしています。

「ねえシルビア、お漬物って味が濃い物が多いわよね? これってライスに混ぜて炒めたら美味しいんじゃないかしら」

 マーチの言葉に私はカッ! と目を見開きました。
 
「それです!」

 タクアンをみじん切りにしてライスと一緒に炒め、味を調えたら……
 
「タクアンのコリコリした感じがいいわね」

「良い具材になりますね。これなら設備が少ない場所でも作れますし、単調になりがちな味に変化もつけられます」

 漬物ってこんな使い方もできるのね、流石はマーチだわ!
 思わずマーチと両手を合わせて喜んでしまう程です。
 メモっておきましょう。

「ねぇプリメラ」

「なにリバティ」

「あなたの付き人と私の付き人、付き合ってるのかしら?」

「……料理ってデートになるの?」

「仲睦まじくは見えるわね」

 数日後にアベニール様のお屋敷を訪ねると、なんと作業場には回転砥ぎ機が数台置いてありました。
 アベニール様や他の兵士達は作業服で剣を研いでいます。
 も、もう生産体制が整ったのでしょうか?

「おおプリメーラ、シルビア、よく来たな。どうだこの数! 小隊には一つ、それ以上の部隊には人数に応じて数を増やすつもりだ!」

 一体何台作るつもりなんでしょうか……あ、一応は作ってくれた鍛冶屋さんに注文した様で、あの鍛冶屋さんの焼き印が入っています。

「お父様、それよりも今日は保存食の事で来たのです」

「おお出来たか! よしよし、ちょっと待っていろ今行く」

 そう言ってアベニール様はいそいそと屋敷に入っていきます。
 戦争が好きなわけでは無いようですが、基本的に軍事的な事が好きなのでしょう。
 リビングで待っている間に保存食を並べて待っていると、アベニール様は一人の兵士を引き連れて戻ってきました。

「ワシだけでは判断ができんのでな、一般兵を呼んだ」

 鎧を着た一般兵と呼ばれた人は苦笑いをしていますが、いやいや、その方は隊長格ですよね? 鎧の肩に書かれたマークは部隊長のものです。
 ああアベニール様に比べたら一般兵? という事でしょうか。

「あ、これ美味しいですね、炊事兵に持たせましょう」

「うむ、ワシとしては酒のつまみにしたいが」

 兵士さんにはライスにタクアンを混ぜた焼き飯を、アベニール様は漬物単体で食べました。
 味に喜んでくれるのは嬉しいですが、本番はこれからです。

「この瓶に入っている漬物が何日保存できるのか、こちらで調べよう。三十日持てば成功だな」

「はい、よろしくお願いします」

 漬物が上手くできたので瓶に詰めて何個か持ってきました。
 瓶を日が当たるテント内で保存して何日持つか、で判断するようです。
 食料が三十日、ひと月持てばその後の補給計画がたてやすいとか。
 
「よし、回転砥ぎ機だけでも素晴らしいが、これで保存食まで完成したらワシらはシルビアに足を向けて眠れんな、ガッハッハッハ!」

「本当ね。これでお父様はますますシルビアに頭が上がらなくなるわね」

「まったくだ。悪魔教の件を陛下へいかにお話しして、人員を確保してもらった甲斐があったというものだ」

「あ、やはり国にお願いしていたのですね。あまりに行動が素早過ぎて驚いていました」

「ああ、なにぶん外がざわついているからな、内側の不安要素を早く無くしておきたかったのだ。うむ……すでに頭が上がらんな!」

 豪快に笑うアベニール様に釣られるようにプリメラも大笑いしました。
 しかし笑い終わるとアベニール卿はため息をついていましたが、他にも不安要素があるのでしょうか。
 しかし私はプリメラの付き人、あまり出しゃばった事はしない方がよいでしょう。

 三十日後、結論から言えば全て問題なく食べることができました。
 そして面白くなったのか、アベニール様はテントの中にストーブを入れて実験を続行します。
 六十日後、酢を使った漬物は大丈夫でしたが、他のものはダメになっていました。

「これは驚いたな。これなら真夏でもひと月は問題ない事になる」

「テントの中……暑かったわ」

「はい、確かに真夏のような暑さでした」

「三十日の時点で陛下へいかにお伝えしてあるが、これは面白くない事になりそうだ」

「お父様? 面白い事になる、の間違いでは?」

 プリメラの問いに対してアベニール様は応えませんでした。
 それにとても深刻な顔をしたいらっしゃいます。
 やはり他にも心配事があるのでしょうか。

「っと、お前達には時間を取らせてしまったな。この礼はいずれするから、今日はもう帰っても良いぞ」

 そう言われた私とプリメラはお屋敷を後にしましたが、どうしましょう、鎧を簡単に程々に補修する案もあったんだけど……これは次回以降にしましょう。
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